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シナジーの意味とは?使い方や種類、効果を生み出す方法、ビジネス事例などを紹介

U-NOTE編集部

2022/10/24(最終更新日:2022/10/24)


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ビジネス用語としてよく使用されている「シナジー」という単語。「シナジー効果」や「シナジーが得られる」などと使われているのを耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。

ビジネスパーソンとして知っておきたい「シナジー」について意味や使い方を解説。あわせて、シナジーの種類やシナジー効果を生み出す方法などもご紹介します。ビジネス事例もピックアップしているので、ぜひ参考にしてみてください。

本記事の内容をざっくり説明
  • シナジーとは「相乗効果」を意味する単語
  • シナジー効果の主な5つの種類をご紹介
  • シナジー効果を活用して事業が成長した参考事例をピックアップ

 

シナジーの意味とは?

ビジネスシーンで頻繁に使われる「シナジー」。なんとなく使っている方もいるかと思いますが、シナジーは互いがWin-Winの関係になれた場合に使用するのが適切です。単語してのシナジーの意味や使い方をきちんと知っておきましょう。

 

シナジーの意味とは

「シナジー(synergy)」は「相乗効果」を意味する単語です。元々は、薬学や生理学などの分野で使用される専門用語でしたが、現在ではビジネスシーンでもよく使われています。

ビジネスシーンで使用される「シナジー」には、「複数人で協力することによって高い効果を得られる」という意味があります。

 

シナジーの使い方

ビジネスシーンでは「シナジー効果」という使われ方が一般的です。「シナジーを得られる」という言い方をすることもあります。

複数の企業が業務提携を行ったり、2つ以上の部署が協力したりした結果、双方に利益が出てWin-Winの関係を築けた場合に使用します。

 

シナジー効果とは

「シナジー効果」とは、2つ以上の企業や部署が協力し合うことで、単体で事業やプロジェクトを行うよりも良い効果が得られた場合のことを指します。

シナジー効果によるメリットは、利益の面だけではありません。コストを削減できたり、費用対効果を上げられたり、それぞれのノウハウや知識を共有できたりとさまざまな効果が得られます。

ただし、シナジー効果を狙う場合、協力し合う両者がWin-Winの関係であることが前提。どちらか一方が得をし、もう一方が損をする関係では、シナジー効果があったとはいえないので注意しましょう。

 

シナジー効果の反対「アナジー効果」とは

シナジー効果の反対の意味で使われる言葉に「アナジー効果」があります。「アナジー」は医療用語として使われることが多く、単語としての意味は「無反応」「不応答」です。

アナジー効果とは、協力により見込んでいたメリットを下回る結果になってしまった状態のことを指します。シナジー効果がプラスの効果であるとするなら、アナジー効果はマイナスの効果を意味します。

例えば、業務提携であれば経営者同士の思想の違いが大きかったり、想定していたよりもコストがかかってしまったりするとアナジー効果が発生してしまいます。シナジーを生み出すためには、複数の条件を満たしている必要があるのです。

 

ピュアカンパニー化

ピュアカンパニー化とは、事業の多角化により発生してしまったアナジー効果を解消するために、自社の競争力が高い分野に事業を絞る企業の動きのことです。

経営資源を特定の分野に集中させることで、自社の経営を最適化できるのがポイント。複雑化した事業構造をピュアな形に戻すことにより、アナジー効果の解消を期待できます。

 

3種類のシナジー効果

一口にシナジー効果といっても、効果が期待できる対象によって呼び方が異なる点は覚えておきましょう。事業に関することであれば「事業シナジー」、財務に関することであれば「財務シナジー」、組織に関することであれば「組織シナジー」と呼ばれます。3種類のシナジー効果の内容を解説します。

 

事業シナジー

事業シナジーとは、事業間の資源を共有したり、活動に繋がりをもたせたりすることにより事業の稼ぐ力を向上できるシナジー効果のことです。

事業シナジーは大きく5つに分類でき、「売上の増加」「ノウハウの統合」「コスト削減」「スケールメリット」「人材削減」への効果が期待できます。単に事業シナジーを生み出すといっても、どの点での効果を見込んでいるのかは明確にしておきましょう。

 

財務シナジー

財務シナジーとは、財務状況が厳しい事業に対して大きな資本を投入することにより生まれるシナジー効果のことです。

財務シナジーには2つのシナジー効果があり、1つ目は「余剰資金活用」です。企業のM&Aによって生まれた余剰資金を活用することで、投資の最適化を図れます。

2つ目は「節税」です。これも事業のM&Aにより得られるシナジー効果で、繰越欠損金や債務の受け継ぎをすることで、節税を期待できます。

 

組織シナジー

組織シナジーとは、組織内の個人がお互いに協力・連携することで生まれるシナジー効果のことです。チームワークと言い換えると理解しやすくなります。

組織シナジーでは、業務効率化やモチベーションアップなどを期待できます。ひいては生産性の向上に繋がります。

 

シナジー効果の主な5つの種類

ビジネスシーンにおいて得られるシナジー効果には、5つの種類があります。どの効果を期待して事業提携やM&Aを行うのか、目的を明確にして取り組むことで効果の最大化をのぞめます。

 

1.コスト削減

1つ目の主なシナジー効果としてあげられるのが「コスト削減」です。事業提携により業務の重複が発生した場合、見直しを行うことで適切にコストを削減可能。人員配置を最適化させられるので、業務効率化や生産性の向上を期待できます。

 

2.時間の短縮・節約

2つ目の主なシナジー効果としてあげられるのが「時間の短縮・節約」です。

新規事業の立ち上げや企業の課題解決を行う場合には、専門知識と豊富な経験、ノウハウを持つ人材が必要。通常であれば採用活動を行ったり、従業員を育成したりしますが、どちらも時間がかかります。

シナジー効果を活用し、求める人材が働いている企業と事業提携を結べば採用活動の短縮や節約に繋がります。事業提携後に人材を募集することで、より優秀な人材が集まってくる可能性も高まります。

 

3.ビジネス機会の獲得

3つ目の主なシナジー効果としてあげられるのが「ビジネス機会の獲得」です。

一般的に、企業間での顧客や取引先の情報共有は絶対にできませんが、シナジー効果を活用すれば、両者が持つ顧客をそれぞれ共有することができます。

例えば、関東で事業を展開している企業であれば、関西で事業を行っている企業と業務提携をすることで事業エリアを拡大可能。新たなビジネス機会を獲得できます。

 

4.ノウハウや知識の共有

4つ目の主なシナジー効果としてあげられるのが「ノウハウや知識の共有」です。

サービス開発の技術や知識など、今まで培ってきたノウハウと知識を共有できるのもシナジー効果を活用した際のメリット。それにより、自社リソースでは推進できなかった新規プロジェクトや新規サービスの開発などの実現に繋がります。

 

5.ブランド力の拡大

5つ目の主なシナジー効果としてあげられるのが「ブランド力の拡大」です。
例えば、ブランド力を持つ企業と業務提携を結び、そのブランド力を既存の商品・サービスに活かすことができれば、商品やサービスの価値は向上します。

お互いに同程度のブランド力を持つ場合も同様です。それぞれの得意分野をサービスにうまく取り入れて質を向上させられれば、消費者の満足度アップを見込めるうえ、ひいては企業のブランド力の拡大に繋がります。

 

企業がシナジー効果を生み出す方法

企業がシナジー効果を生み出すには、どのような方法が考えられるのでしょうか。業務提携・M&A・多角化戦略・グループ一体経営などの方法と、それぞれの特徴について解説します。

 

1.業務提携

企業がシナジー効果を生み出す1つ目の方法は「業務提携」です。業務提携とは、異なる事業を展開する企業同士が提携を結び、それぞれの経営課題の解決や新規サービスの立ち上げ実現を目指す方法のことです。

業務提携では、お互いの強みを活かしたり、弱みを相互補完したりすることで企業価値を高めることが可能。業務に関するノウハウや知識、技術を共有し合うシナジー効果が期待できます。

 

2.M&A

企業がシナジー効果を生み出す2つ目の方法は「M&A」です。M&Aとは「Mergers & Acquisitions」の略で、企業の合併買収のことを指します。

M&Aでは、スケールメリットやコストの削減に加えて、節税や業務効率化の向上などのシナジー効果をのぞめるのが特徴です。

 

3.多角化戦略

企業がシナジー効果を生み出す3つ目の方法は「多角化戦略」です。多角化戦略とは、自社の資源を活かして新たな商品・サービスの開発を行い、それを市場に投入することで企業の成長を図る取り組みのことです。

多角化戦略は、水平型・垂直型・集中型・集成型の4つに分類でき、それぞれ戦略の進め方が異なります。どんな特徴を持つのかしっかりと把握しておきましょう。

 

「水平型多角化戦略」

水平型多角化戦略」は、既存事業に類似する市場に新商品や新サービスを投入する多角化戦略です。シリーズの横展開や販路拡大を行う総合電気メーカーなどが該当します。

新たに設備投資することなく、既存の生産技術やリソースを活かせるのが特徴。資金面でのリスクが少ないうえ、蓄積してきたノウハウや知識を使えるので成果を出しやすいのもポイントです。

 

「垂直型多角化戦略」

垂直型多角化戦略」は、既存事業や類似の市場に対して新しく取り入れたノウハウや技術によって作った商品を投入する戦略です。生産・流通・加工・販売などのすべてを担うビジネスモデルが該当します。

設備投資や新たなノウハウ獲得までに時間がかかるものの、既存顧客や既存顧客に近い層にアプローチしやすいのが特徴です。

 

「集中型多角化戦略」

集中型多角化戦略」は、既存の技術や知識、ノウハウを活かして作った商品やサービスを、これまでとは全く違う市場に投入する戦略です。自社で特殊な技術を持っていることでシナジー効果を期待できます。

優れた発想と実行力がある場合に向いている戦略ですが、新たな販売ルートを開拓する必要があるため営業力がないと成功に導くのはやや難易度が高いと知っておきましょう。

 

「集成型多角化戦略」

集成型多角化戦略」は、これまでに培ってきたノウハウも販売ルートも利用せず、新たな市場に新商品や新サービスを投入する戦略です。

4つある多角化戦略のなかでも成功させるのが難しく、また高い初期投資がかかるためハイリスクといわれています。十分な資金力がある大きな企業向けの戦略です。

 

4.グループ一体経営

グループ一体経営」は、複数の子会社や関連会社を持つ企業体が「企業グループ」として経営の意思統一を図ることで、スケールメリットや共通する業務の一本化によるコスト削減などのシナジー効果が期待できる戦略です。

金融業界では、このグループ一体経営を行っている企業グループが数多く見られます。共有のノウハウや業務を持っているため、グループ一体経営により事業を集約させることで大きなシナジー効果をのぞめるのです。

 

シナジー効果のビジネス事例

実際にシナジー効果を生み出すための戦略を成功させた企業をご紹介します。事業提携やM&Aが主ですが、それらを成功させるポイントは何を目的としているかです。6つの参考事例をご紹介します。

 

トヨタ自動車・スズキ

「トヨタ自動車株式会社」とスズキ株式会社は、競合他社でありながら2019年に長期的な資本提携を結び、シナジー効果を生み出しています。

目的は、トヨタ自動車の電動化技術とスズキの小型車技術を持ち寄り、お互いの強みを活かした相互補完関係を築くこと。自動車産業において競合という関係はそのままに、商品を共同開発したり生産領域で協業したりしながら、新たなフィールドを開拓していくとしています。

両者が持つノウハウや知識を共有しつつ、お互いのブランド価値を高める参考となるシナジー効果の事例です。

参考:スズキ「トヨタとスズキ、資本提携に関する合意書を締結

 

ソフトバンク

日本3大キャリアのひとつとして知られる「ソフトバンク株式会社」を傘下に置く「ソフトバンクグループ」は、M&Aの方法を用いてシナジー効果を生み出してきました。

パソコン用パッケージソフトの流通事業を行う企業としてスタートしたソフトバンクは、1996年に「Zホールディングス株式会社」を米国Yahoo! Inc.との共同出資により設立。インターネットビジネスの本格的な展開を始めました。

そして、当時日本の大手電気通信事業者であった「日本テレコム株式会社」を子会社化し、後にグループに吸収合併。現在ではソフトバンクが日本を代表とする総合通信事業者へと成長しています。

さらに、2014年以降はAI・IoT・スマートロボティクス市場において事業を展開するために、2社を買収し子会社化。時代の変化を素早く読み取り、多角化的な事業戦略を展開しています。

参考:ソフトバンクグループ株式会社「ソフトバンクグループの歩み

 

大正製薬

「大正製薬」を傘下に置く「大正製薬グループ」は、技術の開発を自社内で進めながらもグローバル展開をするために製薬企業をM&Aしてきました。

代表的なのが2009年のアジアOTC医薬品会社の買収と、2012年のメキシコの製薬企業グループ4社の買収です。

大正製薬の事業戦略として特徴的なのが、国内外の企業とのシナジー効果を生み出してきたことです。総合医薬品メーカーとして事業のさらなる強化と競争力を高めるため、さまざまな取り組みをしています。

参考:大正製薬ホールディングス「沿革

大正製薬ホールディングス「大正製薬グループの歩み

 

ファミリーマート

「ファミリーマート」は、コンビニエンスストア事業を軸に垂直型多角化戦略を行い、シナジー効果を生み出してきました。

ファミリーマートの創業は1978年。日本全国に店舗を展開しながらも、2009年には過去に「am/pm」というコンビニエンスストアを運営していた株式会社エーエム・ピーエム・ジャパンを、チェーン規模の拡大と質的向上のために買収。仕入・調達等のスケールメリットやコスト削減の効果を得ています。

その後もスーパーやコンビニエンスストア事業を展開する企業を次々に買収。市場での競争力を高め、事業を拡大し続けています。

参考:株式会社ファミリーマート「沿革

参考:株式会社ファミリーマート「ファミリーマートの歩み

参考:株式会社ファミリーマート「株式会社ファミリーマートと株式会社エーエム・ピーエム・ジャパンの合併にあたって

 

鉄道会社

鉄道各社は、鉄道の運営以外に駅周辺に百貨店を持つことでシナジー効果を生み出しています。例えば東急百貨店は東急電鉄株式会社グループに関連しています。

こうした鉄道各社が運営する百貨店は電鉄系百貨店と呼ばれており、乗降客数を増やすためのビジネスモデルとして誕生しました。鉄道事業だけでなく百貨店事業も展開した、集成型多角化戦略の事例といえます。

参考:株式会社東急百貨店「東急百貨店の沿革

 

LIXILグループ

「LIXILグループ」は、中核事業会社「株式会社LIXIL」を運営するグループ企業。1875年にグループの前身であるStandard Manufacturingを創業してから、100年以上の歴史を有しています。

実は「株式会社LIXIL」自体がシナジー効果を生み出すために創業された企業。トステム・INAX・新日軽・サンウエーブ工業・東洋エクステリアの5社が統合して誕生しました。

その後、株式会社LIXILはスマート・セキュリティ関連商品を開発している株式会社Secualやシャープ株式会社と業務提携を行うことで、新たな商品の企画開発および販路を拡大。

ほかにも複数の企業との業務提携により、事業シナジー効果を得ているほか、ブランド力の強化も行っています。

参考:LIXIL「LIXILの歩み

参考:LIXIL「シャープ株式会社との資本業務提携のお知らせ

参考:PRTIMES「スマート・セキュリティのSecual(セキュアル)、株式会社LIXILと資本業務提携し住宅向け次世代製品の共同開発を開始

 

シナジー効果をビジネスに活用しよう

本記事のまとめ
  • シナジー効果を生み出す方法を把握しておくと適切に活用できる
  • シナジー効果には5つのメリットがある
  • 業務提携やM&Aによるシナジー効果を活用して成長した企業は多い

シナジー効果を得るには、両社にとって利益があることが前提。自社だけのメリットを考えていては、想定していたシナジーは発揮されません。そのためには、事業提携やM&Aを行う前の話し合いが必要不可欠です。

本記事で紹介した事例のなかには、数年かけて提携を実現させた企業もあります。シナジー効果を最大限活用して、事業の拡大や利益向上を目指してみてください。


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