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インシデントとは?インシデント管理のよくある課題と解決策、管理方法をまとめて解説

U-NOTE編集部

2023/10/04(最終更新日:2023/10/23)


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インシデントとは、大きなアクシデントが起こる一歩手前の状態のことです。インシデントへの対応が遅れることで、情報漏えいや損害賠償などのさまざまな被害が想定されます。

本記事ではインシデントの意味や考えられる影響、インシデントによる被害を最小限に防ぐための「インシデント管理」について解説します。

本記事の内容をざっくり説明
  • 業界ごとのインシデントの意味や似た言葉との違い、考えられる影響
  • インシデント管理が重要な理由
  • インシデント管理の課題と解決策、管理を行うときのポイント

 

インシデントとは?

インシデントとは、予期していなかった問題や障害が起こることです。いくつかの業界で使われる言葉ですが、最近ではITやセキュリティなどの分野における障害や不具合、大きな問題の一歩手前の状態を指すことが多いです。

インシデントにより考えられる影響

インシデントが発生すると、まずは業務に支障が出ます。たとえば業務用システムがウイルスに感染し、正常に動かなくなれば、今まで通りに業務を進められなくなります。

そのシステムが顧客の個人情報を扱うもので、ウイルスにより情報漏えいが起きると、信用失墜や損害賠償にもつながりかねません。システムの復旧や業務が遅れたことへの対応などの費用が発生することもあります。

アクシデントとの違い

アクシデントは主に「事故」のことを指します。これに対し、インシデントは先述のマルウェア感染のような「事件」、もしくは大きな問題が起こる一歩手前の状態を指します。アクシデントの一歩手前がインシデントと考えるとわかりやすいでしょう。

ヒヤリハットとの違い

ヒヤリハットとは「冷やりとした」「ハっとした」など、事故や事件の一歩手前で気付くことです。ただ、トラブルの一歩手前という意味で、インシデントとヒヤリハットを同じ意味として捉えることもあります。

 

インシデントの意味は業界により異なる

インシデントはアクシデントの一歩手前や事件、うっかりミスや第三者の悪意ある行動によるトラブルなどの意味で使われますが、業界により、微妙にニュアンスが異なります。

医療業界におけるインシデント

医療業界におけるインシデントは、医療事故の一歩手前の状態を指すことが多いです。結果として被害はなかったものの、患者に何らかの影響を与えかねなかった状態をインシデントと呼びます。

具体的には何らかの被害につながる医療行為が実施されそうになっていた、実施されたがたまたま被害が出なかったといった状態を指します。

IT業界におけるインシデント

IT業界におけるインシデントは、主にITサービスの不具合による利用者への影響を指します。サービス・システムの不具合により利用者が業務を正常に進められないような状態が、IT業界によるインシデントです。

セキュリティにおけるインシデント

セキュリティ分野におけるインシデントは、システムの運用・保守に対する第三者による脅威のことを指します。たとえば業務用のシステムが攻撃を受け正常に扱えなくなったり、情報が盗み出されたりすること、あるいはその手前の状態などです。

これらの脅威には、マルウェア感染やパスワードの漏えい、クラッキング、DoS攻撃などさまざまな種類があります。

 

インシデント管理の重要性

先述の通り、インシデントは重大なアクシデントの一歩手前の事象です。インシデントを放置すれば重大な事故・事件につながり、自社・顧客・取引先などさまざまな関係者に被害が出るでしょう。

インシデントがアクシデントになる前に気付き、適切な対処をすることが大切です。インシデントのうちに対処をすることで被害を未然に防いだり、防げなくとも最小限に抑えたりできるでしょう。

そのためには、インシデントを適切に管理しなければなりません。どんなインシデントが発生しているのか確認できるようにするのはもちろん、対応のフローやタスク、各工程の担当者を明確にすることが大切です。

管理を続けていくことで、インシデントに関するデータ・ナレッジが蓄積されていくでしょう。インシデントの原因を究明して再発を防いだり、対応時のフィードバックを活かして似た事象が起きたときの対応に役立てたりできます。

インシデント管理と問い合わせ管理の違い

インシデント管理と混同されやすいのが「問い合わせ管理」です。

問い合わせ管理とは、顧客や見込み客からのあらゆる問い合わせを一元管理することです。システムの障害や不具合などのインシデントに関する問い合わせを扱うこともありますが、契約や料金など、問い合わせの大部分はインシデントに関係のないものです。

また、問い合わせ管理の目的は問い合わせに迅速・正確に答えていくことですが、インシデント管理の目的はインシデントを解決することです。サイバー攻撃を防いだり不具合の原因を究明したり、解決のための作業をすることもインシデント管理に含まれます。

 

インシデント管理でよくある課題

インシデント管理におけるよくある課題とその対処法を紹介します。

インシデントの共有がうまくできない

インシデントの共有がうまくできていないと、適切なインシデント管理はできないでしょう。現在どんなインシデントが発生していて、解決のためにどんなタスクがあり、誰が対応するのか、優先順位はどうなっているのかなどを管理し共有しましょう。

過去のインシデントを共有することも大切です。これまで起きたインシデントの内容や対応、原因などをナレッジとして蓄積・共有することで、再発防止や対応フローの改善ができます。

Excelや管理システム、ナレッジベースを活用し、インシデントの対応状況やナレッジを共有しましょう。

再発防止のための「問題管理」ができていない

インシデントの再発防止のために欠かせないのが「問題管理」です。これまで発生したインシデントについて分析し、発生の原因を突き止めることです。

問題管理ができていないと、インシデントがなぜ起こったのかが不明確なままになります。過去のインシデントのナレッジ化・共有により対応フローは改善できるかもしれませんが、これだけではインシデントの発生そのものを防ぐことはできません。

インシデントが発生していないときに問題管理を行い、再発防止のための仕組みづくりを進めておきましょう。

 

インシデント管理を行うときのポイント

インシデント管理を行うときの4つのポイントを紹介します。これらを意識することで、インシデントの共有や対応がしやすくなるでしょう。

インシデント管理を行うときのポイント
  • ポイント1.インシデント管理の共有事項を決める
  • ポイント2.インシデントの管理・対応フローを明確にする
  • ポイント3.インシデントに関する情報を共有・ナレッジ化する
  • ポイント4.ツールを活用する

ポイント1.インシデント管理の共有事項を決める

まずはインシデント管理の共有事項を決めましょう。インシデントの発生日時やカテゴリ、担当者、対応状況、優先順位などの項目を定めます。

情報共有のためのプラットフォームやフォーマットを決めることで、担当者間で共通認識を持てるようになります。状況確認にかかる時間が短くなり、対応の抜け漏れも防ぎやすくなるでしょう。

ポイント2.インシデントの管理・対応フローを明確にする

インシデントの管理・対応フローを明確にすることで、業務の均一化や対応漏れの防止ができます。インシデント発生時の連絡フロー、誰がどのタスクを担当するのかなどを明確にしましょう。

ポイント3.インシデントに関する情報を共有・ナレッジ化する

「インシデント管理はインシデントが解決したら終わり」ではありません。先述の通り、インシデントに関する情報を共有し、ナレッジ化することで、再発に備えられます。インシデントの原因を究明し、再発防止に役立てる「問題管理」も大切です。

ポイント4.ツールを活用する

インシデント管理や問題管理に役立つのが、各種ITツールです。

インシデントの対応状況を管理するには問い合わせ管理やプロジェクト管理などのツールが役立ちます。インシデントへの対応が細かなタスクに分かれ、タスクごとに担当者が異なるようなケースでは、プロジェクト管理ツールが特に便利です。

インシデントに関する情報の共有には、ナレッジマネジメントシステムがおすすめです。過去にどんなインシデントが起きたのか、原因や対応フローと合わせてナレッジ化しておきましょう。

ナレッジマネジメントシステムは検索性に優れ、インシデントの種類や原因などを指定して情報を抽出することもできます。インシデント発生時にナレッジを検索することで、最適な対応方法をすぐに見つけられるようになるでしょう。

ナレッジマネジメントの方法や活用できるツールについては、こちらの記事で解説しています。Excelでナレッジマネジメントをする方法も紹介しているので、まずは費用のかからないこの方法を試してみてください。

>>ナレッジマネジメントとは?管理・共有するおすすめツールや、能動的な知識活用のコツ

 

インシデントプロセス面接とは

インシデントの関連用語として、「インシデントプロセス面接」が挙げられます。リーダー・マネージャーなどの人材の採用に役立つ面接手法で、面接官が提示したインシデントに対して、その問題点や原因、解決策などを答えるというものです。

インシデントプロセス面接を行うことで、候補者の思考プロセスや問題解決能力などを見極められるでしょう。実際のインシデントを問題として提示するため、候補者の答えた原因や解決策などがどの程度有効なものなのかの判断もしやすいです。

 

インシデント管理のフローを明確にし、早期解決・再発防止を目指そう

本記事のまとめ
  • インシデントとは大きな問題が起こる一歩手前の状態のこと
  • 適切なインシデント管理により、被害を未然に防いだり抑えたりできる
  • インシデント管理と、インシデントの原因究明を行う「問題管理」を並行して進めよう

インシデントは主にIT・セキュリティなどの分野で使われる用語で、大きな問題が起こる一歩手前の状態のことです。インシデントを放置したり対応が遅れたりすると、信用失墜や損害賠償などさまざまな被害につながります。

適切なインシデント管理により、インシデントへ早めに対応することが可能となります。被害を未然に防いだり、最小限に抑えたりするために、インシデント管理は欠かせません。

インシデントが発生していないときは、過去のインシデントの原因を究明し、再発防止に役立てる「問題管理」を進めておきましょう。

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