1on1は部下の成長をサポートするための、1対1の面談のことです。部下の話を引き出し、特性やポテンシャルを把握することで、業務改善や組織運営がしやすくなるでしょう。
本記事では1on1とは何か、人事評価面談と何が違うのか、なぜ「1on1は意味ない」といわれるのかを解説。メリット・デメリットを踏まえ、意義ある1on1を実施するために必要なスキルとコツも紹介します。
- 1on1の意味と、人事評価面談との違い
- 1on1のメリット・デメリット
- 意義ある1on1を実施するためのスキルとコツ
1on1とは?
1on1とは上司と部下の1対1で行うミーティングのことです。一度の1on1は15~30分ほどの時間で行われ、定期的に行うことで部下の自発的な成長を促したり、悩みを聞いて離職を防いだりできます。
1on1と人事評価面談との違い
1on1は人事評価面談とは異なる、よりプライベートな面談です。1on1の内容が人事評価や影響することはありません。
また、人事評価面談は上司や管理者から部下への一方通行になりやすいのに対し、1on1は対話やヒアリングを重視します。上司は聞き役に回ったり、自己開示をして部下が話しやすい環境をつくったりすることが大切です。
「1on1は意味ない」と言われる理由
「1on1は意味ない」「時間の無駄」という意見を耳にすることもあるでしょう。実際、Googleの検索候補に1on1と打つと、検索候補に「1on1 やめてほしい」「1on1 意味ない」などと出てきます(2023年5月時点)。
しかし、成長企業の多くが1on1を導入していることも事実です。1on1に本当に意味がないなら、取り入れる企業は少なく、一度取り入れても廃止されてしまうでしょう。
1on1が意味ないといわれるのは、そのやり方や意義を理解できていないからかもしれません。
たとえば通常の面談のように、1on1が上司から一方的に話す場になってしまっては、部下は苦痛にしか感じないでしょう。普段から話しやすい環境・関係性をつくれていなければ、1on1で腹を割った話はできません。
意義ある1on1を行うためのコツは、記事後半で解説します。
1on1を行う5つのメリット
1on1を正しく実施すれば、部下の成長速度と意欲を高められるでしょう。ひいては離職率低下やより強い組織づくりにもつながります。その理由を、1on1の5つのメリットと併せて紹介します。
- メリット1.部下の成長につながる1
- メリット2.部下の意欲を高めやすい
- メリット3.一人ひとりの抱える問題に早めに気付ける
- メリット4.一人ひとりの強みを活かした組織づくりができる
- メリット5.従業員エンゲージメント向上につながる
メリット1.部下の成長につながる
1on1の1つ目のメリットは、「部下の成長につながる」ことです。
1on1の主な目的は部下の成長をサポートすることです。一般的な企業では研修やOJTで仕事を教えた後、社員は実務を通して仕事に慣れていきます。上司やマネージャーからアドバイスをもらえることもありますが、基本的には自分で考え、改善していかなくてはなりません。
このような自助努力ができる社員は一人でも成長できるかもしれませんが、そうでない社員もいます。1on1を行うことで社員一人ひとりの課題や改善点を見出し、より早く、より大きな成長を促せるでしょう。
もちろん、自助努力ができる社員にも1on1の効果はあります。このような優秀な人材が上司を相手に壁打ちすることで、自分ひとりでは気付けなかった課題や改善案を見つけやすくなるでしょう。
メリット2.部下の意欲を高めやすい
1on1の2つ目のメリットは、「部下の意欲を高めやすい」ことです。
1on1では部下のキャリアプランや仕事に対する想いなどもヒアリングします。これらを上司に聞いてもらうだけでも、部下は「自分のことを理解してもらえている」と感じ、仕事への意欲が高まるでしょう。
部下の将来設計や気持ちを踏まえたアドバイスや人材配置もしやすくなります。これにより、部下にとって仕事が自分事になれば、さらに大きな意欲を引き出せるでしょう。
メリット3.一人ひとりの抱える問題に早めに気付ける
1on1の3つ目のメリットは、「一人ひとりの抱える問題に早めに気付ける」ことです。
1on1では部下の悩みや問題についても丁寧にヒアリングしていきます。1on1を通して問題が解決すれば良し、解決しなくとも「自分のことをわかってもらえた」「言いたいことを言えてスッキリした」と、気持ちの整理はつくでしょう。
一人ひとりの部下が抱える問題に早めに気付くことで、対策を打ちやすくなり、労災や離職も防ぎやすくなります。
メリット4.一人ひとりの強みを活かした組織づくりができる
1on1の4つ目のメリットは、「一人ひとりの強みを活かした組織づくりができる」ことです。
1on1は一人ひとりの部下を深く見つめる場です。現在の能力はもちろん、性格特性や適性、まだ発揮されていないポテンシャルなどを見出すのが1on1の主な目的といえます。
これらを把握することは人材の配置や育成において重要です。部下一人ひとりの特性を知り、強みを活かし弱みを補うような組織づくりができれば、よりチームがつくれるでしょう。
メリット5.従業員エンゲージメント向上につながる
1on1の5つ目のメリットは、「従業員エンゲージメントの向上につながる」ことです。
従業員エンゲージメントとは、従業員の会社への貢献度や理解度のことです。「愛社精神」とも呼ばれます。
ここまで紹介してきた1on1のメリットは、すべて従業員エンゲージメントの向上につながるものです。従業員エンゲージメントが高まることは離職率低下や部下のモチベーションアップにもつながり、ひいては職場の雰囲気や評判も良くなるでしょう。
1on1のデメリット
意義ある1on1を行うにはそれなりの時間とスキルが求められます。これらがない状態でカタチだけの1on1を続けても部下の負担になるだけで、むしろ離職やモチベーション低下につながることもあり得ます。
1on1のデメリットを3つ紹介するので、これらを踏まえて実施の有無や自社で実施可能なのかを考えましょう。
時間がかかる
1on1の1つ目のデメリットは、「時間がかかる」ことです。
1on1は部下一人あたり15~30分の時間をかけて行います。部下が10人いれば、全員の1on1を済ませるのに2時間半~5時間もの時間がかかるのです。しかも、1on1は定期的に、なるべく高頻度で実施することが求められます。
1on1のスケジュールを確保することで上司のキャパシティを圧迫しやすく、自分の仕事に支障をきたしたり、過労になったりするリスクもあります。業務配分の見直しや人員の追加などが必要です。
上司側に高い対人・マネジメントスキルが求められる
1on1の2つ目のデメリットは、「上司側に高い対人・マネジメントスキルが求められる」ことです。
ここまで解説してきたように、1on1では部下一人ひとりから本音を引き出し、深く見つめることができなければなりません。そのためには、上司側に高い対人・マネジメントスキルが必要です。
これらのスキルがない状態で1on1を実施しても、カタチだけの1on1になってしまうでしょう。また、これらのスキルは適性によるところも大きく、指導で伸ばしづらいものでもあります。
実施の際には、上司側の教育も合わせて行う必要があると心得ましょう。
1on1を嫌う社員の離職やモチベーション低下につながる
1on1の3つ目のデメリットは、「1on1を嫌う社員の離職やモチベーション低下につながる」ことです。
記事前半でお伝えしたとおり、「1on1は意味ない」「やりたくない」と感じている人もいます。そうでなくとも、上司のスキル不足でカタチだけの1on1をくり返してしまっては、1on1が嫌いになる社員もいるでしょう。
また、上司との信頼関係が築けていない場合は、プライベートな内容を話しにくいと感じる人もいます。
また、一人ひとりと話し、高頻度で行うことが求められる1on1は、上司側のキャパシティの圧迫にもつながりかねません。部下・上司ともに1on1が負担にならないよう、対策を取ることが大切です。ここからは、そのために求められるスキルやできることについて解説していきます。
1on1に役立つ3つのスキル
次からは、1on1に役立つスキルを3つ紹介します。これらのスキルは日常業務での指導や客先とのやり取り、ひいてはプライベートでも役に立つものです。1on1を実施する前には、以下のスキルを意識的に使うように心がけましょう。
傾聴
1on1の基本ともいうべきスキルが「傾聴」です。傾聴とは相手の話に耳を傾け熱心に聴くことで、耳だけでなく目やボディランゲージなどの態度でも、真摯な姿勢を示します。
傾聴の基本は相手の立場になって話を聴き、考えることです。相手の言っていることをそのまま受け入れること、話を聞きながら相手の気持ちを考え共感することが傾聴の肝です。
相手の言っていることをうまく理解できないときや、自分の解釈に不安があるときは、「私はこういう意味だと受け取ったんだけど、これで合っていますか?」と相手に確認しましょう。
自己開示
傾聴では相手に心を開いて、本音を話してもらわなくてはなりません。本音を話してもらうには自分も胸のうちを明かすことが大切です。相手に心を開いてもらうために自分から心を開くことを「自己開示」といいます。
1on1の場だけでなく、普段から少しずつ自己開示を重ねることで、部下も徐々に心を開いてくれるでしょう。自己開示では過去に仕事で失敗したこと、想いなどはもちろん、仕事とは関係のないことでも構いません。たとえば家族や趣味の話などです。
部下は、プライベートな相談をしたいけれど、仕事に関係がないからと話しにくく思っているかもしれません。上司からプライベートな話をすることで、「自分もこのようなプライベートな内容も話してもいいんだ」といった空気を作りましょう。
なお、1on1で自己開示の時間を取るときは、長くても合計5分ほどに抑えるべきでしょう。1on1の目的は部下の話を引き出すことであり、上司ばかりが話してしまっても仕方がありません。
上司側が話しすぎることで「この人自分のことばっかりだな」と部下に不信感を与えてしまうリスクもあります。
コーチング
コーチングとは、相手の話を引き出し、相手が自ら答えを見つけるためのサポートをすることです。これに対し、こちらからやり方や答えを教える方法をティーチングといいます。
部下から話を引き出し、一人ひとりに合ったやり方を見出すには、本人に考えてもらうのが一番でしょう。もちろん、こちら側から答えやヒントを提示し、相手を導いていく必要もあります。
1on1ではコーチングとティーチングを使い分けることが重要です。
意義ある1on1を行うための5つのポイント
カタチだけの1on1は上司の時間を奪い、部下のモチベーションをも低下させかねません。意義ある1on1を行うための5つのポイントを紹介するので、これらを意識して1on1の計画を立て、実施していきましょう。
目的を明確にする
意義ある1on1を行う1つ目のポイントは、「目的を明確にする」ことです。
1回あたりの1on1は15~30分と短時間です。目的が曖昧だと話がわき道に逸れ、答えが出ないまま時間が来てしまうでしょう。
1on1の主な目的は部下の成長をサポートすることです。これを軸に、「現在の課題や悩みを聞き出し解決策を考える」「キャリアプランを聞き、今すべき勉強や経験を模索する」など、1回1回の1on1ですべきことを明確にしましょう。
聞き役に回り部下の話を引き出す
意義ある1on1を行う2つ目のポイントは、「聞き役に回り部下の話を引き出す」ことです。
1on1は部下を成長させるために、一人ひとりの特性やポテンシャルを把握する場です。そのためには、部下のことを深く知らなければなりません。上司は聞き役に回り、部下の話を引き出すことに徹しましょう。
誰にでも当てはまるような指導をするなら、1対多の研修で十分です。一人ひとりに時間を取って1on1をする必要はありません。
定期的に実施する
意義ある1on1を行う3つ目のポイントは、「定期的に実施する」ことです。
1on1の主目的は部下について知り、その成長をサポートすることですが、一度の面談ですべてがわかるわけではありません。頻度を決め、定期的に実施することで、一人ひとりの部下のことが少しずつわかってきます。
内容の記録と分析をする
意義ある1on1を行う4つ目のポイントは、「内容の記録と分析をする」ことです。
1on1は定期的に実施すべきですが、行き当たりばったりで回数を重ねても意味がありません。そのときどきで部下にとって必要なことを話したり、前回の面談から業務のやり方をどう変えたのかを聞いたりすることが大切です。
そのためには面談の内容を記録することが必要です。記録したことを振り返り、分析をすれば、部下の特性もより見えてくることでしょう。
ただし、話しているときにこれ見よがしにメモをすると、話にくくなります。会話中はできるだけ会話に集中できるといいですね。
1on1の結果を業務や組織運営に活かす
意義ある1on1を行う5つ目のポイントは、「1on1の結果を業務や組織運営に活かす」ことです。
1on1の主目的は部下の成長をサポートすることですが、それは部下一人ひとりの能力を高め、組織運営に活かすためです。
1on1は部下の自己啓発をする場でもありますが、面談を業務や組織運営に活かすことを意識して、話す内容を決めましょう。
1on1は使い方次第!意味のない面談をなくし、チームを成長させるためにできること
- 1on1は部下の成長をサポートするためのフランクな面談
- 意義ある1on1を実施するには上司側のスキルと綿密な実施計画が必要
- 1on1の結果を業務改善や組織運営に活かそう
1on1は部下について知り、その成長をサポートするための面談です。人事評価に直接の影響はありませんが、1on1を通して部下が成長すれば、当然評価にもつながります。
しかし、そのような意義ある1on1を実施するには、上司側のスキルときちんとした実施計画が必要です。上司には対人やマネジメント、いわば教育者としてのスキルが求められます。このようなスキルには適性もあるため、1on1を実施する人材は慎重に見極めましょう。
1on1を実施したら、その内容を分析し、業務改善や組織運営に活かすことが大切です。部下の特性を把握し業務改善のアイデアを出すこと、人材配置に活かすことなど、実施後の取り組みの見通しも立てておきましょう。
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