プロジェクト進行の現場でよく使われているフレームワークが「WBS」です。全体を俯瞰して見ることができるため、複雑かつ工程の多い作業を行う場合に便利です。
本記事は、そんな「WBS」の基礎知識を解説。作り方や実行するときのポイントに加えて、ガントチャートとの違いもご紹介します。プロジェクトを成功させるために、どのように進めていけば良いか悩んでいる方は、本記事の内容を参考にしてみてください。
- WBSとは?活用するメリットと注意点を解説
- WBSを活用するのに向いているシーンや業務をご紹介
- WBSを作成する際におすすめのツールとは?
WBSとは
「WBS」とは、プロジェクトに欠かせないワークフレームのひとつです。「Work Breakdown Structure」の頭文字を取って、WBSと呼ばれています。作業分解構成図と呼ばれることもあります。
1つのプロジェクトを進行するには、複雑かつ細かなタスクを一つひとつこなしていかなければなりません。ざっくり把握していると、後々漏れが生じてしまいます。
WBSは作業分解構成図とも呼ばれている通り、タスクを分解・構造化してプロジェクト全体を管理しやすくするためのもの。一般的に、システム開発のプロジェクトマネジメントでよく用いられています。
WBSを活用するメリット
WBSは特に、大勢で進行するようなプロジェクトを管理する際に向いているフレームワークです。実際に導入するとどのようなメリットがあるのでしょうか。WBSを活用する3つのメリットをご紹介します。
- メリット1.最終的な目標までのタスクが明確になる
- メリット2.タスクの工数が明確になる
- メリット3.リソースの振り分け・進捗管理がしやすくなる
メリット1.最終的な目標までのタスクが明確になる
WBSを活用する1つ目のメリットは、最終的な目標までのタスクが明確になることです。
WBSはプロジェクト完了までのタスクや計画など、全体を俯瞰することのできるフレームワーク。最終的な目標までに何をする必要があるのかが明確になるだけでなく、担当業務がほかのどのタスクに影響するのかも見える化されます。
振り分けられた仕事とそのほかの人が担当している仕事との繋がりがわかるため、一人ひとりが最終的な目標までの達成をイメージしながら作業に臨めます。
メリット2.タスクの工数が明確になる
WBSを活用する2つ目のメリットは、タスクの工数が明確になることです。
WBSを活用すると、プロジェクトを進行する際に行わなければならないタスクが明確になります。図はツリー構造で表されるため、自分の担当作業がどの階層にあり、どのくらいの工数がかかるのかが一目でわかります。
タスクの工数がわかれば、スケジュールから逆算して間に合うように作業を行うにはいつから取り組めば良いのかも判断しやすくなります。納期漏れがなくなったり、無理な作業計画を立てたりせずに済むのもメリットです。
メリット3.リソースの振り分け・進捗管理がしやすくなる
WBSを活用する3つ目のメリットは、リソースの振り分け・進捗管理がしやすくなることです。
WBSはプロジェクト達成までのタスクを明確にするだけでなく、タスクの進捗管理や業務の偏りがないかを確認するのにも便利なツールです。
各作業に「WBSの○番」という識別子を振っておけば、誰がどのタスクを担当しているのかが一目瞭然。一人ひとりがタスクの進捗率をきちんと自身で管理する仕組みにすれば、報告の抜け漏れがあった場合でも、WBSをベースにプロジェクトを進行できます。
タスクが完了してリソースに余裕がある従業員が誰なのかもわかるので、今は何も担当していないという人を作ることなく、効率的にプロジェクトを進められます。
WBSを活用するときの注意点
WBSを活用する際は、タスクをなるべく細かく洗い出すようにしましょう。また、動詞の形で書き出すのも重要なポイントです。プロジェクトの進行において、タスクの抜け漏れがないようにするために大切なことです。
ただし、最終的な目標に近いタスクほど、計画の立案時には作業内容が不明瞭になりやすいのは留意点。その場合は無理に細分化せず、進捗状況を見ながらタスクを決めたり、修正したりしましょう。
そうした場合には、WBSのコピーを用意しておくのも重要。プロジェクト後半でタスクに変更があったり、追加などがあったりした際に素早く対応できます。
WBSの活用が向いているシーン・業務
WBSには、「プロセス軸」と「成果物軸」の2種類があります。構造の軸に応じて2つを使い分けることが大切です。
「プロセス軸」は、成果物が不透明な中長期的なプロジェクトで用いられます。プロジェクトを階層化し、その後タスクを細分化・構造化するタイプです。例えば、◯◯までに◯◯を30%低減させるなどといった目標がある場合に向いています。
一方「成果物軸」は、成果物が明確になっている短期的なプロジェクトにおすすめ。成果物から逆算してタスクを細分化し、順序立てられたツリー構造を作るタイプです。
この場合の成果物とは、プロジェクト完了に必要なパーツやアイテムのこと。WBSでは最終的な目標の下に各成果物のタスクを記したツリーを作り、全体の動きを管理します。
WBSとガントチャートの違い
WBSとガントチャートは書き出す内容が似ていますが、活用目的が異なります。
WBSが必要なタスクを明確・細分化するためのツールである一方で、ガントチャートはWBSで明確になった作業の進捗状況を確認・管理するためのツールです。ガントチャートでは、各タスクがどの程度進んでいるのか、あるいは終わっているのか、全体像を把握するのに役立ちます。
システム開発のプロジェクトでは、WBSとガントチャートは両方使われています。まずWBSにより必要な作業をリスト化・構造化して担当付けや期日設定を行います。そうしてWBSを元に洗い出したタスクのスケジュールを視覚化して管理するのがガントチャートの役割です。
どちらか1つを使うのではなく、WBSとガントチャートは組み合わせて使うことを意識しましょう。
WBSの作り方と実行方法
WBSはスムーズなプロジェクト進行を助けるためのツールですが、うまく活用するには気を付けるべきポイントがいくつかあります。今後WBSを利用したいと考えている方に向けて、WBSの作り方と実行方法を解説します。
- STEP1.最終ゴールを明確にする
- ゴールまでのタスクを洗い出す
- タスクの実行順序を決める
- タスクを構造化する
- 作業担当者・スケジュールを決める
STEP1.最終ゴールを明確にする
まずは最終的なゴールを明確にします。目標は抽象的なものなのか、または物理的なものなのか、どのような状態であればプロジェクト完了といえるのかなどをディスカッションして決めましょう。
STEP2.ゴールまでのタスクを洗い出す
最終ゴールを明確にしたら、次はゴールまでのタスクを洗い出します。漏れや重複がないように網羅するのが大切なポイントです。
タスクの洗い出しは、大きく分割したタスクをさらに細分化する形で進めると漏れがなくなります。同時に、各タスクにかかる目安の時間も算出しておくのがおすすめ。
あまり細かくしすぎるとWBSが作りにくくなるほか、管理もしにくくなってしまいます。最終的には、数時間〜数日で各作業が収まるようタスクの細かさを調整しましょう。
STEP3.タスクの実行順序を決める
タスクの洗い出しが終わったら、実行順序を決めます。
作業のなかには、前の工程が終わっていないと取り組めないものも存在します。そのような場合は、作業の依存関係を明確にすると、どの順番でタスクを実行していけば良いのかがわかりやすくなります。
なかには並行して作業を進められるタスクもあるので、どんな順番であれば効率的に進められるかも意識しながら実行順序を決めてみてください。
STEP4.タスクを構造化する
タスクの実行順序を決めたあとは、洗い出したタスクを構造化します。
構造化する際は、親タスク・子タスク・孫タスクの構造が適切かどうかをチェック。同じ階層で隣り合っている作業同士の業務負担の大きさが違いすぎていないかも確認しましょう。
STEP5.作業担当者・スケジュールを決める
タスクをツリー構造が確定したら、各作業の担当者と期日を設けます。タスクを円滑に完了させ、計画通りにプロジェクトを動かすためには、細かな担当者付けが重要。基本的には1タスク・1担当者を意識しましょう。
すべてのタスクに担当を付けることで、各自が責任を持って自身の作業に向き合えます。ミスやトラブルが起きたときにも迅速に対応できるよう、各タスクには作業担当者を設定しましょう。
スケジュールはタスクごとに設定します。作業のなかには、前工程が完了しないと次の作業を行えない場合があります。計画通り進行するには、親タスクの最終的な期限から逆算し、数時間〜数日単位で納期を設定するのがおすすめです。
WBSを実行するときのポイント
WBSは複数人でプロジェクトを進行し、完了させたい場合に便利なワークフレームです。全体の進捗管理ができるのか、タスクの抜け漏れも防げます。しかし、計画にはトラブルや不足が付きもの。そうした事態をなるべく避けるために知っておきたい、WBSを実行するときの3つのポイントを解説します。
- ポイント1.余白を持って計画を策定する
- ポイント2.プロジェクト管理ツールを活用する
- ガントチャートやマインドマップなどと併用する
ポイント1.余白を持って計画を策定する
WBSを実行するときの1つ目のポイントは、余白を持って計画を策定することです。
あらゆるプロジェクトでは、最初〜中盤までに行うタスクは明確にしやすいものの、終盤に向かうにつれて作業が不明瞭になりやすい傾向があります。1つずつタスクを完了させていくうちに、必要な作業が追加されることも多いので、計画には余白を持っておくのがおすすめです。
また、途中で予期せぬトラブルが起きたり、作業の抜け漏れが発覚したりすることもあります。そうした突然の事態に対応しつつ全体のスケジュールに影響を及ぼさないためにも、計画は余裕を持って設定しておきましょう。
ポイント2.プロジェクト管理ツールを活用する
WBSを実行するときの2つ目のポイントは、プロジェクト管理ツールを活用することです。
WBSを作成する際に使う主なツールとして、GoogleスプレッドシートやOfficeのExcelなどがあります。
自由度は高いですが、一から作成する場合には時間がかかりやすいのがデメリット。効率的にWBSを作るなら、プロジェクト管理ツールを活用するのがおすすめです。
ポイント3.ガントチャートやマインドマップなどと併用する
WBSを実行するときの3つ目のポイントは、ガントチャートやマインドマップなどと併用することです。
WBSは、洗い出したタスクを大項目・中項目・小項目というように構造化させて、作業の進捗管理を行うツールです。
構造的に情報を整理する際に役立つのがマインドマップです。マインドマップとは、中心となる概念から関係する要素を次々に繋ぎ合わせ、アイデアや情報を可視化するツールのこと。マインドマップを活用してタスクを洗い出せば、必要な作業の抜け漏れを予防できます。
また、ガントチャートは明確にした作業の進捗管理を行うのに便利なツール。WBSと併用することで、各作業の進捗率や未着手のタスクが一目で把握できるようになります。
WBSを活用して効率的にプロジェクト管理を行おう
- WBSで急な計画変更に対応するには、余白を持ったスケジュールを立てるのがおすすめ
- WBSはガントチャートやマンイドマップを併用することでより効率的に作業を行える
- ツールを使うなら、タスク表とガントチャートを使えるタイプがおすすめ
新規プロジェクトの進行で大切なことはいくつかあります。スケジュール管理・タスクの洗い出し・担当の明確化・各作業を行う場合の適切な順序などです。これらのポイントをしっかりと押さえてスムーズなプロジェクト進行に役立つのがWBS。
本記事で紹介したポイントを参考に、ツールを活用してWBSを作成し、効率的にプロジェクトを管理してみてはいかがでしょうか。
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