HOMEビジネス 中国ユニコーン企業がAIとEコマースに強いワケとは 日中の“オープンイノベーション”を推進するコンサルティング企業「匠新」代表・田中年一さんインタビュー(2)

中国ユニコーン企業がAIとEコマースに強いワケとは 日中の“オープンイノベーション”を推進するコンサルティング企業「匠新」代表・田中年一さんインタビュー(2)

菓子翔太

2024/01/24(最終更新日:2024/09/22)


このエントリーをはてなブックマークに追加

中国・上海及び深センと東京に拠点を置き、日本と中国の企業に対してコンサルティングサービスなどを展開する会社「匠新(ジャンシン)」の代表を務める田中年一さん。

社外の知識やアイデア、技術などを取り入れ、新たな製品やサービス、ビジネスモデルなどを創造する“オープンイノベーション”を図り、企業や自治体、研究機関などが連携するエコシステムの構築を推進しています。

U-NOTE編集部は、匠新が日中のオープンイノベーションを進めるべくどのようなことをしているのか、中国のスタートアップ企業やユニコーン企業の現状などについて、田中さんにお話を聞きました(全4回中2回目)。

第1回「中国のベンチャー企業にとって日本市場が魅力的なワケとは 日中の“オープンイノベーショ ン”を推進するコンサルティング企業「匠新」代表・田中年一さんインタビュー(1)

中国の新興企業の勢いは?

―――中国のスタートアップ企業やユニコーン企業(評価額10億ドル以上・創業10年以内で、株式市場に上場していないスタートアップ企業のこと)は世界的に見て多いのでしょうか。

スタートアップ企業については統計がないのですが、2022年末で、世界でユニコーン企業だとされる1,100社のうち、半数はアメリカの企業で、2番目に中国が続き、172社が認められている状況です。

中国のユニコーン企業が強いと評価される領域は、Eコマース(EC)・DtoC(Direct-to-Consumerの略。メーカーが卸業者などを通さず、自社のECサイトでユーザーに直接販売するビジネスモデル)と、AI、ハードウェア、EV(電気自動車)・自動運転です。

特にECとライブコマース(ライブ配信を利用した商品販売)が進んでいます。最近では、デジタルヒューマン(デジタル世界で、姿や声など人間のようにつくられたキャラクターのこと)のライブコマースで実用化されてきています。

日本企業・デジタルヒューマン株式会社によるデジタルヒューマンのイメージ(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000060123.htmlから引用)

先ほど言ったとおり、日本は労働人口の問題もあって、人間の作業を代替するサービスに大きなニーズがありますが、日本企業では、まだこういった領域での実例が少なく、中国企業の日本展開が進んでいるところです。

AIについては、アメリカと中国が強く、この2国が(世界を)けん引している状況です。あと、スマートフォンに代表されるような電子機器や家電、EVといったモノづくりの領域は中国の強みです。もともと“世界の工場”としてサプライチェーンとノウハウの蓄積があります。

―――中国企業の海外展開はどれだけ進んでいますか?

徐々に増えてきており、今後もさらに増えていくだろうと思います。展開先となるのは、アメリカやヨーロッパ、加えて日本、韓国、東南アジアです。

最近その動きが活発になっている領域の1つはEVです。まあ、EVはベンチャーだけじゃなくて成熟企業でも進めていますが、輸出台数がどんどん増えてきているところです。

もともと自動車の輸出台数においては日本がずっとトップでしたが、2023年には中国がEVをメインに日本を抜いて1番となりました。

中国・広東省深圳に本社を置く企業・BYDの最新技術を結集したというEV「BYDSEAL」(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000056.000043078.htmlから引用)

EコマースとAIが強いワケは?

―――中国でEコマースとAIが強い理由は何でしょうか。

まず、とくに日本だと、実店舗での販売や消費者体験が非常に優れています。一方、中国では、商業施設におけるユーザー体験があまり良くなく、オフライン(ここでは、実際に見聞きすることの意)でのサービスは日本ほど発展していません。

中国は国土がものすごく広いので、物を買いに行くにあたっては、お店が近いところに限られてしまうし、似たような商業施設が多いんです。

(そのため、)Eコマースの需要が大きくあって、アリババをはじめとして、ベンチャー企業がサービスを提供することでどんどん発展していきました。

あと、(商品について)ソーシャルネットワーク上での情報提供やユーザー間でのやり取りが盛んだったことも、飛躍的に伸びた背景にあります。

Eコマースでの取引では、非常に多くのデータがオンライン上に蓄積されます。中国の国民性として、より便利になるんだったら個人情報をプラットフォームに提供しても良いという意識があります。これは、日本とはかなり異なるところですね。

人口も非常に多いので、(Eコマースの利用で)ものすごい量のデータが蓄積されます。そのデータをサービスに活用していったことでAIが発展していきました。

加えて国としても、テクノロジーにおいてグローバル(世界)で中国が勝てる領域はAIだと考え、人材や産業育成をしています。

補助金があったり、海外でテクノロジーを学び、博士などの学位を取得してから帰国する留学生にさまざまな優遇措置が設けられているなど、国として「補強をしている」ことも、AI領域の強さの理由かと思います。

1月24日(木)掲載の第3回「日本にスタートアップ企業が少ないワケ、これからの起業家に必要なマインドは? 日中の“オープンイノベーション”を推進するコンサルティング企業「匠新」代表・田中年一さんインタビュー(3)」へ続く

【関連記事】


hatenaはてブ


この記事の関連キーワード