ビジネスシーンで使われる思考の枠組みである「フレームワーク」。ビジネスフレームワークと呼ばれることもあります。特に有名なのはマーケティングのフレームワークやロジカルシンキングのフレームワークで、第一線で活躍するビジネスパーソンほど、フレームワークをうまく活用しています。
本記事では、そんな「フレームワーク」についてメリットやポイントを解説。使えるフレームワークも厳選してご紹介しています。これからビジネスシーンでフレームワークを活用していきたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
- フレームワークを活用するメリットとは?
- フレームワーク活用する際に注意したいポイントを解説
- 目的別に28種類のフレームワークをご紹介
フレームワークとは?
「フレームワーク」はビジネスシーンで用いられる思考の枠組みのことです。決まっている型に当てはめて思考するため、誰でも活用できるのがメリット。今まで取り組んだことのない業務も、適したフレームワークがあれば論理的かつ合理的に分析や検討を行えます。
フレームワークを活用する3つのメリット
フレームワークのメリットを知ることで、必要なタイミングで適切なフレームワークを活用できるようになります。なぜフレームワークは必要とされているのか。3つのメリットをご紹介します。
- メリット1.業務効率化が期待できる
- メリット2.情報の抜け漏れ・重複を防げる
- メリット3.情報を見える化できる
メリット1.業務効率化が期待できる
フレームワークを活用する1つ目のメリットは、業務効率化が期待できることです。
フレームワークは、ビジネスシーンで課題解決のために使える思考の枠組みです。どのようなステップで考えれば良いか道筋が決められているため、必要以上に時間をかけることなく効率的に業務を進められます。
例えば、事業分析で使えるフレームワークとして「3C分析」や「SWOT分析」などがあります。事業分析のためにまず何をすべきなのかが各フレームワークで定められているため、素早く行動に移すことが可能。分析に時間がかかりすぎない分、アイデアや施策を実施するスピードもあがります。
メリット2.情報の抜け漏れ・重複を防げる
フレームワークを活用する2つ目のメリットは、情報の抜け漏れや重複を防げることです。
フレームワークを使わずに問題解決に取り組もうとすると、どうしても抜け漏れが発生してしまいます。一から考え直したり、問題があまり解決されなかったりと、必要以上に時間がかかってしまい、非効率的です。
フレームワークはそうした抜け漏れを防げるのがメリット。ステップ通りに取り組めば、議論の重複も避けられます。時間を有効的に使えるのがフレームワークの優れた点です。
メリット3.情報を見える化できる
フレームワークを活用する3つ目のメリットは、情報を見える化できることです。
フレームワークは論理的な思考を助ける枠組みです。論理的な思考を行うには、事実やデータの収集が必須。集めた情報を元にフレームワークを活用してチーム内で議論を行うため情報は可視化され、必然的に共通認識を作ることができます。
人によって知っている情報の偏りが生まれにくく、全員で同じスタートラインに立って建設的な議論を進められます。
各自でフレームワークを行った上で、チームで内容を統合することで、さらにフレームワークを効果的に活用できるでしょう。
フレームワークを活用するときの3つのポイント
フレームワークを活用して成果を出すには、いくつか押さえておきたいポイントがあります。フレームワーク活用時の大前提なので、必ず覚えておきましょう。
- ポイント1.目的にあったものを選ぶ
- ポイント2.情報の洗い出しには時間制限を設ける
- ポイント3.アップデートを心がける
ポイント1.目的にあったものを選ぶ
フレームワークを活用するときの1つ目のポイントは、目的にあったものを選ぶことです。
フレームワークはそれぞれ使用する目的が異なります。例えば、マンダラチャートやマインドマップはアイデア立案には使えますが、戦略立案には適していません。
どのフレームワークを使うべきなのかは、目的を明確にした上で判断しましょう。
ポイント2.情報の洗い出しには時間制限を設ける
フレームワークを活用するときの2つ目のポイントは、情報の洗い出しには時間制限を設けることです。
フレームワークを使う上でまず行うのは情報収集と洗い出しです。フレームワークは業務を効率化するために活用するものなので、情報の洗い出しに時間をかけすぎては本末転倒です。
「時間をかけるともっとよい情報が集められるかも」と思ってしまいますが、期間を決めて集中して行うほうが効果的な場合が多いです。3時間や1週間など情報収集には時間制限を設けて、分析や検討にかける時間をしっかりと取りましょう。
ポイント3.アップデートを心がける
フレームワークを活用するときの3つ目のポイントは、アップデートを心がけることです。
フレームワークは、その時点での情報を元に分析や検討を行うため、ある程度時間が経過したら情報の見直しが必要です。以前作成したデータがあっても、市場に変化がないか、ユーザーニーズが変化していないかなどを確認し、フレームワークを活用して出した結論と関連性が保たれているかの見返しを行いましょう。
可能であれば、他の人と比較することもおすすめです。フレームワークを活用しているのに成果が出ない、目標達成まで程遠いなど進捗が悪い場合は、情報が古くなっていたり、そもそも十分な情報を収集できていない可能性があります。成果を出している人に声を掛け、どんな情報を元に分析や検討を行っているのかを見せてもらい、情報を適宜アップデートしていきましょう。
ビジネスシーンで活用したいフレームワーク
ビジネスシーンでは、フレームワークを活用することで効率的に業務を行える場面が数多くあります。知っておきたいフレームワークをアイデア立案・事業分析・目標設定・戦略立案・ロジカルシンキングと、目的別に分けてご紹介します。
アイデア立案に使えるフレームワーク
日々たくさんのアイデアを立案する業務を行っている方は、アイデア立案に使えるフレームワークを活用すると発想の幅が広がります。どれも有名なフレームワークですが、改めてチェックしておきましょう。
マンダラチャート
「マンダラチャート」とは、9×9の81マスで構成されるアイデア立案に使えるフレームワークのことです。経営コンサルタントの松村寧雄氏によって考案され、多くのビジネスパーソンやプロアスリートが活用しています。プロ野球選手の大谷翔平選手が自身の思考を整理するために使っていたことで有名なフレームワークです。
マンダラチャートでは、まず9×9の81マスを紙に書きます。次に、9マスの中心に達成したい目標を記入します。周囲のマスに目標達成に必要な要素やアイデアを書いたらマンダラチャートの完成です。
マンダラチャートを作成すると思考が整理されて、取り組むべきことがシンプルになります。目標達成のための行動が視覚化されるため、目標に向かって意欲的に取り組めます。
関連記事:【テンプレート付き】大谷翔平も実践した「マンダラチャート」の使い方・書き方3ステップ
マインドマップ
「マインドマップ」は、創造性を高めるアイデア立案のためのフレームワークです。ビジネスシーンではアイデアのブレストを行う際によく使われています。中心にセントラルテーマを描き、そこから放射状に広がるようにして自由に発想を書き出していきます。
マインドマップの作り方は非常に簡単ですが、いくつか注意するポイントがあります。それが色と線の書き方、イラストです。セントラルイメージやそこから広がる発想は、カラフルな色を多く使って書きます。色によって脳が刺激され、より自由に発想ができるからです。
線は、木の枝が広がるようにして放射状に伸ばしていきます。よく使われる円と矢印の組み合わせでは思考がうまく広がりません。ゆるやかな繋がりを意識し、木が自然に大きくなるようにして発想を書き出しましょう。
マインドマップは、全体にイメージをたくさん書くことも重要なポイントです。視覚的な表現が脳を刺激する他、記憶にも残りやすくなります。その他にもいくつか法則がありますが、自由に楽しくマインドマップを作ることを意識すると、より多くのアイデアを発想できるようになります。
関連記事:頭の整理は「マインドマップ」で!すぐに使いこなせるおすすめアプリ6選
オズボーンのチェックリスト
「オズボーンのチェックリスト」は、アイデアがなかなか出てこないときに使えるアイデア抽出法として便利なフレームワークです。アレキサンダー F. オズボーン氏によって考案されました。
オズボーンのチェックリストは、「転用」「応用」「変更」「拡大」「縮小」「代用」「再配置」「逆転」「結合」の9項目で構成されています。やや無理矢理な可能性もありますが、発想を飛躍させられるので、普通に考えたときには出なかったアイデアを思いつくことができます。
事業分析に使えるフレームワーク
事業戦略を考える際、その前段階として行うのが事業分析です。事業分析では、3C分析や4P分析をはじめとする、有名なフレームワークが複数存在します。分析の目的ごとにフレームワークを使い分け、事業戦略の考案に役立てましょう。
SWOT分析
「SWOT分析」は、自社事業の状況を把握する際に使用されるフレームワークです。事業計画書の作成で使われたり、経営資源の最適化を行う際に使われたりします。
「Strength(強み)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の頭文字を取って、SWOTと呼ばれています。内部環境のプラス面・マイナス面、外部環境のプラス面・マイナス面と4つの要素に分けて状況を整理し、分析を行います。
SWOT分析では、既存事業の改善点や、新規事業の将来的なリスクなども見つけられます。自社が置かれている環境を多面的に分析できる頼れるフレームワークです。
3C分析
「3C分析」は、マーケティングの分野で使われるフレームワークのひとつです。「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」から頭文字を取って、3Cと呼ばれています。
3C分析は、主にマーケティング環境の分析を目的に使われます。実際のマーケティングの現場で頻繁に使用されており、事業戦略を考える上で便利に活用できます。
3C分析で大切なのは、マーケティング環境を分析する際に必要な情報の収集方法です。どのような手法を使うのか、担当者の情報収集スキルによって分析内容が変わってしまいます。自社内である程度、手法を統一しておくことがおすすめです。
4P分析
「4P分析」は、マーケティング施策を立案する際に使われるフレームワークです。アメリカのマーケティング学者であるエドモンド・ジェローム・マッカーシー氏により提唱された、古典的なフレームワークです。
「Product(サービス・商品)」「Price(価格・価値)」「Place(流通・販路)」「Promotion(販促・認知)」から頭文字を取り、それらについて分析を行うことから4P分析と呼ばれています。
4P分析の対象となるのは自社の商品です。3C分析を活用して市場分析をした後、マーケティング戦略を立案し、その戦略に基づいて商品をどのようにマーケティングしていくのか、4P分析を使って具体的施策に落とし込みます。
4P分析は他のマーケティングのフレームワークと組み合わせて使われることが多いため、マーケティング戦略上の位置付けは必ず理解しておきましょう。
PEST分析
「PEST分析」は、世の中の流れを分析するマーケティングのフレームワークのひとつです。経営学者であるフィリップ・コトラー氏が提唱しました。外部環境が自社に与える現在・将来的な影響を予測する目的で使われます。
「Politics(政治)」「Economy(経済)」「Society(社会)」「Technology(技術)」の頭文字を取って、PEST分析と呼ばれています。
政治・経済・社会・技術などの環境はマクロ環境と呼ばれます。PEST分析によりマクロ環境を長期的な視点で分析することにより、自社への脅威を予測できるのが大きなメリットです。
一方、競合他社や自社を取り巻く環境のことはミクロ環境と呼ばれ、フレークワークとしては3C分析が使われます。各フレームワークで分析できる範囲は覚えておきましょう。
VRIO分析
「VRIO分析」は、自社の経営資源を評価し、競合優位性を明確にする目的で使われるフレームワークです。VRIO分析で評価するのは、「Value(価値)」「Rareness(希少性)」「Imitability(模倣可能性)」「Organization(組織)」の4点。これらの頭文字を取って、VRIO分析と呼ばれています。
VRIO分析を行うことで、自社の強み・弱みを把握できます。他社に模倣されにくい自社独自の価値が明確になるため、競合他社との差別化もしやすくなります。自社の優位性を参考に経営戦略を立てる際にも活用できるフレームワークです。
関連記事:VRIO分析とは?4つの要素を分析するフレームワークのやり方や、事例を紹介
5フォース分析
「5フォース分析」は、自社の収益性を把握し、収益向上のための糸口をつかむ際に活用される業界分析のフレームワークです。アメリカの経営学者であるマイケル・E・ポーター氏が発表した『競争の戦略』の中で提唱されました。
フォースは「競争要因」のことを指します。5フォースにおける競争要因は、新規参入の脅威・代替品の脅威・買い手の交渉力・売り手の交渉力・既存の競合他社の5つです。自社の脅威を5つの要素に分けて分析することで、自社の強みと弱みを明らかにします。
バリューチェーン
「バリューチェーン」とは、事業活動の一連の流れがどのような付加価値の創造に貢献しているのかを、量的・質的に捉えるフレームワークのことです。日本語では「価値連鎖」と訳されます。経営学者であるマイケル・E・ポーター氏の著書『競争優位の戦略』の中で提唱されました。
バリューチェーンでは、事業活動を主活動・支援活動の2つに分けて考えます。購買物流からサービスまでを主活動、技術開発や調達、人事管理などを支援活動として大別。利益が発生するまでの一連の流れをできるだけ細かく時間軸で整理し、各活動にかかるコストを洗い出して強みと弱みを分析します。
パーセプションマップ
「パーセプションマップ」とは、特定の製品やブランドに対して顧客が認識しているイメージをマップ上に2軸で表したものです。別名、知覚マップとも呼ばれています。
ブランドイメージや企業イメージは、自社が意図するのとは違った形で認識されていることが多々あります。企業側の目線で作る「ポジショニングマップ」と乖離が生まれてしまうと、マーケティング戦略もうまくいきません。
一方、パーセプションマップは顧客目線で作られます。ポジショニングマップと比較することで、認識の差を埋める施策を考えることができます。2つの整合性が取れていなければ、ブランドや製品のポジショニングやターゲットを修正する必要があるでしょう。
カスタマージャーニーマップ
「カスタマージャーニーマップ」は、ある特定の製品を顧客が購入検討する段階から実際に購買する段階までの道のりをマップ化したものです。「カスタマージャーニー」と呼ばれることもあります。
顧客が製品の購入にいたるまでの流れを言語化することで、適切なタイミングと適切な方法でアプローチできるのがこのフレームワークのメリット。汎用性が高いため、業種や業態を問わず活用されています。
顧客体験を向上したり、顧客との接点を強化したりするのに便利な他、製品やブランドの課題も明確にできます。顧客目線で一連の購買体験を俯瞰することで、今まで見えていなかったニーズを捉えられるフレームワークです。
目標設定に使えるフレームワーク
日々の業務は、どんな目標を立てるかや、目標を達成するために必要なアクションは何かなど、その内容によって決まります。企業ごとに目標の立て方は異なりますが、ほとんどの企業はフレームワークを活用して目標設定を行います。自社の風土に適したフレームワークを用いて、従業員がイキイキと働ける環境づくりに役立てましょう。
SMARTの法則・SMARRT・SMARTER・SMARTTA
「SMARTの法則」は、1981年にジョージ・T・ドラン氏が提唱した目標設定に使えるフレームワークです。目標設定時に利用されるフレームワークの中でも認知度が高く、世界中のビジネスパーソンがSMARTの法則に基づいて目標設定をしています。
SMARTの法則は、「Specific(具体的な)」「Measurable(測定可能な)」「Achievable(達成可能な)」「Realistic(現実的な)」「Time-bound(期限が明確な)」という5つの単語から頭文字を取って、SMARTの法則と呼ばれています。
5つの基準に沿って目標を定めることで、目標達成率が大幅に向上するといわれています。目標設定に使える基本的なフレームワークとして覚えておきましょう。
ベーシック法
「ベーシック法」は、SMARTの法則と同様に目標設定の基礎的なフレームワークとして知られています。内容が非常にシンプルなフレームワークで、ベーシック法の方法に則れば、スムーズに目標を設定できます。
ベーシック法による目標設定のステップは4段階。「目標項目」「達成基準」「期限設定」「達成計画」の4つです。ポイントは具体的かつ定量的に決めることです。
初めて目標設定を行う方は、まずベーシック法を元に自身の目標を考えてみてください。
HARDゴール
「HARDゴール」は、マーク・マーフィ氏が提唱した比較的新しい目標設定のフレームワークです。「Heartfelt(心の底から)」「Animated(活気がある)」「Required(必要とされている)」「Difficult(困難)」の4つから頭文字を取り、HARDゴールと呼ばれています。キャリアに関する目標設定で使われるフレームワークです。
現実的かつ達成可能な目標を考えるSMARTの法則とは異なり、HARDゴールでは困難かもしれないけれど心から達成したいと思える目標を設定します。
将来のビジョンを明確にすることで自己啓発の気持ちが生まれ、モチベーションが向上したり行動力が上がったりすることが期待できます。
OKR
「OKR」は目標設定に使えるフレームワークのひとつです。米インテルの元CEOであるアンドリュー・グローヴ氏が提唱したといわれています。メルカリやfreee、花王などの企業がいち早く導入したことで、日本でも目標設定のフレームワークとして使われるようになりました。
「OKR」は「Objectives and Key Results」の略称で、「目標と主要な成果」を意味します。企業として設定された目標と、目標の達成度を測る主要な成果とリンクする形で、部署・部門・個人のOKRを設定します。企業として目指す成果が部署の目標に、部署として目指す成果が部門の目標にと、Key ResultsがリンクしているのがOKRです。
OKRでは、モチベーションを維持するために達成難易度の高い目標を設定します。達成率60〜70%が目標達成の目安です。また、目標設定から実施、振り返りまでを約3ヶ月ごとに行い、進捗確認や目標に対して適切な行動が取れているかをチェックするのもOKRの特徴です。
MBO
「MBO」は、個人やチームごとに目標を設定し、その目標の達成度合いで評価を決定するフレームワークです。MBOは、「Management by Objectives」の略で、日本語で「目標管理」と訳されます。経済学者であるピーター・ドラッカー氏により1950年代に提唱されたといわれています。
MBOは、従業員一人ひとりが自分で目標を設定し、自己管理しながら目標達成のために行動するのが特徴です。1990年代に日本で定着し、現在は多くの企業がMBOを取り入れています。
関連記事:MBO(目標管理制度)とは?OKRとの違いや、導入の流れ・ポイントを解説
KPIツリー
「KPIツリー」とは、最終目標であるKGI(Key Goal Indicator)を達成するためのKPIを樹形図を使って可視化した図のことです。KPIを木の枝のように段階的に設置するため、KPIツリーと呼ばれています。
KPIツリーは、KGI達成までのプロセスを可視化できるのが大きなメリット。必要な施策を考えたり、施策を行動に移したりしやすくなるため、効果的かつ効率的にPDCAを回すことができます。プロジェクトやチーム内で、KGIを達成するために必要な要素を共通認識として持てるのもKPIツリーを作成するメリットです。
戦略立案に使えるフレームワーク
事業の戦略立案をするには、市場の分析からユーザーの購買行動の把握まで、さまざまなフレームワークを活用するのがおすすめです。市場の動向や競合優位性、ユーザーのニーズを把握した上で適切な戦略を立案することで、事業のスピーディな成長が期待できます。
STP分析
「STP分析」は、マーケティング分野における代表的なフレームワークのひとつです。マーケティングの父と呼ばれるフィリップ・コトラー氏によって提唱されました。
STP分析は、「Segmentation(市場細分化)」「Targeting(ターゲットとなる市場の選定)」「Positioning(自社の立ち位置の明確化)」の3段階に分けて分析を行います。それぞれの頭文字をとってSTP分析と呼ばれているフレームワークです。
STP分析は、ユーザーニーズの把握や、競合他社との差別化を目的に使われます。分析した内容は、マーケティング戦略の立案に役立てることが可能。ユーザー像が具体化されるので訴求ポイントを絞ることができ、ユーザーに対して適切な訴求方法も考えられます。
ビジネスモデルキャンバス
「ビジネスモデルキャンバス」は、ビジネスモデルの構造を可視化するために使われるフレームワークです。アレクサンダー・オスターワルダー氏とイヴ・ピニュール氏によって考案されました。
ビジネスモデルキャンバスでは、ビジネスモデルの構造を9つに分類します。9つの要素は、顧客セグメント・価値提案・収益の流れ・チャネル・顧客関係・主要な活動・主要なリソース・主要なパートナーシップ・コスト構造です。
ビジネスモデルキャンバスは、既存のビジネスを改善したり、新規事業を立ち上げたりする際に使われます。
リーンキャンバス
「リーンキャンバス」は、スタートアップのビジネスモデルを可視化する際に用いられるフレームワークです。アメリカの起業家であるアッシュ・マウリャ氏が開発しました。「Lean Canvas」の頭文字を取って、LCと呼ばれることもあります。
リーンキャンバスは、ビジネスモデルキャンバスをベースに作られています。ビジネスモデルキャンバスと同様に9つの要素を書き出して、ビジネスモデルの構造を可視化します。
新規事業のアイデアをチームメンバーと共有したり、効率的にブラッシュアップしたりできるのがメリット。WEBサービスの企画書作成にも応用できる便利なフレームワークです。
MVPキャンパス
「MVPキャンパス」は、MVPの開発において効果的に仮説検証を行うため、その内容や手順を明確にするフレームワークです。MVPとは「Minimum Viable Product」の略で、日本語では「実用最小限の製品」と訳されます。ユーザーに対して必要最低限の価値を提供する製品のことです。
MVPキャンパスは10項目から成り立っています。仮説・目的・方法・データ、条件・何を作るのか・コスト・時間・リスク・結果・学びについて各項目を明らかにします。
MVPキャンパスを活用することにより、MVP開発時にユーザーの意見に振り回されすぎることなく、プロジェクトを進行させられます。
AIDMA・AISAS
「AIDMA」は購買行動モデルを可視化する際に使われるフレームワークです。「Attention(注意)」「Interest(興味)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」の頭文字を取って、AIDMA(アイドマ)と呼ばれています。
AIDMAは、ユーザーが製品を認知するところから行動にいたるまでの購買行動を把握するのに便利です。しかし、AIDMAは1920年代に提唱されたため、近年の購買行動とはズレがあるといわれています。
インターネットが発達し、多くの情報が容易に収集できる近年ではユーザーの購買行動も変化しています。その変化にあわせて登場したのが「AISAS」という購買行動モデルです。
AISASは、「Attention(注意)」「Interest(興味)」「Search(検索)」「Action(行動)」「Share(共有)」の頭文字を取ってAISAS(アイサス)と呼ばれています。行動の前に情報の検索行動があり、行動の後に感想を共有する行動があるのが特徴です。Webマーケティングの観点では、AISASが利用されることが多くあります。
思考整理・ロジカルシンキングに使えるフレームワーク
ビジネスシーンでは、物事の繋がりを論理的に考えるロジカルシンキングや思考整理が求められます。いきなりロジカルシンキングを実践するのは難しいため、まずはフレームワークを活用して思考を整理する習慣を付けましょう。
MECE
「MECE」は、ロジカルシンキングの基本的なフレームワークです。MECEは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略で、日本語で「漏れなく、ダブりなく」と訳されます。その頭文字を取ってMECE(ミーシー)と呼ばれており、ビジネスにおいてロジカルシンキングが必要な場面で、特に重要なフレームワークだとされています。
MECEを活用して思考を整理する際のポイントは、「トップダウンアプローチ」と「ボトムアップアプローチ」です。トップダウンアプローチは、物事の全体から詳細に要素を分解する考え方です。一方、ボトムアップアプローチは、洗い出した要素をグルーピングし、そこから全体像を描く考え方です。
要素分解・時系列やステップ分け・対照概念・因数分解なども、MECEを活用する上で押さえておきたいポイントです。複雑な課題を切り分けてシンプルにし、本質的な問題を明らかにする際に使えるフレームワークです。
関連記事:MECE(ミーシー)とは?やり方や具体例、フレームワーク、注意点などを紹介
ロジックツリー
「ロジックツリー」とは、問題の原因や解決法を論理的に探すときに使われるフレームワークのことです。日本語で直訳すると「論理の木」で、問題に関係する要素を木が枝分かれしているようにツリー状に書き出します。
ロジックツリーには、目的に応じた4種類のタイプがあります。原因研究に使われる「Whyツリー」、問題解決に使われる「Howツリー」、要素分解に使われる「Whatツリー」、日々のアクションと目標を紐付ける「KPIツリー」です。
ロジックツリーは問題の全体像を可視化できるのが特徴。優先順位を付けたり、解決策を考えたりしやすいため、複雑性の高い問題にこそ積極的に活用していきましょう。
関連記事:ロジカルシンキング(論理的思考)とは?手法やフレームワーク、鍛えるための習慣を紹介
2軸図
「2軸図」は、物事を2軸で考えるシンプルなフレームワークです。2軸思考や2軸マトリクスなどとも呼ばれています。物事の構造をシンプルな形で明らかにしたい場合や、全体像を把握したい場合に便利です。
2軸図には、マトリクス・4象限・グラフの3タイプがあります。どれもヨコ軸とタテ軸で物事を整理・分解するのは同様。2つの軸だけを考えれば良いので悩む時間が少なく、資料作成もスムーズです。問題をシンプルに整理する際におすすめのフレームワークです。
SCAMPER
「SCAMPER」は、短時間でアイデアを量産したい場合に使われる思考のフレームワーク、「スキャンパー」と読みます。アメリカの研究者であるボブ・エバール氏が考案しました。アメリカの実業家アレックス・F・オズボーン氏が考案した「オズボーンのチェックリスト」を使いやすく改良したものです。
SCAMPERのやり方は非常に簡単。「Substitute(代用する)」「Combine(組み合わせる)」「Adapt(応用する)」「Modify(修正する)」「Put to other uses(転用する)」「Eliminate(削ぎ落とす)」「Reverse,Rearrange(再構成する)」と、7つの質問に答えていくだけです。
アイデアの質ではなく量を重視する場合に便利なフレームワークです。
親和図法
「親和図法」は、混沌とした問題の構造を明らかにするために用いられるフレームワークです。用語や文章など、問題に関する言語データを収集し、親和性ごとにグルーピングを行い、「親和図」を作成します。品質管理の改善に有効な手法をまとめた「新QC7つ道具」のひとつです。
親和図法は、言語データを1つずつカードに書き起こし、親和性が高いものでグループを作ります。その作業が終わったら情報を文章化して具体的な結論を出します。問題の本質が見えてきたら、実際の活用方法まで考えると良いでしょう。
目的にあわせてフレームワークを使いこなそう
- フレームワークと使うことで業務効率化や抜け漏れ防止などのメリットが得られる
- フレームワークで使った情報は定期的にアップデートを行う
- 状況や目的にあったフレームワークの使い分けを意識する
本記事で紹介したように、フレームワークには膨大な種類があります。戦略立案・ロジカルシンキング・目標設定と目的ごとにあらかじめフレームワークをストックしておくのもおすすめです。何度か使うことでフレームワークを最大限活用できるようになるでしょう。
状況や目的にあわせてフレームワークを使い分け、業務効率化や課題解決に役立ててみてください。
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