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芸能活動とベビーシッターの共通点とは?ーーFluffy Ket代表・伊藤梨沙子さんインタビュー『保育サービスにプラスアルファして、ワクワクする気持ちも届けたい』

服部真由子

2023/06/08(最終更新日:2023/06/08)


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10代からモデル・女優として芸能活動を行ってきた伊藤梨沙子さん。大学時代に出会った‟ベビーシッター”に芸能・エンタメのお仕事と同じ魅力・可能性を見出し、0~12歳の子どもたちを、保育スキルも持ち合わせたプロのエンターテイナーがお世話するというベビーシッター・マッチングサービスを提供する株式会社Fluffy Ketを2023年4月に起業しました。(U-NOTEでの紹介記事はこちら

Fluffy Ketは、伊藤さんがこれまでベビーシッターとして感じた喜び・やりがいを、さらに世の中へ拡げていくためのチャレンジ。ベビーシッターとはどんなお仕事なのでしょうか。そして、芸能活動とベビーシッターの共通点とは?伊藤さんにくわしいお話を伺いました。

これからも芸能と保育を両立させたい

ーー伊藤さんのご経歴を簡単に教えてください。

伊藤:10歳から27歳までの17年間、芸能事務所に所属して活動してきました。中学生の時に『おはスタ』というTV番組のアシスタント、‟おはガール”に選ばれたことをきっかけに「本格的に芸能活動に取り組みたい」と考えるようになり、学業と両立させながら芸能活動をしていましたが、今年3月に事務所を退所して株式会社Fluffy Ketを起業したところです。これからはビジネスとフリーランスとしての芸能活動を両立していくことにチャレンジします。

ーー起業家にご転身というわけではなかったんですね!

伊藤:そうなんです(笑)。フリーランスとして芸能活動を続けることは、起業と同じく大きな決断でした。今は会社を立ち上げたばかりなので難しいですが、これからもそれぞれ頑張るつもりです。

ーーシッター業はアルバイトとして始められたんですか?

伊藤:ベビーシッターは19歳からです。芸能活動のお仕事はやはり特殊なので、いろいろな経験をしたくて高校時代からイベントの配膳スタッフや、飲食店でのアルバイトもやりました。シフト制ではないベビーシッター業は芸能活動と両立しやすく、全く別の職業なのに通じるものがあり、誇りをもって働けたので長く続いています。お子さんたち、その親御さんたちと密接にやりとりすることがとても楽しくて、充実していると実感できました。

ーー芸能活動とベビーシッターの共通点とはどんなことですか?

伊藤:どちらもエンターテイメント、人を楽しませることです。絵本の読み聞かせや、ごっこ遊びをする時に全力で‟演じる”と子どもたちはとても喜んでくれます。少しでも手を抜くと「つまんない」って怒られちゃう。‟観客”は、至近距離……それこそわたしの膝のうえで反応してくれて、時には演技指導も(笑)。

高水準の保育サービスとワクワクする気持ちを届けたい

ーーそのご経験や想いが、この楽しいサービスのアイディアに結びついたんですね。

伊藤:通常の保育サービスにプラスアルファして、ワクワクする気持ちも届けたいんです。Fluffy Ketはエンターテイナーとベビーシッターそれぞれのプロフェッショナルが、お子さん・親御さんと出会う機会を作っていきます。ベビーシッターは、芸能活動で夢を追うキャストが、誇りをもって働けるお仕事のひとつ。そして、お子さんを育てるお母さん・お父さんを少しでも助けて差し上げられたらいいな、という想いがあります。

ーーそのためには保育サービスの質を高く維持することも必須ですね。

伊藤:弊社に登録するキャストは、必ず1ヶ月の社内研修を受けて、テストに合格しています。加えて、協力してくださるご家庭を訪問して、2~3時間、保育を実際に行う実地研修を行ってから、お世話デビューをします。さらに外部研修として、登録キャストには全国保育サービス協会が実施している研修の受講、もしくは資格を取得することを推奨しています。どちらも時間を要するものなので登録してから1年以内には何か一つでも修了してもらえたらと考えています。

ーーベビーシッターとして働くために資格は必要なんでしょうか?

伊藤:自治体に届け出をする必要はありますが、国家資格が整備されているわけではありません。保育士・幼稚園教諭や看護師などの国家資格を持っているシッターは比較的多く、弊社の登録キャストにもいます。「国家資格を持っている方なら安心」とお考えになる親御さんも多いですが、キャストの報酬が高くなるという現実もあります。

ーーなるほど。資格は必ずしも必要ではないんですね。

伊藤:子どもたちとの相性や、キャストの人柄や個性、親御さんとコミュニケーションをちゃんと行えるかは、資格だけでは判断できない大切な資質です。弊社では良いサービスを提供できる方が集まってくださるように、登録キャストと関わりを深く持つことを心がけています。「あなたの歌や踊りのスキルを活かしてお子さんの面倒を見てください」といわれても実際にどうお世話したらいいかわからないと悩むキャストもいるので、定期的に集まったり、コミュニケーションを取る機会を作っています。ベビーシッターって、横のつながりが強くないのでひとりで悩んだり、孤独を感じるんです。Fluffy Ketでは主に共同設立者の合田友が、キャスト・メンターとして悩みを聞いたり、アドバイスをしています。

Fluffy Ketだからできるユニークなお世話

ーー先日、実施された「ベビーシッター体験会」について教えてください。

伊藤:親御さんは、ベビーシッターに大切なお子さんとご自宅の鍵を預ける必要があり、最初はとても敷居を高く感じるはずです。キャストが子どもたちと一緒にいるところをご覧いただいたり、実際に交流したりすることで信頼を得られるのではないかと考えて行いました。今後も定期的に私たちのサービスを紹介するために行っていきたいので、5月末から体験会を開催するための資金を集めるクラウドファンディングを行っています。

ーー提供可能なサービスとして、子役として活動するお子さんの送迎や、撮影現場や楽屋、ロケ地でのサポートがありますが、とてもユニークですね。

伊藤:わたしも、1人で電車に乗ることが怖かったし、地方ロケがあると東京駅までは母が送ってくれるんですけど、マネージャーさんが合流してくれるまでは1人で、とても不安でした。今思えば、母はもっと不安だったはず(笑)。現場を知っているキャストなら協力できることは多く、オーディションやレッスンの付き添いも、具体的で詳細な報告ができるので、ぜひ活用していただきたいです。こちらからご提案はしていませんが、「台本を一緒に読むサポートは出来ますか?」とお問い合わせをいただくこともあります。

ーー利用者さんからは、どんなフィードバックがありますか?

伊藤:音読が苦手だというお子さんがいらっしゃって、音読のテストに一緒に取り組んでもらいたいというお話がありました。キャストが一緒に図書館で本を選ぶところから始めて、音読の練習をして差し上げたところ、そのお子さんはテストで学年1位になられたそうです!これは私たちができるサポートに意義があったと感じられる、本当に嬉しい出来事でした……!

ベビーシッターだからできないことも……

ーーシッターとしてこれまで困った経験はありますか?

伊藤:いろいろありますよ(笑)。やっぱり2人、3人のお子様をお預かりすると、シッター1人では手に負えなくなるようなことや、兄弟・姉妹でケンカが始まることも……。ベビーシッターは保育指針として、否定的な言葉を使うことは良しとされていません。だから、ケンカから気をそらせようと「先生悲しいよ」と泣く演技をしたことも(笑)。あと、お宅にうかがって「お世話するスペースがないぞ……」という場合も。さまざまなご家庭があって、それぞれご事情があるので仕方ないことですが、私たちは家事代行ではないので、お片付けをして差し上げられないんです。

ーーそんな時はどう対応されるんですか?

伊藤:近くの児童館や、公園などのパブリック・スペースに移動してお世話をします。訪問する際には必ずご自宅周辺を調べて、そういう公共の場を把握するのもシッターの仕事のひとつです。親御さんには事前に、こういった対応を取ることがあるとお伝えします。それから、ちょっと変わった折り紙の折り方を覚えておいたり、100円ショップで買えるようなオモチャを持参することもあります。そういう小さな工夫や準備がお子さんの笑顔につながります。

ーー責任も大きく、判断力も求められることは大変ですが、人を笑顔にできるお仕事ですね。

伊藤:そうなんです!一緒に会社を立ち上げた合田も、ベビーシッターをしながらナレーターとして活動しています。この楽しさや喜びを知る2人でなら、チャレンジできると思って「起業してみない!?」と誘ったことが、Fluffy Ketの始まりです。

ーー起業にあたって、ご苦労はありましたか?

伊藤:会社の登記などの難しい手続きは手探りでした。会社をどうやって立ち上げるのか、オフィスをどこに置くか・口座開設……なにもわからない状態で一つひとつネットやYouTubeで調べながら進めていきました。会社勤めの経験もないので、目上の方に送るメールにうっかり絵文字を使ってしまったり……。大変でしたが、こんな私たちにも会社を興すことができたので、想いやアイディアがある方はあきらめずにチャレンジしてほしいです。

インタビュイー・プロフィール

伊藤梨沙子(いとう・りさこ)
株式会社Fluffy Ket代表取締役社長

1996年生まれ27歳。10歳から芸能活動を始める。19歳からベビーシッターとしても活動。
2023年4月に株式会社Fluffy Ketを友人である合田友と起業。自身のスキルを活かし子どもたちを笑顔にするベビーシッターサービス「子ども・子育て支援×エンタメ」の確立を目指す。
代表的な芸能活動は『おはすた』おはガール、雑誌『ピチレモン』専属モデル、NHK Eテレ『さんすう犬ワン』、TBS日曜劇場『アトムの童』などに出演。

<所持資格>
JADP認定ベビーシッター・ACSAベビーシッター養成+現任研修修了・救命技能認定証取得

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