従業員の退職時、事業主はさまざまな手続きを行う必要があります。そのうちのひとつが離職証明書の交付や離職票発行の申請です。転職先が決まっている場合はあまり重要な書類ではありませんが、未定のまま退職し失業保険を受給する場合にはこれらの書類は必須です。
本記事では、そんな「離職票」について解説。離職証明書や退職証明書との違いや、離職票の発行方法などをご紹介します。発行や申請までの期限が決まっているので、スムーズに手続きを終えられるよう全体の流れを知っておきましょう。
- 離職票の種類と他の書類との違いを解説
- 離職票が必要になるシーンとは?
- 離職票を発行する際のステップと全体の流れを解説3
離職票とは
勤めている会社を退職する際、企業側が退職する従業員に対して発行するのが離職票です。離職票には「被保険者資格喪失届」と「被保険者離職証明書」の2種類があります。それぞれどんな場合に発行するのかをご説明します。
被保険者資格喪失届(雇用保険被保険者離職票-1)
「被保険者資格喪失届」は、従業員が解雇・退職したり死亡したりなどの理由で健康保険と厚生年金保険の資格を喪失した際に事業主が出す届出です。
「雇用保険被保険者離職票-1」とも呼ばれており、本人および被扶養者分の健康保険被保険者証やその他証明書を添付して、事務センターまたは管轄の年金事務所に提出します。
提出は、窓口持参の他に郵送・電子申請・電子媒体(CD・DVD)に対応しています。
参考:日本年金機構「従業員が退職、死亡したとき」
被保険者離職証明書(雇用保険被保険者離職票-2)
「被保険者離職証明書」は、従業員が離職したことを示すために事業主が作成する証明書です。失業給付に欠かせない資料のひとつで、「被保険者資格喪失届」と共に管轄のハローワーク(公共職業安定所)に提出します。
「被保険者離職証明書」には、従業員が離職した年月日や離職理由、被保険者期間算定対象期間など給付金額を決めるために必要な情報が記載されています。
なお、「被保険者離職証明書」の発行が不要なケースもあります。転職先がすでに決まっている場合や、従業員が死亡した場合は「被保険者離職証明書」の発行は不要です。
参考:厚生労働省「雇用保険被保険者離職証明書についての注意」
離職票と離職証明書との違い
離職票と離職証明書はどちらも離職を証明するための書類です。ただ、用途が異なります。
離職票の正式名称は「雇用保険被保険者離職票」で、退職する従業員が失業保険の受給手続きを行う際に必要な書類です。ハローワークが発行し、事業者が受け取って退職する従業員に渡します。
離職証明書は、離職票を発行するために必要な書類です。事業主が発行し、ハローワークに提出します。
離職票と退職証明との違い
離職票と似た書類に「退職証明書」があります。退職証明書は名前の通り、従業員が退職した事実を証明する書類です。退職した従業員自ら国民健康保険や国民年金の手続きを行う際に必要です。転職先から提出を求められる場合にも必要な書類です。
事業主には交付の義務があり、退職する従業員から発行を求められた場合、速やかに退職証明書を発行しなければなりません。交付を拒否すると違法行為に該当する恐れがあるので覚えておきましょう。
離職票とは発行元と用途が異なります。離職票はハローワークが発行し、それをもって失業保険の手続きをするのに対して、退職証明書は事業主が発行し、国民健康保険や国民年金の手続きを行います。
離職票が必要になるシーン
離職票は、転職先が未定でその期間の失業保険を受給する申請手続きを行う際に必要です。離職票の発行申請は事業主が行うので、従業員の退職時には資料の有無を必ず確認しましょう。
退職時には不要だと言われても、後日、退職した従業員から離職票の発行を求められる可能性があります。離職票自体に有効期限は存在しないものの、失業保険の受給を申請するには退職翌日から1年以内の手続きが必要です。発行依頼があった場合には、速やかに離職票の発行手続きを行いましょう。
離職票の発行方法をステップに分けて紹介
離職票の発行手続きは、退職に伴い事業主が行います。4つのステップに分けて発行方法をご紹介します。
STEP1.退職者が会社に離職届の発行を要求する
まずは退職者が会社に離職届の発行を要求します。事業主は申請を依頼されたら発行しなければならない義務がありますが、企業によっては依頼がなければ発行しないとしているところも存在します。退職者から事業主に対して、離職票が必要である旨を伝えましょう。
STEP2.会社がハローワークに必要書類を提出する
退職する従業員から離職票の発行依頼があったら、事業主はハローワークに必要な書類を提出して手続きを行います。離職票を発行するのに必要なのは、マイナンバーが記載された「被保険者資格喪失届」と「被保険者離職証明書」、賃金台帳、離職理由が確認できる書類のコピーです。
退職日の翌々日から10日以内が被保険者資格喪失届の提出期限とされているため、事業主は必要書類を早めに揃えて、期日までに申請を行いましょう。
参考:厚生労働省「資格喪失届・離職証明書の交付に必要な書類」
STEP3.ハローワークが会社に離職票を発行する
事業主がハローワークに離職票の発行申請を行ったら、後はハローワークが離職票を発行するのを待ちます。離職票の申請は事業主が行うため、発行後は2週間以内に事業主に資料が届きます。
STEP4.会社が離職票を退職者に渡す
ハローワークから離職票を受け取ったら、事業主から退職者に送付を行いましょう。申請から発行まで約2週間と時間がかかるため、書類が届いたらなるべく早く退職者に離職票を送る手続きを行ってください。
離職票を再発行する方法
万が一、離職票を紛失した場合でも離職票は再発行できるので慌てず対応しましょう。離職票の再発行手続きは退職者本人が行います。「雇用保険被保険者離職票再交付申請書」に必要な情報を記入して、管轄のハローワークもしくは電子政府の総合窓口「e-Gov」で申請を行います。
再発行時には、身分を証明する運転免許証や住民票の写しなどの添付が必須です。
参考:ハローワークインターネットサービス「雇用保険被保険者離職票再交付申請書」
離職票の確認するべき項目と書き方
離職票の項目は発行元であるハローワークによって大体記載されていますが、一部の項目は退職者自身が記載しなければなりません。
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マイナンバー
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金融機関の指定
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退職理由と具体的事情
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離職者自身の判断の有無
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署名・捺印
この中でも特に確認しなければならないのが、離職理由と具体的事情の項目です。具体的事情は離職者用と事業主用の記入欄が用意されています。自分から退職を申し出た場合には、事業主用の欄に「自己都合による退職」と書かれているので、離職者用の欄に「同上」と書けば問題ありません。
実際の事情と異なる場合は、退職する従業員は本当の理由を記入しましょう。事業主と離職者の意見が食い違っている場合は、ハローワークから事業主に事実確認の連絡があります。離職者にも意見を聞いて資料を集め、どちらかが正しい理由なのか判断が下されます。
退職理由と具体的事情については、事業主と離職者の間で意見のすり合わせが必要です。
離職票・退職証明書が発行されない場合の罰則
事業主には、雇用保険法の第76条3項によって離職票・退職証明書の交付義務があります。
そのため、事業主に対して離職票や退職証明書の発行を依頼したにもかかわらず、一向に発行される気配がない場合、事業主は雇用保険法の第83条4項に抵触するため罰則を受けます。6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられます。
参考:雇用保険法
失業手当をもらうためには離職票が必須
- 離職票には「被保険者資格喪失届」と「被保険者離職証明書」の2種類がある
- 離職票の発行手続きは事業主が行い、ハロワークが発行する
- 事業主には離職票の交付義務がある
転職先が未定のまま退職した際には、さまざまな手続きが必要です。失業保険を受け取る手続きもそのうちのひとつ。受給の申請には、ハローワークが発行する離職票の提出が必須です。
本記事を参考に、失業保険の受給を検討している方は事業主に必ず離職票の発行を依頼し、事業主はその対応を行いましょう。
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