トラッキングとはユーザーのWeb行動を追跡することです。トラッキングすることで、Webサイトへの流入経路や閲覧されているページ、離脱が多い箇所などがわかります。
最近Webサイトやアプリを利用している際に、トラッキングの許可を求めるポップアップが出てきて不思議に思っている人もいらっしゃるでしょう。
本記事ではトラッキングについて、スマホやアプリで許可するとどうなるのか、最近ではなぜトラッキングの許可を求めるポップアップが出るようになったのかを解説。ユーザーと企業それぞれにとってのメリット・デメリット、トラッキングの代表的な技術「Cookie」規制の動きについても紹介します。
- トラッキングとは何か、許可するとどうなるのか
- トラッキングのメリット・デメリット
- Cookieレス時代のトラッキング技術とマーケティング施策
トラッキングとは
トラッキングとは、ユーザーのWeb行動を追跡することです。ユーザーがどのような経路でWebサイトに訪問したのか、どのページを閲覧し、どのようなアクション(リンククリックや離脱)を起こしたのかなどがわかります。
Webサイトへの流入経路はもちろん、クリックや離脱が多い箇所、滞在時間の長いページなどさまざまなことがわかります。これらのデータを集計・分析することで、WebサイトやWebサービスを効果的に改善できるようになります。
トラッキングについてポップアップが出るようになった背景
スマートフォンでWebサイトを閲覧したりアプリを使ったりしていると、「〇〇が他社のAPPやWebサイトを横断してあなたのアクティビティを追跡することを許可しますか?」というポップアップが出ることがあります。
これはトラッキングの許可を求めるためのポップアップです。許可しない選択をすると、ユーザーはトラッキングされずにWebサイトやアプリを利用できます。
トラッキングについてポップアップが出るようになった背景には、個人情報やプライバシーの保護強化、Cookie規制の動きなどがあります(Cookieについて詳しくは後述します)。
トラッキングを許可することでユーザーは自分の好みや嗜好に合ったコンテンツを見つけやすくなりますが、「Web行動を監視されているようで嫌だ」「個人情報が漏れてしまわないか不安」という人もいるでしょう。
このようなユーザーへの配慮から、トラッキングについてのポップアップが出るようになりました。トラッキングを一律に禁止するのではなく、ユーザーに許可するかしないかの判断をゆだねることで、「自分に合うコンテンツを表示してほしい」「監視されているようで嫌だ」の両方のニーズに対応できます。
スマホやiPhoneで「トラッキングを許可」するとどうなる?
スマートフォンの「〇〇が他社のAPPやWebサイトを横断してあなたのアクティビティを追跡することを許可しますか?」のポップアップはトラッキングの許可を求めるためのものです。「許可」を選ぶとトラッキングを許可したことになり、「Appにトラッキングしないように要求」を選ぶとトラッキングされなくなります。
トラッキングを許可した場合
トラッキングを許可すると自らのWeb上での行動履歴がアプリに収集されます。これにより自分の好みに合う広告が表示されやすくなります。
基本的には許可した方が便利ですが、同じ広告・似たような広告ばかりが表示されるようになることもあり、興味・関心の幅が広い人や、さまざまな広告を見たいという人には不便かもしれません。
また、必要以上の情報を集めようとするアプリもあります。許可する前に、そのアプリでトラッキングを許可するとどんな情報を収集されるのか確認しておくと安心です。
トラッキングの許可をしなかった場合
トラッキングの許可をしなかった場合、自らの情報が収集されることはありません。
ただ、トラッキングを許可しなかったからといって、Webサイトやアプリなどの広告がなくなるわけではありません。興味のない広告ばかりが表示され、「不便」「うっとうしい」と感じる人もいるでしょう。
なお、トラッキング許可は次の手順で後から変更することもできます。
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「設定」アプリを開く
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「プライバシー」を開く
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「トラッキング」を開く
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アプリごとにトラッキングの許可・非許可を選択
※デバイスやバージョンにより名称が異なることもあります
この画面に表示されるのは「トラッキングの許可を求めたことがあるApp」です。「Appからのトラッキング要求を許可」をオフにすると、トラッキング許可の要求そのものが出なくなります。
【企業側】トラッキングのメリット
トラッキングを行うことでは、どのようなメリットがあるのでしょうか。企業側のメリットと、ユーザー側のメリットについて紹介します。
まずは企業側のメリットについてです。企業はトラッキングを活用することで、Webサイトでのユーザー行動を分析できるようになります。収集・分析したデータを活かしてWebサイトや広告運用を改善し、マーケティングを強化できるでしょう。
Webサイトの改善
トラッキングにより、ユーザーがどのような経路でWebサイトに訪問したのか、ページごとの滞在時間や回遊先などがわかります。
よく見られているページ、クリックされやすいリンクやボタンなどがわかれば、回遊率やCV率の向上を目指しやすくなるでしょう。
流入が少ないページや離脱率が高いページなどもわかります。反応が良いページを分析して反応が悪いページを改善するのはもちろん、離脱率が高いページを非公開にしたりそのページへの内部リンクを入れないようにしたりして、回遊率を高めることもできるでしょう。
広告運用の改善
トラッキングによりWebページへの流入経路や離脱が多い箇所を見つけられます。これらのデータは自社サイトの改善はもちろん、広告運用の改善において特に重要です。
「流入数が多い検索ワードや出稿先」「流入数は多いがCV率が低い検索ワード・出稿先」などがわかれば、広告の費用対効果を高められるでしょう。
ほかにも離脱が多い箇所を見つけて広告ページを改修したり、年齢・性別ごとのCV率を把握したり、トラッキングにより効果的に広告を改善していけます。
【ユーザー側】トラッキングのメリット
トラッキングはWebサイトやアプリを利用するユーザーにとってもメリットがあります。トラッキングを許可することでログイン情報の入力が不要になったり興味に合う広告が表示されやすくなったり、より便利にスマートフォンやPCを使えるようになるでしょう。
ログイン情報の入力・管理が簡単になる
トラッキングにはWebサイトやアプリごとのログイン情報(ID・パスワード)が記録できるメリットがあります。自動ログインやログイン情報の自動入力が可能になり、毎回IDやパスワードを入力する手間から解放されるでしょう。
複数のID・パスワードを使い分けている場合、管理も簡単になります。「どのID・パスワードがどのWebサイト・アプリのものだったかわからない」「ログイン情報がわからず問い合わせをしたり、登録したこと自体を忘れて再登録したりすることが多い」という人にとって、このメリットは特に大きいでしょう。
興味のある広告が表示されやすくなる
トラッキングを許可すると、興味のある広告が表示されやすくなります。自分に合う商品やサービスを見つけやすくなるのはもちろん、興味のない広告ばかりが表示されてストレスを感じることも少なくなるでしょう。
トラッキングのデメリット
次に、トラッキングのデメリットを企業側とユーザー側に分けて紹介します。
企業:「広告がしつこい」と思われるリスクがある
トラッキングを活用した広告に「リターゲティング広告」があります。一度自社サイトを訪問したユーザーに対して自社の商品やサービスの広告を表示する広告です。
Webサイトに訪問した人はそのWebサイトに掲載されている商品やサービスに興味があることが多く、「コンバージョン確度の高い見込み客」といえます。そんなユーザーに狙いを定めて広告を表示するメリットは大きいでしょう。
しかし、同じ広告が何度も表示されることで、ユーザーにしつこいと思われるかもしれません。「同じ広告が何度も表示されてうっとうしい」と思われたり、購入・申し込み済みのユーザーに広告を表示して無駄な費用がかかったりすることもあります。
ユーザー:情報漏えいのリスクがある
トラッキングには、トラッキングデータからセッションIDという識別情報を抜き取られ、第三者が自分になりすましてWebサイトやアプリにログインする「セッションハイジャック」が行われるリスクがあります。
これにより住所や氏名などの個人情報を特定されたり、クレジットカード情報が流出し不正利用されたり、さまざまな被害が考えられます。
これはトラッキングを非許可にすることで対策できますが、トラッキングには便利な面も多いです。セキュリティソフトを導入し、トラッキングを許可したままセキュリティ対策するのも一案です。
トラッキングの計測方法
トラッキングでユーザーのWeb行動を計測する方法は「ダイレクト計測」と「リダイレクト計測」の大きくわけて2つあります。それぞれの詳細を紹介します。
ダイレクト計測
ダイレクト計測はWebページに計測用のタグを埋め込む方法です。トラッキング用のサーバーが不要なため費用を抑えやすく、サーバーの不具合による影響も受けません。
ただ、ページにそれぞれタグを埋め込まなければならないため手間がかかります。次に紹介するリダイレクト計測に比べてアクションから計測までの間にラグが生じること、精度が低いことなどのデメリットもあります。
リダイレクト計測
リダイレクト計測はトラッキング用のサーバーを経由してWebページにアクセスさせる方法です。ユーザーはリダイレクト用のURLをクリックし、トラッキングサーバーを経由して広告や自社サイトに流入します。
ダイレクト計測に比べて計測の精度が高く、タグ埋め込みを必要としないため手間がかかりません。タグを埋め込めない場所でも計測できます。
ただし、トラッキング用のサーバーが別途必要になるため費用がかさみやすいです。トラッキングサーバーに不具合が起きたときに計測できなくなったり、リダイレクト先まで遷移できなくなったりするリスクもあります。
トラッキングに使われる「Cookie」とは
トラッキングに使われる代表的な技術として「Cookie」が挙げられます。Cookieとはユーザーの閲覧情報が一時記録されたファイルのことで、Webサイトに訪問した日時や回数などが記録されています。
一度ログインしたWebサイトやアプリに自動ログインしたり、カゴに商品を入れたままショッピングサイトを閉じても、再アクセス時にカゴに商品が入ったままになっていたりするのはCookieのおかげです。
Cookieには「ファーストパーティCookie」と「サードパーティCookie」の2種類があります。それぞれの詳細を紹介します。
ファーストパーティCookie
ファーストパーティCookieは訪問先のWebサイトにより発行されるCookieです。そのWebサイトのログイン情報や閲覧履歴などが保存されています。
先述の「一度ログインしたWebサイトやアプリに自動ログインできる」「ショッピングサイトを閉じてもカゴに商品が入ったままになっている」などは、ファーストパーティCookieによるものです。
ただ、ファーストパーティCookieはWebサイトがそれぞれ発行するため、発行元のサイトでしか機能しません。サイト内のユーザー行動をトラッキングすることはできますが、サイトを越えたトラッキングはできず、同じユーザーでも利用するデバイスやブラウザが変わると別ユーザーとして認識されてしまいます。
サードパーティCookie
サードパーティCookieは、訪問しているWebサイトとは異なる第三者から発行されるCookieです。主に広告代理店などが発行するCookieで、たとえばサイト内に設置された広告の配信サーバーから発行されます。
サードパーティCookieはWebサイトを横断してトラッキングできます。あるサイトからあるサイトへの流入ユーザーを調べたり、複数サイトでの閲覧履歴からユーザーの興味・関心を分析し、そのユーザーに合う広告を表示したりできます。
サードパーティCookieは規制されつつある
Webサイトを横断してトラッキングできるサードパーティCookieは、Webサイトの運営や広告運用においてとても便利です。
しかし、ユーザーにとっては「自分の閲覧履歴を人に見られているようで不快」と感じることもあり、最近では規制が進んでいます。
たとえばAppleの標準ブラウザ「Safari」は、デフォルト設定でサードパーティCookieを前面ブロックしています。
「Cookieを利用する前にユーザーから許可を取らなければならない」という法律を制定する国も多いです。日本でも2022年4月施行の「改正個人情報保護法」や2023年6月施行の「改正電気通信事業法」など、Cookieについて見直す法改正が行われています。
サードパーティCookieの規制に備えてできること
サードパーティCookie規制の動きは世界的なものであり、これからのマーケティングではサードパーティCookieに頼らない施策が必要になってきます。サードパーティCookie規制に備えてできる4つのことを紹介します。
Cookie以外のトラッキング技術を活用する
Cookieは代表的なトラッキング技術ですが、ほかにも有用なトラッキング技術はあります。Cookieレス時代に備え、次のような技術について学んでおくといいでしょう。
広告識別子 | モバイル端末のユーザーを識別するためのID。 端末の持ち主の行動データを取得し、興味のある広告を表示できる。 |
アプリのアクセス許可 | スマートフォンアプリでは位置情報や連絡先、他アプリなどのデータへのアクセス許可を求めることも可能。 これらのデータからユーザー行動の取得・分析が可能。 |
ブラウザフィンガープリント | Webサイトからブラウザへの要求により取得できるユーザーデータ。 ブラウザの種類や端末のOS、言語設定、Web閲覧情報などを取得可能。 これらのデータを組み合わせて管理することで、ある程度なら個人を識別可能。 |
ファーストパーティデータの収集・活用を強化する
規制されるサードパーティCookieのデータではなく、ファーストパーティデータの収集・活用を強化することが、今後のマーケティングでは重要になっていくでしょう。ファーストパーティーデータには次のようなものがあります。
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ファーストパーティCookieで得られた情報
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CRM/SFAやMAなどに蓄積された顧客情報
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自社サイトや店舗などの会員情報
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メルマガの登録情報や閲覧情報
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展示会やイベントで集めた名刺 など
簡単にいえば、自社で直接集めたデータがファーストパーティデータです。
これらのデータの収集を強化し、組み合わせて管理することで、ユーザー一人ひとりの興味・関心に合うアプローチがしやすくなります。ユーザーから直接集めたデータであるため情報の質が高く、リテンションや解約抑止など目的に応じた活用もしやすいでしょう。
自社コンテンツを充実させる
ファーストパーティデータを収集するには、自社コンテンツを充実させることが重要です。
たとえばSNSの公式アカウント運用やコンテンツSEOなどにより、ファーストパーティCookieの使える自社サイトへの流入を増やしたり、メルマガ・会員登録を促したり、さまざまなことができます。
自社コンテンツを充実させることは認知拡大や見込み客の育成にも役立ちます。
インフルエンサーマーケティングを活用する
認知拡大や自社コンテンツへの流入を増やすために、インフルエンサーマーケティングを活用するのもいいでしょう。自社のターゲット層からの人気が強いインフルエンサーを起用し、自社の商品やサービス、コンテンツなどを宣伝してもらうのです。
インフルエンサーのファン層が自社のターゲット層とマッチしているかだけでなく、「ファンの特性」も意識しましょう。
フォロワー数が少なくても、コアなジャンルのインフルエンサーや、ユーザーと密にコミュニケーションしているインフルエンサーの場合「その人を応援したい」という気持ちのファンが多く、彼らを起用したPR施策はCV率が高くなりやすいです。
「成果が高ければ案件(PR依頼)が来やすくなる」「広告主から次の仕事がもらいやすくなる」という考えから、応援のために商品購入やサービスへの申し込みをするユーザーもいます。シンプルに「推しと同じものを使いたい」という気持ちのファンも多いでしょう。
フォロワーが多いインフルエンサーは閲覧数が増えやすいものの、「そこまでファンじゃないけど時々見ている」「とりあえずチャンネル登録(フォロー)している」というユーザーも多いです。CV率は低くなりやすいですが、リーチできる数が圧倒的で「CV率は低くてもCV数は高い」ということもあるでしょう。認知拡大に特に強いタイプです。
何を目的としてインフルエンサーを起用するのかを明確にし、依頼するインフルエンサーを検討しましょう。
Cookieレス時代に備え、トラッキングに関する知識をアップデートしておこう
- トラッキングとはユーザーのWeb行動を追跡すること
- トラッキングはユーザーにとっても企業にとってもメリットがある
- Cookieレス時代に備えてマーケティングを見直そう
トラッキングとはユーザーのWeb行動を追跡することです。ユーザーがどのような経路でWebサイトに流入し、どんなページを見たのかがわかります。
トラッキングにより、ユーザー一人ひとりの興味・関心に合う広告を表示できます。ほかにも一度のログイン情報入力で自動ログインができるようになったり、ショッピングサイトでカゴ内の商品が保存されたり、ユーザーにとってのメリットも多いです。
ただ、トラッキングの代表的な技術だったCookieは規制されつつあります。これからはCookieに頼らないマーケティング方法を考えなければなりません。
そこで重要になるのが、自社が直接集めたユーザー情報である「ファーストパーティデータ」です。自社のユーザーがどんなことに興味があるのか、ロイヤルティの高いユーザーはどんなユーザーなのかを知ることで、ブランディングの方向性や相性のいいインフルエンサーなどが見えてくるでしょう。
ファーストパーティデータの収集・活用を強化すること、簡単にいえばユーザーについて深く知ろうとすることが、これからのマーケティングではより重要になってきます。本記事を参考に、自社でできる対策を検討してみてはいかがでしょうか。
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