タスクフォース(Task force)は軍隊用語の「機動部隊」に由来する言葉で、特定の課題を短期集中で解決するために構成される特殊チームを指します。タスクフォースで扱う課題は緊急性と重要度が高いため、優秀な人材を集め、早期解決を図らなければなりません。
本記事ではタスクフォースの意味や似た言葉との違い、編成するメリット・デメリットについて解説します。タスクフォースを最大限に活用するためのコツと、成功事例も紹介します。
- タスクフォースは特定の課題を解決するための特殊チーム
- タスクフォースを編成するメリットと注意点
- タスクフォースを最大限に活用するコツ
タスクフォースとは?
タスクフォース(Task force)とは、緊急性の高い課題を解決するための、一時的に編成されるチームのことです。緊急性も重要度も高い課題に対し、専任で取り組むため、タスクフォースは高度な人材で構成されていなくてはなりません。
タスクフォースの意味と目的
タスクフォースはもともと軍隊用語で、「機動部隊」を意味する言葉でした。軍隊用語としてのタスクフォースも、ある任務のために特別に編成された部隊を指し、ほぼそのままの意味でビジネスや政治の世界でも使われるようになりました。
タスクフォースの目的は、重要な課題をスピーディーに解決することです。課題が解決すればタスクフォースは解散となり、メンバーは通常業務に戻ります。
プロジェクトチームとの違い
プロジェクトチームとは、商品やサービスの開発、課題解決などの特定のプロジェクトにあたるチームのことです。そのプロジェクトに集中するチームであること、優秀なメンバーが選抜されることなど、タスクフォースと似た点も多いです。
タスクフォースと同じ意味で使われることも多いですが、タスクフォースの方が緊急性が高く、プロジェクトチームの方が取り組み期間が長い傾向があります。
ワーキンググループとの違い
ワーキンググループとは、問題の調査や計画の推進を目的に構成されるチームのことです。タスクフォースと同じく、活動が終われば解散となります。
タスクフォースと同じ意味で使われることも多いですが、タスクフォースは課題の解決に特化しているのに対し、ワーキンググループの活動には調査のようなものも含まれます。
クロスファンクショナルチームとの違い
クロスファンクショナルチームとは、全社的な経営課題の解決のために構成されるチームです。タスクフォースと同じく部門をまたいで優秀なメンバーを集めますが、課題解決と同時に解散されるタスクフォースと異なり、常設されることもあります。
タスクフォースを編成するメリット
タスクフォースを編成することには、次のようなメリットがあります。
タスクフォースを編成するメリット
- 課題を短期集中で解決できる
- 社内外から優秀なメンバーを集められる
- 組織全体を強化できる
次からは、それぞれのメリットの詳細について紹介していきます。
課題を短期集中で解決できる
タスクフォースは特定の課題を短期集中で解決するために構成されます。タスクフォースが扱うのは緊急性や重要度の高い課題であることも多く、ヒト・モノ・カネのリソースを集中させることで、早期解決を図れます。
社内外から優秀なメンバーを集められる
タスクフォースでは部門をまたぐのはもちろん、必要に応じて社外からもメンバーを招集します。扱う課題に特化したスキルをもつ人材を広く集められるため、課題解決は早く、活動の成果は高くなるでしょう。
組織全体を強化できる
タスクフォースは課題解決とともに解散となります。しかし、その前に活動を振り返ることで、社内に有用なノウハウを蓄積できます。タスクフォースを構成するのは優秀なメンバーで、扱う課題は緊急かつ重要なものです。ノウハウをナレッジ化し、共有することで、組織全体の強化にもつながります。
タスクフォースを編成する注意点・デメリット
タスクフォースを編成することには、「リソースを集中させ課題を早期解決できる」「組織全体を強化できる」といったメリットがあります。しかし、次のような注意点を把握していないと、これらのメリットは活かせないかもしれません。
タスクフォースを編成する注意点・デメリット
- ノウハウの蓄積が難しい
- リソース不足に陥りやすい
- メンバーの在籍部署の負担が大きい
次に、タスクフォースを編成するときの注意点やデメリットの詳細を確認しておきましょう。
ノウハウの蓄積が難しい
本来、短期間で解散となるタスクフォースはノウハウの蓄積に向きません。課題解決のみに集中し、解決後すぐに解散してしまえば、せっかく得られた有用なノウハウも社内に残せないでしょう。
タスクフォースが扱うのは緊急性の高い課題であるため、その解決に集中することは大切です。しかし、優秀な人材と経営資産を注ぎ込んだ価値を残すために、ノウハウ蓄積の方法を考えておくことも重要です。
リソース不足に陥りやすい
タスクフォースは緊急性の高い課題にヒト・モノ・カネのリソースを集中させ、短期集中で解決するチームです。しかし、一時的かつ緊急で構成されるチームであるため、タスクフォース内で起こる問題には対処しづらいでしょう。課題解決にあてるリソースが足りなくなることもありえます。
経営層(組織)がサポートすること、必要に応じてリソースを追加することなど、トラブルが起きた際は迅速な対応が求められます。
メンバーの在籍部署の負担が大きい
課題が解決しタスクフォースが解散するまで、構成メンバーの「もともとの在籍部署」には、負担を強いることになるでしょう。
タスクフォースのメンバーは短期集中で課題解決にあたるため、解散まで本来の業務に手をつけられない、あるいは今まで通りのリソースを割けないことになります。優秀な人材がメンバーに選ばれる、つまりその部署から抜けるため、在籍部署の穴埋めをするのも大変です。
タスクフォースを編成するときの3つのコツ
タスクフォースには「メンバーの在籍部署の負担が大きい」というデメリットがあります。課題解決が長引くほど、その部署に負担がかかる期間も長くなります。課題の緊急性と重要度の高さもあり、早期解決は必須です。
デメリットをカバーし、メリットを最大化するために、何を意識してタスクフォースを編成すればいいのでしょうか。3つのコツを紹介します。
タスクフォースを編成するときの3つのコツ
- 解決すべき課題を明確にする
- 解決の定義を明確にする
- 方向性やルールを明確にする
解決すべき課題を明確にする
早期解決を目指すには、まずは解決すべき課題を明確にしなければなりません。その課題はどのような規模と内容なのか、放置したり解決が遅くなったりするとどんな損害が出るのかなど、課題について洗い出しましょう。
解決すべき課題を明確にした結果、タスクフォースを構成するほどではないと気づくこともありえます。
解決の定義を明確にする
どんな状態になれば課題が解決したとみなすのか、明確に定義することも大切です。課題の解決、つまりゴールが明確でないと、活動の方向性がズレてしまうかもしれません。解決の定義がはっきりすれば、活動のスケジュール感もつかめるでしょう。
方向性やルールを明確にする
課題解決に向けた活動をはじめる前に、タスクフォースの方向性やルールも明確にしておきましょう。たくさんの時間をかけた後に軌道修正することにならないよう、方向性をはっきりさせ、ズレが生じていないかこまめにチェックします。
タスクフォースのメンバーは社内外から集められるため、初対面の相手も多いでしょう。コミュニケーションコストを削減するためにも、行き違いを防ぐためにも、ルールを明文化しておかなければなりません。
タスクフォースを最大限に活用するコツ
タスクフォースの活動をノウハウとして蓄積し、社内に共有できれば、組織の強化にもつながります。タスクフォースを最大限に活用するために、次の3つのコツを意識しましょう。
タスクフォースを最大限に活用するコツ
- 課題解決のための行動をする
- モニタリングと振り返りを行う
- ノウハウをナレッジ化し、社内に共有する
課題解決のための行動をする
タスクフォースの行動は、課題解決に結びつくものであるべきです。課題解決に直接結びつくような行動もあれば、メンバーの相互理解に役立つ行動やチームの心理的安全性を高める行動もあるでしょう。
課題解決とは一見関係なさそうな行動でも、無駄と決め付け排除してしまうのは早計です。目的を持って行動を起こすこと、その行動がどんな結果に結びついたか覚えておくことが大切です。
モニタリングと振り返りを行う
課題を早く解決するためにも、ノウハウを蓄積するためにも、モニタリングと振り返りはしっかり行いましょう。モニタリングが疎かだと、方向性のズレやリソース不足に気づくのが遅れてしまいます。
デイリー・ウィークリー・課題解決などのタイミングで振り返りをすることも大切です。こまめな振り返りによりノウハウは蓄積され、課題解決が早まるかもしれません。活動したことや感じたことを忘れてしまう前に振り返りをすることは、ノウハウをナレッジ化するためにも大切です。
ノウハウをナレッジ化し、社内に共有する
タスクフォースにより課題が解決したら、活動中に蓄積したノウハウをナレッジ化し、社内に共有しましょう。
ナレッジ化することで、似たような問題が起こった際に、ほかのメンバーでも対応できるようになります。全く異なる課題を解決するために再びタスクフォースが構成されたときも、ナレッジがあれば過去の失敗を繰り返さずに済むでしょう。
タスクフォースのリーダーに求められること
タスクフォースのリーダーには、次のような能力が求められます。
タスクフォースのリーダーに求められること
- コミュニケーション力
- ファシリテーション力
- マネジメントスキル
- 課題発見能力
- 分析力 など
これらのスキルは課題の定義や解決だけでなく、ノウハウの蓄積やプロセスの改善にも欠かせないものです。タスクフォースで課題を解決するためにも、ノウハウをナレッジ化し強い組織をつくるためにも、高い能力を持った人材を選びましょう。
タスクフォースの成功事例
タスクフォースで扱う課題は緊急かつ重要なものであり、解決にかけられる時間も限られています。その課題に適した人材を集め、メンバー同士が相乗効果を生むようなチームを構成することで、課題解決は近づくでしょう。
タスクフォースは政府や有名企業でも取り入れられ、成果を上げています。タスクフォースの成功事例を3つ紹介します。
総務省
総務省は、サイバー空間をあらゆる主体が利用する公共空間とし、これを経済発展の基盤とするためにタスクフォースを構成しました。このタスクフォースではサイバーセキュリティーに関する基盤や制度、人材育成などの在り方を探り、必要な方策を推進することを目的としています。
構成員にはセキュリティやネットワーク、ITなどの領域から、企業役員や大学教授などを集めています。
マクドナルド
日本マクドナルドホールディングスは顧客対応の品質改善を目的に、「お客様対応プロセス・タスクフォース」に取り組みました。このタスクフォースのゴール(解決の定義)は、顧客からの対応プロセスを改善することで、適切かつ迅速な顧客対応ができるようにサービス品質を向上させることです。
メンバーには日本マクドナルドホールディングスの役員のほか、外部から社会心理学や情報社会論・メディア論などの専門家を招いています。
ウェルクス
株式会社ウェルクスはコスト削減による利益改善と年間2,000万円(対予算)の削減を目的に、「コスト削減タスクフォース」に取り組みました。具体的にはさまざまな部署の経費を確認し、コストがかかる対象と削減すべきものを調べ、エアコンや営業電話の利用を見直しました。
特に、固定電話を使うよりも社用携帯を使う方がコストがかからないことを発見し、社用携帯の利用を促進したことには注目すべきです。結果的に、固定電話代は100万円以上下がりました。このように、タスクフォースではさまざまな可能性を探し、検証してみることが大切です。
タスクフォースをうまく活用し、課題解決と組織強化を両立させよう
- タスクフォースとは、緊急かつ重要な課題を解決するための特別チームのこと
- 社内外からその領域に詳しい人材、求められるスキルをもつ人材を集めることが、課題解決を早める
- 課題解決により得られたノウハウを蓄積し、ナレッジ化することで、組織強化に役立てられる
タスクフォースは「機動部隊」に由来する言葉で、特定の課題を解決(任務)するために一時的に構成されるチームです。社内外から人材を集めることも多く、どのようなチームを構成するかで、課題解決までのスピードは変わるでしょう。
タスクフォースでの活動はノウハウとして蓄積し、ナレッジ化して社内に共有することで、次に問題が起きたときに役立てられます。タスクフォースを編成する際には、本記事で紹介したポイントをぜひ押さえてみてくださいね。
本記事を参考に、タスクフォースを編成するのか、検討してみてはいかがでしょうか。
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