証憑(しょうひょう)とは、社内外で行われるあらゆる取引の成立を証明する書類です。証憑は売上・仕入れ・従業員にかかわるものと、それ以外のものの4種類に大別できます。
日常では使うことがない言葉のため、どのようなものなのかイメージしにくい人も多いのではないでしょうか。
本記事では、証憑とは何か、何のために発行・利用するのかを解説します。4種類の証憑の具体例や電子保存の要件、メリット・デメリットも紹介します。
- 4種類の証憑の概要と具体例
- 法律ごとの証憑の保存期間
- 証憑を電子保存する要件とメリット・デメリット
証憑(しょうひょう)とは?
証憑(しょうひょう)とは、取引成立を証明するための書類のこと。「証憑書類」と呼ばれることもあります。
また、企業間の取引だけでなく、社内の取引を証明する書類も証憑だといわれます。金銭のやり取りの有無にかかわらず、あらゆる取引に関する書類が証憑にあたります。
証憑を発行・利用する目的
証憑を発行・利用する目的は、その取引が本当にあったことを証明するためです。取引が単なる口約束でないこと、かかわる人が互いに同意したことを証明し、証拠として残します。
4種類の証憑
取引した相手が社内と社外のどちらであるか、金銭のやり取りがあったかどうかにかかわらず、取引の証拠となる書類は証憑になると説明しました。
実は、証憑は次の4種類に分けることができます。
4種類の証憑
- 売上にかかわる証憑
- 仕入れにかかわる証憑
- 従業員にかかわる証憑
- その他の証憑
日頃から種類別に分けて整理しておくことで、その後の処理を効率よく行えます。では、それぞれの証憑の種類の詳細について確認していきましょう。
1.売上にかかわる証憑
「売上にかかわる証憑」には、主に社外との取引に関する書類があたります。具体的には次のような書類があり、これらをきちんと管理できていないと、経営や業績について把握できなくなってしまいます。
売上にかかわる証憑の例
- 契約書
- 請求書
- 領収書(自社が発行するもの)
2.仕入れにかかわる証憑
「仕入れにかかわる証憑」も、社外との取引に関する書類です。具体的には次のような書類があり、在庫や受発注をきちんと管理するために欠かせない書類です。
仕入れにかかわる証憑の例
- 納品書
- 発注書
- 受領表
- 領収書(自社宛のもの)
- クレジットカードやATMの利用明細書
3.従業員にかかわる証憑
「従業員にかかわる証憑」は、社内での取引(雇用契約)に関する書類です。具体的には次のような書類があり、個人情報の取り扱いに気をつけなければなりません。
従業員にかかわる証憑の例
- 雇用契約書
- 履歴書
- 退職届
- 給与明細
- タイムカード
- 賃金台帳
4.その他の証憑
「その他の証憑」はほか3つに含まれない、経営にかかわる書類です。具体的には次のような書類があり、契約変更や税務調査などで必要になることもあります。
その他の証憑の例
- 口座の利用明細
- クレジットカードの利用明細
- 事務所の賃貸借契約書
- 融資の返済予定表
- 社内外の会議にかかわる議事録
- 稟議書
法律ごとの証憑の保存期間
証憑には税法と会社法により、5~10年の保存期間が定められています。法律・証憑の種類により保存期間は異なるため、ミスの防止や管理負担の軽減を考えると、一律10年で保管しておくこともおすすめです。
税法では原則7年保存
税法での証憑の保存期間は原則7年、一部の書類で10年です。書類の種類が多く管理が難しいため、一律10年での保管がおすすめです。
税法で保存が書類
- 仕訳帳
- 総勘定元帳
- 現金出納帳
- 売掛金元帳
- 買掛金元帳
- 固定資産台帳
- 売上帳
- 仕入帳
- 棚卸表
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 決算に関して作成されたその他の書類
- 注文書
- 契約書
- 送り状
- 領収書
- 見積書
- 資産の譲渡、課税仕入れ、課税貨物の保税地域からの引取りに関する事項
※青色申告所を提出し、欠損金が生じた事業年度などは10年保存(2018年4月1日前に開始した事業年度の場合は9年)
参考:国税庁
会社法では5年または10年保存
会社法での証憑の保存期間は5年または10年です。株主や債権者などの閲覧や謄写の請求に対応するための「備置き」は5年、保存のための期間は10年です。
会社法で5年保存の書類
- 計算書類(備置きのため)
- 事業報告
- 監査報告
- 会計監査報告
会社法で10年保存の書類
- 計算書類(保存のため)
- 会計帳簿及び事業に関する重要な資料
参考:J-NET21
保存期間を守らなかった場合
証憑の保存期間を守らなかった場合には、次のような罰則・リスクがあります。
- 青色申告の取り消し
- 消費税の仕入れ税額控除が適用できない
- 欠損金の繰越ができない
- 税務署の推計により課税される
- 100万円以下の科料(会社法第976条)
参考:e-GOV法令検索
経営をするにあたって不利益が出るため、保存をすることを忘れないように注意しておきましょう。オンラインで管理している場合は、バックアップをこまめに取ったり、クラウドに入れて保管したりなど、リスク管理も忘れずに行ってください。
管理・省スペースのために、証憑は電子保存するのがおすすめ
証憑の保存期間は5~10年ですが、罰則や自社にとって不利な課税がされるリスクを考えると、一律10年で保存するのが安心です。
しかし、証憑を保存するには棚や部屋などが必要です。これらを用意するにはコストもかかりますし、紛失のリスクもあります。コストカットのためにも、紛失を防ぐためにも、証憑は電子保存するのがおすすめです。
電子保存の要件
証憑を電子保存するには、e-文書法と電子帳簿保存法の要件を満たさなければなりません。
e-文書法は書類を電子データで保存することを認める法律で、電子帳簿保存法は電子計算機を使った書類の作成・保存に関する法律です。それぞれ、次の要件があります。
e-文書法の要件
- 見読性:PCやディスプレイなどで、明瞭な状態で閲覧できる
- 完全性:データの改ざんを防ぎ、改ざんや消去の有無を確認できる
- 検索性:必要なデータをすぐに見つけるために検索ができる
- 機密性:不要な閲覧やサイバー攻撃を防ぐための対策がされている
電子帳簿保存法の要件
- 真実性の確保:訂正・削除履歴の確認、関係する書類や記録との関連性の確認、閲覧や保存に必要なマニュアルの確認ができる
- 可視性の確保:保存機器と同じ場所に電子データを閲覧・出力するための機器や説明書がある。取引年月日・勘定科目・取引金額について、範囲や条件を組み合わせて検索できる
参考:国税庁「電子帳簿保存時の要件」
電子保存のメリット
証憑を電子保存することには、次のようなメリットがあります。
- 保存スペースの削減
- 印刷、紙にかかる費用の削減
- 紛失や劣化の防止
- 検索性の向上
- リモートワークへの対応
リモートワークが進み、様々な手続きの電子化が進んでいる中、これからは電子帳簿保存がより一層進んでいくとされています。スペースや印刷などの経費削減にも繋がるため、電子保存にするのか悩んでいる方は、ぜひ検討をしてみてはいかがでしょうか。
電子保存のデメリット
証憑の電子保存は様々なメリットがありますが、次のようなデメリットもあります。
- 導入費用がかかる
- 月額利用料がかかる
- スキャンの過程で視認性が下がるリスクがある
- 不正アクセスや端末紛失などによる情報漏えいのリスクがある
特に、ITツールや、インターネットに慣れていない場合は、最初の手続きに悩むことも多いでしょう。大切な書類のため、不安な場合は専門家に相談するなどして、確実に実行していくことがおすすめです。
ツールを使って証憑を正しく管理、保存しよう
- 証憑は取引成立を証明する書類
- 証憑は売上、仕入れ、従業員、その他に関する4種類に分けられる
- 証憑は法律により保存期間が定められている
- 管理コストの削減のために、電子保存するのがおすすめ
証憑は社内外で行われるあらゆる取引を証明する書類です。自社の経営状況を把握するためにも、青色申告取り消しや科料などのリスクを避けるためにも、期間を守ってきちんと保存しましょう。リスクヘッジとして、すべての証憑を10年保存するのがおすすめです。
あらゆる書類を10年保存するとなると、それなりの保存スペースが必要になります。そのための費用を削減するためにも、管理しやすくするためにも、電子保存するのがおすすめです。
本記事を参考に、証憑の管理方法について検討してみてはいかがでしょうか。
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