VUCA(ブーカ)はVolatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉です。現代はこれらの要因に取り巻かれた、変化の多い時代で、これをVUCA時代といいます。
VUCA時代ではどんなことが起こっているのか、働く人一人ひとりと組織が生き残るために何ができるのか、具体的な方法論と考え方を伝えます。
- VUCA時代を取り巻く4要素を詳しく解説
- VUCA時代に活躍できる人材とは?
- 人材を活かし、VUCA時代を強く生き残れる組織のつくり方
VUCA(ブーカ)とは?
VUCA(ブーカ)とは、変化が多く不確実で、未来を予測しづらい状況を指す言葉です。次の4つの頭文字を取って、VUCAと呼ばれています。
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Volatility:変動性
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Uncertainty:不確実性
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Complexity:複雑性
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Ambiguity:曖昧性
もともとは冷戦が終結し、戦略が複雑になったことを示す軍事用語でしたが、2010年ごろからビジネスの世界でも使われるようになりました。
VUCAの4要素がビジネスの世界のどんな状況を示すのか、確認していきましょう。
Volatility:変動性
Volatility(ボラティリティー:変動性)は技術の進化や価値観の変化、これらによるニーズや市場の変動を指します。社会を取り巻く状況が目まぐるしく変化する現代において、未来を予測することは難しく、都度柔軟な対応が求められます。
Uncertainty:不確実性
Uncertainty(アンサートゥンティ:不確実性)は自然環境を含む社会情勢の不確実性を示します。気候の変動や政治の流れなどを確実に予測することは難しく、ビジネスはこれらの影響を大きく受けます。
近年でも、新型コロナウイルスの感染拡大により、あらゆる業界があり方を大きく変えました。
Complexity:複雑性
Complexity(コムプレクシティ:複雑性)は働き方や価値観の多様化、グローバル化などにより、ビジネスが複雑になったことを示します。たとえば日本と海外では商慣習が違います。ミレニアル世代やZ世代にはテレビを見ない人が増え、マーケティングは複雑化しました。
ビジネスの世界が複雑になったことを受け入れ、市場やターゲットに合った戦略を立てなければなりません。
Ambiguity:曖昧性
Ambiguity(アムビギュイティ:曖昧性)はこれまでの3要素が絡み合うことで、物事の因果関係が読み解きづらく、曖昧になったことを示します。前例や固定観念にとらわれず、多角的に考えなければ、これからの世界で生き残っていくことは難しいでしょう。
VUCA時代とは?
変化が多く不確実な現代はVUCA時代と呼ばれています。VUCA時代の背景にあるものや政府の動き、その象徴ともいえる出来事を紹介します。
VUCA時代の背景にあるもの
VUCA時代の背景にはIT技術の進化やグローバル化、特に日本に関しては少子高齢化などがあります。
インターネットやPC、スマートフォンの普及により、誰もが膨大な情報の中から欲しいものを取捨選択するようになりました。これにより価値観は多様化し、マーケティングにおいて人材採用においても、より複雑な戦略が必要となりました。
IT技術の進化とグローバル化もこの流れに拍車をかけ、商慣習は大きく変わりつつあります。「印鑑不要」「契約の電子化」などの変化が記憶に新しいでしょう。
特に日本では少子高齢化により労働人口が減り続けています。人手不足を補うために機械化・AI化が進み、雇用を取り巻く環境も変化しています。
VUCA時代を象徴する出来事
VUCA時代を象徴する出来事として印象的なのが、新型コロナウイルスの感染拡大と、それによる市場の変化です。特に飲食業界や宿泊業界は大きな打撃を受けましたが、新しい生活様式に対応するためにさまざまな工夫も施されました。
飲食業界ではテイクアウトやデリバリーが、宿泊業界では部屋をワークスペースとして貸し出したりワーケーション目的の消費者をターゲットに組み込んだりといった変化が印象的です。
少子高齢化による労働人口の減少にも注目したいです。IT技術、特にAIの進歩により雇用が減るという警鐘も聞こえてきますが、機械化・AI化を進めなければ人手不足に対処しきれない企業も多いでしょう。
政府の取り組み
VUCAに関する政府の取り組みとして、2019年3月に経済産業省が発表した「人材競争力強化のための9つの提言(案)~日本企業の経営競争力強化に向けて~」を見てみましょう。この資料の中で、経済産業省は次のように述べています。
出典:人材競争力強化のための9つの提言(案)~日本企業の経営競争力強化に向けて~ │ 経済産業省
「デジタル化」の項目でVUCAへの言及がありますし、「グローバル化」や「少子高齢化」はVUCA時代の根幹ともいうべき事象です。VUCA時代への対応は個人や企業はもちろん、国家が生き残るためにも欠かせません。
VUCA時代に求められる人材とは?
VUCA時代では、それまでの時代に求められていたのとは異なる人材が求められます。
次に、VUCA時代に活躍できるのはどんな人材なのか、リーダーと一人ひとりのメンバー、それぞれに何が求められるのかを紹介します。
リーダーに求められるもの
VUCA時代のリーダーには、多角的な視点で物事をとらえ考える力、一人ひとりのメンバーを理解し引っ張っていく力が求められます。
多様化した価値観とニーズに対応するには、多角的に考える力がなくてはなりません。そのためには、常識や固定観念を疑い新しいアイデアを探していく「ラテラルシンキング」が役立つでしょう。
働く人の価値観も多様化し、お金を重視する人もいれば、やりがいや組織への共感を重視する人もいます。終身雇用が崩壊し転職が当たり前になったこともあり、頭ごなしの指導ではメンバーはついてこないでしょう。一人ひとりの考え方や持ち味を理解し、それを活かすマネジメントが必要です。
一人ひとりのメンバーに求められるもの
VUCA時代で働く人には、自ら考え主体性高く動く力や、高い自己分析力が求められます。
IT技術の進化により仕事は効率化されましたが、ビジネスの複雑性は増し、やるべきことはむしろ増えました。目まぐるしく変わる状況の中で、リーダーからの指示を待っているだけでは仕事がなかなか進みません。先を見通し、主体的に動き、時にリーダーに進言するような行動力が求められます。
働き方やライフプランの多様化は働く人の自由度を高めましたが、「どう働き、どう生きるか?」の選択を難しくしました。自分を深く見つめなおし、満足感の高い働き方・生き方を模索していかなければなりません。
これは自分の強みや弱みを見つけ活かすことにもつながります。多様化した価値観に対応するには、メンバー一人ひとりが自分の持ち味を知り、それを活かすことが役立つでしょう。
VUCA時代を生き抜くためのスキルは?
VUCA時代を生き抜くためには多角的に考え、主体性高く動く力が求められます。そのために役立つスキルを5つ紹介します。
圧倒的な行動力
VUCA時代を生き抜く力の土台ともいえるのが、「圧倒的な行動力」です。VUCA時代のビジネスはとにかくやることが多く、後述する通り、常にアンテナを張り広く情報を集めなければなりません。基本的な行動力は必須スキルです。
選択と集中のスキル
VUCA時代のビジネスはやるべきが多く、市場は複雑でさまざまなターゲットが考えられます。だからこそ、「やった方がいい」と思えることすべてをやるのは不可能ですし、ターゲット像が曖昧では「結局誰の心にも刺さらないビジネス」ができあがってしまいます。
情報を収集・分析し、やるべきことと切り捨てることを分ける、「選択と集中のスキル」が必要です。
広くアンテナを張る力
ビジネスを取り巻く要素が増え、トレンドや市場が目まぐるしく変化していくVUCA時代において、「広くアンテナを張る力」は欠かせません。
自分やチームの専門領域だけでなく、その周辺領域や一見無関係な領域にまでアンテナを張るのです。そうしなければ、成功や失敗の因果関係もつかめず、戦略を打ち立てることも難しいでしょう。
自他の内的モチベーションに働きかけるスキル
価値観の多様化したVUCA時代では、お金や社会的地位以外にも、さまざまなモチベーション要因があります。「自分の成長を楽しみたい」「この作業そのものが楽しい」「尊敬できるリーダーやチームメンバーに貢献したい」といったモチベーションを、内的モチベーションといいます。
内的モチベーションに働きかけるスキルは、VUCA時代のマネジメントに欠かせません。これはリーダーだけに求められるものではなく、一人ひとりのメンバーにとっても重要です。自分の内的モチベーションを見つけ出し、それにアプローチしていくことで、働くことへの満足度を高められるでしょう。
ビジョンを打ち出し周囲を巻き込む力
内的モチベーションがより重要となったVUCA時代では、「ビジョンを打ち出し周囲を巻き込む力」が重要です。この力が高いほど、チームは自走しやすく、メンバーは成長しやすくなるでしょう。
この力はリーダーにとって特に重要ですが、一人ひとりのメンバーも意識したいものです。自分の内的モチベーションやビジョンを開示し、それをほかのメンバーと共有しあうことで、チームの一体感は高まります。
このようなチームの心理的安全性は高く、発言や挑戦がしやすく、誰もが主体的に行動し続けられるようになるでしょう。
VUCA時代を生き抜ける組織とは?
VUCA時代を生き抜ける組織は、先述の「VUCA時代に求められる人材」がそろい、活躍している組織でしょう。彼らを育て活躍してもらうために、すべきサポートや組織づくりの方向性について解説します。
チャレンジや変化を好む組織
VUCA時代を生き抜くためには、社会の流れをつかみ、柔軟に対応できる組織です。その礎となるのが、チャレンジや変化を好む組織風土です。
たとえば新規事業を小さく立ち上げてみたり、コンテストでアイデアを募ったり、人事制度の透明度を高め「昇進のためにすべきこと」を明確にしたり。社員一人ひとりがチャレンジしやすい環境をつくってあげましょう。
風通しの良い組織
VUCA時代を生き抜くためには、価値観が多様化した市場の中でターゲットを決め、的確にアプローチしていかなければなりません。そのために必要なのが、顧客や見込み客について深く理解することです。
顧客や見込み客を最も知っているのは、彼らと直接触れ合う現場の社員です。社員一人ひとりが発言しやすく、意見が下から上へとスムーズに流れていく、ボトムアップ型の組織をつくりましょう。
多様性のある組織
多様性の高い社会に順応する近道は、組織の多様性を高めることです。性別や年齢、考え方などの多様性が高いほど、組織の内側(一人ひとりの社員)から意見やアイデアが出てくるでしょう。
たったひとりの社員のアイデアが、新規事業や業務プロセスの変革につながるかもしれません。
VUCA時代に求められる「OODA(ウーダ)ループ」
VUCA時代を生き抜ける組織をつくるために役立つのが、「OODA(ウーダ)ループ」です。OODAとは次の頭文字を取ったもので、PDCAサイクルに代わる業務改善手法として注目されています。
Observe(オブザーブ:観察):市場や顧客、競合他社などの外部要因を観察し、リアルなデータを集めること
Orient(オリエント:理解):集めたデータを分析し、状況を把握し理解すること
Decide(ディサイド:決定):状況を踏まえ、戦略や行動指針を決めること
Act(アクト:動く):戦略や行動指針に沿って実際に動くこと
外部要因を観察し、それに沿って戦略的に動くことで、社会の変化を素早く察知し対応していけるでしょう。
変化の早いVUCA時代を生き抜くために、組織の柔軟性を高めよう
- VUCA時代は変化が多く不確実性が高い
- 変化の早い社会に対応するために、組織の柔軟性を高めよう
- 社会の変化を察知し、一人ひとりが考え方・動き方を変えていこう
VUCA時代は変動性・不確実性・複雑性・曖昧性が高く、ビジネスを取り巻く環境が目まぐるしく変わっていきます。柔軟性を高め、市場の変化に対応していかなければ、組織は生き残れないでしょう。
そのために大切なのが組織づくりです。社会の流れをつかむこと、一人ひとりのメンバーの持ち味を理解し活かすことで、VUCA時代を良く残れる強い組織がつくれるでしょう。
本記事を参考に、VUCA時代を生き残るために、必要なものを検討してみてはいかがでしょうか。
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