自由な思考である「アート思考」が、現在ビジネスシーンで注目されるようになりました。名称は聞いたことがあっても、内容は詳しく知らないという人も多いのではないでしょうか。
本記事では、アート思考の意味や、活用するメリット、身につける方法や注意点などを解説。アート思考をビジネスに活かしたい人や、アート思考が気になる人はぜひ参考にしてください。
- アート思考とは?
- アート思考を学ぶ・活用するメリット
- アート思考を身につけるポイント
アート思考とは?
「アート思考」という言葉を聞いたことがあっても、内容がよくわからないという人も多いのではないでしょうか。まずは、アート思考の内容を確認していきましょう。
アート思考とは
「アート思考」とは、すでに存在する概念にとらわれない、ゼロから何かを生み出す自由な思考方法のことをいいます。
「アート」は、「美術」「芸術」などの意味があります。芸術家のように自由な発想で新しいフレームワークを作るような思考を「アート思考」であると考えるとわかりやすいですね。
アート思考とデザイン思考との違い
アート思考と混同されがちな思考に「デザイン思考」があります。
デザイン思考とアート思考は、どちらも、既存のアイデアにとらわれない思考方法です。
しかし、デザイン思考とアート思考は似て非なるものです。
デザイン思考は、デザイナーやクリエイターなどのクリエイティブな仕事の思考方法を論理化し、「ユーザー視点」で課題解決に導く思考方法のことをいいます。
デザイン思考はユーザーニーズを基盤にし他人軸である一方で、アート思考は自分軸で相手を創造します。アート思考は「この世にはない」ものを作り出し、デザイン思考はユーザーの想いに沿う「おなじ」ものを作り出すものと考えてもいいでしょう。
アート思考とデザイン思考に優越があるのではなく、柔軟な使い分けが必要です。
アート思考とロジカル思考との違い
ビジネスシーンでは「ロジカル思考(ロジカルシンキング)」が要求される機会が多い傾向があります。
ロジカル思考とは、帰納法や演繹法などの物事を順序立てて筋を通す考え方のことをいいます。
例えば「A=B」「B=C」なら、「A=C」であるということを論理的に導くことです。
アート思考が論理的思考に縛られない自由な考え方である一方で、ロジカル思考は論理的に考える思考であるという大きな違いがあります。
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アート思考を学ぶ・活用するメリット
アート思考を学ぶことには、さまざまなメリットがあります。
1.独自性のあるアイデアが生まれる
アート思考を学ぶ・活用する1つ目のメリットは、独自性のあるアイデアが生まれることです。
「既存のアイデアにとらわれないアイデアを生み出す」アート思考を使用することで、独自性のあるサービスを生み出し、同業他社との差別化ができるようになります。
アート思考で創造したアイデアがユーザーの心をつかめば、企業の成長が期待できます。
2.イノベーションを起こせる
アート思考を学ぶ・活用する2つ目のメリットは、イノベーションを起こせることです。
イノベーションとは、ものや人に新たなアイデアを付加することで、既存の価値観から逸脱した新しい価値観をもたらすことをいいます。
イノベーションを起こすことで、革命的な商品や労働方法が生み出され、莫大な利益が生まれます。この世にはないアイデアを生み出す「アート思考」と「イノベーション」は非常に相性がよいといえるでしょう。
3.柔軟な思考ができるようになる
アート思考を学ぶ・活用する3つ目のメリットは、柔軟な思考ができるようになることです。
近年、AIの技術が発展し人間の仕事がAIに取って代わられるのではと囁かれています。
AIは論理的なロジカルシンキングを得意とし、アート思考のようなクリエイティブな思考は苦手とされています。
ロジカル思考では生まれなかった自由な思考をすることで、人間しかできないアイデアが生まれるでしょう。
アート思考を身につけるポイント
「今までにないアイデアを思いつきたい」と、アート思考を身につけたいと思う人も多いのではないでしょうか。
以下では、アート思考を身につけるポイントを3つご紹介します。
ポイント1.アート思考のトレーニングをする
アート思考を身につける1つ目のポイントは、アート思考のトレーニングをすることです。
株式会社電通では、アート思考を身につけるフレームワーク「ビジョンスケッチ」を提唱しました。
ビジョンスケッチは、「問題提起力→想像力→実現力→対話力→問題提起力→」という思考回路を循環させ、実現したいビジョンを具体的に想像するプログラムのことをいいます。
ビジョンスケッチの4つの思考回路を循環させる練習を行ってみましょう。トレーニングをすることで、固まっていた思考方法が柔らかいアート思考に変わっていくでしょう。
ポイント2.ワークショップに参加する
アート思考を身につける2つ目のポイントは、ワークショップに参加することです。
アート思考に関するワークショップに参加することで、アート思考への考え方が深まります。
アート思考のワークショップでは、具体的な事例やディスカッションの中でアート思考について深く学ぶことが可能です。また、自分以外の他人の話を聞くことで、自分との意見の差や、考え方の違いなどに触れられるでしょう。
機会があれば、アート思考に関するワークショップに参加してみてはいかがでしょうか。
ポイント3.アート思考について書かれた本を読む
アート思考を身につける3つ目のポイントは、アート思考について書かれた本を読むことです。
アート思考を身につけたいという需要の高さから、アート思考を学べる本という供給も多くあります。
アート思考について体系的に学びたい人、現実的に活用できるアート思考を学びたい人はまずは本を読んでみてはいかがでしょうか。
アート思考を身につけるためのおすすめの本
「アート思考について書かれた本がたくさんあってどれを読めばいいのかわからない」という人も多いのではないでしょうか。
以下では、アート思考を身につけるためのおすすめの本を具体的にご紹介します。
「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考
『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』は、アート思考に関する本のベストセラーのひとつです。
アート思考の意味や、アートの常識や見方など順番に解説されているため、初めてアート思考を学ぶ人にピッタリの本です。ステップに分けてアート思考を身につけたい人は、こちらの本を手にとってみてはいかがでしょうか。
アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法
『アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法』は、東京藝術大学大学美術館館長として活躍する秋元雄史氏によって執筆されました。
現代アートを通じて、アート思考を身につけるためのプロセスが記載されています。アート思考についての知識がない人にとっては、少々難しい本です。中級〜上級の本を読みたい人は、『アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法』を一読してみてはいかがでしょうか。
自分の中に毒を持て
『自分の中に毒を持て』は、太陽の塔で有名な岡本太郎氏によって執筆されました。
直接的にアート思考について書かれた本ではありませんが、日本を代表とする芸術家である岡本太郎先生の思考方法に触れることでアート思考の考え方を実感できるでしょう。
芸術家の思考方法を知りたいという人は、『自分の中に毒を持て』を読んでみてください。
ビジネスシーンでのアート思考を活用する際の注意点
ビジネスシーンでは、アート思考ばかりを活用すると問題が生じる可能性があります。
以下では、ビジネスシーンでのアート思考を活用する際の注意点をご紹介します。
ユーザーの理解を得られない可能性がある
アート思考は、「自分軸」で新しいアイデアを生み出す思考方法です。デザイン思考と違ってユーザーの思考を考慮に入れないため、ユーザーの理解を得られない可能性があります。
アート思考が悪いわけではありませんが、ユーザーに沿った意見が必要になるときは「デザイン思考」を使用するほうがいいでしょう。
シーンによって、いろいろな考え方を柔軟に活用できるようになると優れた社会人に近づけますよ。
アイデアがうまく伝わらないこともある
ビジネスでは、自分ひとりでアイデアから創造に結びつけるわけではないため、アート思考で思いついたアイデアを正確に言語化する必要があります。
しかし、新しく独創的なアイデアのために、アイデアがうまく伝わらないこともあります。
多人数でアイデアを共有するときは、自分の考えたアイデアが正しく伝わっているか話し合いを重ねることをおすすめします。コミュニケーションを取ることで、さらにアイデアがブラッシュアップされ、イノベーションを起こせる考えになるでしょう。
アート思考の事例
アート思考を導入している企業は「株式会社マイナビ」や「ダイキン工業株式会社」などがあります。以下では、アート思考をビジネスに落とし込む方法を事例を挙げてご紹介します。
株式会社マイナビ
「株式会社マイナビ」は、『マイナビアートスクエア』で芸術やアートに触れることでアート思考を身につける支援を行っています。
AIにはできない思考法を身につけることで、唯一無二の思考をビジネスに活かす基盤を作っているのです。
参考:「アート思考」で仕事と人生を広げ、豊かな未来を共創するプラットフォーム『マイナビアートスクエア』 歌舞伎座タワーに7月オープン
ダイキン工業株式会社
ダイキン工業株式会社は、「アート思考」を活用して乾燥地への新規事業のコンセプト開発を行いました。
アート思考は「自分軸」で考えるため、他人事ではなく「自分ごと化」することが可能です。親身になって考えることで、今までにないアイデアを生み出したのです。
参考:人的資本経営を加速させるアート思考活用 ダイキン工業株式会社事例セミナーを、株式会社Bulldozer主催で11月24日(木)に開催
アート思考を身につけ、イノベーションを起こそう
- 「アート思考」とは「すでに存在する概念にとらわれない自由な思考方法
- アート思考を身につけるフレームワーク「ビジョンスケッチ」を実践しよう
- アート思考のアイデアは誤解がないように慎重に伝えよう
本記事では、アート思考の意味や、活用するメリット、身につけるポイントなどをご紹介しました。
アート思考を身につけることで、今までにないアイデアを生み出すことができます。ユーザーに響けば、爆発的なイノベーションを起こせるでしょう。
本記事を参考に、アート思考を身につけてみてはいかがでしょうか。
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