次世代水産養殖システムの実現を目指すリージョナルフィッシュ株式会社は2023年12月25日(月)、“ゲノム編集技術”と呼ばれる新技術を利用して開発した「高成長ヒラメ」について、厚生労働省と農林水産省への届け出を完了しました。
すでに販売されている可食部増量マダイ、高成長トラフグに続き3例目のゲノム編集動物食品です。
ゲノム編集技術とは
遺伝子組み換えは、生物に新たな性質を加えることですが、ゲノム編集技術は生物が持つ遺伝子のなかにある特定の部分を切断することで、性質を変化させる品種改良技術です。2020年には、このゲノム編集手法を開発した女性科学者2人がノーベル化学賞を受賞しています。
リージョナルフィッシュ株式会社が手掛ける水産物以外では、農産物のトマトやトウモロコシでも行われたものがあります。
ゲノム編集技術応用食品及び添加物の食品衛生上の取扱要領に基づき届出された食品及び添加物一覧|厚生労働省
高成長ヒラメが解決する社会問題
日本の養殖業は、飼料の原料に魚粉が使われていますが、9割以上を輸入で対応しています。ただ、円安や地政学リスクに脆弱であり、飼料価格の高騰が社会問題に。
そこで、今回の高成長ヒラメでは、食欲抑制ホルモンといわれているレプチンの受容体遺伝子の働きを機能欠損させ、食欲が増進し、早く成長するように品種改良しました。高成長となることで飼料の利用効率が改善されるとのことです。
流通する水産物でのゲノム編集技術は、同社のみが実現しているという技術とのこと。水産物のゲノム編集を推進することで、効率的かつサステナブルな養殖業の実現を目指しているそうです。
高成長ヒラメやゲノム編集された食品の販売について
ゲノム編集技術を用いた食品を販売するには、厚生労働省と農林水産省へ「ゲノム編集飼料及び飼料添加物の飼料安全上の取扱要領」にもとづいた届け出を提出し、受理される必要があります。
同社によると、両省への届け出手続で高成長ヒラメは、「遺伝子組換えではなく自然界でも起こりうる変化であること、食品としての安全性が従来の食品と同程度であること、生物多様性に悪影響を及ぼすものではないことが確認」されているとしています。
高成長ヒラメは「22世紀ひらめ」と名付けられ、リージョナルフィッシュ株式会社のECサイトなどで販売予定です。
販売にあたり、ゲノム編集技術であるかどうかは表示の義務がありませんが、同技術を懸念する声もあるため、「理解していただいたうえで選んでいただきたい」との考えから、提供時にはゲノム編集技術であることの表示を行っていくそうです。
<参照>
ゲノム編集技術を利用して開発した「高成長ヒラメ」、厚生労働省及び農林水産省への届出完了
【関連記事】
海洋プラスチック汚染軽減に貢献! サステナブルな繊維素材「木糸」が大阪万博のユニフォームに採用
2025年大阪・関西万博のスタッフ用ユニフォームに、間伐材をつかって環境に配慮した繊維素材「木糸」が採用されることとなりました。 森林資源を使った課題解決や事業の創出を行っているという共同...
途上国の健康問題・環境・障害者雇用・政治 世界で続く課題の現状とは【2023年インタビュー記事まとめ(社会問題編)】
差別、格差、地球温暖化――。世界に今も多くある課題。その課題に対し、ビジネスで解決しようと挑む人たちがいます。 今回は、そうした先輩たちに課題の現状を聞いたインタビュー5本を紹介します。 ...
徳島県の地域課題解決を目指して! 自治体の「生の声」を届け、新たなビジネス創出につなげるイベントを開催
徳島県は、自治体と企業のマッチングイベントを開催します。 地方が直面する課題を解決したいという企業や、スキル・事業を活かして新たな地方ビジネスを展開したいという企業に向けたものとなっていま...
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう