領収書には正しい書き方・ルールがあります。これらを守れていないと経費を申告できなくなったり、追加徴税を課せられたりすることもあるので、正しい書き方を知っておくことは大切です。
本記事では領収書の正しい書き方と7つの注意点を解説します。保管期限や収入印紙の金額、返金対応や失くした場合の対処法などについてもまとめて紹介します。
- 領収書の正しい書き方と7つの注意点
- ケースごとの領収書の保管期限
- 領収書の再発行や修正など、よくある質問
そもそも領収書とは?
領収書とは、お金を払ったことを証明するための書類です。印紙税法の金銭または有価証券の受取書にあたり、証憑書類として扱われます。
領収書を発行する目的
領収書を発行する目的は、何に対して、いくらお金を支払ったのかを証明することです。領収書があることで、二重払いを防いだり、経費を証明したりできます。
たとえば料金を支払ったのに「まだ料金が支払われていません」と誤って請求されたとしても、領収書を見せれば、二重払いやトラブルを防げるでしょう。
領収書には経費申告をするときの帳票書類としての役割もあり、その支払いが経費であることを証明できます。
レシートとの違い
領収書もレシートも、「金銭または有価証券の受取書」にあたる書類です。これは国税庁のホームページにも記載されていることです(参考:No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書 │ 国税庁)。
次の必要事項が記載されていれば、領収書もレシートも証憑として認められます。
- 支払先(お店や取引先)の名前
- 商品名
- 発行日
- 金額
領収書の書き方と気をつけるべき7ポイント【見本あり】
領収書を書く(書いてもらう)際は、どんなことに気をつければいいのでしょうか。7つの注意点を、書き方の見本付きで紹介します。
金額の書き方
金額を書くときには、以下のような表記ルールを守ることが重要です。金額が改ざんされないように、前後に表記を入れたり、数字にコンマを入れます。
書き方の注意点
- 頭に「¥」または「金」をつける
- 末尾に「※」「也」「-」などをつける
- 数字は「,」入りで記載する
書き方の見本
- ¥70,850※
- 金70,850-
- 金70,850也
但し書きの書き方
領収書は、どのようにお金を使ったのかを表記しておく必要があります。目的が曖昧になるような書き方は避けましょう。
書き方の注意点
- 何の代金なのかを具体的に書く
- 「お品代」「品代」は避ける
書き方の見本
- お食事代として
- 書籍代として
- 消耗品費として
内訳の書き方
内訳には、税率や、税抜価格、消費税額を記載します。
書き方の注意点
税率ごとの税抜金額と消費税額を記載する
書き方の見本
日付の書き方
日付を書く際には、年月日をすべて入れることが重要です。
書き方の注意点
- 年月日をすべて入れる
- 西暦でも和暦でもOK
書き方の見本
- 2022/11/21
- 2022年11月21日
- 令和4年11月21日
宛名の書き方
請求書を発行してもらう場合には、宛名を必ず書いてもらうようにしましょう。一度で聞き取りにくい名前や、表記が難しい場合は、名刺を渡して表記を確認してもらうと安心です。
書き方の注意点
- 代金を支払った人、企業の名前を書く
- 「上様」は避ける
書き方の見本
- 山田 太郎 様
- 株式会社〇〇 様
発行者の書き方
請求書を発行した人の表記方法も重要です。以下の情報が記載されているのか、確認しておきましょう。
書き方の注意点
- 会社名、店舗名、住所、電話番号を記載する
- 発行者欄にかぶせて印鑑を押す(必須ではない)
書き方の見本
収入印紙の貼り方
税抜5万円以上の請求書の場合には、収入印紙を貼ることも忘れないようにしてください。
貼り方の注意点
- 税抜50,000円以上の領収書に貼る
- 領収書の金額により、収入印紙の金額も変わる
- 収入印紙にかぶるように消印を押す
貼り方の見本
領収書に貼る収入印紙の金額
領収書は、経済的な取引に伴う書類に該当するため、国に対して「収入印紙」として印紙税を支払う必要があります。
参考:5万円以上の領収証には収入印紙が必要!貼る理由や、貼り方、税額を一覧で解説
収入印紙の金額は次のように、領収書の税抜金額により変わります。
領収書の金額 | 収入印紙の金額 |
5万円未満 | 印紙不要 |
5万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円を超え200万円以下 | 400円 |
200万円を超え300万円以下 | 600円 |
300万円を超え500万円以下 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下 | 2千円 |
1千万円を超え2千万円以下 | 4千円 |
2千万円を超え3千万円以下 | 6千円 |
3千万円を超え5千万円以下 | 1万円 |
5千万円を超え1億円以下 | 2万円 |
1億円を超え2億円以下 | 4万円 |
2億円を超え3億円以下 | 6万円 |
3億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 15万円 |
10億円を超えるもの | 20万円 |
受取金額の記載のないもの | 200円 |
参考:No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで │ 国税庁
領収書の保管期限
領収書の保管期限は5年または7年で、その領収書の税務申告から数えます。たとえば2021年10月に発酵した領収書を、2020年3月決算で申告すると、2025年または2027年まで保管しなければなりません。
個人事業主の場合
個人事業主の領収書の保管期限は、青色申告かつ前々年の所得が300万円を超えているなら7年間。青色申告で前々年の所得が300万円以下、または白色申告なら5年間です。
法人の場合
法人の領収書の保管期限は7年間です。
領収書にまつわるよくある質問
領収書の発行や保管についてよくある質問に、Q&A形式で答えていきます。
宛名や但し書きを空欄にしてもらうのはアリ?
消費税法上、宛名や但し書きがない領収書は無効になることもあります。多少面倒でも、領収書を発行するときにこれらの項目を埋めてもらうようにしましょう。
領収書は手書きでないとダメ?
領収書には最低限記載しなければならない必須事項がありますが、書き方に関するルールはありません。手書きでも印字でも、必須事項が記載されているなら問題ありません。
個人での領収書の発行方法は?
個人が発行するときも、領収書の書き方はあまり変わりません。次のポイントに気をつけて、記載の漏れや間違いがないようにしましょう。
個人が領収書を発行するときのポイント
- 発行者は屋号または名前
- 住所は店舗や事務所の所在地
- 印鑑は銀行印などの個人の印鑑で対応可
領収書の代わりにレシートじゃダメ?
必要事項が記載されていれば、領収書もレシートも同じ証憑として認められます。内訳が細かく記載され、書き損じの心配もないレシートの方が、むしろ扱いやすいかもしれません。
ただ、感熱紙を使ったレシートは湿気や光の影響で文字が薄くなってしまいます。印字が消えないよう、データは電子化し、現物はレシートは風通しのいい冷暗所に保管しましょう。
領収書を失くしたらどうすればいい?
領収書を失くしてしまい、変わりになる書類もない場合、その分の経費を申告できなくなります。代わりになる書類があっても、会社の規定で受け付けてもらえないかもしれません。
また、領収書には保管義務があり、税務調査で提出を求められることもあります。このときに領収書を出せないと、追徴課税されたり青色申告の承認が取り消されたりすることもあります。
領収書の再発行は原則としてできませんし、仮に再発行したとしても、もともとの領収書と一緒に保管しなければなりません。失くしたからといって再発行してもらえるものではないと思っておきましょう。
領収書を書き間違えたらどうすればいい?
領収書を二重線や訂正印で書き直すのはNGとされています。書き間違えてしまったら、新しい用紙に書き直しましょう。
書き損じたものは、確実に破棄するようにしてください。
領収書の発行後の返金対応はどうする?
原則として、領収書の再発行や修正はできません。そのため、領収書の発行後に返金対応が生じた場合は、領収書を書き直したり再発行したりして対応するわけにはいきません。
全額返金の場合は、支払い側から領収書を戻してもらい、その金額を返金しましょう。
1万円のうち6,000円を返すような一部返金の場合は、最初に支払ってもらった1万円とその領収書を、支払い側に戻してもらいます。こうして最初の取引を取り消したうえで、新しく4,000円を受け取り、その分の領収書を発行します。
インボイス制度で領収書の書き方も変わる?
インボイス制度が始まると、領収書やレシートを簡易インボイスとして扱えるようになり、領収書のみで仕入れ税額控除を申請できるようになります。
ただ、本記事で紹介した必須項目のほかに「何をいくらで取引したのか」という取引の内訳と、発行者の適格請求書発行事業者登録の登録番号も必要になります。
領収書は正しい書き方で、保管期限も守ろう
- 領収書で「上様」や「品代」は避ける
- 領収書の再発行は難しいため、紛失に気をつける
- 領収書の書き損じは修正するのではなく、新しい用紙に書き直そう
領収書には正しい書き方があり、書き方を守った領収書でないと、経費を申告できないこともあります。本記事を参考に、領収書の発行側はもちろん、受取側も正しい知識を身につけ、後からトラブルにならないように気をつけましょう。
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