HOMEビジネス “ゲノム編集技術”が養殖業をサステナブルに? 遺伝子操作で魚を高成長させる最新技術とは 3例目のヒラメが国に届け出完了

“ゲノム編集技術”が養殖業をサステナブルに? 遺伝子操作で魚を高成長させる最新技術とは 3例目のヒラメが国に届け出完了

青木一真

2024/01/10(最終更新日:2024/01/10)


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次世代水産養殖システムの実現を目指すリージョナルフィッシュ株式会社は2023年12月25日(月)、“ゲノム編集技術”​と呼ばれる新技術を利用して開発した「高成長ヒラメ」について、厚生労働省と農林水産省への届け出を完了しました。

すでに販売されている可食部増量マダイ、高成長トラフグに続き3例目のゲノム編集動物食品です。

ゲノム編集技術とは

遺伝子組み換えは、生物に新たな性質を加えることですが、ゲノム編集技術は生物が持つ遺伝子のなかにある特定の部分を切断することで、性質を変化させる品種改良技術です。2020年には、このゲノム編集​​手法を開発した女性科学者2人がノーベル化学賞を受賞しています。

リージョナルフィッシュ株式会社が手掛ける水産物以外では、農産物のトマトやトウモロコシでも行われたものがあります。

ゲノム編集技術応用食品及び添加物の食品衛生上の取扱要領に基づき届出された食品及び添加物一覧|厚生労働省

高成長ヒラメが解決する社会問題

日本の養殖業は、飼料の原料に魚粉が使われていますが、9割以上を輸入で対応しています。ただ、円安や地政学リスクに脆弱であり、飼料価格の高騰が社会問題に。

そこで、今回の高成長ヒラメでは、食欲抑制ホルモンといわれているレプチンの受容体遺伝子の働きを機能欠損させ、食欲が増進し、早く成長するように品種改良しました。高成長となることで飼料の利用効率が改善されるとのことです。

流通する水産物でのゲノム編集技術は、同社のみが実現しているという技術とのこと。水産物のゲノム編集を推進することで、効率的かつサステナブルな養殖業の実現を目指しているそうです。

高成長ヒラメやゲノム編集された食品の販売について

ゲノム編集技術を用いた食品を販売するには、厚生労働省と農林水産省へ「ゲノム編集飼料及び飼料添加物の飼料安全上の取扱要領」にもとづいた届け出を提出し、受理される必要があります。

同社によると、両省への届け出手続で高成長ヒラメは、「遺伝子組換えではなく自然界でも起こりうる変化であること、食品としての安全性が従来の食品と同程度であること、生物多様性に悪影響を及ぼすものではないことが確認」されているとしています。

高成長ヒラメは「22世紀ひらめ」と名付けられ、リージョナルフィッシュ株式会社のECサイトなどで販売予定です。

販売にあたり、ゲノム編集技術であるかどうかは表示の義務がありませんが、同技術を懸念する声もあるため、「理解していただいたうえで選んでいただきたい」との考えから、提供時にはゲノム編集技術であることの表示を行っていくそうです。

<参照>

ゲノム編集技術を利用して開発した「高成長ヒラメ」、厚生労働省及び農林水産省への届出完了

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