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有給の買取は違法?認められるケースや金額の計算方法、買取時の注意点を解説

U-NOTE編集部

2023/05/01(最終更新日:2023/08/27)


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有給の買取は原則として違法ですが、会社独自の有給や使い切れない有給などは、例外として買取が認められています。

本記事では有給の買取がなぜ違法なのか、どのようなケースで認められるのかを紹介します。買い取る場合の金額や、企業・労働者それぞれにとってのメリット、買取と取得・消化ではどちらがいいのかなどについても解説します。

本記事の内容をざっくり説明
  • 有給の買取は原則として違法であることと、その理由
  • 有給の買取が認められる3パターンの例外
  • 有給の買取金額や、買い取る場合の企業・労働者それぞれのメリット

 

有給は原則として買取できない

有給は原則として買取できません。後述する例外を除いては取得または消化しなければならず、有給を失効させずにフル活用するには計画的に取得していかなければなりません。

有給の買取が原則として違法なのは、買取を認めることで有給の意義がなくなってしまうからです。有給の目的は労働者に休みを与えることで心身の回復を図り、公私のバランスが取れた生活を送れるようにすることです。

有給の買取を認めてしまうと「有給分の給与を上乗せで受け取りたいがために、その分の休みを取らずに出勤しよう」と考える人も出てくるでしょう。会社側も有給分の給与を与え、休みは与えないということができるようになり、有給の意義が失われてしまいます。

そもそも年次有給休暇とは?

そもそも有給とは「年次有給休暇」の略称で、すべての労働者に認められた権利のことです。正規・非正規などの雇用形態にかかわらず、すべての労働者は所定労働日数や雇い入れからの期間に見合った有給を受け取れます。

なお、有給は雇い入れ日から6ヵ月が経過し、かつその期間の所定労働日の8割以上を出勤している場合に発生します。以降、1年おきに所定労働日数に応じた有給が発生しますが、有給の取得期限は発生から2年間です。発生から2年を超えた有給は失効していしまいます。

 

有給の買取ができるケース

有給の買取は原則として違法で、たとえ労働者本人の同意があったとしても認められません。ただ、次のようないくつかの例外では有給の買取が認められています。

その会社独自の有給の買取

有給の買取が認められる1つ目のケースは、「その会社独自の有給の買取」です。法律で定められた要件や日数とは別に、その会社が独自に定めている有給は買取が認められています。

このような有給の呼び名は会社により異なり、具体的には次のようなものがあります。

  • 慶弔休暇

  • 夏季・冬期休暇

  • アニバーサリー休暇

  • リフレッシュ休暇 など

有給が期限切れにより失効する場合

有給の買取が認められる2つ目のケースは、「有給が期限切れにより失効する場合」です。先述の通り、有給には2年間の有効期限があります。これを超えた有給は失効し、使えなくなってしまいます。

失効した有給はそもそも使うことができず、そのため労働者が有給による休みを取ることもできません。使い切れずに失効する有給を買い取っても、「労働者を休ませる」という意義に反することはないため、買取が認められています。

退職時に有給が残っている場合

有給の買取が認められる3つ目のケースは、「退職時に有給が残っている場合」です。退職日が決まっており、それまでに残りの有給を消化しきれない場合はその分の買取が認められています。

このケースでの買取が認められる理屈も、「有給が期限切れにより失効する場合」と同じです。退職してしまえば、それまで在籍していた会社の有給は当然使えなくなります。「労働者を休ませる」という意義に反していないため、有給の買取が認められています。

 

有給の買取を求める際の注意点

使い切れない有給やその会社が独自に定めた有給は買取が認められていますが、会社側に買取義務はありません。これをきちんと理解しておかないと、会社が有給の買取を認めてくれず、退職後の資金計画が狂うかもしれません。

労働者が会社に有給の買取を求める際の注意点を3つ紹介します。

企業側に買取義務はない

有給の買取を求める際の1つ目の注意点は、「企業側に買取義務はない」ことです。これを頭に入れておかないと、会社との交渉がスムーズに進まず、消化できなかった分の有給が失効してしまうかもしれません。

会社が就業規則で有給の買取について規定している場合を除き、会社側に有給の買取義務はありません。それは、失効期限や退職日までに使い切れずに有給がなくなってしまう場合も同じです。

「使えなかった有給は当然買い取ってもらえる」と思っていると、取得や消化のスケジュールを正しく組めないかもしれません。

円満退社を心がけよう

有給の買取を求める際の2つ目の注意点は、「円満退社を心がける」ことです。先述の通り、就業規則で有給の買取について定めていない限り、会社には有給を買い取る義務がありません。この場合、有給を買い取ってもらえるかどうかは会社の厚意次第となります。

有給の買取を当然と思っているような態度でいたり、トラブルを起こしたりすると、会社側の「使えなかった分の有給を買い取ってあげよう」という気持ちもなくなってしまうでしょう。

円満退社を心がけ最後まできちんと仕事をすること、買取は会社の厚意であることを忘れず、それに感謝することが大切です。

退職時は有給消化がベター

有給の買取を求める際の3つ目の注意点は、「退職時は有給消化がベター」ということです。先述の通り有給の買取は会社の厚意によるところが大きく、買取が認められるケースだからといって確実に買い取ってもらえるわけではありません。

退職時に余った有給があるなら、不確実な買取ではなく、確実な消化を考えておいた方がいいでしょう。会社は有給の取得を拒むことはできず、業務に差し支える場合のみ取得時期の変更を求めることができます。

しかし、退職時の有給消化で取得時期の変更を求めることはできないため、退職日までに消化できるようにスケジュールを組むことで有給をすべて使い切れます。

有給消化で引継ぎに支障が出るようなケースでも、会社は有給の消化や時季変更を拒むことはできないため、買取も認めてもらえるでしょう。

 

有給の買取金額の計算方法は3つ

有給を買い取ってもらう場合、買取金額の計算方法には次の3つがあります。

通常賃金での買取

通常賃金とは、通常通りに勤務したときに支給される賃金のことです。たとえば月給制の会社なら「月給額/対象月の所定労働日数=通常賃金」となり、時給制なら「時給額×その日の所定労働時間=通常賃金」となります。日給制の場合は日給額がそのまま通常賃金となります。

平均賃金での買取

平均賃金とは直近3ヵ月間の賃金の合計を、その期間の総日数で割った金額のことです。

なお、給与が時給制や日給制、出来高制で、労働日数が少ない場合はこの限りではありません。この場合、「3ヵ月の賃金総額/労働日数×0.6(60%)」が最低保証額となります。簡単にいえば、直近3ヵ月間の労働日数が少なくても、平均賃金の6割は保証されるということです。

標準報酬月額での買取

標準報酬月額は、社会保険料の計算に用いられる基準額です。標準報酬月額を利用して有給を買い取る場合、この金額の30分の1が買取金額となります。

ただし、標準報酬月額を利用して買取金額を決める場合、書面で労使協定を締結しなければなりません。

 

有給買取の企業側のメリット

有給を買い取ることは企業側にとって「社会保険料の負担軽減」「トラブル回避」などのメリットがあります。

従業員の退職が決まり、退職日までの残り日数のすべてを有給消化に使うことになったとしても、その従業員は退職日まで会社に在籍していることになります。

そのため、会社は退職日を迎えるまで社会保険料を負担しなければなりません。有給を買い取り退職日を早めることで、在籍日数が少なくなり、社会保険料の負担も軽くなります。

また、退職が決まった従業員が「辞めるのをやめます」と言うかもしれません。残った有給を買い取り、退職日を早めることで、このようなトラブルを回避しやすくなります。

有給消化中(退職の合意が労働者と会社の双方から取れた後)に従業員が退職の取り消しを求めても、会社がそれに応じる義務はありません。ただ、「会社を辞めます」「やっぱり辞めません」のようなやり取りはトラブルの元ですし、会社としても疲弊します。

 

有給買取の労働者側のメリット

有給を買い取ってもらうことは労働者側にとって所得税の節税メリットがあります。退職時の有給買取で受け取るお金は「退職所得」に該当し、これには1年あたり40万円の非課税枠があります。

受け取る金額によっては所得税がかからず、かかるとしても税額を抑えられるでしょう。

なお、通常の有給消化や退職時以外の買取では退職所得として扱われず、通常通りに所得税がかかります。

 

有給は買取ではなく取得・消化すべきもの

本記事のまとめ
  • 有給の買取は原則として認められない
  • 会社独自の有給や使い切れない有給は買取が認められることも
  • 退職時の有給買取にはメリットもあるが、取得・消化がベター

有給の買取は原則として認められていませんが、会社独自の有給や、失効期限や退職日までに使い切れない有給の買取は例外として認められています。

ただ、就業規則で有給買取について定めていない限り、企業側に有給を買い取る義務はありません。有給を確実に使い切るためには、やはり通常通りに取得・消化するのがいいでしょう。本記事を参考に、有給の使い方を検討しみてはいかがでしょうか。

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