日当は出張時に支給される手当です。出張先での食費、移動中や宿泊時に発生する拘束時間などを補填する意味があります。
本記事では日当とは何か、なぜ必要なのかを解説。日当を支給するメリット・デメリットや金額の決め方、日当に関するよくある質問もまとめて紹介します。
- 日当とは何か、支給するメリット・デメリットは?
- 日当の決め方と金額目安
- 日当を支給するときの注意点
そもそも日当とは?
日当とは出張にともない支給される手当のことです。そのまま出張手当と呼ばれることもあります。
日当は主に出張先での食費をはじめとする雑費、出張中の残業や拘束時間に対する補填として支払われます。出張で移動する際に発生する公共交通機関の運賃、宿泊費などは出張前に予約すれば、従業員に立て替えてもらう必要がありません。立て替えてもらうとしても、出張に必要な明確な経費という性質があります。
しかし、出張先の食事代は事前に予測できず、予約や前払いも一般的にはできません。出張では移動時間も長く、移動中は読書や睡眠など自由に時間を使えることも多いです。そのため、残業時間や拘束時間を正確に把握し、それに見合う金額を都度算出するのは難しいでしょう。
そこで、出張旅費規程であらかじめ定めておいた金額を日当として支給することで対応します。日当の金額は出張の目的や行き先、期間、出張する者の役職・地位などにより変わることもありますが、これらの条件により算出された額が一律に支給されます。
出張で日当を支給するメリット
出張で日当を支給する主なメリットは、「従業員の不満の抑止」「節税」です。
中長距離の移動をともなう出張では、通常の勤務よりも拘束時間が長くなりやすいです。しかし、出張中は実際の労働時間ではなく、所定労働時間を勤務したものとする「みなし労働時間」で計算されます。
たとえば所定労働時間が8時間、出張時の実働時間は7時間、ここに移動時間の2時間を加えて計9時間拘束されていたとしても、1時間分の残業代はつきません。宿泊をともなう出張では自宅に帰れないため、終業後も会社に拘束されているようだと不満に感じる従業員もいるでしょう。
これらの不満の抑止剤となるのが日当です。出張中の残業・拘束に残業代を出す代わりに日当を支給することで、従業員の納得度を高められます。
また、詳しくは後述しますが、日当は経費に換算されます。日当を支給し経費を増やすことで利益を減らせば、会社にかかる税金を節税できるでしょう。給与と違って賃金に含まれないため、日当を支給したことで社会保険料が増えることもありません。
出張で日当を支給するデメリット
日当を支給するデメリットはコストが増えることです。
日当は経費にできるため、日当を支給することで節税はできます。しかし、日当の支給額によっては節税できた額よりも増えたコストの方が気になるかもしれません。出張、つまり日当の支給はいつ、何度発生するかわからないため、事前に試算するのも難しいです。
また、日当は出張旅費規程で定めた条件に従い全社員を対象に支給するため、状況によってはコストがかなり増えることもありえます。出張旅費規定の作成や、それにともなう手続きなどにも手間がかかり、一時的な負担増大も起こるでしょう。
出張の日当を決めるときに考慮したい要素
日当には出張中の食費、残業代や拘束時間の補填という意味合いがあります。日当の金額を決めるときは、これらの要素を考慮しましょう。
出張中の食費
出張中は外食が多くなります。お弁当や惣菜などで済ませるとしても、自炊よりは割高です。出張中の食費として、1日あたり1,000円を目安に考えましょう。
出張中の残業代
出張にともなう移動時間は労働時間に含まれず、出張中は実際の勤務時間にかかわらず、所定労働時間を働いたものとして労働時間が計算されます。そのため、出張中は基本的に残業代が出ません。
出張中や移動中の拘束時間
業務命令がなければ移動時間は従業員の自由に使えます。ただ、移動手段が社用車で従業員自らが運転しなければならない場合はそうもいきません。社用車での移動時間も基本的に労働時間に含まれませんが、公共交通機関に比べて従業員の負担は大きくなります。
これらを踏まえ、残業代や拘束時間の補填としていくら支給するかを考えましょう。
税金・給与明細上の日当の扱い方
税金・給与明細上の日当の扱い方について解説します。正しく経費計上、節税するために、しっかり確認しましょう。
自社での規定を作成した後は、問題ないか税理士に確認してもらうことがおすすめです。
日当の額が適正な範囲内なら非課税
日当は金額が適正な範囲内なら、給与と異なり非課税で支給できます。ここでいう適正な範囲とは「通常必要と認められる金額」のことであり、同業種・同規模の他社の支給額と照らし合わせて相当と認められるかが重要です。
日当は給与明細に記載しない
日当は給与ではなく手当です。そのため、所得税の課税対象外です。しかし、日当を給与明細に記載すると給与として扱われ、課税対象になってしまいます。日当は給与明細に記載しないよう気をつけましょう。
日当に消費税はかからない
日当に消費税はかかりません。消費税は物やサービスの消費に対してかかる税金であり、手当である日当を支払うことは消費にあたらないためです。
日当を経費に計上できる場合
法人が日当を支給する場合、もしくは個人事業主が従業員に支給する場合、日当を経費に計上できます。ただし、個人事業主本人が自らに日当を支給し経費にするということはできません。
【ケース別】日当の金額目安
日当の金額目安を国内出張と海外出張に分けて紹介します。
国内出張の場合
「2019年度 国内・海外出張旅費に関する調査(産労総合研究所)」によると、国内出張の日当や宿泊料の平均額は次のようになっています。
一般社員 | 部長クラス | |
日帰り出張の日当 | 2,094円 | 2,666円 |
宿泊出張の日当 | 2,355円 | 2,900円 |
宿泊料 | 8,605円 | 9,835円 |
海外出張の場合
同調査によると、海外出張の日当や宿泊料の平均額は次のようになっています。
一般社員 | 部長クラス | |
宿泊出張の日当 | 4,913円 | 5,593円 |
宿泊料 | 14,621円 | 16,385円 |
※北米地域への出張の場合
出張で日当を支給するときの注意点
出張で日当を支給するときの注意点を2つ紹介します。
出張旅費規程を設けておく
日当を支給するには出張旅費規程を設けなければなりません。出張の目的や行き先、出張する者の地位などの条件を洗い出し、条件ごとに金額を決めましょう。
なお、出張旅費規程の作成は就業規則の変更にあたります。従業員の意見聴取を行ったうえで変更届を提出するなど、手続きに手間がかかります。
出張報告書を提出させる
出張した従業員に出張報告書を提出させることを徹底しましょう。報告書には出張の日程や行き先、目的などを記入します。これがあることで、税務署から「節税のために架空の出張をしている」と疑われるリスクを抑えられます。
日当に関するよくある質問
日当に関するよくある質問に答えます。日当の金額や条件について迷っている担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
出張中に休日がある場合、日当は出すべき?
出張中に休日がある場合に日当を出すかどうかは自由であり、出張旅費規程で設定できます。休日といっても、出張中は普段と異なる場所・環境に本人の意思とは関係なく拘束されている状態であり、日当を出すことで従業員の納得度を高められるかもしれません。
ただし、業務を行わない休日に日当を支給することの妥当性には疑問が残ります。「通常認められる範囲」とみなされず、課税対象となることも考えられます。
出張する社員・役員ごとに日当額を変えてもいい?
出張する社員・役員ごとに日当額を変えることには、何の問題もありません。出張旅費規程で役職ごとの支給額を定めることで、社員・役員ごとの日当額を変えられます。
ただし、同じ条件の出張・同じ役職の社員には同じ額の日当を支給しなければなりません。「Aさんはがんばっているから少し高めに、Bさんはミスが多いから日当を減らす」のようなことをしてはいけません。
派遣社員が出張する場合はどうしたらいい?
派遣社員の給与や日当は派遣元の会社が支給します。日当を派遣料金に加えるかどうかは、派遣元の会社との契約により決まります。
出張に日当を出す義務はないが、従業員のモチベーションアップや節税などのメリットは多い
- 出張に日当を出すかどうかは任意
- 日当を出せばコストが増えるが、メリットも多い
- 日当は適正な範囲内で支給する
出張に日当を出すかどうかはそれぞれの会社にゆだねられています。「適正な範囲内であれば非課税対象」というルールはありますが、金額の明確な決まりもありません。出張時にかかる雑費や従業員の負担を踏まえ、適正な条件・金額を設定しましょう。
日当を出せばコストは増えますが、従業員の不満解消や節税などのメリットも多いです。日当の金額は、これらのメリットを享受できるかどうかも踏まえてよく検討してみてはいかがでしょうか。
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