見積書は取引先との合意形成、認識合わせのための大切な書類です。見積書に不備があったり保管を怠ったりすると、それが原因で取引先とトラブルになることもあります。
本記事では見積書に入れるべき項目やそれぞれの書き方を、画像付きで解説します。見積もりの精度や受注率を高めるための「見積書の作り方、出し方」も紹介します。
初めて見積書を作成したり、受け取ったりする方は参考にしてみてください。
- 見積書に入れるべき項目と、項目ごとの書き方
- 見積書を作る方法と送付までの流れ
- 見積もりの精度や受注率を上げる7つのコツ
見積書の書き間違いはトラブルの元
見積書の書き間違いはトラブルの元です。書き間違いが原因で赤字受注をしてしまったり、内容が十分でなかったために取引先と認識の齟齬が生まれたりすることもあり得ます。
見積書を作ったら書き間違いがないか見直し、誰が読んでも同じように解釈できる内容か、しっかりと確認しましょう。
また、見積書を受け取った場合は発注内容や納期、金額などに間違いがないのかよく確認してください。
見積書の書き方
見積書の書き方と注意点を項目別に解説します。下記のサンプルを見ながら、どこに何を書けばいいのか確認しましょう。
宛名
請求書を送る相手の社名や屋号を書きます。担当者が決まっている場合は、担当者の部署と名前も書きましょう。なお、敬称は宛先が個人名なら「様」、組織なら「御中」と書きます。
発行者
請求書の発行者、つまり自社の名前や連絡先を書きます。相手が連絡しやすいように、自社名(屋号)、部署、担当者、電話番号、メールアドレスまで書きましょう。
通し番号
見積書の通し番号を書いておくと、管理がしやすくなります。通し番号は「通算何通目の見積書か」ではなく、「年月日ごとに何通目か」で書きます。たとえば2022年11月9日の1通目なら「20221109-001」、2通目なら「20221109-002」のように書きます。
発行日
請求書の発行日を年月日の抜け漏れ、間違いがないように書きましょう。
有効期限
その見積書はいつまで有効なのか、年月日の抜け漏れや間違いがないように書きましょう。
見積もり金額
見積もり金額の合計を税込みで書きます。
見積もりの内訳
見積もりの内訳を「品目」「数量」「単価」「品目ごとの合計金額」で書きましょう。小計には税抜きの合計額を、消費税には税率と税額ごとの合計税額を書き、合計金額は税込みで書きます。個人と法人の取引の場合、「源泉徴収税」の項目を加えることもあります。
備考
送り先と認識を合わせるために、納品の期限や内容などを書きます。見積書の送り先と納品先が異なる場合は、納品先も書きましょう。
値引きをする場合
値引きをする場合、品目に「割引価格」「値引き価格」などを記入し、金額部分に「-(マイナス)」をつけて値引き額を記入します。
値引きの品目を設けず、値引き後の単価を記載すると、その価格が正規価格と認識されるかもしれません。認識の齟齬が生まれないよう、忘れず記載してください。
見積書を作る4つの方法
見積書を作る方法は大きく4つに分けられます。市販ソフトは作成も管理もしやすく便利ですが、利用料がかかります。テンプレートがあるならExcelやWordで作成・管理するのもいいでしょう。
市販用紙を使って手書き
文具店や100円ショップなどで購入できる「見積書用紙」を使って手書きする方法です。手書きは手間がかかり、書き間違いのリスクもありますが、「1枚だけ見積書を作りたい」「テンプレートや作成ソフトがまだ決まっていない」というときに便利でしょう。
Excel
セル単位で操作ができるExcelは、見積書のような項目がいくつもある書類を作るときに便利です。関数を使い、小計や消費税額、合計金額を自動計算できるようにするのもいいでしょう。
Word
Excelを使い慣れていない人なら、Wordの方が見積書を作りやすいかもしれません。テキストのサイズや右寄せ・左寄せ、表などを使って見やすいテンプレートを作りましょう。
Webサービス・市販ソフトを使って作成
市販ソフトを使えば、自社でテンプレートを作る必要はありません。特にWebから請求書を作成・保管できるクラウドサービス(SaaS)が便利で、端末とインターネット環境さえあれば、場所も時間も問わずに見積書の作成や確認ができます。
デジタルの印影をつけられるもの、印刷せずにそのまま郵送できるものなど、便利なサービスも多いです。
見積書の枚数やアカウント数は限られますが、無料で利用できるものもあります。
見積書の作成~送付の流れと注意点
見積書を作成してから送付するまでの流れと、各工程での注意点を紹介します。
見積もりの概算
見積書を作る前に、見積もりの概算を出しましょう。ここでは商品やサービスごとの単価、合計金額を算出します。
見積もり内容の確認
見積もりの概算を出したら、取引先に確認してもらいます。ここで金額が確定するとは限らず、相見積もりの結果、価格が変わることもあります。
見積もり金額の確定と見積書の作成
見積もりの概算を取引先に確認してもらい、合意が取れたら、見積もり金額を確定させます。金額だけでなく、送付先や担当者を確認し、抜け漏れや間違いのないように見積書を作成しましょう。
見積書の送付
見積書を作成したら、取引先に送付します。送付方法は郵送なのかメールやメッセンジャーなのか、宛先は間違っていないかなどをよく確認しましょう。
見積もりの精度や受注率を上げるコツ
見積もりの概算を出しても、金額や受注がすぐに決まるわけではありません。見積もりの精度が低いと、採算が取れなかったり、取引先との間で認識に齟齬が出たりすることもあります。
見積もりの精度や受注率を上げるコツを7つ紹介します。
工数や採算をきちんと見積もる
金額の概算を出す前に、工数や採算をしっかりと見積もりましょう。特に、取引先や内容により価格が変わるサービスを提供する場合、見積もりが甘いと採算が取れなくなってしまいます。
特に、「システムの構築・開発」「Web製作やデザイン」「マーケティング支援」などは、クライアントの想定している制作物と自分が想定している制作物が大きく異なっていると、実稼働量が異なり採算が取れなくなる可能性があるため、工数を慎重に見積もりましょう。
相見積もりや過去の取引の内容を加味する
見積もりを出すときは、相見積もりや過去の取引内容を加味しましょう。相見積もりの結果価格を下げざるを得なくなることもありますが、「これ以上下げたら採算が合わなくなる」という下限は設定しておくことも大切です。
担当者が変わったり、久しぶりに取引したりといったタイミングでは、過去の取引内容を確認してから見積もりを出した方がいいでしょう。
見積もりの有効期限を記載する
見積書には、その見積もり(金額)の有効期限を記載しましょう。有効期限を設けることで取引先の意思決定を促せます。
「社会情勢により原価が変わる」「この時期までに受注すれば余裕をもって納品できる」といった事情がある場合は、赤字や納品遅れを防ぎやすくなります。
見積もり用の連絡先を記載する
見積書の発行者と、見積もりに関する問い合わせ先が異なる場合は、両方の連絡先を記載しておきましょう。
見積もり用の連絡先に「不明点などございましたらお気軽にお問い合わせください」といった一文を添えることで、相見積もりや競合の営業による失注も防ぎやすくなります。
納品の期限や内容も記載する
取引先と認識の齟齬がうまれないよう、納品の期限や内容についても見積書に記載しましょう。特にシステムの構築・開発やコンサルティングのような長期間の業務、無形のサービスを提供する場合、何を提供するのかを具体的に記載することが大切です。
見積書は早めに提出する
受注の確率を高めるためにも、時期を早くするためにも、見積書は早めに提出しましょう。
見積もりの概算を出したのに見積書がなかなか送られてこないと、取引先は不信感をもつかもしれません。見積書が届くまでの間に相見積もりを取ったり他社の営業が入ったりして、失注してしまうことも考えられます。
見積書は保管しておく
見積書やそのデータは、受注に至らなかったとしても保管しておきましょう。過去の見積もりをデータとして残すことで、見積もりの精度を高めたり、次回の営業に行かしたりできます。
契約が成立した場合、見積書は証憑書類となり、発行から一定期間保管しなければなりません。保管期間は法人で7年、個人事業主で5年です。これらの期間は、法人税や確定申告の申告期限日から起算します。
見積書を不備なく書き、保管しておくことで、トラブルを防ごう
- 見積書は正しいフォーマットで書こう
- トラブルを防ぐために、値引きや備考も漏れなく記載しよう
- 受注・失注にかかわらず、見積書は保管しておこう
見積書に不備があったり保管を怠ったりすると、トラブルが起こりやすくなります。特に値引きや納品の期限・内容に関する不備があると取引先との認識の齟齬が生まれ、トラブルにつながりやすいため注意が必要です。
取引先に提出した見積書は、受注・失注にかかわらず保管しておきましょう。契約が成立した場合は保管の義務が生じ、失注の場合も、見積もりの精度を高めるための貴重なデータになるからです。
本記事を参考に、不備のない見積書を準備してみてください。
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