HOMEビジネス EC事業の売り上げアップに貢献する、後払い決済サービス「BNPL」。日本と海外の「BNPL」の違いとは?

EC事業の売り上げアップに貢献する、後払い決済サービス「BNPL」。日本と海外の「BNPL」の違いとは?

U-NOTE編集部

2023/04/05(最終更新日:2023/04/05)


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※本記事は、かっこ株式会社のシステム開発部門管掌CPOである岡田知嗣氏に、日本と海外の「BNPL」違いについてご寄稿いただいたものです。

BNPL=Buy Now Pay Laterというワードは、目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。BNPLとは、ネット通販などで、商品を受け取ってから代金を支払う後払い決済を指す言葉です。

かっこ株式会社は、これまで日本国内をメインに、後払い事業の立ち上げやシステム構築など後払い決済を提供したいと考える事業者向けに10年以上支援をしてきました。BNPLに取り組んだことで、アパレル、化粧品、健康食品を扱うEC事業者では売上が20%〜30%アップするようなケースを目の当たりにしてきました。

そこで今回は、市場規模が2027年には3兆円になるともいわれる「BNPL」について、海外と日本における違いから解説していきたいと思います。

利用者層からみた、日本と海外におけるルーツの違い

日本における後払い決済の歴史は、1970年代から始まっていたといいます。当時、カタログ通販やテレビショッピングなどでネット通販事業者が独自の与信により、後払い決済を行っていました。

「注文したものと違ったり、商品が届かなかったりするのではないか」といった不安から、商品を手に取ってから支払いをしたいという消費者ニーズが、当時からありました。

近年においては、2021年はクレジットカード不正被害額が過去最多の330億円にもなり、ECサイトにカード情報を入力することに不安を感じ、後払い決済を使う消費者も少なくありません。

BNPL利用者の7割はクレジットカードを保有しているというデータもあり、意識的にBNPLを選択していることがうかがえます。

一方、海外においては2005年にスウェーデンで創業したEC向け後払い決済サービス会社であるKlarnaからBNPLが始まっています。その顧客は世界18カ国以上で9,000万人を超え、ヨーロッパを中心にグローバルにサービスを拡大していきました。

その他に大手BNPL提供企業として、アメリカのAffirm、Block(旧Square)が約3.2兆円で買収を発表した豪州のAfterpayなどが有名です。

特に後発であるAffirmは、2021年にAmazonに正式導入され、NASDAQ市場に上場するなどビジネスが急拡大しています。海外における利用者層は、何らかの理由でカード審査に通らずカード自体を所持できない人や、カードの利息に不満がある人たちです。

利息に不満を持つ人が多い理由として「海外ではカードの決済方法は、毎月決まった額を支払うリボ払いが主流で、支払わなかった間にはその分高い利息がつく」ことが挙げられます。(図表5)

<BNPLを利用する理由>

The Ascent survey(2020年7月) 米国のBNPL利用者1,682人を対象とした調査

こうした背景を受け、特に若年層はカード離れが進むなか、その代替案としてBNPLへのニーズは拡大しています。2020~2022年のMotley Fool surveysによると、BNPLを利用した消費者の割合は18~24歳は、61%を占めています。

商習慣の違いから支払方法にも違いがある

*1:日本クレジット協会2020年の利用金額ベース
*2:American Bankers Association”Credit Card Market Monitor”2020 Q3

日本においては、分割払いは金利が高いイメージがあります。

2020年の日本クレジットカード協会の調査によると、2カ月を超える支払い(分割/リボ払い)を利用したことがある人は、全体のわずか7.8%だったのに対し、海外ではリボ払いを利用したことがある人は、54.7%を占めていました。

このような状況から、日本における分割払いに対応しているBNPL事業者は、Paidyなど一部の事業者に限られており一括払いが主流になっています。

一方、海外でのBNPLは基本的に分割手数料は0円で、支払方法を3または4回、長期などの分割払いにできることが特徴です。

海外では基本事前登録が必須で、日本は登録なしで利用が可能

海外でBNPLを使うには、利用者は事前にメールアドレスと郵便番号を入力し、本人確認を行い与信が承認されれば、サービスを使えるようになります。これは日本でも利用されているPaidyも同様の形式をとっています。

一方、日本においては、事前登録は基本不要で、ネット通販の決済で後払いを選択するだけで簡単に利用ができます。

こうした違いにより、海外では比較的換金性の高い商材などでも利用ができますが、日本では、一部未払いリスクが高い商材においては、BNPLの適応対象外とするなど条件を設けているケースがあります。

購入者のニーズにあった決済方法を取り入れることが重要

今回は、日本と海外におけるBNPLの違いを、消費者の習慣やニーズとあわせてお伝えしてきました。特に海外においては、便利な分だけ使いすぎてしまう過剰債務の課題などもありますが、決済方法の充実は消費行動の活性化につながり、さらには事業成長にも大きく寄与します。

また、希望する決済方法がなかった場合、ECサイトの実際のデータを広く集計した米国Baymard Instituteの調査資料「41 Cart Abandonment Rate Statistics」によると、世界のカゴ落ち率の平均は69.57%になるというデータもあるため、事業者にとっては購入者のニーズにあった、決済方法を取り入れていくことが重要です。

みなさまのBNPLの理解を深める一助になれば幸いです。

著者プロフィール

岡田知嗣
かっこ株式会社
取締役 システム開発部門管掌CPO

1975年生まれ。外資系ITベンダーでのITコンサルタント、国内SIerを経て、かっこ株式会社に参画。
決済システムのコンサルタントや不正注文検知サービス「O-PLUX(オープラックス)」の運用責任者を経て、現在は「O-PLUX」、不正アクセス検知ソリューション「O-MOTION(オーモーション)」に関わるシステム部門の責任者として、エンジニア組織のマネジメントやプロダクト企画の責任者であるCPOとして従事。2023年にリリースしたこれまでにない新たなスタイルの「SaaS型BNPLシステム」のシステム全般を取りまとめた。

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