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時短勤務(短時間勤務)とは?適用期間や対象者、給与、導入状況などを紹介

U-NOTE編集部

2023/05/16(最終更新日:2023/08/27)


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育児や介護をしながら働く労働者も働きやすくする「時短勤務(短時間勤務)」。子育てや介護を行いながら、自身のキャリアも大切にしたい方にとって便利な制度です。2009年の改正により全ての事業者で導入が義務づけられ、国にとっても重要な制度とされています。

本記事では、そんな「時短勤務」について知っておきたい基本的な知識をご紹介。適用期間や対象者、利用した際の給与状況なども説明します。

時短勤務制度の利用を考えている方や、どのような形で自社に取り入れようかと考えている労務・総務の担当者はぜひ参考にしてみてください。

本記事の内容をざっくり説明
  • 時短勤務と短時間正社員・育児休業の違いを説明
  • 時短勤務を利用できる期間と対象者について解説
  • 時短勤務のメリットと注意点

 

時短勤務(短時間勤務)とは?

時短勤務(短時間勤務)とは、雇用形態はそのままに所定労働時間を短縮する措置のことです。育児・介護休業法により定められた制度で、育児や介護が必要な労働者のみ利用でき、1日の所定労働時間を6時間として働くことが可能です。

参考:育児休業・短時間勤務制度

 

短時間勤務が導入された理由・背景

短時間勤務制度は1991年に育児休業法が施行された際に作られました。現在では法の改正が行われ、事業者には短時間勤務制度の導入が義務づけられています。育児休業法の施行と改正により、短時間勤務が導入された理由と背景を説明します。

厚生労働省による育児・介護休業法改正

短時間勤務が導入された理由は、厚生労働省による育児・介護休業法の改正が関係しています。

育児・介護休業法は2009年に改正されました。時短勤務制度の義務化のほか残業時間の免除、子供の看護休暇制度や看護休暇の新設なども同時に行われており、事業主は必ず制度を導入しなければなりません

参考:厚生労働省「育児・介護休業法が改正されます!

少子高齢化や育児の必要性

少子高齢化や育児の必要性が増していることも、短時間勤務制度が導入された理由のひとつです。日本は近年、出生率が低下し続けていることが問題となっています。少子化の原因は主に、未婚率の上昇と晩婚化の進行といわれています。その背景には、仕事と子育てを両立しようとする際の負担の増加が関係しています。

働きながら子育てする場合にネックとなるのが労働時間です。日本では8時間労働制が導入されており、正社員雇用されている従業員は1日8時間、1週間に40時間働くことが義務づけられています。しかし、そのような状態では子供を育てるための時間を十分に確保できません。

そこで導入されたのが短時間勤務制度です。3歳未満の子供を養育する方であれば この短時間勤務制度を利用することができます。

参考:厚生労働省「少子化対策推進基本方針について

参考:厚生労働省「労働時間・休日

参考:厚生労働省「育児・介護休業法が改正されます!

 

時短勤務と、短時間正社員制度との違い

時短勤務と似た制度に「短時間正社員制度」というものがあります。短時間正社員とは、正規雇用の社員でありながら所定労働時間や所定労働日数が短い労働者のことです。

時短勤務に期限があるのに対して、短時間正社員には期限がありません。1日の労働時間の制約もないため、繁忙期は実働8時間、あまり忙しくない時期は実働6時間にするなど労働時間も自由に決めることができます。

給与にも違いがあります。時短勤務制度では労働時間の短縮に応じて基本給が減額されるのに対して、短時間正社員制度ではフルタイムの正社員同等の給与・賞与・退職金が支給されます。

時短勤務制度は育児や介護をしながら働くための制度で、短時間正社員制度は労働人口が減少している現状において優秀な人材を確保するための制度なので、契約条件が異なっています。

参考:厚生労働省「短時間正社員制度 導入・運用支援マニュアル

 

時短勤務と、育児休業との違い

子育て中の労働者が活用できる制度のひとつに「育児休業」があります。育児休業では、1年間の休業が認められています。

時短勤務が3歳未満の子供がいる場合に使える一方で、育児休業は1歳未満の子供がいる場合、子供1人につき原則1回使うことが可能です。保育所に入所できないなどの理由があれば、最長2歳になるまで延長もできます。

給与の支払いについても違いがあります。時短勤務では労働時間に比例する給与・賞与が事業者から発生するのに対して、育児休業では育児休業給付の支給があります。条件を満たしている方が対象で、事業主から賃金が支払われていない場合に限り国から支給されます。

時短勤務は働きながら使える制度、育児休業は子育てのため休業しながら使える制度と覚えておきましょう。

参考:厚生労働省「育児休業制度

参考:厚生労働省「育児・介護休業改正法のポイント

参考:厚生労働省「育児休業給付について

 

時短勤務はいつまで利用できる?

時短勤務は育児と介護でそれぞれ利用できる期間が異なります。それぞれ定められている利用可能期間を知っておきましょう。

育児による短時間勤務の適用期間

育児による短時間勤務の適用期間は、子供が3歳になるまでです。何歳からというのは法律では決まっていませんが、企業によっては定められているところもあります。育児・介護休業法では、1歳に満たない子供から3歳未満の子供までを持つ労働者が短時間勤務制度を利用できます。

参考:厚生労働省「育児・介護休業法が改正されます!

介護による短時間勤務の適用期間

介護に短時間勤務は、利用開始から連続する3年間以上の期間で取得可能です。3年の間で少なくとも2回以上利用できます。例えば、1年間短時間勤務を利用し、その後1ヶ月を介護休業にあて、またその後1年11ヶ月間、短時間勤務を利用するなどの使い方が可能です。

参考:厚生労働省「短時間勤務等の措置とは

 

時短勤務が適用される対象者

時短勤務が適用される対象者は、育児と介護ではそれぞれ異なります。自身が制度を利用する際に悩むことがないよう、適用される対象の範囲を正しく理解しておきましょう。

育児による短時間勤務の対象者

育児による短時間勤務の対象者は、3歳未満の子供を持つ正社員雇用の男女です。

2009年に育児・休業法が改正されるまでは、短時間勤務制度や残業免除制度などから事業者が1つ選択して制度を設けることが義務とされていましたが、法の改正により短時間勤務制度が義務化されたため、3歳未満の子供を持つ養育者は例外なく制度を利用することができます。

参考:厚生労働省「育児・介護休業改正法のポイント」

介護による短時間勤務の対象者

介護による短時間勤務の対象者は、対象家族を介護している男女の労働者です。

対象家族とは、事実婚を含む配偶者に加えて、父母・子供・祖父母・兄弟・姉妹・配偶者の父母・孫のことを指します。これらの対象家族が要介護状態であるとき、短時間勤務制度を利用できます。

参考:厚生労働省「短時間勤務等の措置とは

 

時短勤務が適用除外になる対象者もいる

育児・介護ともに時短勤務が適用除外になる対象者も存在します。適用されないのは1日の所定労働時間が6時間以下の方や、日々雇用されている方、制度を利用する期間に育児休業している方などです。

労使協定を締結している場合で、勤続年数が1年未満の方と、1週間の所定労働日数が2日以下の方も適用されない可能性があります。また、業務の性質や実施体制により、制度の導入が難しいと判断された場合も適用除外となるケースがあります。

参考:厚生労働省「両立支援のひろば

参考:厚生労働省「短時間勤務等の措置とは

参考:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし

 

時短勤務時の給与・給料

時短勤務時の給与や給料は、実労働時間に比例して少なくなります。「基本給×月の実労働時間÷月の所定労働時間」の計算式で求められます。

例えば、基本給が20万円で月の所定労働時間が8時間、月の実労働時間が6時間の場合、給料は15万円となります。

 

時短勤務の導入状況

時短勤務制度を要している事業者の割合は、令和3年度は68.9%。令和2年度は68.0%、令和1年度は67.4%だったため、導入の割合は少しずつ増加しています。

利用可能期間については、子供が3歳未満が53.6%と最も多い結果に。3歳以上の子供を養育している場合も時短勤務制度の対象になるかどうかは各事業者の判断に委ねられているため、小学校就学の始期に達するまでと回答した事業者は16.1%となっています。

参考:厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査(事業所調査)」P28

 

時短勤務のメリット

時短勤務は労働者だけでなく事業者にもメリットがあります。制度を導入することで得られる時短勤務のメリットを解説します。

メリット1.優秀だが働ける時間に限りがある人を雇える

時短勤務制度の導入は、優秀だが働ける時間に限りがある人材を雇う際にメリットがあります。どんなに優秀でも未就学児の子供がいる場合は育児が優先されます。保育園に入れることができたとしても、保育園の預かり時間は8:30〜16:30までのところがほとんど。正社員として働くことは難しいのが実情です。

時短勤務制度があれば、そうした優秀だけれど育児のためアルバイトやパートとして働かざるを得ない人材を正社員として雇うことができます。労働時間は短くなりますが事業者にとって優秀な人材を確保できるメリットは大きいでしょう。

メリット2.正社員の定着化が図れる

時短勤務制度を導入することで、正社員の定着化も図れます。産休後に復帰した際、育児と仕事を両立しやすいため、雇用形態を変えずに働くことができ、それが離職率の低下に繋がります。労働人口が減少しているなかでも必要な人材を維持し続けることが可能です。

 

時短勤務を行う場合の注意点

時短勤務制度を導入する際は、全従業員に制度を理解してもらうことが大切です。環境を整えたうえで制度を取り入れないと、さまざまなトラブルが起こりかねません。時短勤務を行う場合の注意点を解説するので、自社で導入する際の参考にしてみてください。

給料が減額されてしまう

時短勤務を行う場合、給料が減額されることは留意しておきましょう。実労働時間の減少に比例して、給料も少なくなります。子供の看病や行事などで休む日が出てくればさらに給料は減額されます。

賞与の金額は事業者によって異なります。元々、賞与は各企業が設定している独自の賃金形態です。そのため、時短勤務の利用者で全額支給される方もいれば、半額支給される方もいます。就業規則を確認しましょう。

人間関係に問題が生じる可能性がある

時短勤務制度を利用する際、人間関係に問題が生じる可能性があることも留意しておきたいポイントです。

時短勤務による所定労働時間は原則6時間です。利用者にとっては非常に便利な制度ですが、働く時間が短縮される分、その時間で行っていた業務はほかの従業員が担当することになります。

自身の業務量が増えることで、不公平だと感じる社員もいるはずです。人間関係が悪くなる可能性があるので、従業員の理解を得るなど環境を整えてから制度を導入することがおすすめです。

業務量が減り、労働者の成長が阻害される

時短勤務により月の労働時間が減ると共に、全体の業務も減少します。取り組める時間が限られていることで新たな業務に挑戦する機会も減るため、ビジネスパーソンとしての成長は阻害される可能性があります。

育児・介護休業法による時短勤務は、男女関係なく育児と仕事を両立できるようにと作られた制度です。事業者はそのことを理解しつつ、時短勤務の労働者が成長の機会を損失しないよう業務体制の工夫が必要です。

 

時短勤務についてよくある質問

時短勤務制度は便利な制度ですが、利用するにあたって情報収集は必要です。利用する際にどんなメリット・デメリットがあるのかは確実に知っておきましょう。制度の利用を検討している方に向け、時短勤務についてよくある質問について回答します。

時短勤務は正社員のまま使用できるの?

時短勤務は正社員のまま使用できる制度です。労働時間は短くなるものの、正社員のまま育児と仕事を両立できます。契約期間に制限もなく、子供が生まれた後もバリバリ働きたい方にとってありがたい制度です。6時間であれば週の所定労働時間が20時間を超えるため、社会保険も適用されます。

時短勤務でも残業があるの?

時短勤務は労働時間が短くなる制度であって、残業がなくなる制度ではありません。そのため、時短勤務でも残業をする場合があります

ただし、時短勤務労働者は事業者に対して時間外労働の制限を求めることが可能。ひと月で24時間、1年で150時間を超えないように調整できます。

参考:「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」第十七条

時短勤務でも有休は使用できる?

時短勤務労働者は通常の正社員同様に有給休暇を使用できます。週5日勤務している場合は、通常の正社員と同じ日数が付与されます。

週4日以下、30時間未満の場合には発生する日数が少し減ります。事業者は法律により定められている日数を確認し、時短労働者の状況に応じて有給休暇を付与しましょう。

参考:厚生労働省「年次年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています 有給休暇」の付与日数は、法律で決まっています」

時短勤務中は休憩時間が短くなるの?

労働基準法第34条により、労働時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩時間を与えなくてはならないとされています。

時短勤務は労働時間を6時間に短縮する制度です。労働基準法第34条に照らし合わせた場合、休憩時間はなくても問題ないとされます。ただし、6時間を1分でも超えた場合は最低でも45分の休憩時間が必要です。

時短勤務で1日の労働時間が8時間を超えることはほとんどありません。そのため、通常の正社員に比べると休憩時間は少し短くなります。

参考:労働基準法(第34条)

時短勤務中では、社会保険は適用される?

時短勤務中であれ、加入条件を満たしていれば社会保険は適用されます。加入条件は以下の通りです。

  • フルタイムで働く方
  • 週所定労働時間および月所定労働日数がフルタイムの4分の3以上の方
  • 週所定労働時間20時間以上
  • 月額賃金8.8万円以上
  • 勤務期間1年以上見込み
  • 学生ではない
  • 従業員数501人以上の企業で働いている

加えて、2022年10月から従業員数101人以上の企業で働いている方のなかで、週20時間以上、月額賃金8.8万円以上、勤務期間2ヶ月以上の見込み、学生ではない場合にも社会保険に加入できるよう法律の改正が行われました。

時短勤務労働者は1日6時間、週に5日働くため社会保険の加入条件をクリアしています。社会保険は適用されると知っておきましょう。

参考:厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト

 

時短勤務制度の導入事例

時短勤務制度はさまざまな企業で導入されています。規模が29人以下の企業から1000人以上の企業まで、働き方改革の一貫として取り入れられています。

複合機やプリンタなどのオフィス機器を中心に開発・生産・販売を行うリコー株式会社は、1990年に育児時短勤務を導入。1996年には介護時短勤務を取り入れています。

育児・介護時短勤務は原則全従業員が利用可能。5時間・6時間・7時間のパターンから選べるよう配慮されています。育児を中心に300名程度の従業員が制度を利用しており、今後も社員のニーズを把握して制度の充実を図るとしています。

参考:多様な働き方の実現応援サイト

 

時短勤務の制度について理解しよう

本記事のまとめ
  • 時短勤務制度は3歳未満の子供を養育する男女が使える制度
  • 時短勤務は正社員のまま利用できるが給料は労働時間に応じて減少する
  • 時短勤務を行う場合、周りの理解が求められる

時短勤務の制度は、フルタイムの正社員に比べて労働時間・給与・休憩時間などさまざまなことが異なります。時短勤務を行うには、周りの理解やサポートが必須。フルタイムの方に比べて働く時間が短くなっているため、業務体制や業務量などを部署ごとに考え直さなくてはなりません。

本記事を参考に、時短勤務の制度について理解を深め、育児をしながら働きやすい環境を整える手助けを行いましょう。

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