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所定労働時間とは?法定労働時間との違いや、36協定、残業時間の計算方法を紹介

U-NOTE編集部

2022/10/27(最終更新日:2022/10/27)


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給与を確認した際に、「割増賃金になっていない」「残業代の計算が間違っているのかな」と不安になっている人もいるのではないでしょうか。

残業代の計算には「所定労働時間」「法定労働時間」の知識が必要になります。

本記事では、所定労働時間の意味や計算方法、法定労働時間との違いなどについて詳しくご紹介します。

本記事の内容をざっくり説明
  • 所定労働時間とは
  • 時間外勤務手当や月平均所定労働時間の計算方法
  • 法定労働時間における例外

 

所定労働時間とは

「所定労働時間」「法定労働時間」の違いがわからない人も多いのではないでしょうか。

以下では、所定労働時間と法定労働時間との違いや、36協定についてご紹介します。

 

所定労働時間と法定労働時間との違い

所定労働時間とは、労働者が休憩を除いて働くことになっている時間のことをいいます。

例えば、朝9時から始業し夜18時に終業、休憩が1時間ある場合は、所定労働時間は「8時間」です。

所定労働時間がわからない人は、就業規則や会社のホームページなどをチェックして調べてみましょう。

一方で、法定労働時間とは、以下に記載されている通り、法律で決められた労働時間のことです。

第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

引用:労働基準法第32条

所定労働時間は、法定労働時間を超えてはならない義務があります。例えば、始業時間が9時、終業時間が7時、休憩時間が1時間の企業の場合、所定労働時間が「9時間」になってしまうので、法律違反で無効になります。

業種によっては、法定労働時間が異なることも。法定労働時間が異なる職業や働き方については、記事下部でご紹介します。

 

36協定とは

「一日8時間以上働いてはいけない」と決められているなら、残業は法律違反なのでは?と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。

労働者に法定労働時間を超えて働いてもらうためには、「36協定」を締結しなければなりません。

36協定とは、「時間外・休日労働に関する協定届」のことです。36協定の「36」とは、以下に示す労働基準法第三十六条のことです。

第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
引用:労働基準法第36条

 

時間外勤務手当(残業代)の計算方法

残業代を計算する前に、「法定内残業」と「法定外残業」の違いを押さえる必要があります。

法定内残業時間とは、法定労働時間から所定労働時間を引いたもの。法定外労働時間は、一日の労働時間から、法定労働時間を引いたものです。

例えば、所定労働時間が法定労働時間よりも「1時間」短い、「7時間」のケースを考えてみましょう。この会社で働く人が「2時間」残業した場合、法定内残業時間は「1時間」法定外残業時間は「1時間」です。

法定外残業時間には「割増賃金」を払う義務がありますが、法定内残業時間に関しては義務ではありません。

法定外残業時間に対しては、以下の労働基準法第37条により「25%以上50%以下の範囲ない」で割増賃金を支払う必要があります。

第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

引用:労働基準法第37条

よって残業代の計算方法は「1時間当たりの賃金」×「割増賃金率」×「残業時間」となります。

参考:愛媛労働局

参考:四谷麹町法律事務所

 

月平均所定労働時間の計算方法

1時間あたりの賃金を計算する際に必要となるのが「月平均所定労働時間」です。

月平均労働時間とは、1年間の所定労働時間を合計して12で割った時間のことをいいます。1ヵ月の間で働く日数は異なるもの。「残業した月」の所定労働時間を使用すると、1時間あたりの賃金が毎月異なることになります。そのため、「1時間あたりの賃金」のブレを無くすために、月平均労働時間を用いるのが基本です。

月平均労働時間は、「1年間で働いた日数」×「1日の所定労働時間」÷12 の数式で求められ、これにより1時間あたりの賃金を求めることが可能になります。

 

法定労働時間における例外

労働基準法には様々な例外があり、「1日8時間」「週40時間」ではない職種や働き方もあります。

以下では、法定労働時間における例外をご紹介します。

 

シフト勤務(変形労働時間制)

2交代制や3交代制などの「シフト制」や「シフト勤務」では、1日12時間程度働くこともあります。

「シフト制」や「シフト勤務」は法律上の言葉ではなく、「1ヵ月単位の変形労働時間制」「1年単位の変形労働時間制」などの変形労働時間制の制度を使ったものになります。

1ヵ月単位の変形労働時間制を使用した場合、1週間の平均労働時間が40時間(44時間)を超えない場合は、1日の上限はありません。一年単位の変形労働時間制の場合は、一日の労働時間は「10時間」と決められています。

労働基準法「第三十二条の二」によって、その旨が記載されています。

参考:厚生労働省「1か月単位の変形労働時間制

 

特例措置対象事業場

「特例措置対象事業場」と呼ばれる場所では、「週44時間」の特例が設けられています。ただし、「1日8時間」は変わりません。

特例措置対象事業場とは、アルバイトを含む労働者が常に10人未満である事業場のことをいいます。また、特例措置対象事業場は、以下の職種に限ります。

特例措置対象事業場になる職種

  • 商業
  • 映画・演劇業
  • 保健衛生業
  • 接客娯楽業

参考:日本労働組合総連合会

 

フレックスタイム制

始業時間・終業時間などを自由に決めることができるフレックスタイム制も、特別な所定労働時間を取ることが可能です。

清算期間と呼ばれる期間があり、その期間の週平均労働時間が40時間を超えないことや、一ヵ月の週平均労働時間が50時間を超えないことがフレックスタイム制の条件です。

これらの条件を超えてしまうと、割増賃金を払う義務が発生します。

清算期間は上限を3ヵ月間取ることができ、「6月はたくさん働くけれど、7月は休む」という緩急のある働き方ができるのがメリットです。

参考:フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き

 

裁量労働制

労働者が働く時間を自由に決められる「裁量労働制」も例外のひとつ。

裁量労働制は、みなし労働時間を採用しています。みなし労働時間制とは、どれだけ長い時間または短い時間働いたとしても、事前に決めておいた時間分のみ労働したとみなされる制度です。

裁量労働制には「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」が存在します。高い専門性がある職業や、労働時間を算出しにくい職業などで使用されます。

他にも「高度プロフェッショナル制度」を導入している企業や、管理監督者なども法定労働時間の例外に当たります。

 

残業代に疑問がある場合は上司に相談しよう

本記事のまとめ
  • 所定労働時間とは、労働者が休憩を除いて働くことになっている時間のこと
  • 法定労働時間とは、法律で定められた労働時間のこと
  • 法定労働時間には様々な例外があることに注意する

本記事では、所定労働時間や法定労働時間の意味や、残業代の計算方法などをご紹介しました。

法定労働時間における例外は多々あるため、自分が例外に当てはまっているのかわからない場合は会社の就業規則を確認することをおすすめします。また、残業代が間違っているのではないかと不安になっている人は、上司に相談してみましょう。

本記事を参考に、所定労働時間と法定労働時間との違いを押さえて、残業代の計算があっているか確認してみてはいかがでしょうか。
 


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