株式会社商船三井は、モーリシャスにおける海洋温度差発電の事業化を検討しています。
事業化のために「海洋深層水複合利用モデルの実現可能性調査」を行っており、この調査の一環である「取水管設置概略検討」などが経済産業省の委託事業に採択されています。
海洋温度差発電の仕組みとメリット
海洋温度差発電は「Ocean Thermal Energy Conversion」から、「OTEC」とも呼ばれています。
海洋では、表層から深海にかけて海水温に温度差があります。海洋温度差発電はこの温度差をエネルギーとして活用。表層の温水で沸点が低い代替フロンなどを蒸発させタービンを回し、蒸気を深海の冷水で冷やして再利用します。
この方法は、気象環境に左右されずに発電がおこなえることから、発電量の予想が安定してできることが特徴です。
また、発電に使用した海洋深層水に水質変化は生じないといい、二次利用が可能であるため、持続可能な発電システムとして注目されています。日本では、海洋温度差発電の研究が以前から進められており、沖縄県久米島には実証設備があります。
ただ、海洋温度差発電には、多大なコストがかかるほか、深海から引き揚げて放出した海水を再びもとの深い場所に戻すことによる生態系への影響も懸念されており、十分な調査が必要とされています。
こういったコストについて、商船三井は既存技術・工法の改良や新技術の開発に向けて進めている段階であり、大規模化することによる効果も期待できるほか、技術開発と合わせて将来的なコスト削減の試算を行っているそうです。
また、生態系への影響に関する調査としては、沖縄県・久米島にある実証設備で取水管により20年以上海洋深層水が放流されているものの、「環境や生態系へのネガティブな影響は確認されておりません」とコメント。
一方で、大規模な海洋温度差発電では、現状よりも10倍以上の海洋深層水を放流することになるため、「周辺海域の生態系への影響や、大口径の深層水取水管設置による海洋環境への影響については、事前の総合的な調査~事業開始後のモニタリングを実施していく予定です」としています。
モーリシャスは再生可能エネルギーを国策として実施予定
モーリシャス共和国は、再生可能エネルギーの割合を2030年までに60%まで引き上げるロードマップを策定しています。海洋温度差発電導入にかかわる実証プロジェクトを国家予算計画に含めています。
海洋温度差発電を国策として「後押し」していることだけでなく、インド洋の熱帯地域に属しているため、海洋の温度差を活用しやすいという環境も整っているそうです。
また、株式会社商船三井は海洋温度差発電の実証実験を沖縄ですでに実施していることから、その知見やノウハウなどを生かし、モーリシャスやその他の国内外でも海洋温度差発電の事業化を目指しています。
<参照>
モーリシャスにおける海洋温度差発電の事業化に向け、新たなフェーズへ
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