ハラスメント対策の企業研修などを手がけるダイヤモンド・コンサルティングオフィスが、2023年4月に入社した会社員280人にハラスメントの意識調査を実施したところ、セクハラに該当する行為を誤りなく選択できたのは37.1%にとどまったことが分かりました。パワハラは65.0%でした。十分な理解がないままでは被害を認識できなかったり、業務上正しい指導を受けた場合も人間関係がぎくしゃくしたりしてしまう恐れもあり、同社は「会社全体の成長にも影響することが懸念されます」と投げかけています。
2022年4月からすべての事業主を対象としてパワハラ防止措置が義務化されるなど、ハラスメント対策の強化が進められています。そうした中、2023年卒の新入社員がハラスメントをどう捉えているかという視点で意識調査が行われました。
「『ハラスメント』という言葉を聞いたことがあるか」という基本的な問いには、91.2%が「ある」と回答。さらに、「ある」と回答した人のうち、67.5%が「職場でのハラスメント防止策が、法律上、企業に実施する義務があることを知っているか」との問いにも正しく「ある」と回答したそうです。
ハラスメントの種類別に内容の理解をたずねた問いでは、パワハラやセクハラがそれぞれ93.3%、92.9%と高水準でしたが、マタハラ(=妊婦に対するハラスメント)が54.1%やアルハラ(=飲酒を巡るハラスメント)が52.9%と回答率が半減。スメハラ(=匂いに関するハラスメント)やケアハラ(=働きながら介護する人ハラスメント)はそれぞれ25.5%、10.2%にとどまる結果となりました。
調査では、セクハラとパワハラについて具体的なシチュエーションを提示し、ハラスメントと感じるかをたずねました。
パワハラをめぐっては、「ミスしたときに、『こんなこともできないなら、小学生からやり直せ!』と怒鳴られた」が65.0%、「仕事ができないことを理由に、今月末で自主退職をしろと指示された」が61.1%がそれぞれ「パワハラと感じる」と回答。しかし、同社によると、前者は繰り返せばパワハラに該当するものの、後者はこれだけの内容ではただちに該当しないといいます。
このほか「同僚の前で(みんなの見ている前で)上司から、遅刻したことを叱られた」が32.5%、「自宅からリモート会議に参加した際、顔を映すように(カメラオンにするように)指示された」が10.4%に上りました。が、いずれも「ただちに該当しない」といい、同社は「正しいパワハラの理解がされているとは言えない結果」としています。
セクハラでは、「体をじろじろと見られた」が58.2%、「上司から2人きりで食事に誘われた」が39.3%がそれぞれ「セクハラと感じる」と回答。しかし、これらもこれだけでは「セクハラには該当しない」と同社。
「肩に『ポン』と手を置かれた」(回答率29.3%)、「『その服よく似合うね』と嫌いな先輩から言われた」(同11.1%)もこれだけでは該当しないといい、同社がセクハラに該当するとしているのが「飲み会の席で交際経験を質問された」。正しく回答できた人の割合は37.1%にとどまったといいます。
ハラスメントのシチュエーションが正しくとらえられていない現状に同社は「新入社員が『パワハラ』『セクハラ』について“理解したつもり”になっている」と警鐘を鳴らします。調査では勤務先でハラスメントに関する研修を受けたことがあるかもたずねましたが、「ある」と回答した人は34.2%でした。
同社は、「新入社員は、入社した途端先輩社員や上司に教わることばかりです。ところが、上司として当たり前に注意したことであっても、『パワハラを受けた』と相談窓口に駆け込んでくる若手の部下が増加し、対応に困っているという声を多く聞くようになっています」と近年の状況を説明。
ハラスメントへの正しい理解や知識が足りていない中、自身が「パワハラ」「セクハラ」だと受け取った時点で、「パワハラ」「セクハラ」と理解していることが背景にあるとみており、「早期に正しい理解を促さないと、今後大きな問題に発展することが危惧されます」と警鐘を鳴らしています。
同社は「様々な価値観を持った人が集まる会社組織においては、上司だけが正しい知識を持っていても指導育成はうまくいきません。指導される側においても、正しい知識を身につける必要があると思います」とも呼び掛けています。
<参照元>
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000058857.html
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