新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で激減したものの(2019年:3188万人⇒2020年:412万人)、数字を回復してきている訪日外国人旅行者数。Tokyo Creative株式会社は、コンサルティングやインフルエンサーマーケティング、動画制作など多岐にわたって企業や自治体に対するインバウンド(海外からの訪日観光客)の集客支援をしている会社です。U-NOTE編集部は、同社の代表・中川智博さんに対し、インバウンド対応の重要性や、企業や自治体としてどのようなところから始めたら良いのかなどをお伺いしました(全2回中1回)。
―――Tokyo Creativeでは、どのようなサービスを提供されているのでしょうか。
訪日インバウンド向けのプロモーション支援をしており、主にデジタルマーケティング手法を使って集客しています。アメリカやイギリス、オーストラリアなど英語圏の方々を集客していきたい地方自治体さんやDMO(観光地域づくり法人)さん、自社のサービスを海外に向けてプロモーションをして収益を上げていきたい企業さんがお客様です。
弊社の特長は3つあります。1つ目は、総フォロワー1300万人ほどいる海外出身の在日インフルエンサーのネットワークを持っており、そのの影響力を使って集客に結びつけています。
2つ目が、海外ユーザー視点でプロモーションコンテンツが作れること。(弊社は)外国人スタッフが約半数を占めています。
最後は、圧倒的な実績があるところです。(弊社は)年間でも約150のプロジェクトを実行しており、ここまでの数のプロモーションをこなしている企業は、そこまで多くないかなと思っています。最近のトレンドや過去に行ってきた実績から最適解(の知識)を持っているため、再現性を持ったプロモーションができるところが強みです。
―――最近行った事例をお聞かせください。
コロナ禍の例ですが、三重県名張市のプロモーションでは、YouTuberたちが現地体験する様子を配信しました。テーマは忍者です(伊賀市が忍者としては有名ですが、名張市は忍者の修行体験が有名)。
(プロモーション動画)We Trained At A Secret Ninja Village In Japan ft. @AbroadinJapan & Natsuki
当時、東京オリンピックの時期だったので、“ニンジャリンピック(Ninjalympics)”という名前にして日本人チーム対海外出身者チームで忍者の修行バトルをする動画にしました。雑巾がけや壁登りで競わせるものにしたら、ものすごく再生されましたし(2022年2月に公開した動画2本の合計再生回数は、2023年7月13日(木)時点で約37万回)、「コロナが落ち着いたら行ってみたい」っていうコメントがたくさんありましたね。
―――現在では新型コロナウイルス感染拡大に伴った制限の解除が進んだ影響で、海外の方がたくさん来ているのを感じます。Tokyo Creativeとしても追い風は感じますか?
はい。もちろん大きくあります。やはりコロナ禍は(インバウンドへの)注目度がすごく低くなっていました。渡航制限によって、なかなか訪日客も来られない現状になりましたので。自治体さんや企業さんも、リアルな集客が見込めないのにプロモーションの投資対効果を出すのが難しくて予算が取れないんですよね。渡航ができるようになった(最近の)タイミングで、一気に風向きが変わってきたのを体感しているところです。
―――日本におけるインバウンド施策の重要性についてはどのように考えていらっしゃいますか?
“なぜインバウンドか”というと、外貨を稼ぐことが非常に重要だからです。日本の人口がどんどん減っていくなかで、国内で成長する産業を作りづらい状況になっています。しかし他国と比べて日本における観光のポテンシャルは相当あると考えていて、実際、誘客も順調に右肩上がりで増えています。
それに付随して日本にお金を落としていく海外の方も増えているので、今後日本が生き残っていくために成長産業であるインバウンドに投資していくことは重要ですし、国としても既定路線です。国内だけで閉じた産業・経済活動をしていると、結局日本もシュリンク(縮小)していってしまうと思います。
―――インバウンド対応に取り組むため、海外向けのデジタルマーケティングを行っていきたい場合、どこから始めたらよいでしょうか。
対象がインバウンドであってもマーケティングの基本的な部分は変わらないと思っています。まずはゴールから逆算することが重要。情報発信をするのは1番最後です。
たとえば飲食店ならば、実際にお店に来てもらうところから逆算して考えていくと分かりやすいかなと思います。まず、“どんな人を呼びたいか”、もしくは“どんな人が来ているのか”を踏まえる必要があり、その上で“その人たちは来店したとき何で困っているのだろう”と考えることです。
そもそも英語を話せるスタッフがいるのか、(お客様向けの英語の)メニューがあるのか。どれだけ顧客満足を高められているのかが、まず考えることです。
次に、店に来る手前の話になります。みなさん、昨今はGoogleマップで検索してアクセスされるので、そこの情報が正確なのか、クチコミの内容を見てサービスを改善すべきところがあるのか、より発見してもらうために検索の部分でもっと網を張っていった方が良いのか――などを固めていく必要があると思いますよ。
もう少し情報発信について話すと、やっぱりInstagramは、メインのSNSとして使われている国が多いですし、投稿もハードルが低いです。なので、我々は小規模の事業者さんに対して「インスタグラムから始めたらどうですか」と提案しています。(観光客は)「タグる(SNSのハッシュタグから情報を調べること)」ので、ハッシュタグの網を張っていくのも、かなり重要なポイントです。大規模な広告プロモーションをしたい場合は、やはり外部の事業者さんを使う必要があるかなと。情報発信のイロハについては、うちでも資料をまとめているので、そういったものを参考にしてもらえるといいのかなと思います。
あとは、やっぱりYouTubeの影響力はまだまだ大きいのかなと思っています。Tokyo Creativeの調査でも、約7割がYouTubeで情報を得てきたというデータもありますので。
―――自社サイトの情報を英語で表示することには効果があるのでしょうか。
もちろん最終的に検索して(サイトに)入ってくることもあるので整備するのに越したことはないですけど、Googleマップやトリップアドバイザーでクチコミを見られてくるケースが多いです。もちろん余力があればサイトにも注力した方がいいとは思いますが、そこまでなかなか手が回らないのであれば、GoogleビジネスプロフィールやGoogleマップ、トリップアドバイザーの情報を整備していった方が確実にアクションにはつながるのではないかなと思いますね。
―――英語だけでなく、中国語にも対応した方が良いのかと考えることもあります。
地域によって訪日客の国籍が異なるため、対応が必要かどうかは分かれますね。なぜかというと、主に交通アクセスの課題があるからです。たとえば、東北には、欧米の人たちよりも台湾や香港の方々が中心ですね。理由は、直行便が飛んでいることや、リピーターの方が相当多いことです。いわゆる“ゴールデンルート”と呼ばれる東京・大阪・京都はすでに行っていて、もっと知らない日本を旅したいと考える方々の足が伸びています。
あと、韓国からは福岡に直行便が相当数飛んでいて、かつ(航空費が)安いという需要もあります。全てはユーザー起点なので、誰が足を運んでいるのかを逆算して考えていくと、おのずと答えがあります。
2020年から爆発的に感染が広がった新型コロナウイルス(COVID-19)。訪日外国人の数は劇的に減りました。Tokyo Creativeはどう乗り越えたのか、第2回は8月8日18時30分掲載予定です。
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