aカタルシスとは漠然とした不安や怒りなどのネガティブな感情を開放すること。簡単にいえば溜め込んでいたものを吐き出し、心がスッキリすることです。
本記事ではカタルシスの意味や、カタルシスに由来する心理的な効果「カタルシス効果」について解説します。カタルシス効果がどのように活用されているのか、どうすれば活用できるのかも紹介します。
- カタルシスの意味や、カタルシスを得ることによる心身への効果1
- カタルシス効果が活用されるプライベート・ビジネスシーン
- カタルシス効果をビジネスや人間関係に活かすコツと、役立つスキル
カタルシスとは?
カタルシスとは、蓄積したネガティブな感情が開放され、心がスッキリすることです。古代ギリシャの「Kathar」に由来する言葉とされ、これは「浄化」「排泄」などの意味をもちます。
たとえば漠然とした不安やイライラに苛まれているとき、偶然読んだ小説や観た映画などに心が救われたような気持ちになることがあるでしょう。その作品が、まるで自分の中にあるネガティブな感情を代弁してくれているように感じ、嫌な気持ちが浄化されることがあります。
このような心理状態を「カタルシスを得る」といいます。
心のゆとりや信頼につながる「カタルシス効果」とは
心に溜まったネガティブな感情を浄化する「カタルシス」に由来し、誰にも言えずに心の中に閉じ込めてきた不安や辛さなどを吐き出し、心のゆとりを取り戻すことで得られるのが「カタルシス効果」です。
カタルシス効果は自分の心に訴えかけるような作品に触れてカタルシスを得ることに加え、自分の気持ちを人に話したりノートに書き出したりすることでも得られます。
カタルシス効果により私たちの心身に何が起こるのか、カタルシスを得る側、カタルシス効果を与える側に分けて解説します。
カタルシスを得ることで心身が健康に
カタルシスを得る側の効果として、「カタルシスを得ることで心身が健康になる」ことが挙げられます。
カタルシスを得ると心がスッキリします。キャパシティぎりぎりまでの溜め込まれていたネガティブな感情が吐き出されたり浄化されたりすることで、心に余裕が生まれます。
昔から「心と体はつながっている」「健全な精神は健全な肉体に宿る」というように、心の状態は身体にまで影響を及ぼします。心に余裕がない状態では食事が喉を通らなかったり、睡眠をしっかり取れなかったりという経験は誰しもあるでしょう。
カタルシス効果を相手に与えることで信頼が得られる
先述の通り、誰にも打ち明けられずにいた心のうちを人に明かすことでカタルシスが得られることもあります。このとき打ち明けられた側の人、つまりカタルシス効果を与えた側の人は、その相手から大きな信頼が得られるでしょう。
人との対話によりカタルシス効果を得る際、カタルシスを得る側はそれを与える側に、自分の心のうちを明かすことになります。詳しくは後述しますが、話を聞く側が相手を理解することに徹することではじめてカタルシス効果が生まれます。
話をした側にとって、これは「自分の話をただ黙って聞いてもらえた」「自分のことを理解してもらえた」という経験であり、これにより生まれる信頼は絶大です。
そのため、意識的にしろ無意識的にしろ、カタルシス効果はさまざまな場面で活用されています。次からは、カタルシス効果がどのように活用されているのか、プライベートシーンとビジネスシーンに分けて紹介します。
カタルシス効果が役立つプライベートシーン
カタルシス効果はあらゆる人間関係で役立ちます。友人関係はもちろん、特に恋愛関係で大きな効果を発揮するでしょう。
先述の通り、人はカタルシスを与えてくれた相手に大きな信頼をいだきます。カタルシス効果を意識することで相手からの信頼が得やすくなり、より深い関係を築いていけるでしょう。
カタルシス効果が役立つビジネスシーン
カタルシス効果はビジネスシーンでも幅広く活用されています。特に営業や販売、マーケティングなどの顧客とのかかわりが深い仕事、従業員からの信頼が大切なマネジメントなどでカタルシス効果が役立つでしょう。
営業や販売、コールセンターなどの仕事
営業や販売、コールセンターなどの仕事は顧客との距離が近く、彼らの話をよく聴き理解する能力が求められます。
営業や販売ではお客さまの考えていることやニーズを理解し、それに寄り添った提案ができる人が高い成績を上げています。コールセンターでは怒り心頭で電話をかけてきたお客さまがオペレーターと話すうちに矛を収め、最終的にクレームがお褒めの言葉に代わることもあるでしょう。
このような事象はすべてではないにしろ、担当者が会話の中でお客さまのことを理解し、カタルシス効果を与えることで起こります。
カタルシス効果を意識してお客さまと接することで、一人の担当者としてはもちろん、企業としての信頼を勝ち取ることができるでしょう。
マーケティング
営業や販売のように直接話すわけではありませんが、マーケティングもお客さまとの距離が近い仕事です。カタルシス効果を意識したマーケティング施策により、お客さまから信頼を得たり、自社の商品やサービスの必要性を感じてもらったりできるでしょう。
先述の通り、カタルシスは「小説や映画などの作品が、自分の気持ちを代弁してくれた」と感じたときに起こります。要は相手(読者や視聴者)を理解していることを示したり、彼らが共感したりするような表現をすることで、カタルシス効果を与えられるのです。
これはSNSやオウンドメディアなどのテキスト、YouTubeの動画などでも引き起こせるでしょう。だからこそ、高い成果を出している記事や動画には「共感パート」があるのです。
採用
カタルシス効果は対お客様だけでなく、対従業員にも活用できます。たとえば面接の場では、採用官が求職者を理解したり寄り添ったりする姿勢を示すことで、相手にカタルシス効果を与えられるでしょう。
これにより求職者が「この会社は自分のことを理解してくれている」「この人と一緒に働きたい」と感じてくれれば、入社前から相手の従業員エンゲージメントを高められるでしょう。求職者から選ばれる確率も高くなり、優秀な人材の確保もしやすくなります。
マネジメント
従業員を育てたりマネジメントしたりといった場面では、カタルシス効果がことさら重要です。
人は信頼していない相手の言うことをなかなか聞いてくれません。反対に、信頼している相手に対しては、その期待に応えたいと前のめりな姿勢を示してくれるでしょう。
何より、従業員について理解することは、一人ひとりに最大限のポテンシャルを発揮させるうえで欠かせません。相手が心を開きやすい環境をつくることで、カタルシス効果を得ると同時に、相手のことを深く理解できるでしょう。メンバー一人ひとりの特性がわかれば、育成や配置もしやすくなります。
カタルシスを得る方法
鬱屈とした気持ちが続くときは、意識的にカタルシスを得て、心をスッキリさせてあげましょう。カタルシスを得る方法を3つ提案します。
人に話したり書いたりする
カタルシスを得る1つ目の方法は「人に話したり書いたりする」ことです。
自分が溜め込んでいるネガティブな気持ちを言語化し、人に話したり書いたりしてみましょう。要は自分の気持ちを吐き出せればいいので、人に話すのが難しいならノートに書くだけでも十分です。
溜め込んでいる気持ちは漠然とした不安やどこにぶつけたらいいのかわからない怒りなど、言語化が難しいこともあるでしょう。このようなときは、話しながら(書きながら)少しずつ気持ちを言葉に変えていってください。自分でもわからなかった気持ちが、いつの間にか見えるようになっているはずです。
映画や小説、音楽などの鑑賞
カタルシスを得る2つ目の方法は「映画や小説、音楽などの鑑賞」です。
カタルシス効果は心に溜め込んでいるネガティブな気持ちを吐き出したり、理解してもらったりすることで得られます。そのため、カタルシス効果を狙うなら、「悲しい」「切ない」などの雰囲気がある作品がおすすめです。
カタルシスは一度見た作品からも得られます。どんな気持ちを吐き出したいのかに分けて、お気に入りの作家や作品をストックしておくのもいいでしょう。
後回しにしていることを片付ける
カタルシスを得る3つ目の方法は「後回しにしていることを片付ける」ことです。
何かを後回しにしていると、後回しにしていることへの不安や、「やらなきゃいけないことをやっていない」という自己否定の感情が生まれてしまいます。多少面倒でも、後回しにしていることを片付けてしまった方が、心がスッキリするでしょう。
後回しにしていることを片付けていく過程で、「面倒くさい」「失敗したらどうしよう」など、自分がなぜそれを後回しにしていたのかが見えてくることもあります。自分の気持ちを吐き出すのと近い効果があり、これによりカタルシスが得られるでしょう。
相手にカタルシス効果を与えるコツ
先述の通り、カタルシス効果はビジネスシーンでも役立ちます。特に継続的なアプローチが大切なマネジメントにおいては、日頃からカタルシス効果を意識することで相手からの信頼が深まり、より大きな成果が得られるでしょう。
相手にカタルシス効果を与えるコツを4つ紹介します。
日頃から信頼を得られるような言動を心がける
相手にカタルシス効果を与える1つ目のコツは、「日頃から信頼を得られるような言動を心がける」ことです。
カタルシス効果を与えるには相手に心を開いてもらい、自分の内側に溜め込んでいたことを吐き出してもらわなければなりません。人に打ち明けられずにいたことを話してもらうためには、相手からの信頼が必要です。
「この人なら秘密を守ってくれる」「自分の話を親身になって聞いてくれるはずだ」と思ってもらえるよう、日頃から信頼を得るような言動を心がけましょう。
アドバイスや意見は求められるまで言わない
相手にカタルシス効果を与える2つ目のコツは、「アドバイスや意見は求められるまで言わない」ことです。
重大な打ち明け話をしているときに、的外れなアドバイスをされたり、相手の意見を押し付けられたりしたらどう感じるでしょうか。
カタルシス効果を相手に与えるためには、その相手を理解し共感することが大切です。そのためには相手の話に集中することが大切であり、アドバイスや意見は必要ありません。
話を無理に引き出そうとしない
相手にカタルシス効果を与える3つ目のコツは、「話を無理に引き出そうとしない」ことです。
無理に話を引き出そうとしては、相手から警戒されてしまいます。無理強いをすることで、それまで積み重ねてきた信頼が水の泡になってしまうかもしれません。
相手から無理に話を引き出すのではなく、相手が話したくなるような働きかけをすること、「話したいことを話していい」と思ってもらうことが大切です。
話しやすい環境をつくる
相手にカタルシス効果を与える4つ目のコツは、「話しやすい環境をつくる」ことです。
相手は誰にも言えず、心の中に溜め込み続けてきたことを話そうとしているはずです。「話したことが外に漏れない」「この人なら自分のことをわかってくれる」という安心感を相手に与えましょう。
具体的には自分と相手しかいない静かな場所で話を聞くこと、相手が打ち明け話がしやすいように、まずは自分の話を少ししてみることなどがおすすめです。
カタルシス効果を活用するために役立つ3つの力
カタルシス効果を相手に与えるにしろ、自ら人に話してカタルシスを得るにしろ、「傾聴力」「想像力」「表現力」の3つの力は役に立ちます。
傾聴力
傾聴とは相手の話にしっかりと耳を傾け、熱心に聴くことです。耳だけでなく目や身体の姿勢など、全身を使い、相手の話を聴いていることを示しましょう。
傾聴では相手の話を聞きながら、そのときの気持ちをイメージしたり、相手の気持ちや立場で考えたりすることも大切です。自分の意見や考え方は置いておいて、相手の気持ちに集中しましょう。
話の中で理解できない部分やイメージしづらい部分があれば、「私はあなたの話をこういう風に解釈したんだけど、これで合ってる?」と確認してみてください。相手をきちんと理解するだけでなく、話を聴いている姿勢を示すこともできます。
想像力
傾聴では相手の気持ちや立場をイメージし、相手になったつもりで考えることが大切でした。そのために役立つのが想像力です。
相手と自分は違う考え方・価値観をもっていることをきちんと自覚すること、相手の考え方を理解することが大切です。これらができてはじめて、相手の気持ちや立場を想像できるでしょう。
表現力
カタルシスを得るために誰かに話をしたり、相手にカタルシス効果を与えるために話を聞いたりするうえで、表現力は大切です。表現力が高ければ、自分の気持ちや考え方を相手に伝えやすくなります。
先述の通り、話を聞く側は相手の話をどう解釈したか確認したり、相手の話を引き出すために自己開示したりするのが有効です。このときにも、表現力は役立ちます。
カタルシス効果はビジネスでもプライベートでも役に立つ
- カタルシス効果は溜め込んでいたネガティブな気持ちを吐き出すことで得られる
- カタルシスを得ることで心に余裕ができ、心身ともに健康を得やすくなる
- カタルシス効果を相手に与えるうえで、「傾聴力」がとても大切
カタルシス効果とは、自分の中に溜め込んでいたネガティブな感情を吐き出したり浄化したりすることで得られる「心のスッキリ感」のことです。
心にゆとりがなくなると眠れなくなったり食事が喉を通らなくなったり、身体にも悪影響が表れます。心に余裕がないときはお気に入りの小説や映画を見たり、自分の気持ちを人に話したりノートに書き出したりしてみましょう。カタルシスが得られ、心身の健康を取り戻せるはずです。
カタルシス効果は人間関係の潤滑油のようなもので、ビジネスでもプライベートでも役立ちます。
他人にカタルシス効果を与えようとするなら、普段から信頼を得るような言動を心がけ、相手にとって話しやすい環境をつくりましょう。信頼を積み重ねるためにも、いざ相手の打ち明け話を聞くときにも、相手の話を親身になって聞く力「傾聴力」が役立ちます。
本記事を参考に、カタルシス効果を活用する方法を検討してみてはいかがでしょうか。
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