先入観によって合理的でない判断を行う心理的な現象「認知バイアス」。認知バイアスを一覧で学習しておくことで、思い込みから抜け出せるかもしれません。
本記事では、認知バイアスの意味や、種類、対策する方法などをご紹介します。
認知バイアスについて興味がある人や、認知バイアスから抜け出したい人はぜひ参考にしてください。
- 認知バイアスとは
- 認知バイアスの種類一覧
- 認知バイアスを対策する方法
認知バイアスとは
認知バイアスとは、自分の思い込みや直感などを信じて非合理な決断を行う心理的な現象のことをいいます。
例えば、「能力値が低い人間ほど自分を過大評価し、高い人間ほど自分を過小評価する」という有名な事実も認知バイアスのひとつです。
能力値が低いと思っている人間が直感で「自分は能力値が高い」と判断し、自分自身を分析できていないことがわかります。
また、「認知バイアス」は、日常生活だけではなくビジネスシーンでも活用されることが多いです。
参考:高沢佳司「社会的望ましさ、およびダニング・クルーガー効果」
認知バイアスの種類一覧
認知バイアスと呼ばれるものには、アンカリングやフレーミング効果などの名前がつけられており、有名なものを耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。以下では、認知バイアスの種類一覧を意味と共に詳しくご紹介します。
アンカリング
アンカリングとは、初めに与えられた数字が、次に与えられた数字の認識に影響することをいいます。
例えば、「100万円のバッグ」を見た後、「20万円のバッグ」はすごく安く感じてしまいますよね。しかし、「20万円のバッグ」単体で考えると、安いとは思わないでしょう。
この、認知の歪みを「アンカリング」といいます。
アンカリング効果は、マーケティングに利用されています。例えば、「通常50万円だけど、今だけ50%オフで25万円!」のような謳い文句は、アンカリング効果を使用して商品を売ろうとしているのです。
アンカリング効果に似ている「プライミング効果」について知りたい人は「プライミング効果とは?マーケティング利用できる心理学【具体例も紹介】」を参考にしてください。
フレーミング効果
フレーミング効果とは、客観的に同じ意味を持つ文章の注目点を変えることで、選択の結果が異なることをいいます。
例えば、以下のようなふたつの選択肢が与えられたとします。
A:「手術の成功する確率は85%です」
B:「手術の失敗する確率は15%です」
この2つの選択肢は全く同じ意味を持っていますが、BよりもAの選択肢を選ぶ人が多い結果が出ています。
「成功する確率」「失敗する確率」と、異なる言葉を使っているだけで、認知のゆがみが発生するためです。
参考:竹村和久「フレーミング効果の理論的説明」
スポットライト効果
スポットライト効果とは、自分の行為や身だしなみに対して、実際に相手が自分に対して気にしているよりも、過敏に気にされているように思う認知バイアスのことです。
例えば、自分には似合わない服を着ているとき「周りに変に思われないかな」と意識しすぎて、いつもより視線を感じている気がすることもあるのではないでしょうか。これが、認知バイアスの一種であるスポットライト効果です。
参考:藤島 喜嗣・町田 玲奈「化粧行動におけるスポットライト効果:化粧行動の顕現性推測における自己中心性バイアス」
ハロー効果
ハロー効果とは、ある人物の目立ちやすい特徴や印象が相手を評価するときに大きく影響してしまうことをいいます。
例えば「〇〇さんは有名大学XX卒業なんだって」と聞くと「仕事ができる人なんだな」と感じてしまう人もいるでしょう。
このように、相手の目立ちやすい特徴(卒業大学)と、仕事ができることには客観的に関係ありません。しかし、ハロー効果による認知バイアスで自然と「仕事ができる」と評価されるのです。
参考:「A Constant Error in Psychological Ratings」
バンドワゴン効果
バンドワゴン効果とは、ある選択肢Aをたくさんの人が選んでいる場合、選択肢Aを選ぶ人がさらに増加する現象のことです。
例えば「みんな持っているから買いたい」と思う気持ちも、バンドワゴン効果のひとつ。
バンドワゴン効果と全く逆の効果、「みんな持っているから買いたくない」と思うことを、スノッブ効果といいます。
中央大学商学部の研究では、バンドワゴン効果とスノッブ効果は同一消費者で共存するといいます。
「みんな持っているバッグを買いたい(バンドワゴン効果)」「みんなと同じ色は嫌だ(スノップ効果)」と、気が付かないうちに影響されていることがわかりますね。
参考:中央大学商学部結城祥研究会第 4 期「同一消費者内で発生する バンドワゴン効果とスノッブ効果」
第三者効果
第三者効果とは、自分はメディアの影響を受けないが、他人は影響を受けていると考えてしまうことをいいます。
「メディアの放送内容は規制をするべきだ」と考えるのは、第三者効果が多少なりとも影響しているといわれています。
特に、高齢者はメディアの規制について賛成の意見を持つことが多いとされており、第三者効果が顕著であるといえます。
参考:西村洋一「インターネット利用における第三者効果に関する心理学的研究」
虚偽記憶
虚偽記憶(きょぎきおく)とは、実際に起っていないことを本当に起こっていたことであると記憶してしまうことをいいます。虚偽記憶は、成人だけではなく年少児でも起こる認知バイアスです。
「虚偽記憶」とは「嘘」とは異なるため、「過誤記憶」と呼ばれることもあります。
例えば「たまご」「合い挽き肉」「ナツメグ」を買ってきてほしいと頼まれたとき、「たまご」「合い挽き肉」「ナツメグ」に加えて「パン粉」を買ってきてほしいと言われたと信じ込んでしまうこともあるでしょう。
これは「ハンバーグ」の材料であると脳が認識し、誤った記憶を覚えてしまうことによります。
知識の呪縛
「こんなの常識なのに、なんでわからないの?」となったことがある人も多いのではないでしょうか。
これは「知識の呪縛」という認知バイアスによって、「自分が知っていることはみんな知っている」と思い込んでしまうことが原因です。
自分の常識が相手にとっての常識ではないことを意識しなければ、相手を傷つけてしまうので注意しましょう。
計画錯誤
計画錯誤とは、計画どおりに進まなかったプロジェクトに対して、再度計画を立てるとき、プロジェクトに掛かる時間を過小評価してしまうという認知バイアスです。
例えば「夏休みが始まって1週間で宿題を終わらせる」と決意し失敗したことがある人も多いでしょう。しかし、宿題にかかる時間を過小評価してしまい、結局夏休み最終日……といったこともあるのではないでしょうか。
計画錯誤が恐ろしいところは「失敗を次に活かせない」ところです。客観的に分析し、決めた計画は守るようにしましょう。
参考:Kahneman・Tversky「Prospect Theory: An Analysis of Decision under Risk」
透明性の錯覚
透明性の錯覚とは、自分の考えていることが他者に実際以上に見透かされていると考えてしまう認知バイアスのひとつ。
透明性の錯覚によって、コミュニケーションで違和感を覚えたり、言いたいことが伝わらずにすれ違ったりしてしまいます。
「相手に嘘がバレているかもしれない」と思い込み、白状してしまった経験がある人は「透明性の錯覚」に陥ってしまっているかもしれませんね。
参考:Gilovich・Savitsky・ Medvec「The illusion of transparency: Biased assessments of others' ability to read one's emotional states.」
後知恵バイアス
失敗やミスをするたびに「失敗すると思った!」などと言ってくる嫌味な人に出会ったことがある人もいるのではないでしょうか。
人間には、失敗やミスなどの出来事が起きた後に、「予測できたことだ」と考えてしまう「後知恵バイアス」が働いてしまいます。
後知恵バイアスで「やっぱりそうだった!」と考えてしまい口に出すのは、相手を嫌な気持ちにさせてしまいます。無意識に後知恵バイアスによって嫌味を言っている可能性がある人は、自分の発言を振り返りましょう。
過去美化バイアス
「昔はよかったなぁ」と過去を美化してしまうことを「過去美化バイアス」といいます。
例えば「自分から振ったけれど、恋人と別れなければよかった」と後悔した経験がある人もいるのではないでしょうか。
人間の脳は、悪い出来事の記憶を薄れさせ、楽しい記憶をより鮮明に覚えておく傾向があります。そのため、過去のほうがいいと、認知バイアスが働くのです。
参考:牧野圭子「自伝的記憶の美化に関する理論的説明の試み」
確証バイアス
「確証バイアス」は、無意識のうちに、自分が確証を持っていることと同じ意見を持つ人を探す認知傾向のことをいいます。
例えば、「この本は仮説Aが正しいと言っている。自分もそう思うけれど、一応調べてみよう」と調べ学習をする人がいたとします。その人は「本が言っていた通り仮説Aが正しかった!」と仮説Aの正しさを証明する内容を無意識のうちに探してしまうでしょう。
これが「確証バイアス」です。無意識のうちに、自分が正しいことを信じてしまい、選択肢が狭まっているかもしれません。思い込みに囚われないように、あえて反対意見を探すなどをして気をつけましょう。
正常性バイアス
「正常性バイアス」とは、普段の状況から少しだけ変化した危険な状況を、大丈夫だろうと軽く考えてしまう人間の心理的な状態のことをいいます。
例えば、火災報知器がなっているシーンを考えてみましょう。火災報知器が鳴ったからといって、「火事だ!逃げよう!」となり逃げ出す人は少ないのではないでしょうか。
ほとんどの人は「どうせ誤作動だろう」と対応をせず、様子を見てしまうことが「正常性バイアス」です。
対応バイアス
対応バイアスは、「基本的帰属誤謬」「根本的帰属の誤り」などといろいろな言い方があります。
対応バイアスは、その人の置かれている状況などの外的要因を考慮に入れず、内的要因を原因であると推測する心理的な状態のことをいいます。
例えば、「電車が雨で遅延して遅刻したAさん」を考えてみましょう。
Bさんは、無意識のうちに「Aさんはいつも時間にルーズだから遅刻したんだ」と決めつけてしまいます。「電車が遅延した」という外的な状況よりも、その人の性質に原因を見つけようとしてしまう傾向が「対応バイアス」です。
内集団バイアス
「XX好きには悪いやつはいない」を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
人間は、自分が所属する団体や集団(内集団)を無意識のうちにひいきしてしまいます。これを「内集団バイアス」といいます。内集団をひいきすることに何も意味をもたらさない場合も、意識せずに優遇している可能性があるので、注意しましょう。
外集団同質性効果
「内集団バイアス」に似ているバイアスとして「外集団同質性効果」があります。
外集団同質性効果とは、自分が所属する団体や集団には多様性はあるが、自分が所属していない団体や集団には多様性が少ないと認識してしまうことをいいます。
例えば、「K-POPの韓国人のグループはみんな一緒に見える……」「若いアイドルグループは見分けがつかない……」などとついもらしてしまう言葉は、「外集団同質性効果」の影響です。
参考:佐久間 勲「年代間における集団間バイアス-外集団同質性効果と内集団ひいき-」
自己奉仕バイアス
「自己奉仕バイアス」とは、成功したら自分のおかげであるが、失敗したら自分以外の外的な要因に原因を求める心理的な状況のことをいいます。
例えば、卓球やテニスなどのスポーツをしていたとき、順調に点数が取れている場合「練習を頑張ったからだ!」と自分の能力を評価するでしょう。しかし、相手に点数を取られだしたら、「ラケットの調子がおかしいのかな?」「暑いから調子が悪くなっただけだ」などと、自分以外の要素に原因を求めてしまいます。
これを「自己奉仕バイアス」といい、人間が無意識のうちに行う認知バイアスのひとつです。
認知バイアスを対策する方法
客観的に物事を判断し、認知バイアスから逃れるためには、以下の2つのポイントを常に意識することが大切です。
自分だけの判断基準を持つ
認知バイアスを対策する方法の1つ目は、自分だけの判断基準を持つことです。
「なんとなくXXしたい」と思っている場合は要注意。「なんとなく」の直感ではなく、合理的だと思えるまで客観的に分析した上で行動しましょう。
例えば、「みんな持ってるから欲しい」と他人軸で考えるのではなく、商品を分析しどのように使用するのか・本当にその商品ではないと駄目なのかなど様々な視点で判断することをおすすめします。
批判的に物事を分析する
認知バイアスを対策する方法の2つ目は、批判的に物事を分析することです。
本やニュースなど、誰かによって書かれたものは、大なり小なり著者の価値観に沿って書かれています。そのまま受け取るのではなく、「本当にそうなのかな?」と疑問を持ち、前提を疑うようにしましょう。
ここで、注意したいのが「確証バイアス」です。正しいと思いながら調べるのではなく、「XXは正しいともうけれど、△△はおかしい気がする」のように、疑問を持ちながら調べましょう。
認知バイアスの種類を把握して、自分の思考を疑おう
- 認知バイアスは「思い込みを信じて非合理な行動をする」心理的な現象のこと
- アンカリング効果やハロー効果など日常的に認知バイアスに影響されている/li>
- 自分だけの判断軸を持ち、批判的に物事を分析しよう
本記事では、認知バイアスの意味や、種類、対策方法などをご紹介しました。
認知バイアスは無意識のうちに非合理な行動をする心理的な現象のこと。意識していない状態のため、自分が認知バイアスに影響されていることに気づかないことがほとんどです。
認知バイアスに気づくためには、認知バイアスの種類を勉強し、自分がその状態にいるのか客観的に分析することが大切です。
本記事を参考に、認知バイアスを学び、これからの人生に活かしてみてはいかがでしょうか。
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