HOMEインタビュー 「アフリカの魅力や学びを現地の人と一緒に発信したい」 “好ましいより、好きを”、ウガンダの女性とつくるカラフルなファッション:RICCI EVERYDAY創業者・仲本千津さんインタビュー(1)

「アフリカの魅力や学びを現地の人と一緒に発信したい」 “好ましいより、好きを”、ウガンダの女性とつくるカラフルなファッション:RICCI EVERYDAY創業者・仲本千津さんインタビュー(1)

菓子翔太

2023/07/04(最終更新日:2023/07/04)


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カラフルで遊び心にあふれた生地“アフリカンプリント”やウガンダのサステナブルな素材を使った洋服・バッグなどを展開するライフスタイルブランド「RICCI EVERYDAY」。同ブランドを運営する仲本千津さんはウガンダの直営工房で、都市部に暮らすシングルマザーや紛争被害に遭った人など社会的に疎外されやすい人たちを積極的に雇用。次々と商品を生み出し、自身の母親とともに日本を中心に商品を販売しています。

仲本千津さん提供

そんな仲本さんはもともと、三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)で法人営業を務めていました。なぜ、そこからウガンダに飛び、RICCI EVERYDAYを運営するようになったのでしょうか。

U-NOTE編集部は仲本さんに対し、現在のお仕事や今に至るまでの経緯、ウガンダの現状などについて伺いました(全3回中1回目)。

―――生産・流通の流れについて教えてください。

まず生地をガーナ共和国で調達します。なぜその布かというと環境に配慮されて作られた布だからです。布を染色するとき、大量の化学薬品と大量の水を使うんですが、その水をきちんと浄化して再利用しています。

ウガンダに(生地が)届くと、現地のスタッフと一緒にデザインなどを調整・生産をして、毎月1回ほど日本に向けて輸出をします。日本に届いたら、検品などして、まずは自社のオンラインストアやショールームで販売していますね。それ以外にも、全国の百貨店さんでポップアップイベントを行い、地域のお客様に商品を知っていただく機会を提供しているほか、最近では企業さんと一緒にコラボレーションもしています。

RICCI EVERYDAY The Hill 神楽坂ショールーム

―――今、ウガンダの工房は何人くらいの体制でやっていらっしゃいますか。

20人弱ですね。男性1名を除いて女性です。

―――働かれていらっしゃる方は、どういう方々なんでしょうか。

もともとは、低賃金で労働条件が守られていない場所で働かざるをえなかったり、きちんと給料が支払われていなかったり、仕事自体がなかったりした環境下にいた人たちなんですよね。でも、そんな人たちが今はきちんと給料が支払われ、ある程度の裁量を持って自分たちで物事を進めることができ、日本のお客様に「本当に素敵だね」と言われるような物づくりを実践しています。色んなことが彼女たちの誇りになっていて、「日本で待ってくれているお客様がいるから私は頑張らないといけない」という気持ちが培われているんです。

もともとは自信なさげな、うつむき加減な1人の農村女性だった人たちが、今では姿勢もまっすぐで、毎日きちっとした格好で仕事場に来て、一生懸命仕事に取り組んでおり、何か発言しないといけないときも堂々とした態度で発言をしていて、プロフェッショナルになっているなという印象を持ちます。

―――RICCI EVERYDAYが“好ましいより、好きを”というコンセプトにされた経緯を教えてください。

私が銀行員をやっていたとき、言ってしまえば毎日地味な色のスーツを着て営業に出る生活を送っていたんですけど、ある時みんなが同じように見えてしまって。同じ方向を向いて個性はなく、細かいルールの中で生きている。そういう状況に、このままでいいのかなって思ったんですよね。社会課題やアフリカ開発に興味があったはずなのに、それらが全部取り除かれた生活を送っている。それが怖いなって思ったんです。このままだと自分を見失うなって感じたんですね。

そこから、ちょっとした抵抗運動をし始めました。スーツは着るんですけど、中に色のあるカットソーを着たりとか、周りとは少し違う見せ方をしようと思ったんですね。

ちょっと遅い思春期のようなんですけど、かなり救われた部分があって。「私は他の人とは違う」と自分でも認識できたし、周りにもアピールできました。周りの見え方に合わせるんじゃなくて自分が好きなものを打ち出していく。自分らしく生きることが、小さな幸せを日々感じることにつながるんじゃないかなと思ったんですね。そのことがきっかけで、“好ましいより、好きを”というコンセプトにたどりつきました。

アフリカンプリントは(コンセプトの)象徴的な存在で、色の合わせ方が日本的価値観からも完全に逸脱しているんですね。日本人だったら合わせないような色の組み合わせ方や柄で大胆なところがあって。(それまで)合わせ方のルールに潜在的に縛られていたんですが、アフリカンプリントを見て“別にかわいいならいいじゃん”という圧倒的な感覚になったんです。だからこそすごく惹きつけられるのかなと。

―――ほかにもアフリカンプリントを扱っている業者さんもいますが、どう差別化を図っていますか。

商品1つ1つがウガンダの人たちの手によって作られているというところですね。ほとんどの方は日本で(商品を)生産しているんですけど、私達は現地で物作りをすることにこだわりたいと思っています。こんなに素敵なものがウガンダから生まれるんだと皆さんに知っていただきたい。アフリカには、紛争や感染症、病気などネガティブな見方があって、それも1つの側面ではあるんですが、それだけではなくアフリカから学べることや魅力を現地の人たちと一緒に打ち出していきたいという思いがブランドの根底にあります。

―――今後の目標は何ですか。

ウガンダにかかわらず、アフリカの人たちの誇りをもっともっと打ち出していきたいという思いがあります。社会的に疎外されていて、生きづらさを感じている状況にいたとしても、素晴らしいものを生み出す力を一人ひとりが持っている。ただ、それを見せる場がないので、そういう場をもっと作っていきたいです。

また今の自分は、少々コンフォートゾーン(ストレスのない居心地の良い場所)にいるような感覚なので、これから数年かけてもう一歩踏み出さないといけないなと感じています。例えば、もともと関心のあった紛争を経験した地域における平和構築に寄与する事業を、ものづくりをからめながら実現したいと思っています。

さらに、デザインプロセスにおいて、色々な人を巻き込んでいきたいです。現地の人たちにオーナーシップを持ってもらって、作られたものが日本だけではなく世界中から求められるような価値あるものになっていくような取り組みをしていきたいですね。

いまも続くアフリカの経済格差、その状況下で起業することの厳しさとやりがいとは。インタビュー第2弾に続きます。

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