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【例題付き】ラテラルシンキングとは?必要な理由や使い方・鍛え方、他の思考法との違いを解説

U-NOTE編集部

2023/01/16(最終更新日:2023/01/16)


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ラテラルシンキングとは、物事を多角的にとらえ、考察やアイデアの幅を広げる思考法です。水平思考とも呼ばれます。

本記事ではラテラルシンキングとは何か、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングとの違いを解説します。日常生活の中で思考力を鍛える方法も紹介するので、今日から取り入れてみましょう。

本記事の内容をざっくり説明
  • ラテラルシンキングの概要とほかの思考法の違い
  • ラテラルシンキングのメリットや注目される背景
  • ラテラルシンキングの鍛え方

 

ラテラルシンキング(水平思考)とは?

ラテラルシンキングは水平思考とも呼ばれ、物事を多角的に考えることで、新しい発想を生み出す思考法です。常識や前例にとらわれず、偶発的なできごとや直感から考察を広げていくことで、ユニークなアイデアを生み出せます。

ラテラルシンキングは1967年に、マルタの医師(ほかにも心理学者や作家、発明家、コンサルタントなどの仕事をしていた)エドワード・デボノ氏により提唱されました。

価値観が多様化した現代において、ラテラルシンキングのほかにもさまざまな思考法が注目されています。ラテラルシンキングと並んで注目される「ロジカルシンキング」と「クリティカルシンキング」についても、概要を押さえておきましょう。

 

ロジカルシンキング(論理的思考)との違い

ロジカルシンキングは体系的に、物事を整理しながら考えていく思考法のことです。筋道を立て、矛盾が発生しないよう論理的に、物事を順番に掘り下げていくような考え方をします。このことから、論理的思考や垂直思考とも呼ばれます。

ラテラルシンキングが水平方向(横)に考えを広げていく思考法だとすると、ロジカルシンキングは垂直方向(縦)に考えを深めていく思考法です。ラテラルシンキングで広げたアイデアを、ロジカルシンキングで一つひとつ検証していくというように、併用することが多いです。

 

クリティカルシンキング(批判的思考)との違い

クリティカルシンキングは現状分析や目標設定などを目的にする思考法です。自分自身や組織の行動・考え方を意識的・客観的に分析し、目標達成や課題解決に向けて計画を立てていきます。

批判的思考とも呼ばれますが、批判的・否定的に考えていくわけではありません。論理構造を俯瞰しながら分析や内省をするための思考法であり、ラテラルシンキングやロジカルシンキングから得た結論が「本当に正しいか?」と見つめなおすためにも使われます。

 

ラテラルシンキングが注目される背景

ラテラルシンキングが注目される背景には、「VUCAの時代」や「イノベーションのジレンマ」といった時代の変化が挙げられます。これらの概要と、ラテラルシンキングとの関係について解説します。

 

VUCAの時代

VUCA(ブーカ)とは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を取った言葉です。現代はVUCAの時代と呼ばれ、一言にまとめると、変化が多く不確実な時代といえます。

たとえば現代ではIT技術やAIが急速に進歩し、雇用の減少や変化、価値観の多様化などが起こっています。目まぐるしく変わる社会で生き残るには、企業も個人も、変化に柔軟に対応できなければなりません。

ラテラルシンキングはひとつの出来事やひらめきを水平方向に広げていき、今までにないアイデアを生み出す思考法です。これが変化の多い現代で生き残るために役立つとして注目されているのです。

VUCAの時代について、以下の記事でも詳しく解説しています。

 

イノベーションのジレンマ

イノベーションのジレンマとは、大企業が顧客の意見を取り入れ製品やサービスを改良・開発することで、イノベーションの面で後れを取るという考え方です。

規模の大きな企業は社会的な注目度や顧客に対する責任も大きく、スタートアップやベンチャーに比べて動きが遅くなってしまいます。イノベーションや新規事業を起こそうとしてもスピード面で後れを取るうえ、既存事業とのカニバリゼーションも考えなくてはなりません。

加えて、他社が起こしたイノベーションにより、既存の市場が崩壊してしまうこともあります。たとえばデジタルカメラという新技術の登場により、カメラフィルムの市場は崩壊し、多くの企業が苦境に立たされました。このような、既存市場を崩壊させかねないイノベーションを破壊的イノベーションと呼びます。

固定観念や前例にとらわれず、アイデアを広げていけるラテラルシンキングは、イノベーションのジレンマを乗り切るために有効です。

たとえば先ほどのカメラフィルムの例でも、富士フィルムは自社の技術を活かしてデジタルカメラや医療用画像システムなどの新規事業を展開することで、イノベーションのジレンマを乗り切っています。

「うちは大手だから大丈夫」「今さらほかの事業でやっていけるだろうか」と考えるのではなく、「自社のアセットを活かして何ができるだろうか」と多角的に考えることが重要です。

 

ラテラルシンキングの例題

ラテラルシンキングの例題として特に有名なのが「ウミガメのスープ」です。

ある男が、とある海の見えるレストランで「ウミガメのスープ」を注文した。

スープを一口飲んだ男は、それが本物の「ウミガメのスープ」であることを確認し、勘定を済ませて帰宅した後、自殺した。一体、なぜ?

参照:ウミガメのスープ(ポール・スローン)

ウミガメのスープでは前提条件は何も与えられず、すでにある根拠や事象から考察するロジカルシンキングやクリティカルシンキングでは答えを導き出せません。男が自殺した理由を考えるには、創造的で自由な発想が必要です。

そこでラテラルシンキングが役立ちます。ウミガメのスープの問題では、回答者は出題者に「はい」「いいえ」「関係ありません」のどれかで答えられる質問ができます。質問を通してさまざまな可能性を検証していくことで、少しずつ答えに近づいていけるのです。

ちなみに、ウミガメのスープの正解は次の通りです。

男はかつて数人の仲間と海で遭難し、とある島に漂着した。食料はなく、仲間たちは生き延びるために力尽きて死んだ者の肉を食べ始めたが、男はかたくなに拒否していた。見かねた仲間の一人が、「これはウミガメのスープだから」と嘘をつき、男に人肉のスープを飲ませ、救助が来るまで生き延びさせた。男はレストランで飲んだ「本物のウミガメのスープ」とかつて自分が飲んだスープの味が違うことから真相を悟り、絶望のあまり自ら命を絶った。

参照:ウミガメのスープ(ポール・スローン)

 

ラテラルシンキングのメリット

ラテラルシンキングには、次のようなメリットがあります。

  • 失敗からより多くを学べる

  • 失敗が成功につながる

  • 前提条件を崩して考えられる

  • 突飛なアイデアや抜け道を見つけやすい など

ラテラルシンキングでは、失敗と思えるような出来事も単なる失敗ととらえず、そこから考えを広げていきます。「失敗は成功のもと」と昔から言いますが、失敗に見える結果をそのまま製品化したり、失敗から多くを学び取り成功に近づいていくことができるでしょう。

たとえば「粘着力の弱いのりを付箋として売り出した」というケースもこれにあたります。粘着力が弱くなったことを失敗ととらえるのではなく、「はがれない方がいい」という前提条件を崩した結果、付箋という新しい製品が生まれたのです。

 

ラテラルシンキングのデメリット

ラテラルシンキングは万能の思考法ではありません。アイデアを広げて行くのには役立ちますが、前提条件や固定観念を崩して考えるため、生まれたアイデアは精査しなければなりません。

一つひとつのアイデアを精査するにはロジカルシンキングが有効です。課題や現状を分析し、アイデアを改善するにはクリティカルシンキングが役立つでしょう。

 

ラテラルシンキングの使い方

ラテラルシンキングの使い方を、現状の把握と打破の2段階に分けて解説します。ラテラルシンキングに役立つフレームワークも紹介するので、慣れるまでは、フレームワークに沿って考えてみましょう。

 

現状を把握する

ラテラルシンキングでは、まずは現状を把握することから始めます。現状を把握することで、解決すべき課題や新しいアイデアのもととなる事象が見えてきます。

 

前提や固定観念を疑い、打破する

現状を把握し、課題やアイデアが見えてきたら、現状を打破するうえで障害になるものを探しましょう。その障害は本当に障害となりえるのか、前提や固定観念を疑い、課題解決やアイデア実現の道を探るのです。

突飛に思えるアイデアも切り捨てず、書き留めておきましょう。まずはいくつもアイデアを出し、後から精査すればいいのです。

 

ラテラルシンキングに役立つ「オズボーンのチェックリスト」とは

ラテラルシンキングに役立つフレームワークに、「オズボーンのチェックリスト」が挙げられます。次の9つの視点で、アイデアを広げていきます。

  • 転用:既存のアイデアを改善することで、ほかの用途に使えないか

  • 応用:似たようなアイデアはあるか、参考となる前例はあるか

  • 変更:色や形、意味など、新しい視点から考えられないか

  • 拡大:大きさや時間といったスケールを拡大することで何が得られるか

  • 縮小:サイズを小さくしたり時間を短くしたりすることで何が得られるか

  • 代用:既存のものではなく、ほかの材料やアプローチで代用できないか

  • 再配置:要素やパターン、流れを変えることで何が得られるか

  • 逆転:今と真逆の流れやアプローチにすることで何が得られるか

  • 結合:ほかのアイデアや目的を組み合わせることで何が得られるか

 

ラテラルシンキングの鍛え方

ラテラルシンキングに限らず、思考力はいきなり高められるものではありません。日頃から考えを深め、鍛えていかなければなりません。

ラテラルシンキングを鍛える3つの方法を紹介するので、普段の生活や仕事に取り入れてみましょう。

 

普段から前提や常識を疑う

ラテラルシンキングでは物事を多角的に考え、横方向にアイデアや思考を広げていきます。前提や常識にとらわれていては、思考の幅が制限されてしまいます。

普段から常識を疑い、「普通はAと考えるが、Bのように考えられないだろうか」と、前提を崩す練習をしておきましょう。

 

物事の本質を深掘りする

思考やアイデアを広げていくために、物事の本質を深堀りして考えるクセをつけましょう。アイデアをただ出すのではなく、「どんな人の、どんな課題を解決すると喜ばれるだろうか」と考えてみること。その課題の根底にはどんな欲求があるのかをとらえることが重要です。

 

リフレーミングの練習を積む

ラテラルシンキングを鍛えるために、リフレーミングの練習をしてみましょう。リフレーミングとは、物事のとらえ方を変えてみることです。

たとえば商談で失注したとしても失敗したととらえるのではなく、「このタイプの人に、このアプローチは響きにくいとわかった」と考えることで、次の成功率が高まります。ネガティブに感じることをポジティブにとらえなおすことで、失敗からより多くを学び、成功に近づけるでしょう。

 

ラテラルシンキングを鍛えるには、普段の練習が大切

本記事のまとめ
  • ラテラルシンキングは横方向に考察やアイデアを広げていく思考法
  • 変化の激しい現代において、ラテラルシンキングは重要
  • ラテラルシンキングを鍛えるために、普段の思考を見つめなおしてみよう

ラテラルシンキングとは、物事を多角的にとらえ、考察やアイデアを水平方向に広げていく思考法です。価値観が多様化し、変化も激しい現代において、常識にとらわれずさまざまなアイデアを出すことは大切です。

ただ、考え方を一朝一夕で変えるのは難しいでしょう。考え方を変え思考力を鍛えるためには、普段の練習が大切です。本記事を参考に、常識を疑い自分なりに深く考えてみる、リフレーミングで物事のとらえ方を変えてみるなど、日常生活で少しずつ思考のトレーニングを積みましょう。

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