HOMEインタビュー 中国のベンチャー企業にとって日本市場が魅力的なワケとは 日中の“オープンイノベーション”を推進するコンサルティング企業「匠新」代表・田中年一さんインタビュー(1)

中国のベンチャー企業にとって日本市場が魅力的なワケとは 日中の“オープンイノベーション”を推進するコンサルティング企業「匠新」代表・田中年一さんインタビュー(1)

菓子翔太

2024/01/23(最終更新日:2024/01/23)


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中国・上海及び深センと東京に拠点を置き、日本と中国の企業に対してコンサルティングサービスなどを展開する会社「匠新(ジャンシン)」の代表を務める田中年一さん。

社外の知識やアイデア、技術などを取り入れ、新たな製品やサービス、ビジネスモデルなどを創造する“オープンイノベーション”を図り、企業や自治体、研究機関などが連携するエコシステムの構築を推進しています。

U-NOTE編集部は、匠新が日中のオープンイノベーションを進めるべくどのようなことをしているのか、中国のスタートアップ企業やユニコーン企業の現状などについて、田中さんにお話を聞きました(全4回中1回目)。

日中をつなぐ“匠新”とは

―――「匠新」を立ち上げた経緯を教えてください。

我々が事業を立ち上げた2015年は、日中間のオープンイノベーションや中国のスタートアップと日本の大企業との連携がほとんどない状況でした。

ただ、中国と日本では、それぞれ強み・弱みがあって補完し合うことができます。たとえば、とても厳密に品質管理をしている日本のマーケットでは、非常に安心感のあるブラ
ンドが育っています。

一方で、中国は品質管理よりも、「まず先にやってみよう」と失敗に寛容なので、新しいことをやるにあたっては、日本企業としても積極的に活用していけるんです。

どんどんデジタル(領域)で強くなっていく中国を参考にしたり、日本の独創性・クリエイティビティーを中国に持っていったり、そういった日中間のイノベーションにつながる交流がもっとあるべきなのに、なかなか起きていませんでした。

そういったイノベーションをもっと多く起こしていけば、日本と中国がWin-Winで発展していけると考えて「匠新」を立ち上げました。

―――事業内容を具体的に教えてください。

代表的な事業の1つは、日本の伝統的企業・大企業向けに中国のスタートアップ企業やユニコーン企業、学術機関、地方政府との連携を支援する業務です。これが弊社の事業ボリュームの8割ぐらいを占めています。

残る2割のうち、1割が日本のベンチャー企業向けの中国展開支援です。

日本のベンチャーが中国に出ていきたくても、独自に中国の巨大マーケットを開拓することは難しいので、現地の投資家や事業会社から投資や、経営資源の共有などが受けられるように支援をしています。

また、JETRO(日本貿易振興機構)、東京都や愛知県、横浜市などの地方自治体から我々が依頼を受けて、ベンチャー企業に対してメンタリングから中国の投資家へのご紹介、ピッチの指導なども行っています。

もう1割は、最近特に増えてきている中国のベンチャー企業向けの事業です。中国市場はスピードが早くて、AIやメタバースといった特定領域の事業が大きく広がりそうになると、競合が多く出てきて、すぐにレッドオーシャンになってしまうんです。

ただ、そんなレッドオーシャンのなかで生き残った会社は、技術的に非常に高いものを持っています。

その技術をもって日本市場で事業を展開したいという企業の日本市場進出を支援しています。

その後、本格的に日本市場へ進出・展開をしていきたいという中国企業に対しては、日本で我々と一緒にチームをつくり、日本の顧客開拓などをやっていきます。

(この事業は)中国ベンチャー企業のニーズの変化に応じて提供するようになりました。2023年にスタートして、2024年以降も力を入れていきたいと考えている事業です。

日本市場の魅力は?

―――中国のベンチャー・スタートアップ企業は、日本市場のどこに魅力を感じているのでしょうか。

我々が(中国のベンチャー・スタートアップ企業に対して)重点的に支援している領域は2つあります。

1つはデジタルの領域、特に日本の企業に向けてDXやITサービスを提供する会社です。

日本では、国も企業もデジタル化を非常に進めていきたいと考えていて、ITに対する投資がかなり大きい。中国はかなり進んでいるITのプロダクト<製品やサービスのこと>を持っており、日本はとても魅力的な市場です。

もう1つはサービスロボットの領域。たとえば、今ガストをはじめとするすかいらーくグループが運営している会社が採用しているネコ型の配膳ロボットは良く知られていると思います。

そのほかのレストランやホテルで提供されている配膳ロボットも全部中国製なんです。

中国大手ロボットメーカー「Pudu Robotics」のネコ型自動配膳ロボット「Bellabot」(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000062.000028572.htmlから引用)

日本では高齢化が進んでおり、労働人口が非常に少なくなっていて、これから自動化やロボット化を進めていかなくてはいけません。

中国国内でサービスロボットは、かなり使われるようになっており、それを日本に持っていっているんです。

日本でもサービスロボットを開発するベンチャー企業はあるんですが、どうしても高額になってしまう。

(一方で)中国のベンチャーは、中国の巨大市場と発達したサプライチェーンによりコスト競争力のあるプロダクトを持っています。

日本にとって、まさにニーズにはまり、かつコストに見合うので、多くの企業がかなり積極的に検討しているんです。ある中国ベンチャーの方は、「販売台数は中国国内が多いけれども、売上ならば、むしろ日本の方が大きい」と言っていました。

日本の方がより高い価格でも買ってくれるということもあって、日本は戦略的に非常に重要なマーケットだとも言っていました。

1月24日(水)掲載の第2回「中国ユニコーン企業がAIとEコマースに強いワケとは 日中の“オープンイノベーション”を推進するコンサルティング企業「匠新」代表・田中年一さんインタビュー(2)」に続く

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