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“リスキリングって何から始めたらよい?” プロティアンキャリア協会・栗原和也さんに1から聞いてきた【インタビュー後編】

菓子翔太

2023/08/15(最終更新日:2023/08/15)


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法政大学キャリアデザイン学部の田中研之輔教授が設立した「一般社団法人プロティアン・キャリア協会」では、法人・個人向けのサービスとして、一人ひとりが自律したキャリア開発をしながら、組織との関係性をより良くするための支援をしています。

U-NOTEは、同協会でCGO(最高事業成長責任者)を務める栗原和也さんに、キャリア開発とリスキリング(業務上で必要とされる新しい知識やスキルを学ぶこと)について、お話を伺いました。

前編「自分のキャリアを組織にあずけるな プロティアンキャリア協会・栗原和也さんが語る“リスキリング”の必要性とは【インタビュー前編】」はこちらから

―――「リスキングしないといけないな」と思っていても、具体的に何のスキルを身につけたいのか分からない方もいらっしゃると思いますが、アドバイスをお願いします。

本を読んでみたり、知っていそうな人に話を聞きに行ったりすることで、自分の興味ある分野を見つけること。こういった、自分自身が必要なものは何かを知るために行動することが重要です。

その上で、「さすがに情報が多すぎて当たりがつかない、どうしよう」という方への参考に、世界経済フォーラムがこれからの時代に必要なスキルをトップ10でまとめたものがあります。

2023年時点で重要だといわれているスキルの上位は、分析的思考やクリエイティブ思考、レジリエンスなどポータブルスキル(業種や職種が変わっても通用する「持ち運び可能な能力」のこと)が多いです。

2023年に必要なスキルトップ10(世界経済フォーラムのWebサイトから引用)

その先、2027年ぐらいに重要性が増すといわれているものは、2023年時点では入っていなかったシステム思考(物事の全体像をシステムとして捉え、さまざまな要素のつながりを把握したうえで、最適解に向かうアプローチのこと)やAI・ビッグデータ関係のスキルが伸びていきます。

こういう風に分析している専門家が説く“これから必要なスキル”にアンテナを立てることがヒントになるのではないでしょうか。

―――年によって上位にくるスキルが違うということは、1回学んだら終わりじゃなくて、時代に合わせて、その都度勉強していく必要があるということですね。

時代が求めていることって変わりますよね。いま通用するスキルが5年後、10年後にそのまま通用するという保証もありません。なので、現代版プロティアン・キャリア理論では、「まずは、この変化に適応するスタンスを身につけることはすごく重要」だと説いています。

しかし人は、いきなり変化に適応しようと思っても中々できません。例えば普段運動しない方が、準備運動やトレーニング無しで100m全力疾走したらどうでしょう? 良い結果にならないどころか、怪我や体調不良の原因にすらなりえます。

変化適応力を高めるには、まずは目の前の課題と向き合って、解決のための行動・学習をすることから始めてください。その積み重ねで「学習能力」や「レディネス(*)」を高めることがキャリアの蓄積であり、変化適応に備える基礎トレーニングとなるのです。

(*)学習が成立する準備が整っていること。
 

―――時代が求めているというグリーンスキルやDXスキルを自主的に学んだうえで、それを会社に還元できる場がないならば転職を考える必要があるんでしょうか。

グリーンスキルやDXスキルのニーズは高まりますが、もちろんそういった先進スキルだけが必要なわけではありません。いま(会社で)取り組んでいることが、すぐに活きるかどうかを早々に判断するのではなくて、“今後ありたい姿に向かってどんな価値があるのか”をきちんと捉える必要があると思っています。

その上で、会社が向かっていく方向と自分のやりたいことが全く違うと思ったら、転職を考えてもいいと思いますが、若い世代に関していうと、そもそも“今後どうなりたいかが浮かんでいない”とか”世の中のことが分かっていない”という方が多いと思うんですよ。

なので、まずは組織が掲げているパーパスやビジョン、中期経営計画に目を通すこと。そのなかに共感することって必ずあるはずなんです。共感する要素を‟自分ごと”として落とし込んで、働く意義をつくって学ぶモチベーションに変えていく。そういうふうに情報を集めて世の中を知り、自ら組織に適応しながら、主体性を形成していくスタンスが、若いうちは特に重要なのではないかと考えています。

―――U-NOTEのターゲット層である20代前半に向けてメッセージをお願いします。

まず行動!(笑) とにかく行動です。インターネット上の情報に必ずしも振り回されないで「自分にとってどんな意味や価値があるのか確認しながら」進んでいただきたいと思ってます。

我々は、これからは個人が輝く時代だと思っています。キャリア自律が大事とお伝えしているのも、組織から答えが与えられるのではなくて、組織が答えを出すことが非常に難しい時代に入っているからです。なので、皆さんすごく不安だと思うんですけど、行動して自分で確かめていくこと。自分のことも世の中のことも知らないことが多いのが若い世代だと思うので、知るための行動を起こしていくことが大事だと思います。

ちなみに今の時代は、先輩方も正直みんな不安だと思います。なので、1人で抱えずにみんなで一緒に乗り越えていきましょう(笑)

また、いきなり答えに向かって最短距離で行けると思わないでください。コストパフォーマンスとかタイムパフォーマンスってよく言いますけど、最短距離で走ったものは最短距離で走った分しか蓄積されません。紆余曲折とか葛藤とか、「これ本当に意味あるのかな」って思ったことがあっても、まずは目の前のことにしっかり打ち込んで自分のものにしてくださいと伝えたいです。

具体的にどう行動したらよいか分からないのであれば、自分自身を知るためにはどうしたらいいかをつかむ行動7選がありますので、その中から自分自身がやってみようと思うことをまず始めてみてください。そうする中で、自分が興味を覚えることが見えてくると思います。

行動7選(一般社団法人プロティアン・キャリア協会提供)

大事なことは、人と比べてどうかではなくて、世の中の動きにはアンテナを立てつつ、「自分にとってどうか、自分自身はどうしていきたいか」を考えること。アイデンティティがしっかりと定まっていない状態で「あの仕事すごい」「あの会社は年収がすごい」と周囲の情報に振り回されてしまうのではなく、行動して自分の感覚をつかむことです。

そのうえで、自分が今いる場所でできることは何か、蓄積できる資本がないかを整理すること。お金だけのためにやっちゃうともったいないですし、何を蓄積していくべきかを考えていただきたいと思います。

それも浮かばない場合は、まず目の前の課題に「100%」の力を出し切って取り組む癖をつけてください。面白いもので、やれない理由は無限に出てきます。その”無意識のモチベーション低下”に振り回されずに、自分にできることに全力で取り組むことです。

 

そうやって、さまざまな蓄積をしていくと、“これはこうやって生かせるな”とか、“これはこう活きてきたな”っていう時代が必ず来るので、その準備を怠らずにやっていただけると、最終的には自分で自分の選択肢を広げられる人生を歩めるんじゃないかなと思います。高いところへ手を届かせるには、足元の土台を積み上げていくことが着実な道なのです。(了)

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