社内向けの報告書や社外向けの取引文書など、情報伝達や記録のために用いられる「ビジネス文書」。情報を文書化しておくことで、時間が経過したり当事者が退社したりしても内容を正確に振り返ることができるため、会社にとって重要な役割を持っています。
本記事では、そんな「ビジネス文書」の書き出しの挨拶文の基本を解説。実際にビジネス文書を作成する際の参考となる時候の挨拶などもご紹介しています。
- ビジネス文書の挨拶文の構成を解説
- 月によって使い分けられる時候の挨拶をご紹介
- ビジネス文書の挨拶文を考える際の注意点とは
ビジネス文書の挨拶文は4つの要素に分けられる
ビジネス文書はある程度、型が決まっています。その型を使うと美しい文書が作れるため、ビジネスパーソンであれば必ず知っておきたいところです。いざビジネス文書を作成するときに迷うことがないよう、ビジネス文書の挨拶文に見られる4つの要素を理解しておきましょう。
- 頭語と結語
- 時候の挨拶
- 祝意・謝意
- 結び(おわり)の言葉
頭語と結語
「頭語」とは、手紙の冒頭に書く言葉のことです。「こんにちは」に当たる部分。一般的なのは「拝啓」「前略」「啓上」などです。
「結語」とは、手紙の結びに書く言葉のことです。「さようなら」に当たる部分で、頭語に対応した言葉が使われます。「拝啓」の場合は「敬具」、「前略」の場合は「草々」、「啓上」の場合は「排具」が対応しています。
ほかにもさまざまな頭語・結語があり、送る相手やメッセージの内容に応じて使い分けられています。
参考:日本郵便「手紙の基礎知識」
時候の挨拶
時候の挨拶とは、天気や気候、季節や寒暖を表すのに使われる挨拶のことです。普段、口頭の挨拶で「今日は暑いですね」「朝晩は肌寒いですね」などと挨拶を交わすのと同じで、季節を表すだけでなく相手の体調を気遣う意味も込められています。
文書で使われる時候の挨拶には決まったフレーズがあり、送るタイミングで使い分けます。
祝意・謝意
「祝意」は「しゅくい」と読み、お祝いの気持ちという意味があります。文書では「貴社にはますますご繁栄のことと心よりお喜び申し上げます」などと使われるのが一般的です。
「謝意」は「しゃい」と読み、お詫びの心や感謝の気持ちという意味があります。「大変ご迷惑をおかけいたしましたこと深くお詫び申しあげます」などと使われるのが一般的です。
結び(おわり)の言葉
結びの言葉は、結語の前に書くメッセージを締めくくる言葉です。ビジネスでは事業の繁栄や相手の活躍を祈る気持ちを書くのが一般的。健康や幸せを祈る結びの挨拶もよく使われます。
頭語と結語の具体例
頭語と結語はそれぞれいくつか種類があります。特に頭語は数が多いので、よく使われる単語だけ覚えておくといざというときに困りません。頭語とそれに対応する結語の具体例をいくつかご紹介します。
頭語
頭語には複数の種類があります。相手との関係性や手紙の内容にあわせて使い分けるのが基本。よく使われるメジャーな頭語をいくつかご紹介します。
- 拝啓
- 謹啓
- 急啓
- 再啓
- 前略
- 拝復
単語だけでなく文章の頭語も存在します。「初めてお手紙を差し上げます」「突然お手紙を差し上げる無礼をお許し下さい」などは、初めて相手にメッセージを送る際に使われる文章の頭語です。
参考:日本郵便「手紙の基礎知識」
結語
結語は頭語に対応するものが使われます。上記で紹介した頭語に対応する結語をご紹介します。
- 敬具
- 謹言
- 草々
- 敬白
- 頓首
- 拝答
- 再拝
頭語に比べて結語はあまり種類が多くありません。よく使われるのは、敬具・草々・敬具などです。
参考:日本郵便「手紙の基礎知識」
時候の挨拶の例文
時候の挨拶では季節によって適した言葉を使うのがマナー。メッセージを送る日の様子にあわせて、言葉を使い分けましょう。1〜12月まで月ごとに使用できる時候の挨拶の例文をご紹介します。
1月の時候の挨拶の例文
1月はまだまだ寒さが厳しい時期。「厳冬の候」「大寒の候」「初春の候」「例年にない厳しさ」などの言葉を使って時候の挨拶を考えましょう。
- 例年にない寒さが続く昨今ですが
- 年が明け、春が待ち遠しく感じられます
- 厳冬の候、喜びに満ちた新年をお迎えのこと、
2月の時候の挨拶の例文
2月も引き続き寒い季節ですが、1月よりは春に関連した挨拶が多くなります。「立春」「梅のつぼみもほころび」「春はまだ浅く」などの表現が使われます。
- 立春とは名ばかりで寒さが厳しい日も少なくありませんが
- 梅のつぼみもほころぶ季節となりました
- 春はまだ浅く、余寒厳しい日が続きます
3月の時候の挨拶の例文
3月は暦の上では春にあたります。実際にはまだコートが必要な時期ですが、「早春」「春暖」「浅春」など、春に関連する言葉がよく使われます。
- 春分を過ぎ、うららかな季節となりました
- 春寒しだいに緩み、寒さの中に春を感じられる時期となりました
- 春とはいえ、まだ寒い日も少なくありませんが
4月の時候の挨拶の例文
4月になると冬の寒さはかなり和らぎ、日によっては夏のような暑さを感じられることもあります。「春暖」「陽春」など、字面からしてあたたかさを感じられる言葉が使われるようになります。
- 心地良い春風が吹く頃になりました
- 朝晩は少々冷え込みますが
- 春たけなわの頃となり、色鮮やかな花が咲きそろう時季です
5月の時候の挨拶の例文
5月は、暦の上では春の終わりの月。春と夏の境目であることから「新緑」「薫風」「晩春」「若葉」など、初夏を感じられる単語がよく使われます。
- 風薫る季節となりました
- 新緑の香りが感じられる季節となりました
- すがすがしい初夏の風が吹く今日この頃
6月の時候の挨拶の例文
6月は梅雨であり、暦の上では夏にあたります。「初夏」「長雨」「梅雨」などの言葉を用いた時候の挨拶が適しています。
- 長雨が明け、暑さが少しずつ厳しくなる頃ですが
- 梅雨だというのに良い天気が続き、
- 梅雨入り前の爽やかな初夏を迎え、
7月の時候の挨拶の例文
7月は梅雨が明け、暑さも本格的になっていく頃です。体調を崩しやすい時期なので、相手の健康を気遣う挨拶もおすすめです。「猛暑」「酷暑」「暑中見舞い申し上げます」などの言葉がよく使われます。
- 例年にない暑さが続きますが、
- 酷暑により寝苦しい夜が続きますが、
- 連日厳しい暑さが続いております
8月の時候の挨拶の例文
8月は晩夏。実際にはまだまだ夏の暑さが続いている時期ですが、時候の挨拶では秋を感じられる言葉も使われ始めます。「晩夏」「残暑」「立秋」「初秋」などの言葉がよく使用されます。
- 立秋とは名ばかりの暑い日々が続き、
- 残暑お見舞い申し上げます
- 夏の暑さも終わりに向かっているようで
9月の時候の挨拶の例文
9月には夏の暑さも徐々に和らぎ、過ごしやすい日が増えます。秋の到来を肌で感じられるようになる時期です。「初秋」「秋涼」「秋分」など、秋の涼しさが伝わる時候の挨拶が適しています。
- 残暑が和らぎ、秋の涼しさを感じられる頃となりました
- 爽やかな秋晴れが続き、朝夕は過ごしやすい日も増えてきました
- 暑さも彼岸までと申しますが
10月の時候の挨拶の例文
10月はすっかり秋の気配が感じられます。暑さは遠のき、肌寒さを感じるほどです。味覚の秋・スポーツの秋など、行楽シーズンでもあります。「秋冷」「紅葉」など、秋の訪れを感じる言葉を使いましょう。
- 日増しに秋も深まってまいりました
- 美しい紅葉が楽しめる季節となりました
- 秋の夜長、いかがお過ごしでしょうか
11月の時候の挨拶の例文
11月は暦の上では秋に分類されますが、体感的には冬と感じる日も増えてきます。「晩秋」「初冬」「深秋」などの言葉を使って、時候の挨拶を作成するのがおすすめです。
- 朝晩の冷え込みが厳しくなってまいりましたが
- 風に舞う落ち葉に初冬を感じる頃になりました
- 各地で初雪の便りも届く今日この頃
12月の時候の挨拶の例文
12月は本格的な冬の時期。1年の終わりが近づいているタイミングでもあるので、年の瀬を感じる時候の挨拶も適しています。「師走」「厳冬」「木枯らし」などの言葉を使い、挨拶を考えるのがおすすめです。
- 年の瀬も近づいてまいりましたが
- 木枯らしが吹き、寒さが身に沁みる時期となりました
- 慌ただしい師走に入り、何かと気忙しい今日この頃、
祝意・謝意の例文
祝意と謝意はあまりパターンがないので、決まった型を覚えて使うのがおすすめです。
【祝意】
- 貴社にはますますご繁栄のことと心よりお喜び申し上げます。
- 心よりお祝い申し上げます。
【謝意】
- 大変ご迷惑をおかけいたしましたこと深くお詫び申しあげます。
- 多大なご迷惑をおかけいたしましたこと、改めて心よりお詫び申し上げます。
結び(おわり)の言葉の例文
結びの言葉はいくつかパターンを用意しておき、文書によって使い分けましょう。
- 今後ともご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。
- ますますのお引き立てをよろしくお願い申し上げます。
- 貴社のいっそうのご発展を心よりお祈り申し上げております。
企業に送るビジネス文書の書き方・例文
企業に送るビジネス文書は、1つの文書につき1つの要件のみであることを理解しておきましょう。いくつかの要件をまとめてしまうとスムーズな理解を妨げるほか、内容によっては失礼にあたります。
- セミナーのご案内
謹啓
陽春の候 貴社におかれましてはますますご盛栄のことと心よりお慶び申し上げます。日頃より格別のご愛顧を賜り、厚くお礼申し上げます。さて、この度弊社では下記の要領にて広報関係者セミナーを開催させていただくことになりました。
つきましては、ご多用中かと存じますが是非ともご来場いただきたくお願い申し上げます。
敬具
お客様などの個人に送るビジネス文書の書き方・例文
個別に送るビジネス文書の書き方は、企業に送る場合とあまり変わりません。4つの要素を忘れず、簡潔かつわかりやすい内容を心がけましょう。
ちなみに、挨拶文として使われる「ご盛栄」「ご繁栄」は事業の発展を意味するため個人宛には適していません。個人の場合は「ご清祥」や「ご健勝」を使いましょう。
- 拝啓
初秋の候、○○様におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。日頃より格別のご指導を賜り、厚くお礼申し上げます。
さて、先日ご相談させていただいたように、弊社の●●セミナーの講師として○○様にご講演いただきたくお願い申し上げます。
(ここに個人への思いを具体的に入れる)
つきましては、ご多用中誠に恐縮ではございますが、何卒ご高配賜りたくお願い申し上げます。
敬具
ビジネス文書の挨拶文を考える際の注意点
ビジネス文書の挨拶文を考える際に注意したいのは、時候の挨拶が季節にあっているかどうかです。例えば、3月はまだ寒い日が多い季節ですが、暦の上では春に分類されます。そのため、「春の暖かさを〜」「春の訪れを〜」などと書いてしまうと受け手側に違和感を与えてしまいます。
近年では春や秋は少しずつ短くなりつつあります。暦の上では春でも、そのまま時候の挨拶として使ってしまうと定型文の印象を与えかねません。季節は自身できちんと判断し、適切な挨拶ができているか送る前に最終確認も忘れないようにしましょう。
定型文を覚えて挨拶文をスマートに書けるようになろう
- ビジネス文書の挨拶文は4つの要素からできている
- 頭語・結語は対応する言葉を覚えておこう
- 時候の挨拶は季節にあわせて使うのがマナー
ビジネス文書では、普段のビジネスメールでは使われないような堅めの定型文が使われます。作成するたびに調べていては、不必要な時間がかかってしまい非効率的です。
この機会に定型文を覚えるか、本記事をブックマークしておくなどして、挨拶文をスマートに書けるようになりましょう。
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