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企業はオンライン英会話に何を期待しているのか

U-NOTE編集部

2022/11/10(最終更新日:2022/11/10)


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新型コロナウイルスの影響から、オンライン英会話が大きな広がりを見せている近年。多くの企業が「業務で英語を使用する社員のビジネス英会話スキル向上」「人材育成」を目的に、オンライン英語研修を導入しています。

具体的に、ビジネス現場ではどんな英語プログラムや英語スキルが求められているのでしょうか。ビジネスに特化したオンライン英会話サービス「Bizmates」を運営するビズメイツ株式会社の取締役・伊藤日加氏にご寄稿いただきました。

コロナによって加速した、法人向け英会話業界のオンラインシフト

コロナ禍によって、働き方やライフスタイルはもちろん、企業の英語研修も様変わりをしました。以前までの企業英語研修でよく見られた、英語講師を企業に派遣し、グループで週1回ほど研修を行うというオフラインでの研修から、オンラインで研修を実施するスタイルへと移行しています。

矢野経済研究所の調査※によると、外国語教室全体市場規模は2018年度から下降しており、2022年度予測で若干持ち直すという数値に対し、オンライン語学学習市場規模推移に関しては2018年度より伸び続けています。

実際に弊社ではコロナ禍前の2018・2019年と比較し、2021年の商談数は約2倍に増加しており、オンライン研修へのニーズが高まっています。

画像左:「成人向け外国語教室市場」「幼児・子供向け外国語教室市場」「プリスクール市場」を合計したもの(外国語取得のための民間および公的機関による教室・スクール・市民講座等を対象とし、事業者売上高ベースで算出) 画像右:主にオンライン英会話を対象に、語学学習アプリ等のダウンロードコンテンツも含むが、ゲーム機向けは除外(事業者売上高ベースで算出)

※出所:矢野経済研究所「語学ビジネス徹底調査レポート2022」(注:2022年度予測値は2022年7月現在)

コロナの影響により研修費用の見直しを余儀なくされる企業が多くなり、「コスト面」からオンラインへのニーズが高まっていることが大きな要因です。

また対面や密集を避ける、という物理的な側面ももちろんありますが、オンラインならではの「手軽さや利便性」「発話機会」を重視する傾向も近年見られており、オンラインへのシフトが加速したと考えられます。

【コスト比較 例】
スクール型(40分×8日と想定): 料金/月 ¥50,000~(1レッスンあたり¥6,250)
オンライン型(25分×30日): 料金/月 ¥13,200~(1レッスンあたり¥425~ 弊社料金設定)

【発話機会の確保 例】 
スクール型(週1回60分):60分×4週間=240分
オンライン型(毎日25分):25分×30日=750分

オンライン英会話は日中だけでなく、早朝や終業後にも受講できるほか、直前の予約や当日のキャンセルなど柔軟なスケジュール設定を行なえるなど、忙しいビジネスパーソンにとって利便性が高い学習スタイルと言えるでしょう。

また、マンツーマンのオンラインレッスンを毎日受講することで、オフラインの集合研修と比較し発話機会が増えます。

さらに、弊社の調査では、オンライン英会話学習の習慣化に成功しているビジネスパーソンの8割が「講師との相性」が重要であると回答(※1)していることから、受講生一人ひとりが自分に最適な講師を選んでモチベーション高く学べる点も魅力と言えます。

※1)【オンライン英会話学習の習慣化に関する実態調査】(2022.5.25):PR TIMES

「TOEIC=ビジネスで活躍できる英語力」の認識が低下

私たちの法人顧客における研修の導入目的はさまざまですが、多くの企業が「業務で英語を使用する社員のビジネス英会話スキル向上のため」という理由で研修を導入しています。

そして近年増加傾向にあるのは、将来的に事業の海外展開やグローバル化への対応を見据えた「社内の将来のグルーバル人材育成のため」という理由です。

どちらも「英語を使って仕事で成果をあげること」をゴールにしており、英語テストのスコアを上げるだけではこれを達成することはできません。

英語でのコミュニケーションはもちろん、リーダーシップ力向上やダイバーシティ理解の促進といった、よりグローバルビジネスに紐づいた能力やマインドが求められているのです。

オンラインに特化したスキルのプログラム受講率が倍増

コロナ禍以降、オンラインに特化したスキル向上プログラムの受講者が増加しています。特にTeleconferencing(電話/オンライン会議)は2019年からの2年間で倍増しました。

オンラインコミュニケーション特有のマナーやテクニック、具体的には「ミーティング開始前の声かけ(音声と映像確認)」「カメラを意識する」「チャットスキル」など、オフラインでは発生しない状況でのビジネス英会話スキル習得のニーズが高まったためであると考えています。

そのほかにも、Presentationスキル「画面共有」「声とチャットを駆使する」、Emailスキル「短くシンプルで伝わりやすい文章作成」といったプログラムも受講率を伸ばしています。

実践的な英会話力「英語力×ビジネススキル」が求められている

オンライン研修にシフトし、価格面の手軽さや利便性の高まりにより、企業による英語研修導入のハードルが下がりました。

その結果、全社員に研修を行って受講者全体の数が増えたことで、英会話初心者の受講者数も増加しました。弊社では2019年と現在を比較すると、英会話初心者数(※2)が1.4倍に増加しています。

Bizmatesは当初、中・上級者を対象としていましたが、この傾向から英語の基礎知識がない、もしくは過去に何度も挫折経験がある人や、英語に対して苦手意識のある超初心者の受講を可能にすべく、フレーズ学習を中心とした教材「Level 0」を2021年に開発しました。

Level 0は900語の英単語と150のフレーズだけで実践的なビジネス英会話が可能になるプログラムです。英語学習者の約8割は3か月で挫折してしまう(※3)ため、小さな成功体験を積み重ね、モチベーションを低下させない仕組みを提供しています。

このようにコロナ禍によって企業の英語研修へのニーズは多様化し、また、オンラインでの英語ミーティングのコミュニケーション方法といったビジネス英語においては、新たなスキルの習得が求められるようになってきていると考えられます。

※2)弊社のLevel 0、Level 1教材の受講者
※3)英語学習者の約9割が挫折経験あり。約8割が「3か月で挫折」:PR TIMES

一方、英会話上級者からは「スキル不足を解消したい」という声が多く寄せられています。今まで年に数回の海外出張を乗り切る英語力があった上級者でも、オンラインミーティングの増加により、英語でのコミュニケーションの回数が増え、自身のスキル不足を実感したケースがほとんどです。

「ビジネス英語を使うこと」と「英語でビジネスを行うこと」は異なります。例えば、トレーナーとはスムーズにコミュニケーションを取ることができても、外国人の同僚とのコミュニケーションでは齟齬が生まれてしまうことがあります。

また、トレーナーとはスムーズにロールプレイを行うことができても、実際の職場ではうまくいかず自信を失ってしまうこともあるでしょう。

このように、普段は問題なく1対1で英語によるコミュニケーションを図れるけれど、ビジネスシーン(1対多、プレゼンテーション、ディスカッションなど)だとなかなか実力を発揮できないという人からは「ビジネススキル獲得型研修」が好評です。

オンライン英会話業界(市場)の目指すべきゴール

英会話業界全体としては、スピーキングテストを重視する傾向が主流になりつつあります。しかし現状のテストで測られるスコアは一過性のものでしかなく、受験時のコンディションやテスト問題の内容に左右されます。

弊社はもう一歩先の未来を見据え、AIやテクノロジーを駆使した評価制度の確立や、日々の勉強の中でテストが行えているような仕組み作りが必要だと感じています。

本来、英語はコミュニケーションツールです。ただ単語や文法を暗記すること、ましてやテストのスコアを上げることがゴールではなく、「英語を使って仕事で成果を上げること」や「英語を使って、本来の目的を達成すること」がゴールになるはずです。

企業の英語研修に関しても「一時的に導入して、スコアアップして終わり」では何の意味もありません。研修が終了した後も「受講生が自分の意志で学習を続けたくなること」が研修の成功だと、私は常日頃感じています。

それを実現するためには、先述のとおり、グローバルビジネスに適した英会話スキルの習得や、マインドの形成が欠かせません。

研修が成功した企業の受講生からは「英語がライフゴールになった」「知らない間に英語マニアになっていた」といった声が挙がっています。

この学び続けるマインドの重要さに気づき、企業や部署主体で研修の在り方をアップデートしている企業も徐々に増え始めています。弊社は今後もそのような企業をサポートしていきたいと感じています。

著者プロフィール

伊藤日加(いとう ひか)
ビズメイツ株式会社 共同創業者 取締役

カナダで生まれ育ち、1996年、英語講師として、ベルリッツ・ジャパンに入社。教師の採用マネジメント、品質管理を担当。後、商品開発マネージャーとして、ビジネス、企業向け教材の開発を行う。また、企業向けのセミナー講師を担当。同社を退社後、同年7月にビズメイツ株式会社を設立、取締役 Chief Quality Officerに就任。フィリピンの現地法人のトップも兼務。

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