HOMEビジネス 悪いとされる話し方の代表格「早口」は、どうやってなおせばいい?ーー受験倍率1,000倍の狭き門を突破させるSTORYアナウンススクール代表・松下公子さん、教えてください!

悪いとされる話し方の代表格「早口」は、どうやってなおせばいい?ーー受験倍率1,000倍の狭き門を突破させるSTORYアナウンススクール代表・松下公子さん、教えてください!

服部真由子

2023/09/21(最終更新日:2024/09/22)


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「経験と想いを熱く語る」ことで、25歳のときにアナウンサー職に選ばれたという松下公子さん。その当時は、新卒で入社した企業を退職してアナウンサーになることを志すフリーターだったそうです。

現在は、アナウンサー志望者の内定獲得をサポートするSTORYアナウンススクールの代表として、さらにはスピーチコンサルタントとしても活躍しています。

面接で選ばれるための秘訣を教えていただいた前編に続き、この後編では、想いを伝えるための手法「共感ストーリー」がどのように生まれたのか、「良い/悪い話し方」についてお話をうかがいました。

(本記事は後編、前編はこちらから)

‟想い”を届けるメソッドがうまれたきっかけ

佐渡ケーブルテレビ時代の松下さん(右から3人目)、島民の皆さんと

ーー前編でうかがった「共感ストーリー」についてくわしく教えていただけますか?

松下:新卒の時は、アナウンサー受験をしても全然うまくいかなかったんです。ところが、1度社会に出て、中途採用として受けた採用試験ではいきなりうまくいきだしました。ただ事実を話すだけで、結果がついてくるんです。

その理由が知りたくて、いろいろと振り返りをして、新卒の時は、ただ「アナウンサーになりたい」だけで、続く言葉に全然意味がなかった。自分の想いがきちんと伝えきれていなかったことがわかりました。

出来事と感情を基に共感ストーリーを作ります|『転職は話し方が9割』から引用

ーーどんなことでしょうか?

松下:私は当時フリーターでしたが、結婚式の司会業をしていることをふまえて「結婚式の司会は一期一会の出会いなので、今後は地域に根ざして、継続的に地域の人びとと関わって情報発信をしていきたい」と話したんです。

これは本当に考えていたことなんですが、「何をきっかけにして、その想いに至ったのか」を具体的に伝えられたんですね。

ーーその結果として、メディアでのアナウンサー経験がなくとも佐渡テレビジョン(新潟県・ケーブルテレビ会社)に採用されたんですね。

松下:そうなんです。佐渡での経験は「これからもアナウンサーであり続けたい」という確固たる想いにつながりました。

佐渡テレビジョンを離れてから受けた採用面接では、意識的に、その想いときっかけを伝えてみたんです。そうすると、それまで下を向いていた面接官の人たちが、急に「声が届いた」ようにこちらを見てくださいました。

自分の出来事と想いを伝える、シンプルなやり方ですが、「これでいいんだ」という手ごたえがありました。

魅力や武器は誰にでも‟必ず”ある

ーー著作『転職は話し方が9割』(スタンダーズ株式会社/税込価格:1,650円)からも感じたことなんですが、ご自身がどう評価していようとも、人には必ず魅力や武器が備わっていると松下さんはお考えですね?

松下:みなさん「自分には何もない」っておっしゃるんですけど、必ずあります。魅力や武器がない前提でいるから、強みを見つけられないんです。

「その業界で働きたい、ここに行きたい」と思った段階で、その資格はあります。ただ、やはり転職においては想いだけではダメなんです。やっぱり即戦力となるかは必ずチェックされます。

少し矛盾しますが、「経験がないとダメなのか」とあきらめないでほしいんです。アナウンサー試験の話ですが、募集要項に経験者のみと書かれていても、提出した資料や履歴書から「可能性がある」と判断されて面接や採用に至る方もいらっしゃるんです。

経験の棚卸しをして、ストーリーを見つけよう

ーー「共感ストーリー」を見つけようとしてもどうしても見つけられない、そんな人はどうしたら良いのでしょう?松下さんはどんなアドバイスをされますか?

松下:意識を変えてみることを、まずはおすすめしています。経験の‟棚卸し”をすることで、ストーリーは必ず見つかります。

たとえばいわゆる事務職、営業部でバックオフィス業務をご経験されているとしましょう。

ご自身は「たいしたことないです」「似た仕事をしている人はたくさんいます」なんておっしゃるかもしれません。でも、私はその経験をしていませんし、「大したことある」経験なんですよ。

なかには「3か月しか経験していない」「1度だけやったことがある」と期間や回数を理由に「未経験と変わらない」とおっしゃる場合もあります。しかし、どんなに期間が短くても、たった1度であっても立派な経験です。未経験の方とはまったく違います。

でも、ウソはだめですよ。「1度ですが経験しています」とはっきりと伝えることが大切です。

話し手も聞き手も、ともに‟心地よく”

ベビーシッターにお子さんを預けながら働いていたという松下さん(2008年頃)

ーー「良い話し方」とはどんなものか、教えてください。

松下:話すときには、必ず相手がいて、ひとりではないんです。自分が心地よく話すことも大事ですが、それ以上に相手も心地よく、一緒に話せるようなものが、良い話し方ですね。広く見渡してお話をする、というのがよい話し方だと考えています。

ーー広く見渡すとは、どんなことでしょうか?

松下:気持ちよく話してもらえるように、とりまく環境にまで気をつけてみる。そんなイメージでしょうか。

たとえばアナウンサーがインタビューをするときに、その相手がとても緊張されていることってよくあるんです。その緊張をほぐしてさしあげることもアナウンサーの仕事のひとつです。

テレビでは言葉だけではなく表情も伝わるので、言い方ひとつで印象が変わってしまうこともあります。

早口が悪いとは限らない?!

ーーでは、悪い話し方についても教えてください。私は早口なタイプで、ゆっくり話すことを心がけても、なかなか難しいんです。

松下:私も、早口です。早口を気にする方は、相手の呼吸にあわせるといいですよ。でも会話のスピードやテンポが速いことが、悪いとは限りません。

お相手がゆっくりと話すタイプの方だったら、わーっと喋ると圧を感じてしまいますよね。その場合は悪い話し方となってしまいます。バランスなんです。

その方とより良い時間を過ごす、良いコミュニケーションをとるために会話するのですから、トーンを合わせると良いですね。それには、お相手の言葉の「文末」を聴くことも大事です。

ーー句点(。)を感じとってから話す、そんなイメージですか?

松下:そうです。自分の想いを丁寧に伝えられるように、相手のスピード感に合わせてお話することと、相手の話をさらによく聴いて会話していくことで良くなると思いますよ。

聴くことは、とても大事なんです。お相手の言葉を「しっかりと聴ききる」。たとえば、面接官が質問を投げ掛けたときに、しっかり聴けなかったために質問されたこととちょっと違うことを答えてしまって、面接官に違和感を与えてしまうことも、よくあるんですよ。

(後編・了)


前編に続き、ポジティブかつストレートに「自分の良さ」を見つけることを提案してくださる松下さん。実際に、話し方などの悩みを相談したとき、どのように導いてくれるのでしょうか。

「話し方」に悩む編集部員が、特別に松下さんに相談する機会をいただき、その一部始終を特別編として9月22日(金)18時に公開します。

松下公子さんプロフィール

松下公子 (まつした・きみこ)
STORYアナウンススクール代表/株式会社STORY 代表取締役

1973年茨城県鹿嶋市生まれ。
アナウンサーを目指したのは、大学3年時に彼氏に振られたことがきっかけ。みんなに愛される女子アナになって見返したいと思った。しかし、第一印象が怖い、近づきづらいという見た目コンプレックス、さらに、コネなし、2流女子大出身、茨城なまりと4重苦に苦しむ。パッと見の印象ではなく、自分のことをわかって欲しいという思いから、アナウンサー受験では自分の経験と思いを熱く語る。その結果、25歳フリーターでアナウンサーに内定。テレビラジオ4局のステップアップを果たす。

その後、共感で選ばれるプレゼン手法「共感ストーリー」としてメソッド化。代表であるSTORYアナウンススクールでは、認定講師とともに個別指導で共感ストーリーメソッドを使った志望動機、自己PRを一緒に作成。面接における伝え方の指導も行い、NHKキャスターや地方民放局アナウンサーの内定に導いている。現在は一般企業の転職など選ばれる人になるサポートや講演活動を行っている。

著書に『「たった1人」に選ばれる話し方』『転職は話し方が9割』(ともにstandards)がある。

共感ストーリーは株式会社STORYの登録商標です。

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