リトリートとは静かな温泉地や人里離れた田舎などに赴くことで、日常生活から物理的に離れる新しい旅行スタイルです。日々の生活から離れることで心は平静を取り戻し、自分本来の価値観を見つめなおしやすくなると言われています。
本記事では現代人にリトリートが必要な理由や、その効果を最大化するためのコツを紹介します。忙しくて旅行に行けないという人に向けて、日常生活にリトリートを取り入れる方法も紹介するので、できそうなことから試してみてください。
- リトリートとは何か、なぜ注目されているのか?
- リトリートにおすすめの場所や活動
- リトリートの効果を最大化するちょっとしたコツ
旅行の新しいカタチ「リトリート」とは?
リトリートとは、普段過ごしている場所から物理的に離れ、心静かに過ごす旅行スタイルのことです。一般的な旅行は観光が目的ですが、リトリートの目的は心身を休めリフレッシュさせること。自宅や会社、街の喧騒の中では心が落ち着かないため、これらから離れた場所に赴き、滞在します。
3Rから4Rの時代へ
リトリートの語源はリトリートメント(Retreatment)で、これは隠れ家や避難所といった意味を持つ言葉でした。そこから派生し、日常から離れて心身をリフレッシュさせる活動をリトリートと呼ぶようになりました。
このリトリートメントを含む4つのRが、毎日忙しい現代人に必要な要素として注目されています。
【4つのRとは?】
- Retreatment(リトリートメント):日常から離れて心身をリフレッシュさせる
- Rest(レスト):肉体を休めて疲労を解消させる
- Relaxation(リラクゼーション):緊張をほぐし回復力を高める
- Recreation(レクリエーション):楽しい時間を過ごし気持ちをリフレッシュさせる
この4つのRはメンタルヘルスの分野で推奨されています。
かつてはリトリートメントを除いた3つのRでしたが、常に情報過多で時間も場所も問わずに連絡が来る現代人にとって、3つのRでは不十分です。情報過多の環境から離れ心身と脳を休めるために、日常から距離を置きリトリートメントする必要があるのです。
現代人にこそ必要!リトリートの3つのメリット
現代人は常に膨大な量の情報とストレスにさらされています。心身が壊れてしまう前に情報やストレスから離れ、適切なケアをしてあげましょう。そのために、リトリートが役立ちます。
リトリートによる3つのメリットを、リフレッシュや自分探しの観点から紹介します。
日常生活と物理的に距離を置きリフレッシュできる
リトリートの1つ目のメリットは、「日常生活と物理的に距離を置きリフレッシュできる」ことです。普段から仕事や生活をしている場所にいながら、本当に落ち着くことはなかなかできないでしょう。日常生活と物理的に距離を置くことで、深くリフレッシュできるのです。
人間の脳は「そこが何をする場所なのか」を学習します。たとえばオフィスや自宅の仕事部屋を、私たちの脳は「仕事をする場所」と認識しており、そこにいるだけで仕事のことが気になってしまいます。
仕事用のデスクに座り、仕事用のPCでYouTubeを見てもなんとなく落ち着きませんし、脳が「仕事をするはずの場所で動画を見ているのはなんでだろう?」と混乱してしまいます。
こういった混乱を起こさせず、脳のリソースを解放するためには、リフレッシュするための場所に赴くのが有効です。
周囲の影響から脱した「まっさらな自分」と出会える
リトリートの2つ目のメリットは、「周囲の影響から脱した”まっさらな自分”と出会える」ことです。普段暮らしている場所から離れるということは、場所やそこで関わる人の影響からも離れられるということです。
山奥で自給自足の生活をしているのでもない限り、人は他人の影響を必ず受けています。こういったノイズから距離を置くことで、周りに影響されていない「まっさらな自分」が見えてくるでしょう。
自分自身を見つめ、将来のことを深く考えられる
リトリートの3つ目のメリットは、「自分自身を見つめ、将来のことを深く考えられる」ことです。周りの影響から脱した「まっさら自分」を見つめることで、自分本来の欲求が見えてきます。
リトリート中の静かな気持ちで、自分自身の考え方や価値基準を見つめなおしてみましょう。自分は何を楽しいと感じ、どう在りたいと思うのかを見極めることで、自分にとっての幸せな生活とは何か、将来どうなりたいかを深く考えられます。
リトリートでどこに行く?目的別のおすすめ行き先
リトリートは日常生活や人々の喧騒から離れ、心静かにリフレッシュすることが目的です。そのため、いわゆる観光地ではなく、人里離れた秘境のような場所が適しています。
リトリートでどこに行けばいいのか、おすすめの行き先とそこで得られる効果を紹介します。
温泉地
リトリートの鉄板といえば、やはり静かな温泉地でしょう。有名な温泉地に行くのもいいですが、隠れ家的な、人があまりいない温泉地がリトリートには適しています。
お湯につかって身体をじっくりと温めることで血流がよくなり、凝りや緊張がほぐれる効果も得られます。
何より、温泉(お風呂)に入っているときにはいろいろな思考が浮かぶものです。シャワーを浴びているとき、面白いアイデアをひらめいたり長年の悩みの解決策が浮かんだりした経験がある人も多いでしょう。
自分を見つめ、将来のことをさまざまな角度から考えたい人には、温泉地でのリトリートがおすすめです。
自然豊かな場所
自然豊かな場所、特に森の中はリトリートに最適です。どんなに文明が進んでも、人間も結局は自然の生き物です。豊かな自然に囲まれているときが一番リラックスでき、気持ちもリフレッシュできるでしょう。
自然豊かな旅館や民宿に赴き、散歩や森林浴をしてみてください。自然の雄大さを感じることで、人間関係のしがらみから解き放たれることでしょう。
静かな田舎
静かな田舎の民宿に泊まり、そこでの生活を眺めてみることもおすすめです。田舎には畑を耕し、そこで取れた野菜を近所におすそ分けするような、人間らしい生活があります。もちろん、田舎には田舎のしがらみがありますが、人間が本来もっているあたたかみも色濃く残っています。
普段都会で過ごしている人にとっては発見も多く、新鮮な気持ちで過ごせるでしょう。
普段の生活を田舎での生活と見比べ、自分にはどちらが合っているのか、それぞれの生活のどこに魅力を感じるのかを考えてみるのもおすすめです。自分や自分の周囲とは異なる生活・価値観に触れることで、自分自身を見つめなおしやすくなるでしょう。
リトリートで何をする?4つの活動と効果を紹介
リトリートの効果を最大化する4つの活動を紹介します。どれも手軽にできることなので、できればバランスよく、すべての活動に取り組んでみてください。
ヨガ
リトリート中におすすめの活動の1つ目は「ヨガ」です。ヨガには心から苦悩や迷いを取り除く効果があります。エクササイズとしての効果も高く、凝り固まった筋肉を伸ばすことにもなるので、シンプルに気持ちいいでしょう。
YouTubeで「ヨガ 初心者」と検索すれば、簡単にできるヨガのポーズを教えている動画がいくつも見つかります。併せて「ヨガ 呼吸法」と検索し、正しい呼吸で行うことで、心を整える効果は大きくなります。
【ヨガの呼吸法・やり方】
-
ゆっくりと鼻から息を吸い、お腹を膨らませていく
-
1の呼吸法で息を吸いながら、取りたいポーズを取る
-
ポーズの完成形ができたら、口から細く長く息を吐く
-
1ポーズにつき5回、鼻から吸って口から吐いてをくり返す
※ヨガの呼吸は腹式呼吸です。肺ではなくお腹で酸素を吸ったり吐いたりするイメージで、ゆっくりと呼吸しましょう
瞑想
リトリート中におすすめの活動の2つ目は「瞑想」です。ヨガと同じく心の中の雑念を取り払い、静かな気持ちになれる効果があります。
また、瞑想には生産性や集中力を高める効果があり、毎日続けることでその効果は高くなっていきます。1日5分程度から始め、慣れてきたら少しずつ時間を延ばしていきましょう。
リトリート中は1回30分ほどを目指すのがおすすめです。集中力・生産性アップの効果を得たい人は、リトリートから帰ってからも1日15分を目安に続けるといいでしょう。
【瞑想のやり方】
-
瞑想終了を知らせるアラームをセットする
-
椅子か床にゆったりと座る(床に座る場合はあぐらか坐禅がおすすめ)
-
全身の力を抜き手を膝の上に置く
-
目を閉じてゆっくり呼吸し、呼吸に集中する
-
このとき無理に無心になろうとはしない(雑念が浮かんできたらそれを観察するイメージ)
-
瞑想終了のアラームが鳴るまで続ける
【瞑想の呼吸法】
-
お腹に酸素を送り込むイメージで、鼻からゆっくりと息を吸う
-
お腹をポンプにするイメージで、口から細く長く息を吐く
-
慣れるまでは1呼吸吸う・吐くのに4秒ほどかける
-
慣れてきたら1呼吸吸う・吐くのに7~10秒ほどかける
森林浴
リトリート中におすすめの活動の3つ目は「森林浴」です。森の中を散歩したり、ヨガマットを敷いて寝転がったりして、森の景色や空気を楽しみましょう。
どんな木があるのか、空気にはどんな匂いがしてどのくらいの温度なのかを観察したり、鳥や動物が立てる音に耳を澄ませたりすることで、森林浴の効果は高くなります。暑さ・寒さの気にならない時期なら、森の中で昼寝をするのもいいでしょう。
森をはじめとする豊かな自然には、私たち人間の神経を癒す力があります。森の中にいるだけで心は回復し、気持ちが晴れやかになるのです。
この特性を活かし、森林浴中は自分にとって考えたくないことを考えてみるのもおすすめです。そのことについて考えるだけで気が重くなる、だからなかなかそのことに向き合えないという悩みにも、森の中でなら向き合いやすくなります。考えることでダメージを受けた神経を、森がその場で回復させてくれるからです。
もちろん、リトリートの目的はあくまで癒しなので、無理に考えごとをする必要はありません。ただ、心と時間に余裕ができてきたら、せっかくの機会を活かして普段向き合えない問題と向き合ってみるのもいいでしょう。
読書(小説)
リトリート中におすすめの活動の4つ目は「読書」です。ハウツー本や難しい本は避け、できれば小説を読みましょう。
イギリスのサセックス大学の研究により、読書をする人のストレスは、読書をしない人に比べて68%も低いことがわかっています。小説を読むことには、特に人間関係によるストレスを癒す効果があります。
温泉に浸かったり森林浴をしたりしながらお気に入りの作家の本を読むことで、より深くリラックス・リフレッシュできるでしょう。
より良いリトリートを過ごすには?簡単にできる3つのコツ
どんな過ごし方をするのかで、リトリートの効果は大きくも小さくもなります。リトリート中に意識してほしい3つのコツを紹介するので、できそうなことだけでも試してみてください。
予定を立てない
リトリート中はできるだけ予定を立てないようにしましょう。特に、「いつ、何をするか」という時間を決めるのは避けたいです。
時間を軸に予定を立てることで、時間に追われる感覚が強くなってしまいます。リトリートの目的は頭の中を空っぽにしてリフレッシュすることなのに、「もうすぐ〇〇の時間だ」と時計が気になってしまうでしょう。
腕時計は外しておき、泊まっている部屋の時計もできるだけ見ないようにしてください。
スマホを見ない、置いていく
可能ならば、リトリートに行くときは自宅にスマホを置いていきましょう。置いていくことはできなくとも、なるべく見ないようにしたり通知を切ったりして、スマホが気にならない環境をつくってください。
リトリートは日常生活から離れ、膨大な量の情報やストレスから距離を置く活動です。スマホでネットサーフィンをしたり知人・友人に連絡を返したりしてしまっては、リトリートの効果も半減します。
スマホがどうしても気になる人は、次のような設定を試してみるのもおすすめです。
【スクリーンタイム】
ブラウザやSNSなどのアプリを指定し、決められた時間開けないようにする設定です。ついついSNSを見たりネットサーフィンをしたりしてしまう人、連絡が来ていないか気になってしまう人におすすめです。
【スクリーンタイムの設定方法】
-
設定を開く
-
スクリーンタイムを開く
-
「休止時間」でアプリを開けなくする時間を決める
-
「常に許可」でスクリーンタイム中に開けるアプリ・開けないアプリを指定する
-
「スクリーンタイム・パスコード」でパスコードを決める
※パスコードを決めておかないとアプリを簡単に開けてしまいます。パスコードは家族に決めてもらい自分には教えないでいてもらうか、リトリート中にパスコードを入力できないよう、無作為に設定してメモを自宅に残しておき、自分では忘れてしまうのがおすすめです。
【グレースケール】
スマホの画面をモノクロにします。色がなくなるだけでスマホからの刺激は減り、「スマホを触りたい」という欲求を抑えやすくなります。
【グレースケールの設定方法】
-
設定を開く
-
アクセシビリティを開く
-
ショートカットを開く
-
「カラーフィルタ」にチェックを入れる
-
サイドボタンを3連打すると画面がモノクロになる
-
もう一度3連打すると画面が元に戻る
断食を取り入れる
リトリート中に断食を試してみるのもおすすめです。消化という活動には大きなエネルギーがかかります。断食をすることで胃腸をはじめとする内臓を休めたり、老廃物や毒素を排泄したりできるでしょう。
断食には向き・不向きがあり、慣れるまで辛いという人も多いです。1日3食を2食にしてみるなど、無理のない範囲で取り組みましょう。リトリート中の断食には「リーンゲインズ」がおすすめです。
【リーンゲインズ】
男性なら16時間、女性なら12-14時間、何も食べない断食時間を設けます。断食時間中はカロリーのあるものを口にせず、飲み物も水かノーカロリーのお茶やコーヒーなどを飲みます。
これを続けることで1日の摂取カロリーが自然と20~30%減る効果もあり、無理なく減量することもできます。
リトリートに出かける時間がない人は、簡単なルーティンとして取り入れてみよう
- リトリートは日常生活から離れ、心身をリフレッシュさせたり自分を見つめなおしたりする活動
- リトリート中の過ごし方を工夫することで、リフレッシュ効果は高くなる
- リトリート中はスマホをできるだけ触らず、予定も立てないようにしよう
リトリートは日常生活から物理的に離れることを目的に、静かな温泉地や自然豊かな場所にある民宿などに行く旅行スタイルです。ヨガや瞑想などと相性がよく、仏教の考え方に馴染みがある人にはその効果もイメージしやすいでしょう。
ただ、旅行という性質上、なかなかリトリートに行けないという人も少なくありません。忙しくて数日間の遠出もできないという人は、日常の中にリトリートを取り入れてみましょう。
たとえば毎朝近所の公園や河原、防砂林などを散歩するだけでも、かなりのリフレッシュ効果が得られます。自然の中で20分ほど散歩し、余裕があるなら30分ほど読書をするだけでも、ストレス耐性が高まり生産性や集中力も上がります。
少し早起きして仕事に行く前にこのような活動をすることで、毎日が少しずつ充実していくでしょう。
朝の30分~1時間を確保するのも難しいという方は、スマホのグレースケールやスクリーンタイムだけでも試してみてください。スマホからの刺激や情報をシャットアウトするだけで、脳のキャパシティを大きく解放できます。
生産性が上がり、仕事や家事が早く終わるようになり、リトリートに行く時間も確保できるようになるかもしれません。
【関連記事】
【例文13選】転勤時の挨拶の仕方|現部署・転勤先・社外向けに分けて紹介
転勤の辞令があった後に行うのが、転勤時の挨拶です。現部署・転勤先・社外向けに対してそれぞれ行います。今後の関係の有無にかかわらず、いち社会人として丁寧な挨拶を行いましょう。 本記事では、そ...
転勤のメッセージ10例文紹介|上司や先輩、先生など相手との関係ごとに紹介
転勤する方には、転勤のメッセージとして感謝の気持ちやねぎらいの言葉を送ります。無難な内容でももちろん問題ありませんが、間柄によっては冷たい印象を与えることも。相手との関係性を考慮してメッセージを...
有給日数の計算方法を雇用形態別に解説!付与や取得のルール、注意点も紹介
有給はすべての労働者にとっての権利であり、事業者にとっては法律どおりに付与する義務があります。「アルバイトには有給がない」のようなことはありません。 本記事では有給の付与日数をどう...
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう