市場に登場した新情報をキャッチし、積極的に取り入れる層を「アーリーアダプター」と呼びます。アーリーアダプターはマーケティングにおいて、サービス普及率を高める起爆剤的な存在。アーリーアダプターを活用したマーケティングが、新規事業成功の鍵を握っていると言っても過言ではありません。
そんな「アーリーアダプター」について解説。あわせて知っておきたい「イノベーター理論」や「キャズム理論」などについても、わかりやすくご紹介します。
- イノベーター理論における5つのグループについて解説
- マーケティングにおいて知っておきたい「キャズム理論」とは
- 「キャズム理論」の溝を超えるためのマーケティング施策
イノベーター理論とは?
「イノベーター理論」とは、市場において新しい商品やサービスの普及率を表すマーケティング理論のことです。
スタンフォード大学や南カリフォルニア大学などの教授を歴任した、エベレット・M・ロジャース氏の著書である『イノベーション普及学』のなかで提唱されました。
『イノベーション普及学』では、商品やサービスだけでなく、情報・知識・ノウハウ・ライフスタイル・行動様式など、市場に新しく登場したモノや価値観がどのように普及し、社会や文化、集団を変化させるのかが解明されています。
イノベーター理論はこうした『イノベーション普及学』の内容に基づき、マーケティング戦略に活用できるよう普及の過程を5つのグループに分類しています。
イノベーター理論における5つのグループの割合と特徴
イノベーター理論において大切なのは、普及の段階を分類した5つのグループの特徴をきちんと把握しておくことです。新商品がどの段階にあるのかや市場の割合を知っておくことで、効果的かつ戦略的なマーケティングを行えます。
イノベーター:革新者
イノベーター理論における1つ目のグループは、「イノベーター(革新者)」です。
イノベーターはマーケティング用語のひとつで、新しい技術や商品、サービスをいち早く取り入れる性質を持つ方のことを指します。イノベーター理論においては、冒険心があり、新しいモノを積極的に導入する層のことを意味します。
イノベーターは、市場の約2.5%を占めているといわれています。価値観に合った商品であれば、コストは気にしない傾向にあるのが特徴。「新技術」「最先端」「新商品」などのワードを使った訴求が考えられます。
アーリーアダプター:初期採用者
イノベーター理論における2つ目のグループは、「アーリーアダプター(初期採用者)」です。
世間や業界の流行に敏感で、常に新しい情報の収集を行っている層を指します。イノベーターよりも積極的ではないものの、これから普及しそうなモノに目をつけて、いち早く導入する特徴があります。
アーリーアダプターは、市場の約13.5%を占めている層です。業界のオピニオンリーダーや一般的なインフルエンサーなどになりやすく、大きな影響力を持っています。そのため、5つのグループのなかでも、アーリーアダプターへの訴求は重要なポイントです。
訴求ワードは、「メリット」「今後、流行する可能性」「従来品に比べて優れている」などがあげられています。新規性だけでなくメリットまで考えて購入する層なので、アプローチの仕方は工夫する必要があります。
アーリーマジョリティ:前期追随層
イノベーター理論における3つ目のグループは、「アーリーマジョリティ(前期追随層)」です。
新情報への感度が比較的高いものの、導入にいたるまでを慎重に判断する層を指します。オピニオンリーダーやインフルエンサーであるアーリーアダプターの意見に影響を受けやすいのが特徴です。
アーリーマジョリティは、市場の約34%を占めていると考えられています。世間の流行や話題に乗り遅れたくないという気持ちがあるため、「流行」「話題」「メリット」が訴求ワード。アーリーマジョリティへのアプローチは、アーリーアダプターとセットで考えるのが一般的です。
レイトマジョリティ:後期追随層
イノベーター理論における4つ目のグループは、「レイトマジョリティ(後期追随層)」です。
トレンドの商品やサービスを取り入れやすいアーリーマジョリティとは違い、レイトマジョリティは新しいモノを導入することにやや消極的な層です。多くの方が商品を使っていたり、確実なメリットがあると分かったりしなければ、購入に踏み切らないのが特徴です。
レイトマジョリティはアーリーマジョリティと同じく、市場の約34%を占めています。「普及率」「失敗しない」「多数派」などのワードを使った訴求がおすすめです。
ラガード:遅滞層
イノベーター理論における5つ目のグループは、「ラガード(遅滞層)」です。
5つのグループのなかでもっとも保守的な層で、新しい情報への興味・関心がほとんどないのが特徴。新商品を導入するまでのハードルが高い傾向にあります。例えどれだけの人が使っているモノであっても、伝統的・文化的に根付くまでは新しい商品を取り入れることはありません。
ラガードは、市場の約16%を占めているといわれています。「伝統」「定番化」「安心」などが訴求ポイントです。
マーケティングにおいてアーリーアダプターが重要な理由「キャズム理論」
新商品や新サービスのマーケティングを行う際、イノベーター理論にあわせて知っておきたいのが「キャズム理論」です。市場への普及率を高め、商品を定着させるにはキャズム理論で提唱されている、メインストリーム市場の攻略が重要。その理由をわかりやすく解説します。
キャズム理論とは
「キャズム理論」とは、商品やサービスをより広範囲に普及する際に問題となるキャズム(溝)について提言した理論のことです。
キャズム理論は、マーケティングの世界的権威であるジェフリー・ムーア氏が提唱しました。この理論では、イノベーターとアーリーアダプターの初期市場と、アーリーマジョリティ・レイトマジョリティ・ラガードまでのメインストリーム市場の間には、深い溝があるとしています。
この溝を超えるマーケティングを行わないと新情報は初期市場のなかで消えていき、メインストリーム市場まで普及しません。一方で、このキャズムを超えると大きな発展が見込めます。キャズム理論は、新規事業を成功させる際に意識したい重要なポイントです。
初期市場を超えるには16%以上の普及が必要
キャズム理論では、初期市場を超えるにはイノベーターとアーリーアダプターの市場割合である16%以上の普及が必要だとしています。
イノベーターやアーリーアダプターは新しい情報に価値を感じ、すぐに購入や実行に移す傾向がありますが、メインストリーム市場にいる見込み客はそうではありません。
商品のクオリティが一定であったり、費用対効果が高かったりと新しいという価値以外のメリットがあって初めて行動します。
メインストリーム市場は84%の割合を占めており、初期市場の4倍以上。そのため、新規プロジェクトを成功させるには、メインストリーム市場の攻略が非常に重要です。
アーリーアダプターの見つけ方・獲得方法
商品やサービスを広く普及するにはまず、初期市場からメインストリーム市場への影響力を持つアーリーアダプターを見つけましょう。キャズム理論のおける溝を超える場合に有効なマーケティング施策をご紹介します。
1.小規模市場に限定し、ペルソナのニーズを把握する
アーリーアダプターを見つける1つ目の方法は、小規模市場に限定してペルソナのニーズを把握することです。
新規事業の成功を焦っていきなり大規模市場を狙っても、思うような成果はあげられないことがほとんど。それどころか、大規模市場で想定していたよりも利益をあげられず、結果としてリスクを負うことも考えられます。
新規事業の普及率を徐々にあげていくには、まず小規模に限定したペルソナのニーズを把握し、ターゲットに刺さる商品やサービスの開発・販売を行いましょう。限られた地域や場所で販売するなどのマーケティング施策が考えられます。
2.インフルエンサーマーケティングを行う
アーリーアダプターを見つける2つ目の方法は、インフルエンサーマーケティングを行うことです。
メインストリーム市場にいるアーリーマジョリティは、初期市場にいるアーリーアダプターであるインフルエンサーから影響を受けて、購買や消費行動を行います。
キャズム理論で提唱されている2つの市場の間にある深い溝を超えるには、影響力のあるインフルエンサーにPRをしてもらうのが非常に効果的です。各インフルエンサーが持つコミュニティで宣伝を行ってもらい、徐々にアーリーマジョリティへの普及率を上げていきましょう。
3.アンバサダーマーケティングを行う
アーリーアダプターを見つける3つ目の方法は、アンバサダーマーケティングを行うことです。
アンバサダーとは、商品やサービスに対する関心が高く、熱意を持って紹介することのできる人のこと。日本語では「大使」と訳され、さまざまなブランドがブランド大使を活用してマーケティングを行っています。
アンバサダーに選ばれるのは必ずしも影響力の強い方とは限らないため、インフルエンサーマーケティングに比べてアプローチできるコミュニティ規模はやや狭め。
しかし、商品やサービスを独自の目線や価値観で判断して良い点を伝えられるため、ほかの消費者に対して好印象を与えられます。キャズムを超える前後でのマーケティング方法として採用されることが多い手法です。
アーリーアダプターになる方法
アーリーアダプターは、あるジャンルにおいてオタクであることがほとんどです。
例えば、リリースから約4年足らずで急成長を遂げたタクシー配車サービス「Uber」は、シリコンバレーで働く人たちをアーリーアダプターとして設定。なぜなら彼らは新しい技術やサービスに関して興味・関心が強く、すぐに導入を判断する「テクノロジーオタク」としての傾向があったからです。
シリコンバレーで開催されるテック系のイベントに協賛し、参加者に無料でサービスを提供したところ、マーケティングは成功。参加者たちがSNSで「Uber」について投稿・拡散してくれたため、市場の溝を超えることができ、サービスが成長しました。
こうした事例からアーリーアダプターの目指し方を考えてみると、方法は非常に簡単。特定のジャンルにおいて常にアンテナを張り、新しい情報があれば実際に体験し、SNSやブログなどのツールを用いて情報発信を行うことです。
それを継続することで、アーリーマジョリティが集まるコミュニティが徐々に作られていきます。ある程度の影響力を獲得したら、アーリーアダプターになることができるといえるでしょう。
イノベーター理論とキャズム理論を活用しよう
- 市場の普及段階は5つのグループに分けられる
- アーリーアダプターの活用とメインストリーム攻略がマーケティング施策成功の鍵を握る
- 市場拡大を狙うには、まずアーリーアダプターを活用したマーケティングを行うことが効果的
マーケティングは、いきなり大規模の市場を狙っても思うような成果は出ません。徐々に市場を拡大するための、市場戦略を立てることが非常に大切。その際に知っておきたいのがアーリーアダプターの存在と、「イノベーター理論」と「キャズム理論」です。これらをうまく活用して戦略的にマーケティングを行い、商品普及率を向上していきましょう。
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