コロナ流行をきっかけに人々の働き方は大きく変わりました。その中で拡大したテレワークやリモートワーク。組織ではなく「個人」で働く時、仕事のパフォーマンスを最大化させるために何が必要なのか、株式会社ランサーズのCEvO (チーフエバンジェリストオフィサー)根岸泰之氏に、ご寄稿いただきました。
リモートワークは、もうアタリマエ
コロナの影響で、テレワーク・リモートワークは飛躍的に一般化しました。同時に、クラウドソーシングの活用も拡大。それまではクリエイティブ系の仕事が中心に依頼されていましたが、営業やコンサルティングなどのビジネス系、資料作成やアシスタント業務などのバックオフィス系の仕事も大幅に増加しています。出典元:ランサーズ株式会社
仕事の依頼が広がるのにあわせて「個人で働く」も激増しました。フリーランスだけでなく、会社員が副業としてクラウドソーシングを利用するようになりました。
・通勤が減り、時間が空いたと感じた人が58%
・その時間をスキルアップに使っている、使おうとしている人が79%
・その時間を副業に使っている、使おうとしている人が95%
となっています。
それから約1年後の当社が実施したフリーランス実態調査によると、国内のフリーランス人口は1670万人に。前年比で640万人以上も増加しました。
フリーランス実態調査のフリーランス人口の推移/出典元:ランサーズ株式会社
なぜ、こんなに急激に変わったのでしょうか。もちろんコロナが後押しの最大の理由であることは間違いありません。ですが、それだけではありません。
「個人で働く」の背景には、企業への不安も感じている声も少なくありません。日本一のトヨタでさえ、終身雇用は難しいと宣言している時代です。少子高齢化もあり、日本全体の経済も右肩下がり。
ある著名な経営コンサルタントは「低下を遅らせることはできるが、日本が復活するのはもう無理だ」と匙を投げていました。だからこそクラウドソーシングが広がっていると感じています。
「個人で働く」が進化するための4つの課題
時間と場所にとらわれない働き方ができるだけでなく、仕事がプラットフォームに顕在化していることで「個人からすると営業しやすい」のです。そのため、ランサーズ等のクラウドソーシングサービスは受け皿のひとつとなりました。しかし、個人が本当の意味で自由かつ安心して働けるようになるには、会社組織との差分を解消する必要があります。
①単価ひくい問題
会社のように大きな仕事は受けにくい。個人への依頼は、細分化された下流工程業務がボリュームゾーン。一つひとつの仕事は低単価になりがち。
②不得意やらねば問題
会社のように役割分担ができない。確定申告など、苦手な作業も自ら手がける必要がある。
③共助できない問題
会社のように同僚や上司のサポートはない。体調不良時などは、無理にでも自ら手がけるしかない。
④成長しづらい問題
会社のようにチャレンジできる環境がない。すでにできることしか依頼されないため、実務を通じた成長が難しい。
個人が自由に働きやすくなった一方で、会社だからこその良さを失っている状態です。人は誰にでも苦手なことがあります。苦手なことをしている時間は生産性が上がりません。少しおおげさですが、その時間は労働力のロスです。
会社組織の良さを取り入れた、新しいカタチの「個人で働く」を実現してこそ、本当に自由な環境になるといえるのではないでしょうか。
ネクストクラウドソーシングは、コミュニティ型チーム
個人と会社、双方の良いとこどりをする方法は「チームで働く」です。会社組織はチームじゃないか?と思われるかもしれません。その回答はイエスですが、個人集団のチームとは違います。
よくいわれる表現をするならば、メンバーシップ型とジョブ型です。ジョブ型雇用は注目されていますが、現在の日本のルールでは、なかなか本領発揮しづらいのではないでしょうか。そこでさらに変化した形態が、コミュニティ型チームだと考えています。
出典元:筆者作成
雇用契約、時間、場所にとらわれないことはもちろん、仕事内容や個人の状況に応じてその瞬間のベストな布陣で、プロジェクトを遂行することができます。
例えるなら、サッカーの代表チーム。攻めが得意な選手、守りが得意な選手など、勝利(目的)のために、適材適所を招集します。その際、その瞬間の選手の状況にあわせて、パフォーマンスが最大化されるチームにするべく人選されます。
その人選の範囲が、雇用関係がない分、圧倒的に広がります。選択肢が多ければ多いほど、ベストチョイスができるはずです。
適材適所を最大化させるには「適時」が必要で、それができる時代になりました。このコミュニティ型チームで稼働することで、会社組織の良いところも含んだまま「個人で働く」の課題をクリアできるのです。
実例:コミュニティ型チームで年間5000万のプロジェクト
全国フリーランス共創コミュニティ・新しい働き方LABでは、コミュニティ型チームでの仕事が存在しています。ここではその一例を紹介します。
クライアント企業は、グローバルメーカーです。マーケティング課題解決プロジェクトをまるごと受けています。下流工程に細分化された業務ではなく、上流工程の段階から、フリーランスチームが手がけています。
出典元:筆者作成
このプロジェクトでは、プロジェクトリーダー陣のみ不変ですが、それ以外のメンバーは施策によって流動的に変化し続けています。仕事の成果も出せており、3年程度続いており、年間約5000万円規模となっています。
やるべき施策が変化すれば、当然適任も変わりますが、メンバーシップ型はもちろんジョブ型でも雇用のみの体制と比べると、圧倒的にスピーディーに適した実行部隊を組成できるのは間違いないでしょう。
「でも、そんなに適材をすぐに探せるの?」と思われるかもしれません。そのとおりですが、日常的な関係性があるコミュニティ・新しい働き方LABがそれを実現させる場所となっています。
トヨタでさえ雇用は守り切れない時代。リモートワークがアタリマエとなり、「個人で働く」が普及しました。ただ、「個人で働く」は課題も多く、会社組織の良さもあります。
しかし、会社・個人という枠組みでの目線を外し、仕事の本来の目的に主眼をおくと、パフォーマンスが最大化されることが大切です。リモートワークが広がっていけばコミュニティ型チームという新しい概念を実行できますし、実際に大きな仕事ができることも先述のように証明されています。
クラウドソーシングが次のフェーズに進み、コミュニティ型チームで働くことが広がれば、「個人で働く」はアップデートできると信じています。
根岸泰之
ランサーズ株式会社
CEvO (チーフエバンジェリストオフィサー)
フリーライターとしてキャリアをスタート。2003年にエン・ジャパン株式会社にコピーライターとして入社。制作部門長、プロ-モーション本部長を歴任し、マーケティング・プロモーション・クリエイティブ、それを支える組織育成など、幅広い観点から約10年間従事。2013年4月、ランサーズにマーケティングマネージャーとして参画し、取締役CMOを経て、現在はチーフエバンジェリストオフィサー(CEvO)。新しい働き方、新しい組織の育み方、新しい事業の作り方を、全国に広める活動に従事。
【関連記事】
フリーランスの広がりで自治体や地方中小企業も救われるのか
日本が抱えてきた「地方創生」という難題。長年膠着していたこの課題に、コロナ禍以降大きな変化が起きています。ランサーズ株式会社の曽根秀晶氏に、フリーランスという視点から「地方創生」問題解決の可能性...
「営業」フリーランスはコロナ前の約3倍に 副業2.0の時代とは?
ランサーズでの「営業」カテゴリーの発注がコロナ前の173%増となっているように、フリーランス市場がコロナ後、さらに多様化しています。ランサーズ株式会社の曽根 秀晶氏に、コロナ後のフリーランス市場...
社員もフリーランスのような働き方に? 近年注目の「ジョブ型雇用」と今後の働き手に必要な姿勢
近年、職務や責任の範囲、必要なスキルなどを明確に定めた上で雇用契約を結ぶ「ジョブ型雇用」が日本で注目を集めています。 元々、欧米で古くから導入されている雇用形態ですが、なぜ今、日本で脚光を...
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう