ロールモデルとは、目標達成や理想実現のためのお手本のことです。ロールモデルを設定することには、個人の成長速度を高めたり、組織を活性化させたりといったメリットがあります。
本記事ではロールモデルの概要や必要性、探し方などをまとめて解説します。
- ロールモデルの概要や必要性
- 個人と企業の視点から、ロールモデルを設定するメリットを解説
- ロールモデルの設定方法と探し方
ロールモデルとは?
ロールモデルとは、簡単にいえば「目指すべきお手本」のことです。「私はA部長のようになりたい」「B店のようなお店をつくりたい」といったお手本を決め、その考え方や行動を真似します。
ロールモデルは、自分の理想を実現するための地図のようなものです。「A部長のようになりたい」と思うなら、A部長の人物像が地図でいう目的地になります。
地図を見ながら「ここからここまではバスで行った方が早い」「ここからはこのルートで徒歩」と考えるように、ロールモデルの考え方や行動を参考にしながら、ゴールにたどり着くためには何をすればいいのかを考えるのです。
ロールモデルの語源
ロールモデルは役割や役目を意味する「Role」と、模範や型を意味する「Model」を組み合わせた言葉です。1940年代に、アメリカの社会学者であるロバート・K・マートン氏が提唱しました。
ロールモデルが必要な理由
近年、日本でもロールモデルを設定する人が増えています。ロールモデルの必要性が高まっている理由はさまざまですが、その一つに「キャリアや働き方の多様化」が挙げられます。
少子高齢化や終身雇用の崩壊、アメリカ型のジョブ型雇用(ジョブローテーションを前提としない雇用。詳しくはこちら)、フリーランスの台頭などによりキャリアや働き方は多様化しました。
以前の日本で当たり前だった「今の会社で定年まで勤める」「上司と同じような道をたどる」という終身雇用の考え方はもはや通用せず、キャリアの見通しを立てられていない人も多いでしょう。
自分に合った、キャリアの見通しを立てるために、ロールモデルを求めている人が増えているのかもしれません。会社員やフリーランス、経営者など、自分の働き方に合ったロールモデルを見つけることが、キャリアを検討する近道になるといえます。
個人がロールモデルを設定するメリット
ロールモデルを設定することには、キャリアプランを立てやすくなったり成長速度が上がったり、さまざまなメリットがあります。個人がロールモデルを設定する3つのメリットを紹介します。
- キャリアプランを立てやすくなる
- 成長速度が上がる
- 自分を客観視しやすくなる
キャリアプランを立てやすくなる
個人がロールモデルを設定する1つ目のメリットは、「キャリアプランを立てやすくなる」ことです。自分が将来どうなりたいのかを考え、それに近いロールモデルを探しましょう。その人の通った道をたどることが、ゴールへの近道です。
特にフリーランスや経営者には上司・先輩がおらず、自分が将来どんな道をたどるのかがイメージしづらいでしょう。設定したロールモデルがどんなキャリアをたどったのかを参考にすれば、自分のキャリアプランも描きやすくなります。
成長速度が上がる
個人がロールモデルを設定する2つ目のメリットは、「成長速度が上がる」ことです。ロールモデルを設定することで、自分が今取るべき行動がわかるようになります。ロールモデルの考え方を真似できるようになれば、決断のスピードも上がるでしょう。
先述の通り、キャリアプランも描きやすくなるため、「次はどんな仕事・勉強をすればいいんだろう」と迷うことも少なくなります。
自分を客観視しやすくなる
個人がロールモデルを設定する3つ目のメリットは、「自分を客観視しやすくなる」ことです。自分とロールモデルを比べることで、自分の今いる位置や足りないもの・補うべきものが見えやすくなります。
自分を客観視することは、成長するうえで欠かせないことです。自分とロールモデルを比較する時間は、定期的に設けましょう。
企業がロールモデルを設定するメリット
ロールモデルを設定することで、個人の成長速度は高まるでしょう。従業員がロールモデルを設定し、新しいことに積極的に学んだり挑戦したりすることで、企業としての成長速度も高まります。
従業員にロールモデルを設定させるメリットを、企業の視点から紹介します。
- 組織の活性化
- 離職率の低下
- ダイバーシティの推進
組織の活性化
企業がロールモデルを設定する1つ目のメリットは、「組織の活性化」です。社員が互いをロールモデルに設定し合うことで、社内のコミュニケーションは活性化し、従業員のモチベーションは上がるでしょう。
ロールモデルを設定する側は、より多くを学ぼうと積極的にコミュニケーションを取るでしょうし、ロールモデルに設定された側も「お手本にならなければ」と視座が高くなるはずです。
離職率の低下
企業がロールモデルを設定する2つ目のメリットは、「離職率の低下」です。社員同士でロールモデルを設定し合うことで、社員は「今の会社でのキャリアプラン」を描きやすくなります。自身の成長を社外に求めることが少なくなり、転職が減るでしょう。
先述した組織の活性化により、社員同士で励まし合ったり相談し合ったりもしやすくなります。従業員にとって居心地のいい職場、やりがいを感じられる仕事をつくることで、辞めたいと感じる人も少なくなるでしょう。
ダイバーシティの推進
企業がロールモデルを設定する3つ目のメリットは、「ダイバーシティの推進」です。育児や介護をしながらの時短勤務、育児休暇の取得といった多様な働き方を推進することで、企業はより多くの人材を集められるようになるでしょう。
お手本にできる前例や先輩社員がいればこのような働き方はしやすくなり、ダイバーシティの推進も加速します。
ロールモデルを設定するときのポイント
ロールモデルを設定するときは、今の自分より少し上の相手や、自分の理想を実現している相手を探しましょう。そのためのポイントを3つ紹介します。
- ロールモデルは社員のレベル別に設定する
- ロールモデルは人でなくてもいい
- 複数のロールモデルを設定できるとなお良い
ロールモデルは社員のレベル別に設定する
ロールモデルは社員のレベル別に、一人ひとりに合った相手を設定しましょう。一般社員が
いきなり社長や役員をロールモデルに設定しても、役割が違いすぎて、真似できる部分は少ないでしょう。相手との接点も少ないため、何をどう真似すればいいかもわからないかもしれません。
今の自分とかけ離れたロールモデルを設定しても、参考にならないことが多いです。ロールモデルはなるべく身近で、自分より少し上にいる相手にしましょう。
ロールモデルは人でなくてもいい
ロールモデルは人でなくても構いません。経営者や役員なら「会社」を、お店なら「競合店」をロールモデルに設定しましょう。
そのうえで、その会社やお店が今に至るまでどんな道をたどってきたのか、最近はどんな取り組みに力を入れているのかを参考にするのです。
複数のロールモデルを設定できるとなお良い
ロールモデルは1人でなくても構いません。むしろ、複数いる方が良いとも言われています。複数のロールモデルがいれば、一人ひとりのいいとこ取りができるからです。
たとえば営業職ならアポ取りは同僚のAさん、商談はB部長、アフターフォローやリレーションはサポート部門のCさんというイメージです。
業務や目的に合わせてロールモデルを設定し、複数のロールモデルからいいとこ取りをすることで、成長速度はさらに高まるでしょう。
ロールモデルの見つけ方
ロールモデルを探すときには、年代、業種や職種、働き方などから検討する方法があります。それぞれの詳細を紹介します。
年代から探す
ロールモデルは自分より少し先を行っている相手が好ましく、同年代か少し上の年代からだと探しやすいでしょう。自分と近い年代の相手は考え方や価値観も理解しやすく、相手の真似もしやすいです。
業種・職種から探す
ロールモデルを参考にしてキャリアプランを立てるなら、自分と同じ業種・職種の相手が好ましいです。転職したい業界・業種があるなら、その業界にいる相手をロールモデルにするのもいいでしょう。
働き方を軸に探す
会社員やフリーランス、経営者といった働き方を軸に、ロールモデルを探すのもおすすめです。会社員とフリーランスではキャリアアップの方法も求められるスキルも異なります。
「将来こんな働き方がしたい」という理想があるなら、それを実現している人を探してみるのもいいでしょう。
ロールモデルを探すためのチャネル例
身近な相手をロールモデルにした方が、成長速度は高くなるでしょう。相手の行動を日常的に見られたり、直接話を聞けたりするメリットは大きいです。
しかし、特に転職や独立を考えている人は、身近にロールモデルになり得る人がいないかもしれません。この場合、次のようなチャネルでロールモデルを探してみましょう。
-
SNS
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ブログ
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セミナー
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交流会
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勉強会
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サロン など
ロールモデルを設定し、ビジョン実現を早めよう
- ロールモデルは理想実現のためにお手本とすべき相手
- ロールモデルを設定することで成長速度が高まる
- ロールモデルには組織活性化やダイバーシティ推進など組織的なメリットもある
ロールモデルは自分の理想を実現するために、お手本とすべき相手のことです。ロールモデルを設定することで、理想を実現した自分をイメージしやすくなり、モチベーションが上がるでしょう。そのために何をすべきかも、ロールモデルを観察することで見えてきます。
社員が互いをロールモデルに設定し合うことには、組織的なメリットもあります。離職率の低下やダイバーシティの推進などを目指し、企業として、従業員のロールモデルの設定を助けてあげるのもいいでしょう。
本記事を参考に、あなたのロールモデルを検討してみてはいかがでしょうか。
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