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コンセプチュアルスキルとは?スキル一覧や高め方、従業員の教育方法を紹介

U-NOTE編集部

2023/01/18(最終更新日:2023/01/18)


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コンセプチュアルスキルは物事の本質を見抜く力で、概念化力とも呼ばれます。複雑化する社会で生き残るために必要なスキルとして注目されています。

本記事ではコンセプチュアルスキルとは何か、どんな人に必要なのかを解説します。コンセプチュアルスキルを高めるメリットや鍛え方も紹介するので、できそうなものから取り組んでみましょう。

本記事の内容をざっくり説明
  • コンセプチュアルスキルの概要と構成要素
  • コンセプチュアルスキルの鍛え方
  • コンセプチュアルスキルを高めるメリット

 

コンセプチュアルスキルとは?

コンセプチュアルスキルとは、物事を深堀りし、本質を見抜く力のことです。集めた情報や知識の共通点を見つけ、体系的にまとめる力に優れるため、「概念化力」とも呼ばれます。

誰もが膨大な情報に触れられるようになった現代では、価値観が多様化し、ビジネスは複雑になりました。そんな中にあって、物事の本質を見抜く力は重要です。

「この戦略はなぜ成功(失敗)したのか」「市場の変化にどう対応すればいいか」といったビジネスシーンでの判断はもちろん、どう働き生きるべきかといった「個人の生き方」を模索するうえでも、コンセプチュアルスキルは役立ちます。

 

カッツモデルにおけるコンセプチュアルスキル

コンセプチュアルスキルはもともと、ハーバード大学の経済学者であるロバート・カッツ氏が提唱した「カッツモデル」の構成要素でした。

カッツモデルはマネジメントを3つのレベルに分け、それぞれに必要とされるスキルを体系的にまとめたものです。

図のように、カッツモデルではマネージャーとしてのレベルが上がっていくごとに求められるスキルが増えていき、最終的に必要となるのがコンセプチュアルスキルです。

 

ドラッカーモデルにおけるコンセプチュアルスキル

フランクフルト大学の経済学者であるピーター・ドラッカー氏が、カッツモデルを基にして提唱したのが「ドラッカーモデル」です。

ドラッカーモデルでは、ナレッジワーカー(一般社員)を含め、どの職域でもコンセプチュアルスキルが必要とされています。

現代の複雑化した社会では、考えなければならないことや集めるべきデータも増え、ナレッジワーカーにも判断したり考えたりする力が求められます。

特に日本社会では、ジョブローテーションが基本で、ナレッジワーカーの業務範囲も広いです。ジョブ型雇用(契約時に決められた職務だけを行う雇用形態)を基本とするアメリカ型の社会よりも、日本社会の方が、コンセプチュアルスキルの重要性は高いかもしれません。

 

コンセプチュアル力が高い人の3つの特徴

コンセプチュアル力が高い人の特徴を3つ紹介します。コンセプチュアルスキルに優れた人材を見極めたり、このような人材の真似をして自らのコンセプチュアル力を高めたりするための参考にしてみましょう。

 

データを集め、自分の頭で考えられる

コンセプチュアル力が高い人は、データを集め、自分の頭で考える力に秀でています。人の意見を鵜呑みにしたり、「みんながやっているから」「Aさんがそう言っていたから」などの理由だけで物事を判断したりしません。

データを集め、物事の因果関係をハッキリさせながら考えを深めていくことで、コンセプチュアル力を高められるでしょう。

 

どんな状況でも冷静に、フラットな立場でいられる

ビジネスにはトラブルが付きものです。価値観が多様化した現代では、議論をしているとさまざまな意見が出てくるでしょう。

どんな状況でも冷静に、フラットな立場で他者の意見を受け入れられる力があれば、トラブルや変化にも対応しやすくなります。

 

目的志向が高いファシリテーター

コンセプチュアル力が高い人は目的志向で、達成のためにより多くの意見やアイデアを集めようとする傾向にあります。

物事の本質を見極め、適切な判断を下すためには、なるべく多くのデータが必要です。目的達成を第一に考え、好き嫌いに関係なく、周囲の発言を促してみましょう。

 

コンセプチュアルスキルを高める3つのメリット

コンセプチュアルスキルを高めることで、仕事を進めやすくなるのはもちろん、プライベートも充実するでしょう。コンセプチュアルスキルを高める3つのメリットを紹介します。

 

リスクを回避しやすくなる

コンセプチュアルスキルを高める1つ目のメリットは、「リスクを回避しやすくなる」ことです。物事を多角的にとらえ、批判的・客観的に考えることで、今までは気づけなかったリスクに気づけるようになるでしょう。

また、コンセプチュアルスキルが高い人は知的好奇心や探究心も高く、市場や社会に広くアンテナを張る傾向にあります。自社に影響を与える外部要因にいち早く気づき、対処できるようになるでしょう。

 

チームの力を引き出せるようになる

コンセプチュアルスキルを高める2つ目のメリットは、「チームの力を引き出せるようになる」ことです。物事を深堀りし、本質を見抜く力を身につけることで、メンバー一人ひとりの強みや課題を見つけやすくなります。

メンバー同士のシナジー効果を考えた人材配置、チームに足りないのはどんな人材なのか見出しアサインすることで、より強いチームがつくれるでしょう。

 

公私ともに人生が充実する

コンセプチュアルスキルを高める3つ目のメリットは、「公私共に人生が充実する」ことです。概念化や本質を見抜く力を高めることで、自分自身の価値観や趣味・嗜好にも気づきやすくなります。

自分はどんなことにやりがいを感じるのか、何をしているときが一番楽しいのかを知ることは、人生を豊かにしてくれます。仕事への取り組み方や、人との向き合い方も変わり、日々の生活の満足度も高まるでしょう。

 

コンセプチュアルスキルの一覧

コンセプチュアルスキルはいくつものスキルで構成されています。各スキルを高めることが、そのままコンセプチュアルスキルを高めることにつながるでしょう。

 

ロジカルシンキング(論理的思考)

ロジカルシンキングは、物事の原因と結果をハッキリさせ、因果関係をとらえる思考法です。関連する要因を一つひとつ明確にし、アイデアや戦略などを深堀りしていくときに役立ちます。

 

クリティカルシンキング(批判的思考)

クリティカルシンキングは、現状分析や目標設定などを目的に、行動や考え方を批判的・客観的に分析する思考法です。分析や考察の結果を俯瞰し、内省することで、「これは本当に正しいだろうか?」と検証できます。

 

ラテラルシンキング(水平思考)

ラテラルシンキングは、常識や固定観念を打ち破り、新しい発想を生み出す思考法です。物事を多角的に考え、水平(横)方向にアイデアや考察を広げていきます。

ラテラルシンキングでアイデアを出し、一つひとつをロジカルシンキングで垂直(縦)方向に深めていくというように、ほかの思考法と併用することもできます。

ラテラルシンキングの鍛え方や使い方、ほかの思考法とどう併用すればいいのか気になる方には、こちらの記事がおすすめです。

 

多面的視野

多角的視野は、ひとつの事象や課題に対して、複数のアプローチ・とらえ方をする力です。常識や前例にとらわれないものの見方をすることは、新しいアイデアを生み出すためにも、考察を深めるためにも重要です。

 

柔軟性

柔軟性は、想定外の出来事や状況に対応・順応する力です。社会が目まぐるしく変化する現代では、状況を冷静に見つめ、フラットな立場で判断していかなければなりません。柔軟性が低く固定観念にとらわれている状態だと、間違った方法や考え方をなかなか正せないでしょう。

 

受容性

受容性は、自分とは異なる価値観や考え方を受け入れる力です。価値観が多様化した現代にはさまざまな意見をもつ人がいます。自分の中になかった意見を受け入れ、より広い視野で考えられるようになりましょう。

 

先見性

先見性は、世の中の流れや集めた情報を俯瞰し、将来を見通す力です。未来を完ぺきに予測することは不可能ですし、予測を盲信し柔軟性を失ってしまうのはいけません。

しかし、変化の多い現代では、先を見通しながら「次の一手」を考えなければなりません。将来を予測しながらも、その予測にとらわれず、世の中の流れをつかんで予測や戦略を修正していく柔軟さが大切です。

 

応用力

応用力は、今まで得た知識やスキル、経験などをほかの物事や領域にも応用する力です。ビジネスが複雑化し、求められるスキルも増えた現代は、「初めて直面する事態」の連続です。問題の本質を見抜き、今あるリソースで対処する力が求められます。

 

洞察力

洞察力は、物事の表面だけでなく深層部分まで見て、本質を見抜く力です。集めた情報を多角的に分析し、常識や前例にとらわれず本質を探る力は、コンセプチュアルスキルの根幹ともいえます。

 

直観力

直観力は、データだけでなく感覚的なひらめきも活かし、状況を瞬時に判断し対応する力です。さまざまな経験を積み、知識と情報を増やしていくことで、直観力は高まります。物事を判断するための材料を自分の中に蓄積し、トライ&エラーをくり返すことで、直感の精度を高めていけるでしょう。

 

知的好奇心

知的好奇心は、新しいことに興味を持ち、楽しみながら知識や経験を増やしていく力です。物事の本質を見抜いたり、都度適切な判断をしたりするには、知識や経験が欠かせません。

 

探究心

探究心は、妥協せずにタスクを遂行する力です。何かビジネスを進めるにしても、そのためのスキルを身につけるにしても、探究心がなくては中途半端になってしまうでしょう。

 

チャレンジ精神

チャレンジ精神は、未経験の物事を恐れず、積極的に挑戦する力です。目まぐるしく変化する現代は新しい(未経験の)ことの連続です。コンセプチュアルスキルを構成する「洞察力」や「直観力」を高めるためには、さまざまなことを経験しなければなりません。

 

俯瞰力

俯瞰力は、物事を広い視野で見る力、全体を見たり事象同士の関係性を見下ろしたりする力です。物事の本質を見抜くためにはそれぞれの関係性を浮き彫りにしなければなりませんし、マネジメントにおいてチーム全体を俯瞰し状況を把握する力は欠かせません。

 

コンセプチュアルスキルを高める・鍛えるための考え方

コンセプチュアルスキルを高めるためには、普段の考え方を変えてみるのがおすすめです。コンセプチュアルスキルの構成要素として紹介した複数のスキルや思考法を鍛えるための考え方を3つ紹介します。

 

具体化

一つひとつの物事を具体化し、事象同士の因果関係を見抜くことで、コンセプチュアルスキルを高められるでしょう。概念を具体例を交えて示したり、成功・失敗の要因を個別具体的にとらえたりすることで、具体化の力は育ちます。

 

抽象化

個別具体的な出来事を俯瞰し、共通点や因果関係を見つけ出すことでも、コンセプチュアルスキルを高められます。このような抽象化の過程を経ることで思考力は鍛えられ、知識や経験を概念化して自分の中に蓄積していけるでしょう。

 

定義

成功や失敗を言語化し、定義することも、コンセプチュアルスキルには欠かせません。「自分やビジネスをどんな状態にもっていきたいのか」「何をどこまでやるべきなのか」を定義することで、より適切な判断が下せるようになります。

 

従業員のコンセプチュアルスキルを育てる方法・高め方

特にドラッカーモデルでは、マネージャーだけでなくナレッジワーカーにもコンセプチュアルスキルが必要とされています。強い組織を作るには、マネージャーだけでなく、すべての従業員のコンセプチュアルスキルを育てなくてはなりません。

従業員のコンセプチュアルスキルを高めるために何ができるのか、6つの方法を紹介します。

 

研修

コンセプチュアルスキルとは何か、どうすれば鍛えられるのか、まずは研修を開いて従業員に知ってもらいましょう。コンセプチュアルスキルの構成要素は多いため、一度の研修ではなく、段階を踏んで成長していけるようなプログラムを組むのがおすすめです。

 

OJT

OJTは、実務を通して知識を共有したりスキルを身につけたりする方法です。上司や先輩社員が新人のトレーナーとなり、仕事のやり方を見せながら説明したり、そのうえで実践してもらったりします。

ただ、コンセプチュアルスキルはいくつものスキルの集合であり、OJTで指導する難易度は高いです。まずは研修したり事前に説明したりして、コンセプチュアルスキルについてある程度理解してもらうといいでしょう。

 

1on1

1on1は上司やマネージャーと部下・メンバーが1対1で行う面談のことです。1on1でコンセプチュアルスキルをどの程度習得できているのか、次の課題は何かなどを明確にすることで、従業員の学習意欲や成長速度を高められるでしょう。

 

eラーニング

eラーニングとは、PCやスマートフォンなどを使った学習・教育プログラムのことです。端末とインターネット環境さえあればどこでも学習できるため、自習にも適しています。

コンセプチュアルスキルは構成要素が多く、普段の考え方から変えていかなければなりません。通常の研修やOJTだけでは限界がありますし、従業員が興味をもったときに、自ら学べる環境をつくることも重要です。

 

ジョブローテーション

コンセプチュアルスキルの構成要素は多く、多岐にわたるスキルを身につけなければなりません。ジョブローテーションでさまざまな仕事に携わることで、経験と知識が増え、コンセプチュアルスキルを構成する複数のスキルを自然に身につけられるでしょう。

 

ワーク

コンセプチュアルスキルを高められるワークに、「ジュニア・ボード」があります。ジュニア・ボードでは、何人かの従業員で議事役員会を開き、経営について議論したり実際の経営陣に提言したりします。

全社横断的に考えたり議論したりすることで視野が広がり、今までとは違った考え方を身につけられるでしょう。

 

コンセプチュアルスキルを高め、変化の多い時代を生き抜こう

本記事のまとめ
  • コンセプチュアルスキルは概念化力とも呼ばれる、物事の本質を見抜く力
  • コンセプチュアルスキルを高めることで、公私ともに充実度が高まる
  • 思考力や知的好奇心など、一つひとつの資質を高めることでコンセプチュアルスキルを鍛えよう

コンセプチュアルスキルは事象を深堀りしたり相関性を俯瞰したりして、物事の本質を見抜く力のことです。

コンセプチュアルスキルは複数のスキルで構成されるため、まずは自分の強みと弱みを分析し、伸ばすべき部分を探してみましょう。強みを活かす方法を探したり、弱みをカバーしたりすることで、効率よくコンセプチュアルスキルを高められるでしょう。

本記事を参考に、コンセプチュアルスキルを高める方法を試してみてください。

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