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採用の鍵は報酬だけでなく「パーパス」。地方企業に求められる“採用力”とは?

U-NOTE編集部

2022/11/16(最終更新日:2022/11/16)


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首都圏企業には「採用力が秀でた企業」が多く、競争率が高いといいます。一方、地方で採用力が備わっている企業は少なく、競争率が低いため首都圏企業よりも採用しやすいようです。

しかし、地方の中小企業には「首都圏企業に比べて報酬といった条件面は見劣りする」という課題があるとのこと。それでは、地方企業は何を訴えかけるのがいいのでしょうか?

そこで今回は、企業と求職者を“パーパスへの共感”を軸にマッチングするビジネスSNS「Wantedly(ウォンテッドリー)」を展開するウォンテッドリー株式会社の村岡健太氏にご寄稿いただきました。

 

私はデロイトトーマツグループのコンサルタントとして働いている中、ご縁があってプロフェッショナル人材(内閣府)事業を担う広島県庁の特別職員として4年間出向する機会を得ました。

地方企業の経営者に対して経営課題と人材採用についてのディスカッションを行い、50以上ある人材サービスの中から最適なものを取り次ぐという仕事です。

県庁職員としてテレアポを行い、のべ年間300〜400名の経営者と会ってきたので、4年間で1,000人以上の経営者と会った計算になります。その中で採用に成功している企業や地方転職をして幸せを得ている人を数多く見てきましたが、その逆も数多く見てきました。

採用支援の現場で地方企業の経営者1,000人以上と対峙して

最初からショッキングなお話しをしますが、「ここ数年採用がうまくいっていない」という感覚を覚えるの経営者・人事担当者は企業存続の黄信号だと思ってください。

新型コロナウイルスの影響はありましたが、人材採用数的な観点からすると「さざ波」のようなものでほとんどの人材会社がコロナ前以上の業績になっています。

一方で、地方の生産年齢人口は減少の一途を辿っているので今後、企業は資金不足ではなく、人材不足で淘汰される「人材戦国時代」と言えるフェーズに入ったと考えられます。

国・地方自治体は首都圏の人材を地方に還流させようと努力していますが、経営者はまず隣の県・隣の市、そして近所にいる人材から自社を選んでもらう必要があります。

近所の人材から選んでもらえないのに、首都圏の人材から選んでもらえるようなことはありません。

そして先ほど新型コロナウイルスの影響は「さざ波」と表現しましたが、マインド・行動変容という意味では「大激震」でした。それはフルリモート人材の出現です。

1年前の時点でフルリモート求人がコロナ禍前の11倍以上に増えました。私自身も東京の企業に、広島に住みながらフルリモートで働いていますし、そういったフルリモート人材に会うことが広島でも非常に多くなりました。

一般的に規制を緩和すると格差が拡大します。今までは非常に優秀な人材であっても、地方に居住せざるをない制約条件を課せられた人材が数多くいたのですが、今はそういった人材を首都圏企業が「最後のブルーオーシャン」として積極的に獲りに来ている時代です。

それでは地方企業に活路はないのでしょうか?もちろん活路はあります。コロナ禍になって地方に移住したいという人材が増えているデータもありますし、コロナ禍になってそういった人材に採用成功している企業もあります。

ただ、そういった成功企業は実は、コロナ禍前から採用に成功しています。そこで明暗を分けるものは何でしょうか?地方企業の経営者1,000名以上と対峙して私が最も感じた地方企業の課題、それは「採用力」の向上です。

地方企業にこそ必要な採用力とは?

突然ですが、皆様の会社はハローワークで最近人材を採用していますか?ハローワークで人材採用が難しくなったので、有料の人材サービスを活用しようか悩んでいる経営者がたくさんいます。

「有料の人材サービスを活用したら、すぐに採用できる」と思っていると足下を掬われるかもしれません。

成果報酬型の人材サービスは採用時年収の約1/3(35%が多い)を人材会社に支払うというビジネスモデルになっています。地方企業は首都圏企業に比べて報酬といった条件で勝ることは極めて稀であるため、地方企業は構造上、人材会社からの紹介が少なくなりがちです。

私は人材会社数十社に人材紹介を依頼しても、数年候補者すら現れてこないという企業も数多く見てきました。「人材会社の誠意が見られない」「人材会社の力が足りない」など、人材会社がよくないと言う経営者も多かったのですが、人材会社も営利組織であるためそれを覆すことは難しい。

そもそも採用の前段階として、人材と何らかの形で接点を持つことが必要となります。接点を持つためには、当たり前ですが、まず人材から認知されることが必須です。

認知を得るためには無料・有料のもの含めてさまざまな手法がありますが、皆様の会社は自社ホームページ以外で情報発信をされていますか?

世の中の99%は中小企業で構成されており、私たちは99%の会社のことは認知すらできていません。積極的に認知されるための活動をしている中小企業は非常に少なく、大企業や首都圏スタートアップ企業の方がより多くの情報を発信しています。

人間は自然とどうしても知っている企業に職業選択も誘導されていきます。だからこそまず知ってもらわないといけない。

前置きが長くなりましたが、私は採用力=「発信力」×「口説き力」だと考えています。

いかに自らの企業を認知してもらい、認知してもらった後に口説けるかがポイントです。首都圏企業は採用力も秀でた企業が多く、競争率が高い傾向にあります。一方、地方で採用力が備わっている企業は少なく、競争率が低いため首都圏企業よりも採用しやすいというのが私の印象です。

コロナ禍になって、首都圏から移住したい人材を多く採用した企業はこの採用力のある企業でした。ただ、何を発信し、何で口説いていいのか分からないという経営者はたくさんいます。

繰り返しになりますが、地方の中小企業は首都圏企業に比べて報酬を含む条件面は見劣りします。それでは、地方企業は何を訴えかけるのがいいのでしょうか?その答えはパーパスです。

パーパスはDX化された世界におけるマッチングの鍵

「パーパス」は一般的に“企業の存在目的や社会的意義”と定義されている言葉です。企業によって「ミッション」や「ビジョン」として掲げていることもあります。茶道のように流派が多くあるため、「やりがい」「会社が取り組んでいる課題」と自分流に解釈してもいいでしょう。

経済史家のイマニュエル・ウォーラーステインが労働のことを「世界経営計画のサブシステムを担う」と表現している通り、誰しもが働いている限り、世界中にある何らかの課題を解決しているはずであり、皆様の会社も何かしらの課題を解決しているはずです。

ただ、首都圏の大企業よりも中小企業の方が、事業の数が少なく経営者との距離感も近いため、パーパスを明確にしやすい傾向にあります。

大企業にいるとどうしても細分化された仕事でやりがいを感じづらくなりがちですが、中小企業の抱えている課題や会社が解決したい社会課題のために、経営者と二人三脚で解決していきたいという人材は多くいます。

そういった人材とはパーパスで接点を持ち、パーパスで口説くのが得策です。高い報酬のみに魅力を感じた人材は、ほかの高い報酬を出す企業にすぐ転職してしまいます。

これまで、私は地方企業の現場で、活躍・定着している人材こそパーパスに共感しており、報酬をモチベーションの源泉にしていないという光景を目にしてきました(報酬は最も大切ではないだけであり、重要な項目ではあります)。

私の場合、「地方こそWantedlyだ」と考えてウォンテッドリーに入社しました。Wantedlyのプラットフォーム上では企業(法人)と個人のパーパスは書いてありますが、報酬といった条件面は書いていません。

お互いのパーパスはオフライン上では分かりづらいので、DX化されたプラットフォームの方が有効です。

Wantedlyではパーパスへの共感を軸にした「仕事のマッチング」を提供

Wantedlyは350万人の登録者がおり、4.3万社が使っているビジネスSNSです。Wantedlyのプラットフォーム上では働き手と企業がパーパスを発信しており、パーパスへの共感を軸にしたカジュアルな出会いを通した仕事のマッチングを創出しています。

先述の通り、Wantedlyのプラットフォーム上では企業と個人のパーパスは書いてあるものの、報酬といった条件面は書いていません。それは、仕事に夢中になるためには共感できる仕事と出会うことがポイントだと考えているからです。

仕事の情報を見る中で、報酬という情報は引力が非常に強く、共感できるかを判断する際に大きなノイズになってしまいます。

最初の段階では、このノイズがない状態で共感できる仕事を選び、その中で報酬面も見て仕事を選んでいってほしいと思っています。

もちろん大前提として報酬は重要と考えています。そのため、Wantedlyでは募集ページの段階で報酬は掲載されていないのですが、カジュアル面談を行った後、本選考開始前には労働条件を伝える仕組みになっています。

Wantedlyは採用力養成ギブス

私は「Wantedlyは採用力養成ギブス」だと考えており、企業が私たちのサービスを通じて採用力を向上することを望んでいます。

持続可能な採用活動を続ける上で一番大切なのは「魚の釣り方」を覚えることであり、竿(採用手法・人材サービス)ではありません。

ただし、最後にお伝えするとWantedlyのサービスは非常に安く長く使えるサービスです。そして採用力があればたとえ知名度や資金力がなくてもWantedlyで素晴らしい人材と出会えると確信しています。

地方企業の採用力が向上することが最大の地方創生になると、私は4年間の行政経験で実感しています。

著者プロフィール

村岡健太
ウォンテッドリー株式会社
Public Affairs 地方創生責任者

デロイトトーマツグループのコンサルタントして従事後、広島県プロフェッショナル人材戦略拠点に特別職員として4年間出向。地方企業の採用こそWantedlyだと確信して2022年にウォンテッドリー株式会社に入社する。セミナー講師等も多数行っている。村岡健太プロフィール村岡健太インタビュー

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