信書の定義は「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」です。簡単にいうと宛名のある文書、「〇〇マンションにお住まいの皆さま」のような宛先を特定できるメッセージの書かれた文書がこれにあたります。
本記事では信書とは何か、簡単な見分け方や、送りたい文書が信書にあたるかわからないときの対処法を解説。信書に該当する文書・該当しない文書の一覧や信書の送り方・移送方法も解説します。
- 信書とは何か、どのような書類がこれにあたるのか
- 信書の送り方と、間違った方法で送るリスク
- 受け取った信書を移送する方法
信書(しんしょ)とは
信書(しんしょ)とは、「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」のことです。具体的には納品書や契約書などの重要書類、DM、証明書などがこれにあたります。
簡単にいえば「受取人を特定できる宛先やメッセージが記載されている文書」が信書です。
たとえば同じDMでも、宛名の書かれたものや「〇〇マンションにお住まいの皆さま」のような特定の受取人に差し出したものは信書に該当しますが、新聞折込や街頭配布などの宛名なしもしくは不特定多数に渡るものは信書に該当しません。
ただし、信書の見分け方は少し難しいです。不安がある場合は、自社の法務部や郵便局員などに「これは信書にあたりますか?」と相談してみることをおすすめします。
なお、信書の基本的な考え方について、総務省では次のように公表しています。
「信書」とは、
「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」と郵便法及び信書便法に規定されています。
「特定の受取人」とは、
差出人がその意思又は事実の通知を受ける者として特に定めた者です。
「意思を表示し、又は事実を通知する」とは、
差出人の考えや思いを表現し、又は現実に起こりもしくは存在する事柄等の事実を伝えることです。
「文書」とは、
文字、記号、符号等人の知覚によって認識することができる情報が記載された紙その他の有体物のことです(電磁的記録物を送付しても信書の送達には該当しません。)。
信書には「親展」と書かなくてもいい
信書の封筒には「親展」と書かれていることが多いですが、「信書だから親展と書かなければいけない」というわけではありません。親展には「宛名の本人に封を空け読んでほしい」という意味があります。信書は本人宛で送ることが多いため、親展と書かれていることも多いのです。
信書に該当するもの
信書に該当するものには次のようなものがあります。
-
書状
-
請求書類(納品書や領収書、願書など)
-
結婚式などの招待状
-
業務報告のための文書
-
免許証
-
認定書
-
表彰状
-
証明書の類(印鑑証明書や戸籍謄本、給与支払明細書など)
-
宛名付きのDM
-
宛先がある程度特定できるDM(〇〇マンションにお住まいの皆さま、会員の皆さまなどの記載があるDM) など
信書に該当しないもの
信書に該当しないものには次のようなものがあります。
-
書籍
-
新聞
-
カレンダー
-
カタログ
-
小切手
-
プリペイドカード
-
商品券
-
乗車券
-
クレジットカード類
-
会員カード類
-
不特定多数に配るDM(新聞折込や店頭・該当などで配布するもの) など
クレジットカードは特定の相手に送付するものですが、文書ではなく電磁的記録物であるため信書には該当しません。
ただし、クレジットカードは簡易書留や本人限定受取郵便など、本人に確実に受け渡せる方法で送るのが一般的です。不正利用のリスクを考えると、信書や普通郵便で送るのは避けた方がいいでしょう。
信書の郵便での送り方
信書は日本郵便株式会社の特定のサービスか、信書便事業者で送らなければなりません。それぞれの信書の送り方を紹介します。
日本郵便株式会社で送る
日本郵便株式会社で信書を送れるサービス、送れないサービスは次のとおりです。
【信書を送れるサービス】
-
手紙
-
はがき
-
レターパック
【信書を送れないサービス】
-
ゆうパック
-
ゆうメール
-
ゆうパケット
-
クリックポスト
信書便事業者で送る
信書便事業者は総務省のWebページから確認できます。郵便以外で信書を送る場合、下記ページ内の「特定信書便事業者の一覧表」から事業者を確認しましょう。
総務省|信書便事業|信書便事業者一覧(令和5年11月29日現在)
信書をヤマト運輸やゆうパックで送るのは郵便法違反
信書の送付方法は郵便法で定められています。ヤマト運輸やゆうパックなど、信書の送付ができないサービスで送ると郵便法違反になり、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に科せられる恐れがあります。
第七十六条(事業の独占を乱す罪) 第四条の規定に違反した者は、これを三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
② 前項の場合において、金銭物品を収得したときは、これを没収する。既に消費し、又は譲渡したときは、その価額を追徴する。
受け取った信書を他拠点に移送するときの注意点
企業や組織として信書を受け取る場合、本社や営業所で受け取った信書を別の営業所に移送することもあるでしょう。その書類を信書として送らなければならないのか、信書として送らなくてもいいのか、見分け方を紹介します。
信書として送らなくてもいい場合
信書に記載された意思・事実が受け取り時点で自社に到達すれば、信書の送達は完了します。この場合、他拠点への移送は信書でなくても構いません。具体的には「受取時点で受取処理を済ませた場合」や「書類の写しを送る場合」などは、信書として送る必要はありません。
信書として送らなければならない場合
他拠点に何らかの意思を表示するために書類を移送する場合、信書として送らなければなりません。たとえば「営業所で受け取った書類の内容を本社で確認・審査し、承認してほしい」「請求書を受け取った営業所ではなく、本社から代金を支払ってほしい」などの場合、信書として送る必要があります。
信書にあたる文書を電子的に送ることは認められている
信書にあたる文書を、電子メールやクラウドサービスなどの電子的な方法で送ることは認められています。たとえば請求書を電子メールで送ったり、クラウド契約システムで契約を結んだりする場合です。
電子メールやクラウドサービスで信書にあたる文書を送る際の注意点を紹介します。
電子メールで送る場合
請求書や契約書などの信書にあたる文章を電子メールで送る場合、S/MIME(エスマイム)を利用するのがおすすめです。S/MINEとは電子メールの暗号化方式のひとつで、なりすましや盗み見の防止に役立ちます。
S/MINEはOutlookやGmail(無料版では電子署名が行えず、電子署名の検証のみに対応)など、多くのメールサービスが対応しています。
クラウドサービスで送る場合
最近は契約書や請求書の発行・送付ができるクラウドサービスが増えています。クラウドサービスで契約書や請求書を発行・送付するなら、タイムスタンプ付きのサービスがおすすめです。
タイムスタンプとは、インターネット上の手続きが行われた日時や、その日時以降に文書の修正・改ざんが行われていないことを証明するテクノロジーです。タイムスタンプ付きのサービスは文書に関する不正を防ぎやすく、取引先にとっても自社にとっても安心感があります。
フリーランスへの業務委託が多い企業なら、電子契約サービス「クラウドサイン」や、freee業務委託管理(旧Pasture)のような契約・請求管理プラットフォームもおすすめです。委託先ごとに契約内容を管理したり、システム上で請求書を発行し、共有したりできます。
郵送前に信書に当たるかどうかを確認し、手紙・はがき・レターパックで送ろう
- 宛名が明記された文書、宛先を特定できる文書は基本的に信書と考えよう
- 信書を送る方法は法律で定められている
- 受け取った信書を移送する場合、移送の目的を確認しよう
信書とは簡単にいうと、宛名が明記された文書、宛先を特定できるメッセージが記載された文書のことです。「〇〇マンションにお住まいの皆さま」のようなDMも信書にあたります。
信書は日本郵便株式会社の「手紙」「はがき」「レターパック」、日本郵便以外では「信書便事業者」でなければ送れません。一度受け取った信書を移送する場合も、「本社で承認してほしい」「本社から代金を支払ってほしい」などの意思の表示があれば信書扱いとなり、信書送付可能なサービスで移送しなければなりません。
信書をこれ以外の方法で送ると郵便法違反となり、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に科せられる恐れがあります。
最近はコンプライアンスが厳しく、懲役や罰金だけでは済まないこともあります。上場企業が郵便法違反がきっかけで倒産したケースもあり、文書の送付には慎重になることが求められます。
送付方法に不安がある場合は、法務部や郵便局員に相談し、その書類をどのような方法で送ればいいのか確認しましょう。
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