ビジネスシーンで頻繁に耳にする「イニシアチブ」という言葉。「主導権を握る」「集団を先導する」などの意味合いで使われることが多い言葉ですが、他にもいくつか意味を持っています。
今回は、そんな「イニシアチブ」について解説。イニシアチブを使った例文やイニシアチブを取るための方法についてもご紹介しています。
- イニシアチブの意味と類語・対義語をご紹介
- イニシアチブのよくある使われ方とその例文
- イニシアチブを取るための7つのポイント
イニシアチブとは?意味をわかりやすく紹介
「イニシアチブ(initiative)」とは、日本語で「先導する」「主導権」「実行力」「戦略」などの意味を持つ英語の単語です。日常的なシーンではあまり使われませんが、ビジネスやスポーツ、政治などのシーンではよく使われています。
ビジネスとスポーツではほとんど同じ意味で使用されていますが、政治は少し例外的に使われています。政治のシーンでイニシアチブは「国民発案」の意味で使われます。
ただし、日本では国民発案が認められていないため、「住民の直接請求により、自ら提案する条例の制定・改廃等を、直接又は間接(議会が否決した場合等)に住民投票に付すもの」などのように定義されることが多くあります。
「イニシアチブ」がよく使用されるシーンとその意味
イニシアチブは、主に政治・ビジネス・スポーツのシーンで使われる言葉です。シーンによって意味する内容が異なるので、適切に使い分けできるように各シーンでイニシアチブが指すものをしっかりと覚えておきましょう。
政治
イニシアチブは政治のシーンでは「国民発案」の意味合いで使われます。国民発案は直接民主制の一種で、一定数以上の有権者が立法についての発案を行う制度です。イタリア・スイスなどで取り入れられています。
しかし、日本では憲法上、国民発案については規定されていません。
参考:衆議院「「直接民主制の諸制度」に関する基礎的資料」
ビジネスシーン
ビジネスシーンでイニシアチブは「率先」「先導」「主導権」「計画」「構想」などの意味合いで使われます。さまざまな意味で使用されるため、会話の中で頻繁に出て来るのが特徴です。
スポーツ
スポーツシーンでイニシアチブは有利・不利の状況を表す場合に使われます。政治やビジネスでは制度や自身の立場などの意味合いで使われるのに対して、スポーツでは状況に対してイニシアチブが使用されるのが特徴です。
【例文】イニシアチブの使い方
イニシアチブには複数の意味があるため、どんな使い方をすれば良いか迷う方もいるのではないでしょうか。ビジネスパーソンとして知っておきたい、基本的なイニシアチブの使い方を3つご紹介します。
イニシアチブを取る
「イニシアチブを取る」は、先導や率先の意味合いで使われます。
<例文>
・先輩のイニシアチブな行動によりプロジェクトは大きな成功を遂げた
・交渉においてはイニシアチブを取ることが何よりも重要だ
イニシアティブを発揮する
「イニシアチブを発揮する」は、主導権の意味合いで使われます。相手との間に役職や立場による力関係が生じる場合に使われている言い回しです。
<例文>
・交渉の場ではイニシアチブを発揮しなければならない
・イニシアチブを発揮するには、徹底した市場調査が肝心だ
イニシアティブに沿う
「イニシアチブに沿う」は、構想・計画・戦略などの意味合いで使われます。あまり頻繁に使われてはいない表現ですが、英語ではイニシアチブは構想・計画・戦略の意味で使用されているので、海外の企業とやり取りする機会が多い方は覚えておくと良いでしょう。
<例文>
・企業の成長にはイニシアチブに沿った行動が求められる
・イニシアチブに沿ったプレゼン発表だ
イニシアチブの類語
イニシアチブには多数の類語が存在します。シーンや言葉そのものが有する意味によって、類語が使い分けられているのが特徴です。類語の種類と意味、使われやすいシーンなどを解説します。
リーダーシップ
「先導する」「率いる」という意味でイニシアチブを使う場合の類語は「リーダーシップ」です。リーダーシップには、「統率する」「指導する」などの意味があります。リーダーの立場にある人がリーダーシップを発揮する、集団を統率するなどの使い方がされます。
一方、イニシアチブを取ることはリーダーではない人もすることができます。そのため、リーダーではない人がリーダーシップを取る際には、代わりにイニシアチブが使われることがあります。
率先
「率先」は、人の先に立って物事を行うことや進んで行うことを意味します。「そっせん」と読まれることが多いですが「しゅっせん」も間違いではありません。
イニシアチブには人を先導する、主導権を握るなどの意味があるので、ビジネスシーンでは類語として使うのに適しています。
首唱
「首唱」は、意見を真っ先に唱えるという意味を持つ言葉です。主導権の言い換えで使われることがあります。しかし、あまり一般的に知られている言葉ではないため、実際に使っている方は少ない傾向があります。
主導
「主導」はイニシアチブと同じ意味を持つ言葉です。主導には「中心となって導く」という意味があり、集団や個人を何らかの方向へ導きます。
積極性
「積極性」はイニシアチブの類語として使われることがありますが、厳密には同じ意味は有していません。積極性は、物事に対して進んで働きかけ、意欲的・主体的に取り組む姿勢のことを指します。
積極的に物事を進めていこうとするため、最終的には集団や個人を先導することに繋がります。そのため、イニシアチブの類語として使われることがあるようです。
レファレンダム
「レファレンダム」とは、選挙以外の国家的に重要な法案や特定の問題の是非について、有権者が投票あるいは決定や助言を行う制度のことです。アメリカでは「直接表決」とも呼ばれています。「直接発案」の意味を有するイニシアチブとレファレンダムは、2つまとめて直接立法と呼ばれています。
日本では、イニシアチブとレファレンダムのどちらも「住民投票」として訳されることが多いため、類語として扱われている背景があるようです。厳密には異なることを覚えておきましょう。
参考:国際法学会「レファレンダムにおける人民の自由な意思の確認と国家の形成」
参考:関東弁護士連合会「第1 アメリカ合衆国」
イニシアティブの対義語
イニシアチブの対義語にはどのような言葉があるのでしょうか。イニシアチブが使われるシーンごとの対義語について説明します。
フォロワー
イニシアチブが先導者を意味するリーダーシップの意味合いで使われる際の対義語は「フォロワー」です。イニシアチブが「先導する」「主導権」などの意味を持つのに対して、フォロワーは「リーダーを補佐する人」などの意味があります。
追従
イニシアチブが個人や集団を先導するという意味で使われる際の対義語は「追従」です。追従には、他の人が言うことに意見することなくそのまま従うことという意味があります。
イニシアチブをとるための7つのポイント
ビジネスシーンでは、自社でイニシアチブを取る方がスムーズにことが運ぶ場面が数多くあります。イニシアチブを取るためには、具体的に何をする必要があるのでしょうか。
次に、イニシアチブを取るための7つのポイントを解説します。
イニシアチブをとるための7つのポイント
ポイント1.積極的に提案する
ポイント2.周囲の人の話をよく聞く
ポイント3.周りに信頼される誠実な働きをする
ポイント4.自分の意見を自信を持って話す
ポイント5.常に冷静に判断をする
ポイント6.決断をするときに迷わない
ポイント7.「非言語メッセージ」を意識する
ポイント1.積極的に提案する
イニシアチブを取るためには、積極的に提案することが必要です。企画立案をしたり改善案を出したりと、しっかり自己主張を行いましょう。積極的な提案を継続し続けることでその場での発言力が確率され、イニシアチブを獲得することが可能になります。
ただ発言すれば良いのではなく、提案の内容も大切です。根拠となるデータを用いて、その場のメンバーが納得いくような説明を意識しましょう。
ポイント2.周囲の人の話をよく聞く
積極的な提案をするだけでなく、周囲の人の話をよく聞くことも大切です。一見、聞き役にまわるとイニシアチブを取れなくなってしまいそうですが、1対1の話し合いでは聞き役の方が会話をコントロールしやすくなると言われています。
相手の意見に対して相槌を打ったり、質問をしたりしましょう。質問の内容を工夫することで相手の考え方や観点を誘導することができます。
ポイント3.周りに信頼される誠実な働きをする
イニシアチブを取るには、周囲から信頼される人物にならなければなりません。自身の仕事だけでなく、周囲に対しても誠実さを持って対応します。周囲のことを考えて、自分だけでなくその場にいる全員の利益を考えて行動しましょう。
信頼を得るには比較的長い時間がかかりますが、一度信頼を得ることができればイニシアチブが取りやすくなり、仕事をスムーズに進行できます。
ポイント4.自分の意見を自信を持って話す
イニシアチブを取れる人物は、自分の意見を自信を持って話すという特徴があります。いくら積極的に提案をし、その内容に納得感があったとしても、自信が感じられないような態度では周囲は仕事を任せたり、先導してもらったりするのを不安に感じてしまいます。
性格上、自信を持って話すことができない方は、話し方の訓練をしたり、話す前に落ち着くことを意識してみたりするのがおすすめです。
ポイント5.常に冷静に判断をする
イニシアチブを取るには、冷静な判断力も必要です。何かトラブルが起こってしまった場合でも、状況を観察して次に取るべき行動を冷静に判断できる人は、ひとりのビジネスパーソンとして非常に頼りがいがあります。
冷静な判断をするには、まずはトラブルを未然に防ぐための対策を決めたり、起こりうるトラブルを予想しておいたりすることが大切です。
ポイント6.決断をするときに迷わない
高い決断力もイニシアチブを取れる人の特徴のひとつです。プロジェクトを進める上では、2つの提案のうちどちらかを選ぶのか決断を求められるシーンが多くあります。
イニシアチブを取れる人は、選択肢のデメリット・メリットを把握してその場でもっとも適した決断を下すことができます。高い決断力は、常日頃から物事の良し悪しを考える癖を付けておくことで身につきます。
ポイント7.「非言語メッセージ」を意識する
「非言語メッセージ」とは、言語以外の態度・表情・視線・ボディランゲージなどの表現のことです。例えば、説得力のある内容を話していても横柄な態度だったり、逆に自信がない喋り方だったり、極端に早口だったりするとイニシアチブを取ることが難しくなります。
声のトーンをあげたり、スピードを調整したりする他、話すときは口角をあげるように意識したりすることで、相手が非言語な表現から受け取る印象をある程度コントロールできます。イニシアチブを取りたいと考えるなら、人に信頼される・好かれる仕草を身につけましょう。
イニシアチブを取れるリーダーになろう
- イニシアチブを取るとは、集団や個人を先導したり主導権を握ったりすること
- イニシアチブはビジネス以外に政治やスポーツのシーンでも使われる
- 普段の行動や態度の積み重ねがイニシアチブを取ることに繋がる
リーダーのポジションを与えられたけど、なかなかイニシアチブを握れないと悩んでいる方は多いはずです。イニシアチブの取り方には、ある程度パターンがあります。言語表現だけでなく、非言語メッセージによる表現にも注意し、イニシアチブを取れるリーダーを目指しましょう。
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