赤は情熱の色、青は冷静沈着、緑はリラックス……など、人は無意識のうちに色に影響されています。
色彩を通して人間の心理や内面を研究する学問である「色彩心理学」を学ぶことで、相手の心理状態を読み解けるかもしれません。
本記事では、色彩心理学の意味や歴史、具体的な色の意味などを紹介。色彩心理学に興味がある人は、ぜひ参考にしてください。
- 色彩心理学とは?経緯や歴史などを紹介
- 色彩心理学を勉強する方法
- 色彩心理学を学ぶためのおすすめの資格
色彩心理学とは?
色彩心理学とは、人間の内面や心理的状況と、色合いとの関係を研究する学問のことをいいます。
例えば「赤やオレンジの服を着ている人」を見たとき、「元気な人・明るい人」と思ったことがある人もいるのではないでしょうか。
このように、色が私達人間に与える影響はとても大きいです。色彩心理学を勉強することで、相手の心理的状況を推測できたり、相手に与える印象を操作したりできるでしょう。
色彩心理学が発展した経緯・歴史
色彩心理学は2003年に誕生した比較的新しい学問のひとつですが、古くから「色」が与える影響は注目されていました。
紀元前4世紀、日本では弥生時代のころ、古代ギリシャでは「色彩とは何か」が議論として挙げられていた証拠が残っています。
特に、古代ギリシャのプラトンやアリストテレスの言葉は、色彩文化に大きな影響を与えたといわれています。
プラトン:「混色して新しい色を作り出すことは神に対する冒涜行為」
アリストテレス:「すべての有彩色は白と黒の間に位置づける」
「混色して新しい色を作り出すことは神に対する冒涜行為」という考えは、中世ヨーロッパの絵を見ることで確認できます。
例えば、「緑色」の色彩を考えてみましょう。中世ヨーロッパでは、黄色の絵の具と青色の絵の具を混ぜ合わせて緑色を作ることはしませんでした。緑色を絵に表すために、宝石や野菜の汁などを利用していたのです。
このように、色彩心理学の歴史は短いですが、色彩に関する歴史は深いです。現在でも、大昔の人の色彩に関する価値観を眺め見ることができます。
色彩心理学の4つの効果
色彩心理学には以下で示す4つの効果があるといわれています。
-
心理的
-
感情的
-
生理的
-
文化的
具体的に色彩はどのように私達人間に影響を与えているのでしょうか。以下で、詳しくご紹介します。
心理的
色彩による心理的な効果とは、色が人間の心の働きに影響を与えることをいいます。
例えば、「青色で書いた文字は覚えやすい」と聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。
実際に行われた実験によると、青色で書いた文字は多少なりとも暗記に影響を与えることがわかっています。これは、青色の持つ「人を冷静にさせる効果」によるものではないかと推測されています。
このように、人間は無意識のうちに心理的に色彩に影響を受けているのです。
参考:大阪教育大学附属天王寺中学校「暗記に効果のある色とは」
感情的
色彩による感情的な効果とは、色を見ることによって感情が変化することをいいます。
例えば「青い色は食欲を減らす」という効果があることが研究されています。
実際に、サングラスのような、青い色のフィルターがかかった眼鏡を食事中につける「カラーダイエット」と呼ばれるダイエットもあるほどです。
また、「どんよりとした暗い空」を見ると心が重くなったり、「晴々とした青い空」を見ると気分が良くなったりするのも、色が及ぼす感情的な効果のひとつです。
参考:小島みなみ「青色の食欲減退効果に関する研究」
生理的
色彩による生理的な効果は、人の体にも大きく影響しています。
例えば「低明度の色を見たとき」より「高明度の色を見たとき」に、脳波α2の分布率が有意に異なったという実験があります。脳波α2とは、脳波の一種であり、脳波を周波数によって分けたものです。
つまり、人間は、明るい色を見るとリラックスしたり、快適な気持ちになったりするということが科学的に証明されています。
参考:山下真裕子「色相およびトーンを変化させた色光における生理的・心理的影響」
文化的
色彩による文化的な効果とは、国や文化によって好まれる色が変化することをいいます。
出典: YouGov 「Why is blue the world’s favorite color?」
例えば、上記の画像によると、すべての国で最も好まれる色は「青」です。
しかし、赤色が二番目に好まれる国もいれば、紫が二番目に好まれる国もあります。
このように、文化やバックグラウンドが違えば、色に対する考え方も異なってくることを色が持つ「文化的な影響」といいます。
色彩心理学による色の意味
「赤は情熱、白は純粋」など、なんとなく色のイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。
以下では、色彩心理学による色が持つ意味について具体例を上げながらご紹介します。
赤
赤色は気持ちを高める効果があるので、大切なプレゼンなどの勝負どころにおすすめの色です。
赤は、以下のような意味・イメージが持たれています。
- ポジティブな意味:情熱、強い、興奮
- ネガティブな意味:嫉妬、むかつき
白
白は、ウェディングドレスにも使用されるように純粋でクリーンなイメージを与えます。
白は、以下のような意味・イメージが持たれています。
- ポジティブな意味:純粋、清潔
- ネガティブな意味:空虚
黒
黒は高級感がある一方で、闇のイメージがあるため使用する際は注意しましょう。
黒は、以下のような意味・イメージが持たれています。
- ポジティブな意味:高級感
- ネガティブな意味:闇、恐怖
緑
木や草などの自然の色である緑は、落ち着きがある印象を与えます。
緑は、以下のような意味・イメージが持たれています。
- ポジティブな意味:落ち着きがある、安らぐ
- ネガティブな意味:弱々しい、若々しい
青
青は冷静沈着なイメージを持つ一方で冷たい印象を与えることも。海外受けもいい色なので、国際的な会議に参加する際に身に着けてみてはいかがでしょうか。
青は、以下のような意味・イメージが持たれています。
- ポジティブな意味:冷静、賢い、誠実、クール
- ネガティブな意味:冷たい、寒い
オレンジ
オレンジは親しみやすいイメージを抱かせるので、初対面の人と話すときに身につけることをおすすめします。
オレンジは、以下のような意味・イメージが持たれています。
- オレンジの持つ意味
- ポジティブな意味:優しい、明るい、元気
- ネガティブな意味:能天気
色彩心理学を学ぶメリット
色彩心理学は、ビジネスだけではなくプライベートにも役に立ちます。
以下では、色彩心理学を学ぶメリットをご紹介します。
仕事
色彩心理学を極めれば、その知識を使って仕事をすることが可能です。
例えば、カラーセラピストは、色を使って人の心を和ます仕事です。ほかにも、色の知識を使うインテリアコーディネートなどの仕事にも役に立ちます。
ファッション
ファッションで色彩心理学を活かすこともできます。
例えば、「今日は気分が落ち込んでいるから、テンションを上げるために赤色の服を身に着けよう」などと、自分の気持ちをコントロールできます。相手に与える印象も自由自在なので、コミュニケーションも取りやすくなるでしょう。
色彩心理学を勉強する方法
「色彩心理学を勉強したいけれど、どうやって勉強すればいいのかわからない」という人もいるのではないでしょうか。
以下では、色彩心理学を勉強する方法を詳しくご紹介します。
1.色彩心理学に関する本を読む
色彩心理学を勉強する1つ目の方法は、色彩心理学に関する本を読むことです。
例えば、『色の心理学』では、色を自由自在に使いこなす方法が具体的に紹介されています。
また、色タイプ別コミュニケーション術も解説されているので、自分にあったコミュニケーション方法も学べます。
色彩心理学の初学者は、まずは本を手にとってみてはいかがでしょうか。
2.色彩心理学に関する論文をチェックする
色彩心理学を勉強する2つ目の方法は、色彩心理学に関する論文をチェックすることです。
本記事でご紹介した通り、色彩心理学に関する論文は多々発表されています。
日本語の論文を読みたい人は「Google Scalar」で検索することをおすすめします。Google Scalarは、Googleとは異なり、学術文献を探すサイトです。エビデンスレベルが高い論文を読みたい人は、ぜひGoogle Scalarを使ってみてください。
3.色彩心理学の資格を取る
色彩心理学を勉強する3つ目の方法は、色彩心理学の資格を取ることです。
自分で調べて勉強するとついつい偏った勉強になってしまうことも多いでしょう。
体系的に色彩心理学を学びたい人は、資格の勉強がぴったりです。資格を取った達成感や、知識を持っている証を得るためにも、以下でご紹介する資格を勉強することをおすすめします。
色彩心理学を学ぶためのおすすめの資格
色彩心理学を学ぶための資格は多々あります。
自分がどのような分野で色彩心理学を活かしたいのかを明確にした上で、勉強する資格を決めてくださいね。
カラーセラピスト
一般社団法人日本色彩環境福祉協会による「カラーセラピスト」は、色を使って人の心を癒す方法を学べます。
色を使いながら自分と向き合いたい、誰かの心を癒やしたい人におすすめの資格です。
色彩検定
色彩検定は、文部科学省後援の公的資格のひとつです。
1級〜3級・UC級に分かれているため、徐々にステップアップしながら色について学べる点がポイント。
学生や社会人など、日常からビジネスシーンまで活かせる知識を身につけたい人におすすめの資格です。
カラーコーディネーター検定試験
カラーコーディネーター検定試験は、仕事に役立つ色彩の知識を身につけられる資格です。
例えば、PowerPointに活かせる配色や、商品を魅力的に配置する方法などを具体的に学べます。
仕事に活かせる色彩知識を学びたい人は、カラーコーディネーター検定試験がおすすめです。
色彩心理学療法士
色彩心理学療法士は、日本色彩心理学研究所認定資格です。
3級から1級があり、3級では「色が心にどのように必要か」などを学びます。
心理支援活動や色彩教育などに興味がある人は、こちらの資格を勉強してみてはいかがでしょうか。
インテリアコーディネーター資格試験
「色彩を勉強してインテリアに活かしたい」「色彩を使った仕事に携わりたい」という人は、インテリアコーディネーター資格試験がおすすめです。
インテリアコーディネーター資格試験では、照明や家具などトータルにインテリアをコーディネートする方法を学べます。
素敵なお家を作りたい人は、勉強してみてはいかがでしょうか。
色彩心理学を学んで、毎日の生活に活用しよう
- 色彩心理学とは、人間の内面と色合いとの関係を研究する学問
- 色彩心理学はビジネスやファッション、プライベートで活かせる
- カラーセラピストや色彩検定などの資格を勉強しよう
本記事では、色彩心理学の意味や歴史、勉強する方法やおすすめの資格などをご紹介しました。
紀元前から注目されていた「色」を体系的に学びたい人は、資格を勉強することをおすすめします。色を使って人を癒やしたい人はカラーセラピスト、純粋に色の勉強をしたい人は色彩検定がおすすめです。
本記事を参考に、色彩について学び、ビジネスやプライベートに活かしてみてはいかがでしょうか。
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