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アサーションとは?メリットや身につけるための5つのコツを解説

U-NOTE編集部

2022/10/13(最終更新日:2022/10/13)


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コミュニケーション方法のひとつとして知られる「アサーション」。臨床心理の分野における行動療法の一種ですが、最近ではビジネスシーンでの良好な関係性構築に役立てるとして注目されています。

そんな「アサーション」について解説。実践するメリットや身につけるための5つのコツもあわせてご紹介します。

本記事の内容をざっくり説明
  • 働き方の変化や働く人の多様性が広がったことをきっかけに注目され始めた
  • アサーションによりスムーズな業務進行が実現する
  • アサーション理論によればコミュニケーションには3タイプがある

 

アサーションとは?

アサーションとはコミュニケーショ手法のひとつで、相手の意見を尊重しながら自分の意見を相手に伝える手法のことを指します。

元々は臨床心理の分野における行動療法のひとつとして、1950年代にアメリカで誕生しました。行動療法においては「アサーション・トレーニング」として認知されており、その目的は対人スキルや社会的技能の獲得です。

その後、アメリカからアサーションの考えが日本に輸入され、日本では相互尊重の精神に基づいた交流の促進を行う場合に活用されています。ビジネスシーンでも同様の意味や目的で、アサーションという言葉が使われています。

 

アサーションが注目されている理由・背景

アサーションが注目されている理由・背景には、ハラスメント・ダイバーシティ・コミュニケーションの多様化におけるストレスが関係しています。

日本は古くから上下関係を重要視する、いわゆる「縦社会」が根付いています。そうした関係を悪い方向に利用したパワハラ・セクハラなどのハラスメントは、今や企業単体の問題ではなく社会問題として発展しています。

このような問題は、コミュニケーション不全がひとつの原因です。そのため企業は、パワハラ・セクハラ対策としてコミュニケーションの改善を促す目的でアサーションに注目しています。

また、日本社会がダイバーシティになりつつあるのも、アサーションが注目されている理由のひとつです。文化背景が多様な人材を積極的に採用している企業では最初、従業員同士の意見の食い違いが必ず発生します。

そうした場合に、相手の意見を尊重しながら自身の意向も伝えるアサーションを取り入れることで、お互いに相手を理解しながら業務を進められるようになります。

最近では、コロナ禍におけるコミュニケーションの多様化にもアサーションが有効とされています。テレワークが拡大し非対面でのやりとりが増えたことで、以前よりも相手の気持ちが察しにくくなっています。そんな場合にもアサーションを取り入れることで、相手の状況や心情を慮れるようになり、コミュニケーションにおける不安を取り除けるとしています。

 

アサーションを身につけることの3つのメリット

アサーションは、相手との関係値に限らず活かせるコミュニケーションの方法です。業務を行ううえで発生しやすいトラブルを避けるのにも、非常に効果的です。アサーションを身につけることによる3つのメリットを解説します。

 

メリット1.円滑にコミュニケーションができる

アサーションを身につけることによる1つ目のメリットは、円滑にコミュニケーションができることです。

アサーションの基本は、相手の意見を受け入れながら相手に不快感を与えないよう配慮した言葉で自分の意思を伝えることです。そのため、アサーションを身につけ、意識しながらコミュニケーションを取ることは関係の円滑化に繋がります。

相手の話し方が攻撃的だと感じる場合でも、自分がアサーションを実行して話すことで相手にもその意思が伝わり、建設的な会話ができるようになる効果が期待できます。

 

メリット2.コミュニケーションリスクを減らせる

アサーションを身につけることによる2つ目のメリットは、コミュニケーションリスクを減らせることです。

先輩や上司に対しては誰しもが自分の意見を伝えるのを躊躇してしまうものです。しかし、言うべきことまで伝えられないのは、個人にとってもチームにとっても不利益に繋がります。

大切なのはアサーションを意識して、相手に意思を伝えることです。先輩や上司に対する反対意見なのであれば「ご指導いただいた上で大変恐縮ですが」「ご指導いただき大変ありがたいのですが」など、本題に入る前に相手の気持ちを慮る言葉を一言添えましょう。

わずかな違いですが、アサーションを身につけることはこうしたコミュニケーションリスクを減らすことにも繋がります。

 

メリット3.対等な立場で会話できる

アサーションを身につけることによる3つ目のメリットは、対等な立場で会話ができることです。

ビジネスの現場では、職場の先輩や上司に限らず取引先との打ち合わせなど、関係によってはなかなか対等に会話ができないシーンが多くあります。

そんなときにもアサーションによるコミュニケーションは効果的。相手からの無理難題や過剰な要求を受け入れてしまうことなく、きちんとその条件は難しいことを伝えることができます。

相手からの提案をただ却下するのではなく、より良い提案と合わせて無理であることを伝えられれば、対等な立場による健全な意見交換が可能になります。

 

アサーション理論によるコミュニケーションの3タイプ

アサーション理論によれば、コミュニケーションのタイプは「アグレッシブ」「ノンアサーティブ」「アサーション」の3種類に分けられます。それぞれどのようなコミュニケーションスタイルが特徴なのでしょうか。アサーションを実施するうえで知っておきたい、3タイプの傾向を解説します。

 

アグレッシブ:攻撃タイプ

「アグレッシブ」は、自分が優位に立つための自己主張が強いコミュニケーションタイプ。その特性から「攻撃タイプ」とも呼ばれています。

自分の意見を相手に押し付けるだけでなく、ときには声を荒げたり、大声で怒鳴ったりすることもあります。

自分の考えをはっきりと伝えられるのは良い面ではあるものの、行きすぎるコミュニケーションは相手に不快感を与えてしまいます。良好な関係が築きにくく、業務に影響を及ぼすことも考えられます。

 

ノンアサーティブ:非主張タイプ

「ノンアサーティブ」は、自分の意見を伝えるのに消極的なコミュニケーションタイプ。自分の考えは持っているものの、否定されたり、間違いを極度に恐れたりしてしまうことから、「非主張タイプ」とも呼ばれています。

攻撃タイプに比べて大きな人間関係のトラブルは起こさないものの、主張や意見が表出されないため、やや扱いにくいのが特徴です。

相手を受け入れて話すことができるので相手に不快感を与えることはありませんが、自身がストレスを抱えてしまったり、言い訳が多くなったりしてしまう傾向にあります。

 

アサーション:混合タイプ

「アサーション」は、アグレッシブとノンアサーティブの中間に位置する、バランスに優れたコミュニケーションタイプ。2つの特性を備えているため「混合タイプ」とも呼ばれています。

混合タイプは、いわゆるコミュニケーションにおける理想型です。自分の意見を相手に押し付けることなく伝えられるうえ、相手の考えも否定せずに受け入れることができます。

状況に応じて相手に配慮した発言ができるので、良好な人間関係を築けます。アサーションを通して目指すべきタイプとして覚えておきましょう。

 

アサーティブなコミュニケーションをする5つのコツ

アサーションを実践するために、まず何から取り組めば良いのでしょうか。アサーションを通した良好かつ質の高いコミュニケーションを成功させるには、いくつかのポイントがあります。すぐにトライできる、アサーティブなコミュニケーションをする5つのコツをご紹介します。

 

DESC法を活用する

アサーティブなコミュニケーションをするための1つ目のコツは、「DESC法」を活用することです。

DESC法とは、アサーションを身につける具体的なトレーニング方法のこと。これまでアサーションを意識したことがなく、何から始めたら良いのかわからない方におすすめです。

DESC法
  • D「describe」:状況を客観的に伝える
  • E「express・explain・empathize」:自分の意見や気持ちを伝える
  • S「specify」:現実的な代替案を提案をする
  • C「choose」:相手の反応から自身の行動を選択する

DESCは各単語の頭文字を取って作られています。Dから順番に行うことで、アサーションの感覚を自然に身につけられます。

 

ABCDE理論を活用する

アサーティブなコミュニケーションをするための2つ目のコツは、「ABCDE理論」を活用することです。

ABCDE理論とは、物事の受け取り方の流れを理解するのに役立つ考え方のことです。ABC理論とも呼ばれている認知行動療法のひとつです。

ABCDE理論
  • A:Activating event(客観的な出来事)
  • B:Belief(客観的な出来事を解釈する考え方や信念)
  • C:Consequence(解釈による結果、感情や気分)
  • D:Dispute(信念に反するものへの反論や否定)
  • E:Effect(新しい信念や哲学)

ABCDE理論によれば、人の感情は出来事に対して発生するのではなく、出来事をどのように認知するかによって左右されるとしています。

「B」の「Belief」の部分が認知の過程です。人は事実とは異なる思い込みや合理的ではない考え方によって、不愉快な感情を抱えてしまうので、まずはこの認知を変えることが大切です。

それには、常日頃から自分の物事の捉え方を意識することが大切です。それが事実に対して適切であるかをチェックすることで、思い込みや非合理な考え方を少なくでき、アサーションを実行できるようになります。

 

「私」を主語にする、Iメッセージを使う

アサーティブなコミュニケーションをするための3つ目のコツは、「私」を主張するIメッセージを使うことです。

コミュニケーションにおいて、相手を主語にすると否定的になってしまったり、攻撃的になってしまったりします。

アサーションは相手の気持ちや意見を尊重し、攻撃的にならずに意見交換するコミュニケーションです。それを実行するためには、主語を相手から「私」に変える癖をつけるのがおすすめです。

「私はこう思う」「私はこう感じる」などの伝え方であれば、受け手になることなく自分の意見をきちんと伝えられます。ノンアサーティブになりやすいタイプの方であれば、わからなくなりがちな自分の気持ちを見失いにくくなるのもメリットです。

これは、アメリカの精神科医であるトーマス・ A・ハリス氏の著書『I’M OK‐YOU’RE OK幸福になる関係、壊れてゆく関係』にある「I’M OK‐YOU’RE OK」の理論にも似ています。「私はOK。あなたもOK」どちらも尊重されるべきであるという考え方は、アサーションを実行する際にも、ぜひ参考にしてみてください。

 

肯定的な言葉を使い、否定的な言葉を避ける

アサーティブなコミュニケーションをするための4つ目のコツは、肯定的な言葉を使い、否定的な言葉を避けることです。

アサーションの基本は、自分の意見も相手の意見も肯定することです。相手が否定を感じてしまっては、アサーティブなコミュニケーションは成功しません。

例えば、依頼を断る際には代替案を提案しましょう。「今すぐにはできませんが、別日のこの時間なら可能です」と一言添えるだけでも、相手に与える印象は大きく変わります。

 

非言語コミュニケーションも重視する

アサーティブなコミュニケーションをするための5つ目のコツは、非言語コミュニケーションも重視することです。

アサーションを身につけるには、言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションの整合性も意識しましょう。言葉と行動に矛盾が生じていると、相手はどちらを受け取ったら良いのかわからずに混乱してしまいます。

代表的な非言語コミュニケーションには、話し方・姿勢・視線に加えて、手や腕などの動かし方などがあります。話すスピードや声の大きさはもちろん、「えーと」「まあ」など曖昧な表現を使うのもなるべく避けましょう。

姿勢は相手に対して真っ直ぐに向き、話を聞いていることを表現するために相手の目を見るよう意識します。非言語によるコミュニケーションから相手は多くの情報を無意識に受け取ります。言語と共に非言語の表現も重視することを忘れないようにしましょう。

 

アサーティブなコミュニケーションを身につけよう

本記事のまとめ
  • アサーションは相手との良好な関係構築に有効
  • コミュニケーションの3タイプを理解してアサーションを実行しよう
  • アサーティブなコミュニケーションに取り組むにはまず「DESC法」を意識してみて

一人前のビジネスパーソンになるには、先輩や上司、取引先などさまざまな方との対等な関係性の構築が重要です。相手の意見を受け入れるだけでは、良質な仕事はできないからです。

そのために意識したいのが今回紹介した「アサーション」というコミュニケーションの考え方。相互尊重に基づいた交流方法で、働く人の多様性が進むにつれ注目が集まっています。
本記事の内容を参考にアサーティブなコミュニケーションを身につけて、ビジネスにおける良好な関係構築を目指しましょう。


 


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