近年ではキャリアアップのため、自己実現のためなどの理由で転職を検討する人も増えています。転職が決まったときに伝えなくてはならないのが退職理由です。結婚や出産、留学などポジティブな理由であればそのまま伝えても問題ありませんが、会社に不満があって退職を決意した場合は伝え方に気を付ける必要があります。
そこで本記事では、退職理由の伝え方に困っている方向けに、良い印象を与える伝え方の例文をご紹介。注意したい5つのポイントについても解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
- 退職理由を伝える際の5つのポイント
- シーン別に使える退職理由の例文をご紹介
- 転職活動の面接で退職理由を聞かれば際の注意点とは
退職理由を印象良く伝える際の5つのポイント
退職の意思を固めたら、そのことを直属の上司に伝えなくてはなりません。その際、退職理由は必ず聞かれるでしょう。
退職をした後も、転職先で一緒に仕事をする可能性があることを考慮し言葉選びには気をつけましょう。まずは転職をすることを伝える前に知っておきたい、退職理由を印象良く伝えるポイントを解説します。
ポイント1.お詫びの気持ちや感謝の気持ちを伝えながら話す
退職理由を印象良く伝える1つ目のポイントは、お詫びの気持ちや感謝の気持ちを伝えながら話すことです。
退職はどんな理由であれ、上司や同僚に業務の負担がかかります。自分が担当していた仕事を引き継いでくれる方も含めて、お詫びの気持ちを伝えることは一番大切にしたいポイントです。
転職先で思いがけず一緒に仕事をすることもあるので、良好な関係は維持したまま退職できるように動きましょう。
加えて、感謝の気持ちも忘れてはいけません。在籍期間に関係なく、お世話になった上司にはしっかりと感謝を伝えましょう。
ポイント2.上司にメールなどでアポを取り、対面で相談ベースで話す
退職理由を印象良く伝える2つ目のポイントは、上司にメールなどでアポを取り、対面で相談ベースで話すことです。
退職の意思が固まり、そのことを対面で伝える場合、まずはメールで上司にアポを取りましょう。スケジュールが空いている時間に声を掛け、いきなり呼び出すのは失礼に当たるので避けてください。
退職の意思を直接伝える際は相談ベースで話すことも大切です。例えば、退職の理由が業務量であれば改善の余地があるからです。現状のままであれば退職を検討していることをはっきりと伝えましょう。
ポイント3.不満を伝える場合は、言葉を選んで話す
退職理由を印象良く伝える3つ目のポイントは、不満を伝える場合は、言葉を選んで話すことです。
退職の意思と同時に会社への不満を伝えるのであれば、退職後の関係にわだかまりを残さないように言葉は選びましょう。この会社で成長できないと感じたという理由は、「別分野に興味が出たためそちらでキャリアを積みたい」「基礎から学び直すための前向きな転職」などの言い換えができます。
ポイント4.上司には自分から退職したいことを伝える
退職理由を印象良く伝える4つ目のポイントは、上司には自分から退職の旨を伝えることです。
上司には必ず自分から退職の意思を伝えるのが社会人のマナーです。タイミングを見て直接話す機会を設けましょう。
退職が正式に確定するまでは、お世話になった先輩や同僚であっても上司より先に話をするのは避けてください。
ポイント5.引き継ぎのことを考え、1〜2ヵ月前には退職したいことを伝える
退職理由を印象良く伝える5つ目のポイントは、引き継ぎのことを考え、1〜2ヶ月前には退職の旨を伝えることです。
法律では、退職の意思は最低でも2週間前に伝えれば良いとされていますが、社会人としてわだかまりを残さずに退職したいのであれば、引き継ぎのことを考慮して退職までの期間には余裕を持たせましょう。
新たに人を採用しなくてはならない可能性もあるため、早ければ早いほど企業側は助かります。遅くとも1〜2ヶ月前には退職したいことを伝え、引き継ぎの準備を行いましょう。
参考:日本労働組合総連合会「労働相談」
【シーン別】退職理由の好印象な伝え方の例文
退職の理由は人によってさまざまです。今後も良好な関係を維持したいのであれば、伝え方には気を遣いましょう。シーン別に好印象な退職理由の伝え方をご紹介します。
仕事が合わない
仕事が合わず退職する場合は「別分野に挑戦したい」「昔から興味のあった分野で仕事をしたい」などの伝え方が好印象です。
【例文】
この仕事をするうちに、新たに挑戦したい分野が出てきました。資格を取得し本格的に取り組んでいきたいと考えているため、退職を希望します。
【例文】
この仕事をしているうちに、昔から興味があった分野に再挑戦したいという思いが強くなっていきました。関連する資格試験にも合格したことをきっかけに、退職をしたいと考えるようになりました。急で大変申し訳ありませんが、○月中の退職を希望します。
ワークライフバランスを見直した
ワークライフバランスの見直しによる退職は比較的多いのが特徴です。残業や長時間労働など、企業に対してネガティブな印象が強いため、理由を伝える際は言葉選びに注意しましょう。
残業したくない、趣味の時間を作りたいなどの理由だと私生活ファーストに受け取られかねません。仕事のための自己啓発の時間を確保したい、子供との時間を確保したいなどの理由だと納得されやすい傾向にあります。
【例文】
新たな業務に挑戦する機会をいただいた際、現状では勉強する時間を確保できず、仕事が中途半端になることに気が付きました。私生活の時間で勉強する時間を確保することでより業務の幅を広げ、成長の好循環を生み出し自身のキャリアに繋げたいと考えております。仕事量や時間を調整しやすい企業への転職を決意いたしました。急な相談で申し訳ありませんが、退職を希望いたします。
パワハラ
パワハラが原因による退職は、理由を正直に伝えるかどうか悩みます。関係悪化を避けるために別の理由を伝えるのもひとつの選択肢です。パワハラをした人物の処分を求めるのであれば人事部に相談し、退職したいことを伝えましょう。
【例文】別の理由を伝える場合
さまざまな業務に取り組むなかで、今の職種とは全く異なる分野に興味が沸きました。本格的に取り組むため、資格の取得も検討しています。非常に悩んだのですが、資格取得の時間や準備の時間を確保するため、退職を希望いたします。
【例文】処分を求める場合
ここ数ヶ月ほど、○○部の○○さんからパワハラを受けており体調を崩してしまったため、退職を希望いたします。メールでのやりとりを一部印刷してきましたので、ご確認をお願いいたします。また、○○さんとのやりとりのなかで本当に自分がやりたい仕事は何かを考える機会があり、○○の業界へ転職することを決めました。大変お世話になったため心苦しいのですが、○○さんに然るべき処分をしていただきたいと考えております。退職までの期間は、○○さんと仕事をする機会がないよう配慮いただけますと嬉しいです。ご検討ください。
給料が低い
給料が低いことを理由に退職する際、直接は伝えずポジティブに言い換えを行いましょう。
【例文】
大変急なことで申し訳ありませんが、○月中での退職を検討しています。理由は、実績が給与に反映される企業で働きたいと考えたからです。次も同じ職種で働き、資格を取得しつつキャリアを積む予定です。急な相談で申し訳ありませんが、退職を希望いたします。
結婚に伴う家庭の事情
結婚に伴い退職が必要になった場合は、その理由をそのまま伝えましょう。会社にとってネガティブな内容ではないので、本当の理由を言っても今後の関係に影響を与えません。
【例文】
急な相談で申し訳ありませんが、結婚に伴いパートナーの転勤に同行することとなりましたので、退職を希望いたします。皆さんにご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございません。数年間大変お世話になりました。
介護に伴う家庭の事情
介護に伴う家庭の事情による退職も、理由をそのまま伝えて問題ありません。
【例文】
両親が高齢になり介護に専念する必要が出てきたため、退職を考えています。介護をしながら仕事を続けられないか検討しましたが、ここまで育ててくれた親への感謝を込めてきちんと面倒を見たいという気持ちが強く、この度決断いたしました。
体調に関する事情
体調不良による退職は、会社に理由をきちんと伝えましょう。医師の診断が下りているのであれば、それを理由に付け加えます。休職を勧められることもありますが、退職したい意思をしっかりと伝えてください。
【例文】
体調が一向に良くならないため病院にて診断を受けたところ、医師に退職を勧められました。自身でもこれ以上は働き続けられないと感じています。皆さまにご迷惑をおかけしてしまい大変申し訳ありませんが、退職させてください。
家業を継ぐ
家業を継ぐために退職する場合、理由は具体的に伝えましょう。時期が決まっていれば、○月までにと併せて伝えておきます。
【例文】
家業をしている父親が先日倒れてしまい、母親ひとりでは事業の継続が難しいため、急遽私が家業を継ぐために地元に帰ることとなりました。父親の介護をしながら家業を継ぐ準備をするため、急で申し訳ございませんが○月いっぱいで退職させていただきたいと考えています。
専門的な仕事をしたい
より専門的な仕事をしたいという理由で退職を決意する方も少なくありません。幅広い業務に携わるうちに専門的に学び、スキルを身に付けて活躍したいと考えるようになったという内容を伝えれば問題ありません。
【例文】
幅広い業務を行うことで多くの経験をさせていただきました。しかし、今後の自分のキャリアを考えたとき、より専門的な分野で仕事をすることがベターだという考えに至りました。違う環境でチャレンジし、自分のステップアップをはかるため、退職を希望いたします。
独立する
転職ではなく独立をする道を選択する方もいます。通常は一身上の都合で問題ありませんが、具体的な理由を聞かれた際は独立による退職を正直に伝えましょう。
【例文】
これから自身の力でやってみたい事業やサービスがあるため、このタイミングで申し訳ありませんが退職させてください。本当に成功できるのか、もう少し準備をした方が良いのではないかなど非常に悩みましたが、やらないで後悔するよりチャレンジして後悔する方が良いと考えました。誠に勝手な申し出となりますが、○月いっぱいで退職できればと考えております。
海外留学する
海外留学のための退職はポジティブな理由ですので、正直に話しましょう。大学や大学院から通知をもらったタイミングで早急に退職の意思を伝えるのがベストです。
【例文】
○年間、海外に留学するため○月いっぱいで退職とさせてください。理由は、○○の分野における技術を磨き、勉強をするためです。実は1年ほどそのための準備をしており、先日大学院から合格通知をいただきました。ご迷惑をおかけいたしますが、○月で退職いたします。
一身上の都合のため
特に理由がない退職では「一身上の都合のため」が理由になります。詳細を伝える必要はありません。
【例文】
一身上の都合のため退職を希望いたします。退職希望日は○月○日です。大変申し訳ありませんが、会社として問題がなければ後任の採用や業務の引き継ぎを進めさせていただければと思います。
面接で退職理由を印象良く伝える方法
転職の面接で退職理由を聞かれることはよくあります。何をどう伝えたら良いか迷う場面ですが、伝え方が印象が左右されるため必ず対策をしておきましょう。参考になる、面接で退職理由を印象良く伝える方法をご紹介します。
- 嘘の退職理由を言わず、誠心誠意伝える
- 複数ある退職理由の中で、言うことと言わないことを決めておく
- 愚痴を伝える場ではないことを心に留めておく
- キャリアプランに一貫性を持たせる
- 前向きな気持ちを持っていることを伝える
嘘の退職理由を言わず、誠心誠意伝える
転職時の面接では、前職の退職理由を尋ねられることがあります。後から嘘がバレてしまうと信用を失いかねません。どんな理由であれ嘘はつかず、ポジティブな理由に言い換えることを意識してみてください。
例えば、職場の人間関係が悪かった場合は「よりチームワークの良い職場で働きたい」「各社員の意思が反映されやすい環境で働きたい」などの言い換えができます。具体的な内容を尋ねられた際、答えられるようにしておくことも大切です。
複数ある退職理由の中で、言うことと言わないことを決めておく
人によっては退職理由が複数あるケースも存在します。全てを伝えてしまう文句が多いと捉えられかねません。言うことと言わないことは決めておきましょう。
伝えることの優先順位は、自分が働く際に重視したいことに合わせて決めるのがベター。人間関係を大切に考えているのであれば、人間関係に関する退職理由を述べつつ、応募した理由に繋げるのがおすすめです。どの理由を話すか、面接前に必ず整理しておきましょう。
愚痴を伝える場ではないことを心に留めておく
退職理由を話すことそのものは問題ありませんが、伝え方は意識したいポイントです。愚痴っぽく話してしまうとネガティブに受け止められる可能性があるので、ただ不満を伝えるのは避けましょう。
前職での問題をどう感じて、どんな行動をしたのか、ネガティブな要素をどのようにポジティブに転換しようとしたのかをメインに話します。愚痴を伝える場ではないことは必ず心に留めておきましょう。
キャリアプランに一貫性を持たせる
キャリアプランに関係した退職理由はポジティブに受け取られる可能性があります。
例えば、前職で携わった仕事内容から全く別の仕事であっても、新たな分野に興味を持って追及したいと思い行動した具体的なエピソードを話せば説得力があります。キャリアプランに一貫性を持たせた志望動機は、前向きな転職として受け取られます。
前向きな気持ちを持っていることを伝える
退職することは決して悪いことではありません。しかし、内容がネガティブすぎたり、ネガティブなトーンで話してしまったりするとマイナスな印象を与えかねません。
前向きな退職であり、転職に対しても積極的に行動している熱意を相手に伝えましょう。自信を持って明るくハキハキと話すことで、主体的に考え動ける人材だと評価される可能性があります。
面接で退職理由を印象良く伝える例文
面接で退職理由を聞かれたら、愚痴っぽい内容にならないように注意しながら転職活動に至った経緯をポジティブに伝えましょう。感情的な言い方や他責の説明をなくすことで、良い印象を与えることができます。
- 現在は営業部に勤務し、お客様の声を一番近くで把握できる立場で業務を行っています。条件面での不満はないのですが、実際にお客様からさまざまな意見を頂戴しているのにもかかわらず、お客様に寄り添ったサービスが生まれない現状に限界を感じております。
問題を解決するため、異動願いを出したり商品の改善案を提出したりしたのですが、コストの面で実現は困難だと伝えられました。未経験ではありますが営業部でお客様のニーズを汲み取る力を鍛えてきたので、商品の企画立案に携わりたいと思い、御社の企画開発部で顧客に寄り添ったサービスづくりを行いたいと考えております。
今後の関係性を円滑に、円満退職できるように退職理由を伝えよう
- 退職理由はポジティブに言い換えて伝えることが社会人のマナー
- 面接で退職理由を聞かれた際、嘘は言わず必要なことだけを伝えよう
- 退職理由は志望動機に繋げて伝えると良い印象を与えられる
転職先で前職の方と仕事する機会があることを考慮して、退職は円滑かつ円満に終えられるようにするのがおすすめです。どんな理由であれわだかまりが残らないように、伝えるタイミングや言い方には配慮が必要です。ネガティブな理由はポジティブに変換し、会社にとっても自分にとっても気持ち良く退職ができるようにしましょう。
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