近年、ビジネスシーンで注目されている「アンガーマネジメント」。感情的な言動をしないように怒りをコントロールする心理トレーニングとして知られており、研修の一環として取り入れている企業も増えてきています。
本記事ではそんな「アンガーマネジメント」について解説。日本で注目されている背景や、アンガーマネジメントについて学ぶメリットもご紹介。初学者におすすめの関連本も3冊ピックアップしています。アンガーマネジメントを身につけたい方はぜひ参考にしてみてください。
- アンガーマネジメントを学ぶ3つのメリットを解説
- すぐに実践できるアンガーマネジメントの基本テクニック
- 自分の怒りのタイプを知ろう
アンガーマネジメントとは?
「アンガーマネジメント」は、1970年代にアメリカで生まれた心理教育・心理トレーニングのひとつです。当初は、犯罪者の矯正プログラムとして活用されていましたが、近年になって一般化しました。アンガーマネジメントの重要性は高まっており、従業員の研修に取り入れる企業が増えています。
アンガーマネジメントは怒りをコントロールするという意味で認識されていることが多いですが、厳密には意味が異なります。
怒る必要のある出来事に対してはきちんと怒り、怒る必要のない出来事に対しては怒らなくて済むようにするのが、本来のアンガーマネジメントの目的です。
参考:一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会「アンガーマネジメントとは?」
アンガーマネジメントが注目されている背景
アンガーマネジメントは1970年代に開発された心理トレーニングです。発祥地であるアメリカでは、2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロをきっかけに爆発的に普及したと言われています。一方、日本では2014年から徐々にその言葉が広まっていき、現在では研修の一環として導入している企業も増えてきています。
日本でアンガーマネジメントが注目されている理由は、多様な価値観の増加やパワーハラスメントなどが関係しています。従来、日本では同じような価値観や考え方、バックグラウンドを持つ人が企業に集まっていました。仕事に対する姿勢や考え方が似通っていたため、衝突する機会は少なかったのです。
しかし、現代では労働に対する考え方は非常に多様です。そうした状況ではメンバー同士が衝突することも考えられます。相手と自分は異なる価値観を持ち、それをお互いに受け止め、そのうえで話し合いを進めるというアンガーマネジメントの基本が共有できていれば、衝突の機会を減らすことができます。
社会全体としてパワーハラスメントの防止に注力し始めたのも、アンガーマネジメントが注目されるようになった理由のひとつです。昔からの慣習で部下は怒って育てるものだと考えている管理職は少なくありません。相手を正しい方向に導く指導であれば良いのですが、現代では、怒ると叱るの区別ができてない方は多くいます。叱ると怒るの線引きを明確にし、教育体制を改めてパワーハラスメントを防止するのにも、アンガーマネジメントは役立ちます。
アンガーマネジメントを学ぶメリット
アンガーマネジメントは、単なる怒りのコントロール手法ではありません。怒りという感情に対して落ち着いて対処できるようになると、人間関係やストレスの軽減などさまざまなメリットも得られます。アンガーマネジメントが気になっている方は、学ぶメリットについてまず理解しておきましょう。
メリット1.自分の感情をコントロールできる
アンガーマネジメントを学ぶ1つ目のメリットは、自分の感情をコントロールできることです。
アンガーマネジメントにおける一番重要なポイントは、自分の怒りの感情への気づきと理解を深めることです。ついイライラしてしまう考え方のクセに気づき、柔軟性を持つように認知を変容することで、自分の怒りの感情に振り回されにくくなります。
メリット2.良好な人間関係を継続できる
アンガーマネジメントを学ぶ2つ目のメリットは、良好な人間関係を継続できることです。
アンガーマネジメントにより怒りの感情をコントロールすることで、衝動的な言動を取らなくなります。自分の気持ちを抑えつつも伝えたいことは伝え、相手の意見や立場を尊重することもできるアサーティブ・コミュニケーションを身につけることが可能です。
アンガーマネジメントをしていなかった以前と比較して、良好な人間関係を継続しやすくなります。
メリット3.ストレスを軽減できる
アンガーマネジメントを学ぶ3つ目のメリットは、ストレスを軽減できることです。
怒りの感情は誰にでもあるものです。それが頻繁に起こる人は自分の考え方に縛られているが故に、ストレスが溜まりやすくなってしまっています。
アンガーマネジメントは、日常的なストレスの発生を少なくしたい場合にも効果的。怒りの感情が沸いたときも「ストレスマネジメント」がしっかりとできるようになるので、衝動的にならず心身共に落ち着かせてから、適切な対応をすることができます。
アンガーマネジメントを実践するテクニック・やり方
アンガーマネジメントは、日々のさまざまな場面で少しずつ意識することで身につけることができます。初歩的ではありますが、怒りという感情に振り回されることなく冷静に対応できるようになるための3つの実践テクニックをご紹介します。
テクニック1.怒りを感じてから6秒待つ
アンガーマネジメントを実践する1つ目のテクニックは、怒りを感じてから6秒待つことです。
怒りは感情のひとつなので、怒りを感じるとつい衝動的に行動してしまいやすくなります。物を壊したり、人にあたってしまったり。そのときは気分がすっきりするものの、後々になって感情的な行動を後悔する結果になりかねません。
通常、怒りのピークは6秒間と言われており、6秒間経てばそこに理性を介入させることができます。怒りを感じたら、6秒数えましょう。それが難しい場合は、手を開いたり閉じたりして、時間が経過するのを待つのもひとつの手です。
テクニック2.感情的に話しそうになったら、その場から離れる
アンガーマネジメントを実践する2つ目のテクニックは、感情的に話しそうになったら、その場から離れることです。
6秒間ルールを試してみても怒りがおさまらない場合は、潔くその場から離れましょう。対象が目の前にいると、せっかく冷静になれてもすぐに怒りが沸いてしまいます。
その場から離れて少し散歩してみたり、飲み物を買って飲んでみたりと別のことをして気を紛らわしましょう。冷静になって自分の怒りをコントロールできる状態になるまで、怒りの対象から離れるのもアンガーマネジメントのテクニックのひとつです。
テクニック3.「〜するべき」と押し付けない
アンガーマネジメントを実践する3つ目のテクニックは、「〜するべき」を押し付けないことです。
自分の中の理想やこだわりがある人ほど「こうあるべき」「こうすべき」というルールが多いため、他人が自分と違う行動をするとすぐに怒りが沸いてしまいます。
前提として、自身の考えや価値観の適用範囲は自分だけです。他人には他人の考えや価値観があり、それを押し付け合うことはお互いにとってもストレスです。自分は自分であり、他人は他人であるということを理解し、相手に対して100%を求めないよう心掛けることもアンガーマネジメントのひとつです。
日本アンガーマネジメント協会の「アンガーマネジメント診断」
一口に怒りと言っても、人によって怒りを感じるシーンやシチュエーションはさまざま。まずは、自分が何に対して怒りやすいのかを把握しておきましょう。日本アンガーマネジメント協会の「アンガーマネジメント診断」では、怒りを6つのタイプに分けています。各タイプの特徴と対処法を知り、適切に対策しましょう。
公明正大タイプ
「公明正大タイプ」は、正義感が強いのが特徴。曲がったことが嫌いなため、ルール違反やマナー違反があると怒りを覚えやすく、場面や立場に関係なく物事に介入しすぎてしまいます。
ちょっとした不正が許せないタイプでもあります。「〜するべき」「〜であるべき」という考えを相手に押し付けないようにして対応すれば、アンガーマネジメントが身につきます。他者に対して寛容になれるよう意識しましょう。
博学多才タイプ
「博学多才タイプ」は、向上心が強いのが特徴。さまざまな物事に対して意欲的に取り組みますが完璧主義の傾向があるため、他人にも自分にも厳しくなりすぎてしまいます。
成長を意識し行動し続けるのは素晴らしいことですが、全ての人がそれをできるわけではありません。全ての物事が白黒付けられるわけでもありません。中間的な意見の存在を認め、「〜するべき」という思考を相手に押し付けないように意識しましょう。
威風堂々タイプ
「威風堂々タイプ」は、自分に自信を持っているのが特徴。リーダー的素質があるため、さまざまな場面で人から頼られます。プライドが高い反面、自分の思い通りにならないことがあるとすぐに怒りやストレスを感じてしまいます。
自信がある故に、少しのことでも「自分が軽んじられた」「否定された」と受け取りやすいのも威風堂々タイプの特徴。自分以外の人が評価されたとして、それが自身の評価の低下に繋がるのではないと、捉え方を変えるアンガーマネジメントが必要です。
天真らんまんタイプ
「天真らんまんタイプ」は、考えや感情を素直に表現できるのが特徴。はっきりと意思表示をし、ためらうことなく行動に移せるタイプです。
発言や行動を制限されると不満やストレスを感じてしまいます。言いたいことをはっきり言わない人と接しているときも、怒りを感じやすいタイプです。
そこでいつものようにストレートに伝えると人間関係に亀裂が生じかねません。怒りを感じたときは相手の考えをじっくりと聞いたり、周囲の意見を参考にしたりと一度立ち止まってみましょう。どんなときでも意見をはっきりと言うことが最善ではないと学ぶことができれば、怒りに対して冷静になれるはずです。
外柔内剛タイプ
「外柔内剛タイプ」は、確固たる強い意志を持っているのが特徴。一見、穏やかで人当たりが良いため頼まれごとをされやすく、また我慢強さも持っています。
自分のルールや信条を曲げることができないので、そこからそれた事柄に遭遇するとストレスを感じがち。自分とは異なる他人の意見や価値観に触れるなど、ささいなことで怒りを覚えます。
やりたくないことの基準を決め、例え頼まれたとしても断る勇気を持つことがアンガーマネジメントの第一歩。自分と異なる考えを持つ他者と対立しあわないよう、そうした可能性がある機会をまず減らしましょう。
用心堅固タイプ
「用心堅固タイプ」は、真面目な性格で慎重な行動を心掛けているのが特徴。自分を含めて物事を冷静に見れるため警戒心が強く、それ故に他人に頼ることが苦手です。予期せぬ出来事に対してストレスを感じやすく、リスクを避けるために行動します。
他者への思い込みが強いタイプで、勝手に人と自分を比べて怒りを覚えます。まずは一度信用して頼ることが必要。それに慣れていくことでアンガーマネジメントが達成できます。
アンガーマネジメントを学ぶためのおすすめの本
アンガーマネジメントを学びたい方はまず本を読むのがおすすめです。特に、アンガーマネジメントを日本に導入した第一人者の著書は内容がわかりやすく、実践にも移しやすい実用的な内容が書かれています。初学者におすすめの3冊をピックアップしてご紹介します。
[図解]アンガーマネジメント超入門 「怒り」が消える心のトレーニング(特装版)
『[図解]アンガーマネジメント超入門 「怒り」が消える心のトレーニング(特装版)』は、対症療法や実践したい習慣、意識したいルールなど、読んですぐにアンガーマネジメントに取り組める情報が掲載されている1冊です。
自身はアンガーマネジメントができていると思っている方にもおすすめの1冊。アンガーマネジメントは怒りの感情で衝動的に行動してしまう方だけでなく、相手に伝えられずモヤモヤしてしまいやすい方にもぴったりの心理トレーニングです。
著者はアンガーマネジメントの第一人者である安藤俊介氏。入門書の決定版として実用的な1冊です。
>>[図解]アンガーマネジメント超入門 「怒り」が消える心のトレーニング(特装版)
アンガーマネジメント入門 (朝日文庫)
『アンガーマネジメント入門 (朝日文庫) 』は、日本にアンガーマネジメントの考え方を導入した第一人者である安藤俊介氏が執筆したアンガーマネジメント入門書です。同氏は、日本アンガーマネジメント協会代表理事も務めています。
入門書ということで、人がなぜ怒りという感情に振り回されるのかという話からアンガーマネジメントの実践までがわかりやすく解説されています。アンガーマネジメントの基本を学びたい方におすすめの1冊です。
アンガーマネジメント超入門 「怒り」が消える心のトレーニング [図解]
『アンガーマネジメント超入門 「怒り」が消える心のトレーニング [図解]』は、日本アンガーマネジメント協会が推薦しているアンガーマネジメントの入門書です。アンガーマネジメントについて初学者でも理解できるように、イラストや図を用いて解説されています。
章の最初と最後にチェックリストがついているのが特徴。しっかりと理解できているかどうか、確認しながらアンガーマネジメントについて学べます。
イライラとする出来事が増えたと感じる方や、アンガーマネジメントについて学んだ後も振り返りとして使えるテキストを探している方におすすめの1冊です。
>>アンガーマネジメント超入門 「怒り」が消える心のトレーニング [図解]
アンガーマネジメントを身につけて自分をコントロールしよう
- アンガーマネジメントは怒りのコントロールと適切な対応を身につける心理トレーニング
- 怒りのタイプは6種類あり、それぞれ対応方法が異なる
- 本を読んで学ぶならアンガーマネジメントの日本における第一人者の著作がおすすめ
仕事だけでなく、日常生活を送るうえでもアンガーマネジメントは活用できます。怒りをただコントロールするのではなく、怒ることが正しい場面と怒ることが不適切な場面とを分けて考えられるようになるのが大きなメリットです。
まずは、関連図書を読んでアンガーマネジメントの基本を理解しましょう。可能な範囲で実践し、少しずつアンガーマネジメントを身につけていき、自分の感情コントロールを覚えましょう。
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