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有給日数の計算方法を雇用形態別に解説!付与や取得のルール、注意点も紹介

U-NOTE編集部

2023/05/10(最終更新日:2023/08/27)


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有給はすべての労働者にとっての権利であり、事業者にとっては法律どおりに付与する義務があります。「アルバイトには有給がない」のようなことはありません。

本記事では有給の付与日数をどう計算すればいいのか、雇用形態別に解説します。有給取得時の支払われる金額の計算方法や、付与・取得に関する法律上のルール、有給の買取などについてもまとめて紹介します。

本記事の内容をざっくり説明
  • 有給はすべての労働者に適用される権利
  • 有給の付与日数を雇用形態に解説
  • 有給の金額を計算する方法や、取得・消化時の注意点

 

有給の付与日数は法律で決まっている

有給は「年次有給休暇」に略称で、条件を満たしたすべての労働者に付与される「給与が出る休日」のことです。有給の付与日数は労働基準法で決まっています。

2019年4月からは、有給の付与日数に応じた有給取得が義務化されました。有給を使いたいという従業員に使わせないことはもちろん違法ですが、本人の希望にかかわらず、条件を満たした従業員には有給を取得させなければなりません。

有給は雇用形態にかかわらず取得できる

有給は雇用形態にかかわらず取得できます。正社員でもアルバイト・パートでも、派遣労働者でも、条件さえ満たせばすべての労働者に有給が付与されます。

「うちはあるバイトには有給を出していない」のように言われたことがある人もいるかもしれませんが、それは嘘です。

有給の取得や消化を拒むことはできず、「その日に休まれると業務に支障が出る場合」にのみ、取得時期をずらすように提案することができます。この場合も、取得時期をずらせるだけで、取得そのものを拒むことはできません。また、取得時期の変更により有給が失効してしまう場合は、時期変更も認められません。

 

有給の日数の計算方法

有給は「雇い入れ日から6ヵ月が経過している」「全労働日数のうち8割以上を出勤している」の条件を満たすと、雇用形態にかかわらず付与されます(これらの条件について、詳しくは後述します)。

有給が付与されるのはフルタイムの正社員もパート・アルバイトも同じですが、日数の計算方法が異なります。

なお、法律上は正社員やパート・アルバイト、派遣などの区別はありません。法律上は給与をもらって働くすべての人が「労働者」であり、全労働者の権利として有給があるのです。

フルタイム(正社員)で働く場合

フルタイム(正社員)で働く場合、有給の日数は勤続年数により変動します。雇い入れ日から6ヵ月目を1回目の有給が付与され、以降、次の表のように付与日数が増えていきます。

出店:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています │ 厚生労働省

シフト制(パート・アルバイト)で働く場合

パートやアルバイトなどのシフト制で働く人は、フルタイムで働く人と有給の付与日数の計算方法が異なります。正式には「週所定労働時間が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者」がこれにあたり、付与日数は次の通りです。

出典:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています │ 厚生労働省

なお、所定労働日数(時間)とはシフト表に書かれた労働日数や労働時間のことではありません。これらは雇用契約書で定められた日数・時間のことです。

雇用契約書で定めたことと実際の労働状況が異なる場合、労働者は雇用契約を解除できると法律で定められています。そのため、「所定労働日数を少なめに設定しておいて、有給の日数を少なくしよう」のようなこともできません。

もしも自分がこのような状況にあり、有給の付与日数に疑問を感じるなら、労働基準監督署に相談に行くといいでしょう。その際、次のような資料を持っていくと相談がスムーズになるはずです。

  • 雇用契約書の移し

  • 有給の日数がおかしいと感じる期間のシフト表

  • 有給の日数がおかしいと感じる期間の給与明細

 

有給の付与や取得に関するルール

有給の付与や取得に関するルールについて解説します。これらを一通り押さえておけば、自分には有給がいつ、どのくらい付与されるのか、どのように使っていけばいいのかが考えやすくなるでしょう。

原則として雇い入れの6ヵ月目から付与

最初の有給は、原則として雇い入れ日から6ヵ月勤続勤務をしたタイミングで付与されます。以降、1年ごとに有給が付与されていきます。

出勤率が8割を満たす場合に付与

有給は雇い入れ日から6ヵ月目、以降1年ごとに付与されていきますが、これは「その期間の出勤率が8割を満たす場合」です。たとえば雇い入れ日から6ヵ月目までの所定労働日数が100日なら、80日は出勤していなければなりません。

ただし、次のような理由で休んだり、法律上の休業を取得したりしている期間は出勤したものとして扱われます。これらの期間を除いて出勤率が8割を満たしているなら、有給も付与されます。

  • 業務上の怪我や病気で休んでいる期間

  • 法律上の育児休業を取得した期間

  • 法律上の介護休業を取得した期間 など

有給を10日以上付与したら、5日分の取得義務が発生

有給が年10日以上付与される労働者に対しては、そのうち5日分を取得させる義務が生じます。取得義務があるにもかかわらず、5日分の有給を取得していない場合、使用者(労働者を雇用している雇用主)が時期を指定して取得させなければなりません。

なお、5日以上自ら取得している労働者に対しては、時期指定は不要です。

有給の有効期限は付与から2年間

有給の有効期限は付与から2年間です。2年を過ぎたら有給は失効してしまい、使えなくなってしまいます。すべて消化できるよう、計画的に取得していきましょう。

なお、有給が期限切れによりなくなってしまう場合、買取が認められることがあります。これについて、詳しくは後述します。

原則として、有給は取得したいときに取得できる

原則として、有給は労働者が指定した日に取得できます。使用者が有給取得を拒むことはできません。

ただし、「その日に有給を取られると事業を正常に運営できない」と判断される場合、使用者が有給日を変更する権利が認められています。これを時期変更権といいます。

なお、時期変更権は単に「忙しいから」というだけでは行使できません。その日に複数の労働者が有給を取ろうとしている場合などが、時期変更権が行使できるケースです。

有給の金額の計算方法

有給の金額を計算する方法は3つあります。

通常賃金

通常賃金とは、通常通りに勤務したときに受け取る賃金のことです。給与の計算方法ごとに、それぞれ次のように算出されます。

通常賃金の計算方法
  • 月給制:月給/該当期間の所定労働日数
  • 時給制:時給×該当期間の所定労働時間
  • 日給制:日給額をそのまま支給
  • 出来高制・その他請負制:該当期間の賃金総額/該当期間の労働総時間*1日の平均所定労働時間

平均賃金

平均賃金とは、直近3ヵ月間の総賃金を、その期間の総日数で割った金額のことです。計算式は次の通りです。

  • 直近3ヵ月の賃金総額/その期間の暦日数

なお、直近3ヵ月の労働日数が通常よりも少ない場合は次の計算式で支給額を求め、上記計算式と比べて高い方が実際の支給額となります。

  • 直近3ヵ月の賃金総額/その期間の労働日数×0.6(60%)

健康保険法の標準報酬日額

標準報酬月額とは、社会保険料の計算に用いられる基準額のことです。これを用いて有給の支給額を計算することもありますが、書面で労使協定を締結しなければなりません。この金額には上限額があり、通常賃金や平均賃金よりも支給額が少なくなる可能性があるためです。

標準報酬日額は、健康保険法で定められた標準報酬月額を30で割った数字になります。

標準報酬月額は年度と都道府県ごとに異なり、下記Webページから確認できます。

都道府県毎の保険料額表 | 協会けんぽ | 全国健康保険協会

 

有給の付与や取得に関する注意点

有給の付与や取得に関する注意点を紹介します。これらを押さえておかないと、有給日数を正しく計算できなくなったり、取得・消化のスケジュールが崩れたりするかもしれません。

出勤率8割未満でも「継続勤務年数」にはカウントされる

有給が付与されるのは、その期間の出勤率が8割を満たした場合ですが、これを満たさなくても「継続勤務年数」にはカウントされます。

たとえばフルタイムで働く人が、雇い入れ日から6ヵ月目までの所定労働日数のうち、出勤できたのが7割だったとしましょう。この場合、雇い入れ日から6ヵ月目の有給(最初の有給)10日分は付与されません。

ただ、雇い入れ日の6ヵ月目~1年6ヵ月目までの1年間は出勤率8割の条件を満たしたら、付与される有給は1年6ヵ月目に付与される11日分です。

会社独自の有給は取扱いが異なる

有給の付与は法律により義務付けられていますが、これとは別に会社独自に設けられた、次のような有給制度があります。

  • 慶弔休暇

  • 夏季・冬期休暇

  • アニバーサリー休暇

  • リフレッシュ休暇 など

このような有給の取扱いは法律ではなく、就業規則により定められています。

原則として買取はできない

有給の買取は原則として認められていません。有給の目的は「労働者の心身の回復を図ること」です。

買取を認めてしまうと「給料を増やしたいから、有給を使わずに買い取ってもらおう(休みは取らない)」と考える労働者や、「人手不足だし、有給分の給与は出すから休まず出勤してもらおう」と考える組織が出てきてしまうかもしれません。

これらを認めてしまうと「労働者の心身の回復を図る」という有給の意義が失われてしまいます。

買取が認められるケースでも、買取義務はない

有給の買取は原則として違法ですが、次のようなケースでは認められることがあります。

  • 買取対象がその会社独自の有給である場合

  • 期限切れにより有給が失効してしまう場合

  • 退職時に有給が残っている場合

ただし、これらのケースに当てはまる場合でも、企業側に買取義務はありません(就業規則でこれらのケースで買取を認めると定めている場合、買取義務が生じます)。

就業規則で買取制度について定めている場合は別として、有給の買取は企業側の厚意によるものです。確実に取得・消化できるようスケジュールを組むこと、企業側が買取ってあげようという気持ちになるよう真面目に勤めることを意識しましょう。

有給の買取について、こちらの記事で詳しく解説しています。失効や退職が近づき、有給が消化し切れないという方はぜひお読みください。

有給の買取は違法?認められるケースや金額の計算方法、買取時の注意点を解説

 

有給の日数や金額は自分でも計算しておこう

本記事のまとめ
  • 有給の日数は所定労働日数により計算する
  • 損をしないよう、有給の日数や金額は自分でも計算しよう
  • 有給の買取は原則認められないため、計画的に取得・消化しよう

有給の日数は所定労働日数により計算されます。フルタイムで働く人は本記事で紹介した表の通りで日数計算も簡単ですが、「週所定労働時間が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者(主にパート・アルバイト)」は計算がやや複雑です。

雇用契約書から所定労働日数を確かめること、これを実際の労働状態を照らし合わせ乖離がないか確認することが大切です。

なお、企業の人事部であっても有給の日数や金額を間違って算出してしまうことはあります。この場合、本来よりも日数や支給額が少なくなることもありえます。損をしないよう、本記事を参考に自分でも計算しておくのが安心です。

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