HOMEビジネス 「サステナビリティの知見はキャリアに直結していく」 日本の“SX”に挑む起業家・福元雅和さんインタビュー【前編】

「サステナビリティの知見はキャリアに直結していく」 日本の“SX”に挑む起業家・福元雅和さんインタビュー【前編】

菓子翔太

2023/06/16(最終更新日:2024/09/22)


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福元雅和さん(黒木美沙さん撮影)

「SX」という言葉が近年ビジネスにおいて注目を集めています。「Sustainablity Transformation(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」の略称で、企業がビジネスとESG(環境・社会・ガバナンス)を長期的に持続させるために変革していくことです。

「社会課題に挑む人の力を結集して日本をSXする」という方針のもと、株式会社コルを運営している福元雅和(ふくもと・まさかず)さんは、様々な企業とともにフードロス対策やアップサイクル(※)商品の販売などを進めています。

U-NOTE編集部は、福元さんに株式会社コルの事業内容やビジネスにおけるサステナビリティの重要性、個人がいますぐできることなどをお聞きしました(前後編の前編)。

※アップサイクル:これまで廃棄されてきたものに手を加えて、新たな商品としてよみがえらせること

―――株式会社コルの事業内容について教えてください。

「SUSTAINABLE FOOD事業」と「SOCIAL GOOD事業」、「LOCAL GOOD授業」の3つを行っています。

「SUSTAINABLE FOOD事業」は、食の社会課題全般を解決することが目的の事業です。2つ目の「SOCIAL GOOD事業」では、「ソーシャルグッドCatalyst」というメディアを運営しており、社会課題に関する情報とその解決に向けた取り組みに関する情報を発信しています。最近は、そのソーシャルグッドCatalystに連動するような形でECショップを開設しました。

福元さんが立ち上げたECショップ「SOCIAL GOODs

(事業は)主にこの2つがメインなんですが、「LOCAL GOOD事業」は、町や地域に対する貢献事業です。神奈川県の茅ヶ崎市消防本部が区域の合併で消防服の入れ替えが大量に発生するタイミングで、一緒になって廃棄されるはずだった消防服のアップサイクルに取り組んでいます。

―――SUSTAINABLE FOOD事業について詳しく聞かせてください。

食に関する社会課題の解決を目指し、テクノロジーやソリューションを持った企業さんや、サプライチェーンの中で製造から販売まで取り組んでいる事業者さん、プロモーションや啓発の領域で活躍されている事業者さんたちによる共創プラットフォームをつくり、いまはフードロス対策に重点的に取り組んでいます。

―――福元さんがプラットフォームのまとめ役ということですか?

事業者さんごとに課題は本当にさまざまなので、解決に向けて製造から販売まで、上流から下流まで全てサポートしていますね。コンサルティングといえばコンサルティングだし、商社と言えば商社なので、あまり業種・業態は絞られていません。例えば、食品メーカーさんから「排出物を有効活用したいんですが手伝ってもらえませんか」と相談をいただいて、コンサルティングとして色々なソリューションを提示したり、プラットフォームの中で知識や技術を持っている方を紹介したりします。また、一緒に作ったものが売れて手数料をもらう方式になる場合は商社のようになりますね。アップサイクル商品を売るための流通開拓が必要な場合には、(プラットフォーム内にいる)パートナーと一緒に売るところまで支援することもあります。

―――ご自身でプラットフォームのコネクションを地道に作り上げていかれたんですか。

そうですね。去年1年間は仲間集めに奔走していたので、全くビジネスになりませんでした。とにかくプラットフォームに良い人たちが集まってもらわないといけないので。普通こういうことは社団法人や外郭団体が会費を集めて行っていますが、うちはそのスタイルはとりません。よくある社団法人は気軽に加入することができ、100~200社が1年に何回か集まって懇談会に講師を呼んでセミナーを開いているんですが、属人性のあるネットワーキングはなかなか難しいんですね。

(うちのプラットフォームでは)会費をいただいておらず、あくまでも意味のあるマッチングをするときにお声掛けさせていただき、利益を生み出して分配しあう仲間ということで皆さんに集まってもらっていただいています。

佐賀県の4市町が抱える課題の解決と事業化を目指すプロジェクト「GAPs SAGA」に採択された際の記念集合写真(上段左から3番目が福元さん)

―――さまざまな社会課題の中から、“食”を取り上げた理由を教えてください。

(本当は)社会課題全般を扱っていきたいんですが、なぜ今“食”に絞っているのかというと、全ての人に関わるものだからです。1日に2~3回は確実に接するもので、それだけに巨大な産業だし、成功すればとても大きな波及効果を生み出すことができると思いました。あらゆる社会課題の入口として“食”は良いんじゃないかと思ったことが取り組み始めた背景です。

牛が出すメタンガスにはCO2をはるかに超える温室効果があるなど、食は気候危機をもたらす要因にも(写真は株式会社コルのWebサイト「UP FOOD PROJECT」から)

―――企業がサステナビリティの解決に取り組む重要性をどう認識されていますか?

特に先進国ではサステナビリティが投資においてもすごく注目されるようになってきています。今後は日本でも取り組まない会社はマーケットや消費者からも認めてもらえなくなって事業が存続できなくなる危機感があるのではないでしょうか。

―――個人では何ができるのでしょうか。

DXという言葉も出てきた当時は、そこまで深刻じゃなかったと思うんですけど、今はやらなきゃ企業として生き残っていけない流れになっていますよね。それと同じで、SXも今はまだ「それって綺麗ごとじゃないの」とか「意識高いよね」と思われているかもしれないですけど、今のデジタル対応と同じようにサステナブル対応も当たり前に必要なものになってきたとき、リテラシーがある人はニーズがあると思うんです。

キャリア的視点で考えたとき、サステナビリティに関する知見を持っていれば後々生きてくると思うので、知識をたくわえ続けていくことはすごく大事ですね。今すぐ使うことはできなかったとしても、将来的には直結する可能性は非常に高いと思います。

―――株式会社コルの目標について教えてください

去年1年間は、構想を掲げて土台となる仲間集めをしました。さまざまなアウトプットをしていくことが今年のチャレンジで、商品をどんどん生み出していきたいなと思っています。そのアウトプットを経て目指すのがアウトカム(結果)です。例えば、最近もコーヒーかすをアップサイクルしたコーヒーチップを作りましたが、たくさん売れなければ焼却に回るゴミを減らすという点では全く成果が出ていないんですね。このアウトカムを胸を張って言えるレベルにしたいです。

SOY CHIPS コーヒー&シュガー福元さんが起業するまでの半生、今の若者に伝えたいメッセージとは。後編に続く

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