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ナレッジベースとは?作り方と、構築時に使えるツール・ポイントを解説

U-NOTE編集部

2024/02/01(最終更新日:2024/02/01)


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業務に関するさまざまなナレッジを蓄積する「ナレッジベース」。業務の効率化や知識の標準化、顧客満足度の向上など、さまざまな面で便利に活用できるデータベースのことです。近年、ナレッジベースを導入している企業が増えています。

本記事ではそんな「ナレッジベース」について解説。構築時に使えるツールやナレッジツールの使い方など、基本的な内容をご紹介します。自社でナレッジベース導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

本記事の内容をざっくり説明
  • ナレッジベースはなぜ重視されているの?
  • ナレッジベースを作成することで得られるメリットとは?
  • ナレッジベースを構築する際に使えるツールをご紹介

 

ナレッジベースとは?

ナレッジベースとは、業務を通して得た知識・知見(ナレッジ・knowledge)を誰でもすぐに引き出せるように1箇所にまとめたデータベースのことです。

ナレッジベースには、自社の業務を行ううえで有益な知識やノウハウがまとめられているのが特徴。そのため、社内の人間にのみ共有・活用されます。

これまでのナレッジだけでなく、今後新たに手に入れた知見も蓄積・編集していくことで、企業にとって有益な知的資産になります。

 

ナレッジマネジメントとは

ナレッジマネジメントとは、従業員が業務を通して得た経験や知識、情報などを全社で蓄積・共有し、企業の競争力を高める経営手法のことです。ナレッジベースはこのナレッジマネジメントを行う場合に活用されるツールのひとつです。

 

ナレッジベースの活用例

初めてナレッジベースを作る際、何から作成すれば良いのか迷ってしまうもの。多くの企業が取り入れているナレッジベースの活用例を参考に、自社のナレッジベース構築を検討してみてください。

社内外・顧客向けのFAQ

FAQは多くの企業で活用されているナレッジベースのひとつです。社外や顧客からのよくある質問としてFAQの形でナレッジベースに蓄積しておけば、顧客は疑問や質問があった際にデータベースを検索するだけで回答を得られます。

FAQは社外・顧客向けだけでなく、社内向けとしても活用できます。業務を行ううえでよくある質問をナレッジベースとしてまとめておけば、従業員が迷った際にすぐ回答を得られ、業務の滞りを防げます。自社内の情報を共有・蓄積するため「社内wiki」とも呼ばれます。

自動音声応答

顧客からの問い合わせに一次的に対応する自動音声応答もナレッジベースの活用例のひとつです。主に、企業の問い合わせ窓口に設置されています。

自動音声応答は、過去の問い合わせから内容をジャンル分けしたナレッジベースを活用しているのが特徴。顧客のダイヤル操作によって手続きが進められ、最終的に顧客が求める回答を案内する仕組みです。

最近は電話ではなく、LINEやWebチャットを利用した応答システムで活用されているケースが増えています。

自動音声応答により、カスタマー対応の担当者に電話がつながる機会が減り、業務の効率化が期待できます。

マニュアルの蓄積

部署ごとに作られた業務マニュアルは企業にとって重要なナレッジです。新入社員や部署を異動する従業員がいる際に、マニュアルが一元化されたナレッジベースがあると資料探しの時間を減らせます。

全社員がナレッジベースにアクセスでき、必要なマニュアルを閲覧できる状態を作っておけば、部下を持つ上司や先輩社員の質問対応の時間も最小限にとどめることが可能です。

 

ナレッジベースが重視されている背景

ナレッジベースという概念自体は以前から存在していましたが、積極的に企業が導入するようになったのは最近のことです。なぜナレッジベースが重視されるようになったのでしょうか。背景にある社会の変化をご紹介します。

働き方の多様化・人材の流動

現代は多様な働き方が一般的になっている時代です。日本の慣行である終身雇用制度は少しずつ常識ではなくなり、多くの方が転職したり起業したりと自身に合った働き方を取り入れています。

人材が流動しやすい現代では知見が伝達されにくく、情報の断絶が起こり始めました。業務を効率的に行い、かつ業績向上につなげるには社内に知見を蓄積し、共有することが非常に大切です。そこで重視されるようになったのがナレッジベースの作成と運用です。

短期間で人材が流動することになっても、ナレッジベースが構築されており、ただ運用されていれば、これまでの知見の蓄積を新入社員や中途採用の社員に抜け漏れなく伝えられます。

参考:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

IT技術の発達

IT技術が発達し、さまざまな情報がデジタルデータで共有・管理されるようになっているのもナレッジベースが重視されている理由のひとつです。膨大な情報をただ格納しているだけでは業務につなげることはできません。ナレッジベースとして情報同士を紐付け、誰もが共有・閲覧できる状態にしておくことで、情報を業務に有効活用できます

IT技術の成熟により、ナレッジベースへのアクセスが容易になってきているのも理由のひとつとして挙げられます。パソコンの他、スマホやタブレットなどツールに対応した機器であればナレッジベースで情報を検索できるため、使い勝手の面でもナレッジベースが重視されています。

人材不足による業務効率化が求められる

ナレッジベースが重視されている理由として、人材不足による業務効率化が求められていることも挙げられます。

企業にとって従業員の生産性の向上は大きな課題です。日本には2019年より時間外労働の上限規制が導入されています。法律により従業員一人ひとりが可能な残業時間の上限が設けられており、それを超えて残業させた企業に罰則が与えられます。つまり、さらなる生産性向上を目指すには、業務の効率化が必須となるのです。

ナレッジベースは、個人が持つ暗黙知を形式知に変え、全社で共有できるのが大きなメリットです。それを有効活用することによって、業務効率化が期待できます。

 

ナレッジベースを作成するメリット

ナレッジベースは構築・運用には時間と手間がかかりますが、その分大きなメリットを得られます。企業がナレッジベースを作成する具体的なメリットをご紹介します。

ナレッジベースを作成するメリット
  • メリット1.効率的に最新の知見を共有できる
  • メリット2.部署を問わずナレッジの蓄積が可能になる
  • メリット3.知識・業務の共通化・標準化ができる
  • メリット4.顧客満足度の向上につながる

メリット1.効率的に最新の知見を共有できる

ナレッジベースを作成する1つ目のメリットは、効率的に最新の知見を共有できることです。

ナレッジベースはデータベース上に情報を登録したり、資料を格納したりするだけで良いので、スピーディな情報伝達が可能です。メールやチャットなどの手段もありますが、文章の作成や誰に送るかを考えるのに時間がかかり、つい後回しになってしまうことも考えられます。

また、メールやチャットなどでは、情報がストックされず流れてしまうため、何度も同じ内容をやりとりしたり、過去の情報を見つけにくくなる可能性もあります。さらに、最新の情報が更新されないため、履歴を検索しても出てくるのは古い情報だということも。

その点、ナレッジベースは情報を登録するだけと作業が簡単なので、最新の知見も漏れなく効率的に共有できます。

メリット2.部署を問わずナレッジの蓄積が可能になる

ナレッジベースを作成する2つ目のメリットは、部署を問わずナレッジの蓄積が可能になることです。

自分が所属する部署内でのみ共有されていた情報が、実は他の部署でも有効活用できたというケースは少なくありません。専門的な知見であればあるほど、特定の部署内で共有が止まってしまいます。

ナレッジベースを活用すれば、そうした他部署のナレッジも蓄積できます。他部署の知見に触れることで業務改善につながったり、新しいアイデアが生まれたりする可能性も考えられます。

メリット3.知識・業務の共通化・標準化ができる

ナレッジベースを作成する3つ目のメリットは、知識・業務の共有化・標準化ができることです。

共有化とは、従業員一人ひとりが持つ多種多様な情報を全社で共有し、業務などに活用することを指します。個人宛の連絡で取引先から共有してもらった資料や、自分で作ったプレゼン資料など、本来であれば個人で止まってしまう情報をナレッジベースでは共有化できます。

知識・業務の標準化が行えるのもメリットです。業務に関する知識量はどうしても個人で差が出てしまいます。ナレッジベースはそうした個人の情報量のベースを合わせたい場合にも有効活用可能です。

メリット4.顧客満足度の向上につながる

ナレッジベースを作成する4つ目のメリットは、顧客満足度の向上につながることです。

ナレッジベースを活用したFAQや自動音声応答は、ナレッジが蓄積されればされるほど対応の精度が向上します。人的リソースを割かずに顧客が求めている情報を提供できるため、顧客満足向上が期待できます。

電話による顧客対応も同様です。過去の対応事例を基に必要な情報を素早く提示できるようになるので、対応の品質が担当者の経験値に左右されにくくなります。一定の品質を維持できるのがメリットです。

 

ナレッジベースを構築するときに使えるツール

ナレッジベースを一から作るには膨大な時間がかかります。多くの便利ツールが展開されているので、データベースの形式や必要な機能を洗い出してから、適切なツールを導入しましょう。大きく5種類に分けたツールについて解説します。

ナレッジベースを構築するときに使えるツール
  • データベースツール
  • ヘルプデスク
  • グループウェア(社内SNS)
  • データマイニングツール
  • 企業内検索システム(エンタープライズサーチ)

データベースツール

データベースツール」はその名の通り、データベースの作成・管理ができるツールです。さまざまな企業がツールを展開しており、なかには無料でお試しできるものもあります。

データツールは比較的簡単に使えるのが一番の特徴です。社内のさまざまな資料を一元管理・検索・抽出が容易に行えます。

ヘルプデスク

ヘルプデスク」は、社内や顧客からの問い合わせ内容を蓄積してデータベース化し、FAQ形式でまとめる際に便利なツールです。社内外のFAQを一元管理できるので、顧客対応の効率化が期待できるほか、品質向上も期待できます。

ヘルプデスクのなかには、顧客からの問い合わせやクレームを自動でデータ化し、蓄積する機能を備えたツールもあります。その場合は、自社チャネルとの連携が可能かどうかをチェックしましょう。

グループウェア(社内SNS)

グループウェア(社内SNS)」とは、ファイルの共有やスケジュールの管理をチャット・メッセージ形式で行えるツールです。ビジネスメールのような丁寧な文章を作成する必要がないので、リアルタイムかつスピーディーに情報の共有ができます。

ほかのツールと違うのは、社内で相互のコミュニケーションが取れることです。ナレッジを蓄積するだけでなく、社内SNSとして活用できるのがメリットです。

データマイニングツール

データマイニングツール」は、社内で蓄積している大量のデータ(ビッグデータ)を分析し、経営戦略やマーケティング戦略、営業支援などに役立てられるツールです。統計学やAIを用いてツールが分析を行うのが特徴です。

データマイニングツールは、ビッグデータをグループごとに分類したり、関連性を抽出したり、特定の事象の発生予測・要因を立てたりできる機能が搭載されています。手作業では膨大な時間がかかる作業を、短時間で効率的に行えて便利です。

企業内検索システム(エンタープライズサーチ)

「企業内検索システム(エンタープライズサーチ)」は、企業のシステム内に散らばったデータを横断検索し、欲しい資料を瞬時に探し出せる便利なツールです。GoogleやYahoo!などの検索エンジンを使うような感覚で使えるのが特徴です。

エンタープライズサーチは、情報収集や資料検索の時間を短縮できるのがメリット。社内で資料の場所を知る方がいない場合でも、簡単に目当てのデータを見つけられます。なかには、データの最終更新者が表示されるツールもあり、最新の情報かどうかを確認できるのも便利です。

 

ナレッジベースを作るときの5つのポイント

全社で活用されるナレッジベースを作るには5つのポイントがあります。ただナレッジを蓄積するのではなく、これらの点を意識して作成してみてください。

ナレッジベースを作るときの5つのポイント
  • ポイント1.利用者が利用・管理・更新しやすいUIのツールを選ぶ
  • ポイント2.情報が検索しやすいツールを選ぶ
  • ポイント3.ナレッジを蓄積する際のルールを決める
  • ポイント4.タイトルや構成はシンプルにわかりやすく作成する
  • ポイント5.一度作成したら終わりではなく、定期的に管理し育てる意識を持つ

ポイント1.利用者が利用・管理・更新しやすいUIのツールを選ぶ

ナレッジベースを作るときの1つ目のポイントは、利用者が利用・管理・更新しやすいUIのツールを選ぶことです。

ナレッジベース導入後の活用度を左右する1つの要素が利用のしやすさです。ここで言う利用とは、情報へのアクセスのしやすさを指します。データベースそのものの使い方が複雑だと、せっかく導入しても利用者は増えません。

もう1つの要素が管理・更新のしやすさです。ナレッジベースを運用する担当者目線で考えましょう。管理や更新に手間がかかる場合、ナレッジベースに最新の情報が蓄積されにくいため、利用者にとって有益なツールではなくなってしまいます。

機能が多くても使い方が複雑なものだと使われなくなってしまうため、最低限の機能を満たしていて使いやすいUIのものを選ぶことがおすすめです。

ポイント2.情報が検索しやすいツールを選ぶ

ナレッジベースを作るときの2つ目のポイントは、情報が検索しやすいツールを選ぶことです。

ナレッジベースを使う際にもっとも重視したいのが検索性の高さです。キーワード検索だけでなく、タグ検索やカテゴリ検索など、使用するツールによって搭載されている検索機能は異なります。ナレッジに多角的にアクセスできるツールを選ぶのがおすすめです。

ポイント3.ナレッジを蓄積する際のルールを決める

ナレッジベースを作るときの3つ目のポイントは、ナレッジを蓄積する際のルールを決めることです。

ナレッジベースは多種多様な情報が集められる場所だからこそ、ルールを設定しなければ使い勝手が悪くなってしまいます。運用を始める前には必ずルールを決め、社内に周知させましょう

例えば、ナレッジに蓄積するべき情報かどうかを一度担当者が確認、検討するフローを設けます。実際に登録できる権限にも制限をかけておくと安心です。

ポイント4.タイトルや構成はシンプルにわかりやすく作成する

ナレッジベースを作るときの4つ目のポイントは、タイトルや構成はシンプルにわかりやすく作成することです。

いくらさまざまなナレッジが蓄積されていたとしても、ファイル名がわかりにくかったり、ファイルに辿り着くまでの構造が複雑だったりすると、使いにくくなってしまいます。部署を横断して共有される可能性があることを考慮して、シンプルにわかりやすいタイトルを付けましょう。

構造は事業部単位・部署単位・プロジェクト単位などで区切ると、求めている情報に辿りつきやすくなります。

ポイント5.一度作成したら終わりではなく、定期的に管理し育てる意識を持つ

ナレッジベースを作るときの5つ目のポイントは、一度作成したら終わりではなく、定期的に管理し育てる意識を持つことです。

業務に必要な情報は日々変化していくものです。特に近年は変化のスピードが早く、半年前は有効とされていたことも、半年後には有効な手段として利用できなくなることもしばしば発生します。

ナレッジベースは蓄積されているナレッジを定期的に管理することで、活用し続けられるデータベースとして育っていきます。運用ルール策定時には、ナレッジ見直しのタイミングも同時に決めてしまいましょう。

 

自社・自分用のナレッジベースを作成しよう

本記事のまとめ
  • 業務効率化を目指すならナレッジベースの導入を検討しよう
  • ナレッジベースを作る際に使えるツールには複数の種類がある
  • 活用されるナレッジベースを作るには、検索性や管理・更新のしやすいツールがおすすめ

企業は成長するにつれてナレッジの量が増えていきます。従業員一人ひとりが成果を上げ続け、業績向上に貢献するためにはナレッジベースの活用が必須。もし全社導入が難しい場合は、自分用のナレッジベースを作るのもひとつの手です。使いやすさを一番に考慮して自社にぴったりのツールを選び、ナレッジベースを作成してみてください。

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