ビジネスやマーケティング、日常などで活用できる「フレーミング効果」。情報そのものよりも、伝え方が考え方や選び方に影響を与えるという理論です。
本記事では、フレーミング効果の意味や、実験、ビジネスやマーケティングにおける活用方法をご紹介します。
フレーミング効果の根拠を知りたい人や、フレーミング効果を仕事や日常で活かしたい人は参考にしてくださいね。
- フレーミング効果とは?論文も併せて紹介
- ビジネスやマーケティングにおけるフレーミング効果の活用例
- フレーミング効果にについて学べるおすすめの書籍
フレーミング効果とは
フレーミング効果(Framing Effect)とは、「情報そのものよりも情報の伝え方が、考え方や選び方に影響を与えてしまう」認知的バイアスのことをいいます。
フレーミング効果は、心理学者かつ行動経済学者ダニエル・カーネマンと、心理学者エイモス・トヴェルスキーによって研究が行われました。
1981年に発表されたフレーミング効果は、今もなおマーケティングやビジネスで日々活用されています。
例えば、フレーミング効果は以下のように活用されています。
「この消毒液はウイルスを95%除菌します」と書かれた消毒液Aと、「この消毒液はウイルスを5%のウイルスを除菌できません」と書かれた消毒液Bでは、前者のほうを購入したいと思う人が多いでしょう。
消毒液Aと消毒液Bは表現の仕方が違うだけで同じ効果を持っています。
「損失回避」を無意識に選択してしまうことによって、「なんとなくAのほうがいい」と思ってしまうことが「フレーミング効果」です。
フレーミング効果に関する実験・論文
フレーミング効果を発表した「ダニエル・カーネマン」と、「エイモス・トヴェルスキー」による「アジア病気問題」は、フレーミング効果に関する実験として高い知名度を誇っています。
実験ではフレーミング効果を検証するために、利益を重視した「ポジティブ・フレーム条件」と、損失を重視した「ネガティブ・フレーム条件」を与えました。
「ポジティブ・フレーム条件」は、以下のように情報を伝えられます。
・アジアで発生したある病気が、アメリカに来てしまうと600人の人々を死に追いやる
・病気を治すための対策は2つ
・対策Aを採用すれば200人が助かる
・対策Bを採用すれば、600 人全員が助かる確率は「1/3」誰も助からない確率は「2/3」
どちらの対策を選ぶほうがいいのでしょうか。
「ポジティブ・フレーム条件」のほとんどの人は、リスク回避を重視した対策Aを選びました。
では、ネガティブ・フレーム条件として以下の2つの条件を追加すると、どうなるでしょうか。
・対策Cを採用すれば、400人が死に追いやられる
・対策Dを採用すれば、誰も死なない確率は 「1/3 」600 人が死亡する確率は 「2/3」
対策A〜Dの中で、被験者のほとんどは「対策D」を選択しました。
対策Aと対策C、対策Bと対策Dは合理的には同じことを言っています。「死なない」「死ぬ」「助かる」「助からない」などの言葉を変えることによって、認知的なバイアスが掛かってしまっていることがわかるのではないでしょうか。
参考:「リスク態度と注意:状況依存焦点モデルによるフレーミング効果の計量分析」
フレーミング効果と合わせて知っておきたい効果・理論
「フレーミング効果」と一緒に論じられることが多い「アンカリング効果」「プロスペクト理論」を学んでおくと、さらにフレーミング効果の理解が深まります。
以下では、フレーミング効果と合わせて知っておきたい効果・理論について詳しくご紹介します。
アンカリング効果とは
アンカリング効果とは、「初めに与えられた情報や数字が、考え方や選び方に影響を与えてしまう」認知的バイアスのこと。
「1,000万円」の車や「900万円」の車などを見ていると、「200万円」の車が安く思える体験をしたことがある人もいるのではないでしょうか。
「200万円」も冷静に考えると安くはありません。「1,000万円」という始めに見た尺度に無意識に引っ張られていることがわかります。
アンカリング効果は、「小売希望価格」と「割引価格」のような二重価格表示などでビジネスでも使用されています。
プロスペクト理論とは
アンカリング効果は「プロスペクト理論」と呼ばれる理論によって裏打ちされています。
プロスペクト理論では「価値関数」「確率加重関数」などの数理的な式を使って理論を展開しています。そのため、「期待値」などの数学的な知識がなければ真に理解するのは難しいでしょう。
プロスペクト理論は、「人間は損失回避をする習性があること」「損失を過大評価してしまうこと」「心理的な損失と、実際の損失には差がある」などとまとめられます。
例えば「宝くじ」を想像してください。宝くじに当たる確率は「1,000万分の1」であっても、年末に宝くじを買っている人も多いのではないでしょうか。
「自分だけは当たる気がする」と理論的な確率を信じず、当たる可能性がある機会の損失を回避しようとして購入してしまう理由は「プロスペクト理論」で説明されます。
関連記事:プライミング効果とは?マーケティング利用できる心理学【具体例も紹介】
ビジネスやマーケティングにおけるフレーミング効果の活用例
ビジネスやマーケティングでフレーミング効果を実践的に使ってみたいという人も多いのではないでしょうか。
以下では、ビジネスやマーケティングにおけるフレーミング効果の活用例をご紹介します。
利益を強調した宣伝
利益を強調することによって、顧客に選んでもらえる可能性が高まります。
A:「95%のお客様が満足しています」
B:「5%のお客様が満足できなかったようです」
AとBでは、Aの「利益」を強調したほうが購買欲が増すのではないでしょうか。
「満足できなかったことをアピールしないのは当たり前じゃないか」と思うかもしれませんが、「当たり前」を理論的に説明すると「フレーミング効果」が影響しています。
損失を強調した文章
人間は損失を回避する習性があるもの。「利益を逃す」損失をアピールするのも一案ですが、損失を強調することも顧客に購買欲を持ってもらうための方法です。
A:この商品は深い眠りにあなたを誘ってくれます
B:良質な睡眠を取らないと生活習慣病のリスクが上昇することをご存知ですか?
メリットを提示するだけではなく、商品を使わなかった場合の「損失」をアピールするのも一案です。
参考:e-ヘルスネット「睡眠と生活習慣病との深い関係」
相対的にお得に見える文章
商品の組み合わせや質を変えられるのなら、相対的にお得に見えるラインナップを作るのも一案です。
A:特上うなぎ 6,540円(うなぎ2.5匹)
B:上うなぎ 3,550円(うなぎ1.5匹)
C:並うなぎ 2,400円(うなぎ0.5匹)
他の選択肢では「高くて量が多い」「安くて量が少ない」というメリット・デメリットがある中、Bはどちらの問題もクリアしています。相対的にお得に見えるように、第三の選択肢を作ってみるのも一案です。
「無料」の単語を含めたコピー
「無料お試しセット」「今だけクーポン使用で無料」などのキャッチコピーを見たことがある人も多いでしょう。
「無料」は自分には損がなく「得」をする機会であることを多くの人はわかっています。
そのため、無料というキャッチコピーを使うと興味関心を引くことができるでしょう。
フレーミング効果にについて学べるおすすめの書籍
フレーミング効果を学ぶための手段として、本を読むことをおすすめします。
『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 文庫 (上)(下)セット』は行動経済学を一般の人でもわかりやすくまとめたベストセラーです。
フレーミング効果は、下巻「フレームと客観的事実」に掲載されています。上下巻を全部読むのは難しそうと思う人は、興味がありそうな巻を優先して読んでみることをおすすめします。
また、フレーミング効果を通して行動経済学を学びたい人は、ノーベル経済学賞を取った「リチャード・セイラー」『実践 行動経済学』をおすすめします。
ビジネスやマーケティングで行動経済学を活用する方法が紹介されているので、実践的に学びたい人は読んでみてはいかがでしょうか。
ビジネスでもフレーミング効果を活用しよう
- フレーミング効果とは「情報そのものよりも情報の伝え方が、考え方や選び方に影響を与えてしまう」認知的バイアスのこと
- 「アンカリング効果」や「プロスペクト理論」なども併せて知ろう
- フレーミング効果や行動経済学についての本を読むことをおすすめ
本記事では、フレーミング効果の意味や、ビジネスやマーケティングでの活用方法などをご紹介しました。
フレーミング効果は、損を避けたいという人間の本能を理論的に紹介したもの。ビジネスやマーケティングで活用する際は、相手に「得」を与えること、または「損」してしまう機会を与えることを意識しましょう。
本記事を参考にフレーミング効果について学びを深めてみてはいかがでしょうか。
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