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外国人エンジニアのチームを日本企業がどう作るか? 3つのステップを解説

U-NOTE編集部

2022/11/02(最終更新日:2022/11/02)


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エンジニア不足やリモートでの開発環境の浸透を背景に、居住地に縛られず開発組織をグローバル化している動きが増えています。

一方で、言語や文化の違いなどから、着目はしているがなかなか前に進めることができていない企業が多いのが現状です。

今後エンジニア組織のグローバル化を進めたい開発責任者・経営者・人事採用担当者に向けて、先進企業の取り組みから見えてきたエンジニア組織のグローバル化の3つのステップについて、ファインディ株式会社・CFOの河島傑氏にご寄稿いただきました。

そもそもなぜグローバル化が必要なのか

日本にはソフトウェアエンジニアが約120万人*1いるといいます。しかし、2030年には情報サービス・ソフトウェア企業においてITサービスやソフトウェアの提供を担う「IT人材」が79万人も不足すると予想されています。*2

弊社のクライアントアンケートによると7割近くの企業がエンジニア採用目標が未達と回答しています。

優秀なエンジニア採用の獲得競争は熾烈を極めており、資金調達ができても開発がボトルネックになっている企業は少なくありません。

そういった背景の中で、LINE・メルカリ・マネーフォワード・ラクスルといった上場ベンチャーだけでなく、オーティファイ・キャディ・delyなどスタートアップ企業も開発チームのグローバル化に舵を切っています。

*1…ヒューマンリソシア「2021版 : データで見る世界のITエンジニアレポートvol.4~93カ国のIT技術者数まとめ」
*2…経済産業省「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」

世界は最初からグローバルに組織を作っている

DeNAの南場社長があるセミナーで「日本のベンチャーとシリコンバレーのスタートアップはまるで違う。純粋なアメリカ人だけでチームを作っていない。いろいろな国の人が集まって一つのサービスを作っている。だから視点が最初からグローバル」と発言したという有名な話があります。

私自身もアメリカで仕事をしていて、人材の母集団が何倍も違うことで「こんなすごい人見つからないでしょ」と思われるような人がアメリカだと見つかる、という経験をしたことがあります。日本の1.2億という人口だけで戦っていたら、スタート地点からビハインドしていると感じています。

実際に、世界で見ると2,200万人のエンジニア*1がおり、単純計算で日本のエンジニア数の約15倍です。

グローバル化に向けた3つのステップ

エンジニア採用のハードルが上がっていることを背景に、スタートアップでもオフショア(海外に業務を委託すること)・業務委託・正規雇用など、さまざまなアプローチで開発組織のグローバル化を始める会社が増えてきています。

とはいうものの、グローバル化に踏み込むというのは言うが易しであり、ただ外国人エンジニアを採用すればいいというわけありません。先ほど例に挙げたような先進企業の取り組みを調べる中で見えてきた、グローバル化に向けた3つのステップについて紹介します。

①スモールチームから始める

ファーストステップとして始めやすいアプローチは、日本語が少しでもできるグローバル人材を入れて開発組織を少しずつ英語化していく方法です。

もちろん、日本語を話せる外国籍エンジニアを採用するのが理想ですが、そのようなエンジニアは少ないのが現状です。まずは業務委託や副業で働いてくれる外国籍エンジニアの採用をはじめてみましょう。

そして、そのエンジニアを起点としてグローバル人材をさらに引き入れ、開発チームをスケールさせていきます。

それを実践した会社がdelyです。

delyは外国籍エンジニアの採用を実践し、その後人事部門内に専門チームを立ち上げ、外国籍の方が活躍できるように言語面でのサポート(面談・会議通訳)や、社内ドキュメントの英語化、そして英語を学びたい社員の成長を支える取り組みなどを行なっています。

会社全体で「会社のグローバル化」に取り組んでいます。

「グローバルな環境作りは、外国籍の従業員を採用すればおしまい」ではなく、採用してからが“はじまり”です。delyは、より多くのメンバーがさまざまな言語・文化の壁を感じない仕組み作りを全社で行っていくことを推進してきました。

②開発拠点を現地に作る

グローバル化に向けたステップの2つ目は、開発拠点を現地に作ることです。近年は、ラクスルやマネーフォワードなど、ベトナムやインドといったアジア各国に開発拠点を作る企業が増えてきています。

ラクスルは2016年から現地の開発会社と協力して開発チームを立ち上げており、本格的に体制を作っていくことを決め、2020年6月に現地法人「ラクスルベトナム」を設立しています。

ベトナムは、オフショア開発国として聞いたことがある人が多いかと思いますが、最近注目を浴びている国があります。それがインドです。

元ソニー・インディア・ソフトウェア・センター社の社長である武鑓行雄氏による『インド・シフト〜世界のトップ企業はなぜ、「バンガロール」に拠点を置くのか(PHP研究所)』を読んだところ、インドではエンジニア出身の経営者やエンジニアの数はどんどん増えているようです。

バンガロールという一都市だけで、日本と同じ150万人近くのエンジニアがいるというのが驚きです。

給料の水準がどんどん上がってきており、平均で見るとまだ日本の方が給与は高いと言われていますが、トップTierのエンジニアはもう日本人よりも給与が高いということが実際に起きています。

こうした機運から、「開発コストを落とすために海外に拠点を作る」ではなく、「優秀な技術者を採用するために海外に拠点を作る」という考えにシフトしないといけないと感じています。

ラクスルは自社ブログ*3で「海外開発拠点を実際に作ることでわかった学びは多い」と語っています。

一緒に働くことで、日本と海外との間の企業文化の違いに気づき、何が課題かがわかります。そこではじめて意識変革が起こります。

リスクがあり、苦労が多いですが、実践しないとわからないことは多い……海外拠点を立ち上げて2年経ち、ポジティブな変化を感じており、今後の可能性を感じていると話しています。

*4…ラクスル株式会社「ラクスルCTOが語る、エンジニア組織のグローバル化の歩み」

③経営者が覚悟を持つ

最後に全体として言えることですが、エンジニア組織をグローバル化していくことは経営判断であり、覚悟を伴います。

グローバル化がうまく進んでいるいずれの企業であっても、最低でも3年くらいのスパンを見ています。

グローバル化に踏み切った当初、英語でコミュニケーションができる人が少ない中で、ドキュメントの英語化から始め「まず朝会だけ英語にしてみる」といった小さな変化から始めています。

チームをグローバル化すると、文化の違いからくるコミュニケーションに苦労することも少なくありません。

通訳を介して話せば解決するとは限らず、ホワイトボードで伝わるまでコミュニケーションを交わしたり、フィードバックの仕方や要件定義(要求をもとに、具体的なシステムの仕様を決めること)の伝え方など、細かい点で1つ1つ尊重し、時間をかけたりする必要があるかもしれません。

ときには組織崩壊を経験することもあるでしょう。しかし、その失敗を次に繋げていく……というように、グローバル化は1日して成り立つものではありません。

経営者は数年がかりで、短期的に開発スピードが落ちることを受け入れる覚悟を持って、グローバル化に踏み込んでいくことが求められます。

グローバル化に挑戦する開発組織を増やすために

開発組織のグローバル化は避けることができない状況です。数年前と異なり、今やアジア諸国のエンジニアの給料水準はどんどん上がっています。

今はまだ、日本で働くことは魅力的と思っているアジア諸国のエンジニアは多いようですが、5年後に果たして同じように日本で働きたいと思うのかは、正直わからないと思っています。

日本語を求めすぎているといつまでも人材不足は解消できないので、時間もかかりますしリスクもありますが、2、3年多少の痛みや非効率さを受け入れて進めた方が中長期ではメリットが大きいかもしれません。

挑戦するなら早い方がよく、まずは小さな一歩でも踏み出すことで見えてくるものがあるかと思います。

弊社、ファインディでも外国籍エンジニアの採用をまずは業務委託から始めてみました。また今年からFindy Globalというインドやベトナムといったアジア在住エンジニアの採用支援サービスをローンチしています。

日本企業の開発組織のグローバル化推進を事業として支援していくとともに、自社もグローバルに挑戦していきます。

本記事がグローバル化に向けた第一歩を、まずは開発組織から挑戦をしていく後押しに繋がれば幸いです。エンジニア組織のグローバル化に興味がある方は気軽に情報交換お待ちしております。MeetyやTwitterでご連絡ください。

著者プロフィール

河島傑
ファインディ株式会社 CFO

公認会計士試験合格後、監査法人で監査やIPO会計アドバイザリー業務を経て、2016年4月にリクルートに入社。Indeedアメリカに3年間駐在し、テクノロジー企業の買収と企業統合を担当し、帰国後はIRを歴任。2021年4月にファインディに参画し、2022年1月より執行役員CFO。

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